【ライブレポート】R指定、「最低で最高な夏の1日になりました!」

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R指定が8月11日、大阪・服部緑地野外音楽堂にて<真夏の野音単独公演 スーサイドサマーキラーズ3>を開催した。

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このところ全国的に暑く、“熱中症に厳重警戒”というニュースを頻繁に目にする中での野外ライヴだ。当日の気温は37度。灼熱の太陽がギラギラと照り付ける場所でライヴを行うなんて、自殺行為としかいいようがない。それでも、彼らと一緒だったら心中しても構わないと言わんばかりの笑みを浮かべて会場に入っていく指定女子・指定男子(R指定ファンの総称)の勇ましいこと。ならば、いっそ望みどおりにしてあげようではないか。


16時半、日が沈む気配が一向に感じられない状態のままライヴはスタートした。通常であれば室内でのライヴゆえに場内が薄暗い中でメンバーがステージ上に姿を現すのだが、今回は野外ライヴというだけに辺り一体が明るい中での登場というのも実に新鮮だ。赤い衣装で統一した5人が出てくると、首吊り縄が描かれたバックドロップ幕が少しの風でゆらりと揺れる。それはまるでこれから始まる惨事の様子を示唆しているかのようにも見えた。マモ(Vo)が「楽しもうぜ、大阪!」と高らかに告げると、1曲目の「シンクロ」が勢いよく演奏されていった。

人間の平均体温よりも熱い気候の中で「頭いこうか!」という無謀な掛け声に、客席はひるむことなく頭を振ったり拳をあげたりと忙しく動いていく。そのまま、「ジャパニーズクラッシャー」へ入るとCO2の柱が白い煙と共に勢いよく噴出していった。と同時に、ステージ前方へと迫り出しギターを弾くZ(G)と楓(G)。暑さをもろともしない表情で巧みに演奏する姿に客席からは歓声が上がる。曲が終わって即座に「暑ぅ……」と溜め息まじりに呟いたマモ。だが、休息を挟むことなく「ギラつく太陽」へと場面を変えていった。ここでは、テーマパークの水かけパレードを思い起こさせるかのごとく、客席に向かってステージ両サイドに置かれたキャノン砲から水しぶきが放たれた。このウォーターキャノンという演出は野外でしかできない特別なもの。それだけに、楽曲自体、ライヴハウスで聴くとき以上に開放的な感じが見られた。


「大阪、生きてるかーい! 本日は<R指定真夏の単独公演 スーサイドサマーキラーズ3>にお集まりいただいた陽キャラの皆様、こんなに遠くまで来てくれてありがとうございます。直射日光で立っているだけでも辛いので、みんなも無理をしないで」とマモが客席に愛のある注意喚起をうながす。そのあとも「ほんとにね、R指定は天候に恵まれてないのですが、こういうときに限ってカンカン照りって! いやらしいですね、地球は」と言いながらも、当日会場付近に直撃するかもしれなかった台風が見事に逸れたのは、彼らが雨男ではないということを証明したようにも思える。

「じゃあ、夏ということで涼しめの曲をやりたいと思います!」そんな前振りがあっただけに、次の曲は落ち着いて聴けるのではないだろうかと場内にいる誰もが思った。だが、安堵を感じた数秒後に始まったのは、「毒盛る」。涼しくなるどころか息ができなるほどの暑さを感じる曲に、客席のボルテージは最高潮に。そのあとは「EROGRO」と「アポカリプティックサウンド」を。ここで注目したのは七星(B)と宏崇(Dr)、リズム隊の演奏だ。この曲に限ったことではないが、こうした高温多湿の中でも潰れることなく伸びやかに広がっている演奏力を目の当たりにすると、どんな環境でも大丈夫といえるほどの音を作り出せていることがわかる。


常日頃から、“マモの声が乗って、そこで初めてR指定の楽曲になる”ということをメンバーは言っているのだが、楽器隊の音があってこそ歌声が活きてくると私は思っている。バンドの世界観はメンバーの個性によって作られている。それだけに、マモ、Z、楓、七星、宏崇、この5人でなければR指定の楽曲は生み出せない。そこは音源を聴くよりも、こうしてライヴを体感することで理解してもらえるはずだ。

とはいえ、今日はシングルやアルバムを引っ提げてのツアーではないため、特別これといったコンセプトを重要視した内容にはなっていない。むしろ、自由気ままに進めていいのだが、本編中盤で演奏されたバラード「カナリア」で瞬時にして客席を曲の持つ世界観へ引き込んでいくあたり、さすがといえよう。自由な中にもメリハリをつけて展開をしていく。これこそがライヴバンドとしての理想であり、彼らのプライドを見せ付けられたようにも思えた。西日が差すステージ、ドラムのシンバルに反射する光が目に眩しい中でライヴは後半戦へと突入した。


「ラストスパートいけるか!」という煽りから「國立少年」へ移ると、ステージから客席へと降りて歌うマモ。その様子を持っていたスポーツタオルを振り回しながら見守る指定女子と指定男子。まさに、夏の野外ライヴにぴったりの光景だ。そのあとには「アイアンメイデン」「-死刑-」を立て続けに演奏するなど、今日倒れても後悔はないといった感じで全身全霊をかけてステージを動き回るメンバー。そして、本編ラストには「フラッシュバック」を。曲の演奏後、全てをやり切ったという表情で袖にはけていった彼らに客席からは大きな拍手が贈られたのだった。

と、ここでライヴが終わるわけもなく。R指定のワンマンはアンコールからが本番といっても過言ではない。その証拠に、さっきまで「暑い、暑い」と呪文のように唱えていたメンバーだが、ステージに戻ってくるなり再び元気を取り戻す。その様子を確認した客席も、本編より大きな歓声でメンバーの名前を呼んでいく。「アンコールありがとうございます。みんなすごいですね、スタミナあるね。こんなこと言うのもなんだけど、若いってすごいね。いや、俺らも若いよ。まだ14才だし!」と茶目っ気たっぷりに話すマモ。開放的な空間も手伝っていつになく饒舌である。「いやー、いいですね。こうやってゆっくり野外で話をすることもなかなかないんで。僕、夏が大嫌いなんですよ。汗をかくことが苦手で野外ライヴも嫌いなんですけど、一昨年ここで<スーサイドサマーキラーズ2>をやったんですよ。そのとき、一生、野外ライヴなんてやらねぇよって思ったんです。……今日も同じこと思いました」と客席の笑いを誘う。


「よっしゃ。(座席から)立て、お前ら! 最低で最高な夏の思い出作ろうか! いくぞー!」と本編以上に気合いを入れてアンコールを進めていく。とりわけ目立ったのは、日が陰ってきた頃に演奏された「オレンジ」だろうか。イントロ部分でバックドロップ幕がサッと落とされると、色とりどりの照明が出現。すると、ひとつひとつの光がメンバーを華やかに映し出した。そこから畳み掛けるような勢いで「NEVADA」と「魅惑のサマーキラーズ」を披露すると、「大阪おおきに! 最低で最高な夏の1日になりました!」とライヴを締め括ったのだった。  


なお、この日はダブルアンコールまで用意されていたのだが、そこではメンバー全員が順番に客席に降りて指定女子と指定男子と鬼ごっこを繰り広げるという「修羅場」な一幕があったことも追記しておきたい。それはまるで羊の大群に追われる牧羊犬、いやそんな可愛らしいものではない。海外ドラマ『ウォーキング・デッド』さながらの惨事が服部緑地野外音楽堂にて繰り広げられたのだった。自ら発信したにもかかわらず、「半端ないよ、怖いわぁ。これ、どういうライヴ!?」とマモは首を傾げながら感想を述べていたが、メンバーでさえ何が起きるか予測不可能なのがR指定のライヴだ。だからこそ、何度観ても面白いし、これはもう来年も<スーサイドサマーキラーズ4>をやるしかない。そして、できることなら、野外の会場で開催されることを願っている。




取材・文◎水谷エリ
撮影◎菅沼 剛弘

◆R指定 オフィシャルサイト
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