【インタビュー】DIR EN GREY、30thシングルは10分越えの大作「アルバムの最後のピース」

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アルバム『The Insulated World』から約1年。DIR EN GREYが9月18日、ニューシングル「The World of Mercy」をリリースする。シングルとはいえ、10分を超える大作は静から動へといった展開だけではなく、空間を形作る音質も含めて、物語性が表現されている。そこから突き付けられる“生きる”という現実。この時代に、じっくりと向き合うべき一曲の完成だ。奇しくも、彼らにとって30枚目となるシングルは、ミュージックビデオやアートワークにもメンバー自身が深く携わっており、彼らが築き上げてきた世界観を、あらゆる角度から感じることができる。

◆DIR EN GREY 画像

タイトルチューンは、薫とShinyaによるそれぞれの原曲を“長尺”というテーマのもとに、ひとつにしたもの。前述したように、結果「The World of Mercy」という楽曲には、全編にわたる大いなるうねりが壮大なドラマを描き出した。ミックスはDan Lancaster、マスタリングはBrian“Big Bass”Gardnerが担当。こだわり抜いた音作りについて、今作が持つ意味合いについて、バンドを代表してDieとToshiyaに語ってもらった。唯一無二のバンドの飽くなき挑戦に驚嘆してほしい。

   ◆   ◆   ◆

■アルバムを出してからの一歩
■というイメージではない

──表題曲「The World of Mercy」は、10分を超える壮大な仕上がりになりましたが、ここに至った経緯を教えていただけますか?

Die:まず、シングルをリリースするとなって、“どういうものを出していくか?”っていう話をしつつ。前作、前々作のシングルって、3分ちょっとでコンパクトにまとまっていましたから、また同じような方向性でいくとなると、自分たちの中のシングルの定義を作ってしまうと思ったんで、そこは壊していかなきゃいけない。且つ、今の自分たちを表現できるもの、且つ、インパクトがあるものっていう……そんな中で、京くんから長い曲っていうアイデアが出てきて。

▲Die(G)

──長尺は京さんの提案だったんですか。

Die:ただ、長い曲って難しいんですよ。これまでも何曲かありましたけど、その中のひとつである「VINUSHKA」も、ライヴでの演出も含めて印象的な場面を作ってきた曲だから、それを超えないといけない。でも単純に、静と動は付けないとダメだよな、って思うけど、そうすると、どうしても同じような展開になってしまうんですよね。だから……すごく、ぼんやりしました。長尺って決めたけど、どっから手を付けて、どうやって作っていって、どういったものにすればいいんだろう?って。取っかかりとしては、長尺と決める前に曲出しした時の、3分とか4分の曲を、2曲くっ付けたような感じなんですけどね。

──アルバム『The Insulated World』とは、タイトルもシンクロしていますけれど、関連性を意識したところはあるんでしょうか?

Die:個人的には考えていなかったですね。リリースツアーも1回まわったぐらいですし、それを踏まえて作ろうかっていうわけでもなかった。長尺って決まった時点で、それに対してどう作るか?っていうだけでしたね。バンドとしては、もっと身体で感じられるもの、グルーヴできるものっていうところは、このシングルだけじゃなく、ライヴでも作品でも突き詰めていきたいっていうのはあります。

──Toshiyaさんはいかがですか?

Toshiya:シングルをリリースするとなった時に、タイミングとかを踏まえて、どうしても意味合いを考えてしまうんです。特に近年、シングルに対する意味合いが変わってきたと思っていて。タイアップでもない限り、シングルって成り立たせにくいとは、個人的に思っているんです。ただ今回、長尺っていうキーワードが出てきたんで、自分としては、これを意味合いにしようと思いました。シングルって、ビジネス的にもインパクトが必要だと思うので。こういうふうに、あまり他のアーティストさんができないことができるっていうのが、自分たちの強みですし。でも、長尺って……。どの曲もラクにはできないんですけど、長尺となると2曲3曲ぶんの労力が必要になるんですよね。ある意味、苦肉の策でもあったんです、ふたつの曲をひとつにするっていうのは。

▲Toshiya(B)

──はい。

Toshiya:ただ、どちらかひとつでは、しっくりこなかった。どちらもいいところがあるし、でも決め手には欠けるっていう。そこらへんが1曲にまとめることで満たされて。また、『The Insulated World』との関連性としては、どうしてもどっかで繋げたいところもあって、自分としては、この曲がアルバムの最後のピースかなと思っています。新たな一歩の曲でもあるんですけど、“アルバムを出してからの一歩”というイメージではなかったんです、俺の中では。制作はツアー中だったし、その中で生まれた『The Insulated World』の最後の1曲かなって。

──シングルとして出す意味、今の自分たちが出す意味、『The Insulated World』の後に出す意味、全てを満たした『The World of Mercy』ということですよね。DIR EN GREYは簡単な道を選ばないバンドなのだと改めて思います。

Toshiya:簡単にやれないんでしょうね、この5人は(笑)。

Die:これで確実に、次のアルバムのリリースが伸びましたね(笑)。この制作で半年はかかっているわけですから。やろうと思えば、アルバム半分くらい作れましたよ。むしろアルバムのほうが、何曲か並行して制作するから、視点を変えていけるので。シングルは一点集中だから、立ち止まっては振り返り、立ち止まっては振り返りだったので、これくらいかかってしまったのかもしれないです。

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