【ライヴレポート】シド、ホールツアー開幕「いつもとはひと味もふた味も違う」

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シドの全国ホールツアー<SID TOUR 2019 -承認欲求->が9月13日および14日、千葉県松戸・森のホール21にてスタートした。同ツアーの幕開けとなった初日ID-S限定公演に続いて、その翌日14日に行われたツアー2日目のレポートをお届けしたい。

◆シド 画像

<SID TOUR 2019 -承認欲求->は最新アルバム『承認欲求』を携えて行なうもので、シドがホールツアーを開催するのは<SID TOUR 2017「NOMAD」>以来、約2年ぶりとなる。その期待感からか、東京近郊の公演チケットは発売後すぐにソールドアウト。そのため、全国12ヵ所16公演を行なう本ツアーに加え、新たに追加公演として11月21日の東京国際フォーラム ホールAにて<SID TOUR 2019 -承認欲求- FINAL>を開催することを発表した。結成15周年のアニバーサリーイヤーを横浜アリーナという大舞台できらびやかに締めくくった彼らだが、“俺らはこんなもんじゃ終わらないし、だからこそまだまだ新しいシドの可能性を追い求めていく”──そんなバンドの野心と未来を見据えた覚悟を感じたライヴだった。

<SID TOUR 2019 -承認欲求->の2日目。ステージ上で、シドは予想外のライヴを行なっていた。楽しいだけじゃない、暴れるだけじゃない、聴き入るだけでもない。観終わった後にこんなにも考えさせられるツアーは、おそらくシド史上初の試みだろう。ファンならきっと、メンバーから「こんなシドのライヴ、アナタは“あり”ですか?」と承認を求められているような気分になるはずだ。それほどまで、シドに対して抱いていたこれまでのライヴ観をぶち壊す、とてつもなく挑戦的で衝撃に満ち溢れたステージがそこでは展開されていたのだ。

まず<SID TOUR 2019 -承認欲求->において、特筆すべき点は、演出、セットリストの選曲を含め、ライヴ全体が徹底してアルバム『承認欲求』の世界観とテーマを貫いたものになっているというところだ。ライヴを観ている間は頭のなかに何度も様々なクエスチョンマークが浮かんで疑問を抱き、答えを探し求め、ライヴを鑑賞し終わった後も、その深い余韻におそわれる。このライヴをどう観たのか、さらにアルバム『承認欲求』を聴き返したとき、あらためて今作をどう自分は捉えたのか。そこに、ライヴを鑑賞したことでしか生まれ得ない“メッセージ”が介在していくというのが今回のツアーのあり方だ。そして、これがシドが新しく提示してきた“考えさせるライヴ”最大の特徴のように思う。

このようなライヴを表現するために、本ツアーはホールならではの見せ方として、紗幕や立体的なセットを使用、ライヴ冒頭や曲中、さらには次の曲へと転換する瞬間まで、至るところに“文字”をメインに映像を映し出すプロジェクションマッピングの演出がほどこされていた。なので、いつものように大歓声を受けながら、ゆうや(Dr)、明希(B)、Shinji(G)に続けて、マオ(Vo)が現れるというにぎやかな登場シーンもなく、ライヴはオープニング映像からいきなりオーディエンスを『承認欲求』の世界へと淡々と引き込んでいく。そうして演奏が始まるやいなや、観客たちはステージにいるメンバーと次々と目に飛び込んでくる文字、その2つを同時進行で追いながらライヴを鑑賞していくことになるのだ。

マオは最初のMCで、その新しいアクトを目を凝らしてじっと見つめるファンに「いつもとはひと味もふた味も違ったシド。最後までよろしくね」と笑顔で声をかけ、張り詰めた緊張感を解いていった。その後も、彼らは次々とアルバム『承認欲求』収録曲をプレイしていき、最終的にはアンコールも含め、このライヴを通じてアルバム収録曲すべてを披露した。

『承認欲求』は、いろんな音を重ねるよりも、引き算でよりシンプルなサウンドへと向かうシドが浮き彫りになったアルバムだった。そのサウンド感を反映した「淡い足跡」は、ライヴでは淡々としたバンドアンサンブルに脈打つ3人の熟練した音のスケッチに、マオの心地よい歌声が重なり、17年目のシドだからこそできる奥行きのある伸びやかな音空間を描いてみせた。それとは対照的だったのがエモーショナルなバラード「涙雨」のアクトだ。地を揺らすようなリズムで、バンドサウンドがダイナミックな音像で解き放たれていく瞬間は迫力満点。その上で、マオがエモーショナルな歌で切々と観客の心を鷲掴みにしていくと、会場は息を飲むようにその展開に没頭していった。

また、文字の演出が加わったことで、アルバムで聴くのとライヴでは楽曲の意味合い、印象が変わった曲もあった。例えば、不思議な旋律が印象的なバラード「手」などは、演奏前に観客に語りかけるような口調で綴られたメッセージを文字で見せることで、この楽曲の温かみがより際立つ。激し目のロックチューン「Trick」は、ゆうやがクラップを求め、その後マオが「カモーン」と叫ぶと歌詞の文字がステージ上で激しく飛び交い、それに合わせて客席にはどんどん拳が広がり、音源以上にスリリングな盛り上がりを作っていった。

さらに、CDでは打ち込みを使っていた「ポジティブの魔法」、「デアイ=キセキ」もライヴでは生演奏にアレンジされていて、どちらの曲も、演奏が始まったとたんに場内にピースフルな空気が広がっていったのが印象的だった。これらのアルバム曲のなかにフィーチャーしていく過去曲のチョイスも秀逸で、なかでも「妄想日記」は、今回のアルバムの世界観に見事にハマっていて、曲の脅威が倍増して聴こえてきた。

こうして、ライヴはアルバムの世界観をとことん貫きながらも、もちろん「Dear Tokyo」をはじめとしたおなじみのライヴ定番曲で盛り上げていくパートもちゃんとある。そこでは、観客たちはいつものようにコール&レスポンスやシンガロングを繰り広げ、ボルテージをあげながら一丸となってスパークしていく。

シドならではの気取らないメンバートークも健在だ。この日は、とくにShinjiが絶好調で「承認欲求は僕にもあります」といって、それなのに自分のスマホやiPadは顔をかざしても自分だと承認してくれず開かないことがよくあるのだと伝えると、横からマオが即座に「Shinji、それ承認じゃなくて“認証”だから。顔認証!」と突っ込む。だが、この日のShinjiはそれに「でも、業界人は(言葉を)逆にいったりするでしょ?」と奇跡の切り返しをしてみせ、みんなを大いに笑わせていた。

その後、アンコールの最後まで新しいシドで観客を魅了していった4人。マオは「最高に気持ちいいライヴをありがとう」と集まってくれたファンに感謝の気持ちを伝えた後、「「涙雨」を歌ってる最中、俺は歌の世界に入ってるんだけど、今日は歌い終わった後、すすり泣く声が聴こえてきて。“俺はまだ人の心を動かせる歌が歌えるんだ”“まだやれるんだ”と思ったとき、俺の承認欲求が満たされました」と心の内を打ち明けた。

ファンだからこそ理解できるその想いの深さに、そっと涙を流す観客たち。だが、その涙をさえぎるように「でも、まだまだ俺は満足してません。ヴォーカリストとして、シドとしてもっと上を目指すんで、よかったらこれからもついてきてください」と力強い言葉を残して、この日のステージを終えた。

結成16年を迎え、『承認欲求』というアルバムと本ツアーで新たなスタートをきったシド。この後行なう全国ツアーで、ぜひともこの新しいシドのライヴを体感してみて欲しい。このツアーをどう判断するのか、さらにアルバム『承認欲求』が問いかける本質とはいったいなんなのか。ライヴを観覧した後その答えを考え、11月21日のツアーファイナルとなる追加公演で、その答え合わせをしてみてほしい。

取材・文◎東條祥惠
撮影◎今元秀明

■ホールツアー<SID TOUR 2019 -承認欲求->

09月13日(金) 千葉・松戸 森のホール21 ~ID-S限定LIVE~
open17:30 / start18:30
09月14日(土) 千葉・松戸 森のホール21
open15:00 / start16:00
09月23日(月・祝) 群馬・ベイシア文化ホール(群馬県民会館)
open17:00 / start18:00
09月25日(水) 神奈川・カルッツかわさき
open17:30 / start18:30
10月05日(土) 宮城・東京エレクトロンホール宮城
open17:00 / start18:00
10月12日(土) 埼玉・大宮ソニックシティ
open17:00 / start18:00
10月14日(月・祝) 岡山・岡山市民会館
open17:00 / start18:00
10月19日(土) 大阪・大阪国際会議場 メインホール
open17:00 / start18:00
10月20日(日) 大阪・大阪国際会議場 メインホール
open15:00 / start16:00
10月22日(火・休) 福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
open17:00 / start18:00
11月02日(土) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
open17:00 / start18:00
11月03日(日・祝) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
open15:00 / start16:00
11月05日(火) 東京・中野サンプラザホール
open17:30 / start18:30
11月06日(水) 東京・中野サンプラザホール
open17:30 / start18:30
11月09日(土) 新潟・新潟テルサ
open17:00 / start18:00
11月13日(水) 北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
open17:30 / start18:30
▼チケット
全席指定 ¥7,500(税込)
※4才以上有料

■ホールツアー<SID TOUR 2019 -承認欲求- FINAL>

2019年11月21日(木) 東京国際フォーラム ホールA
open17:30 / start18:30
▼チケット
全席指定 ¥7,500(税込)
※4才以上有料
一般発売:2019年10月13日(日)
【ID-S BASIC3次先行予約】
受付期間:9月25日(水)12:00〜10月1日(火)16:00
※9月23日(月・祝)時点でID-S BASIC会員の方が対象となります。

■アルバム『承認欲求』

2019年9月4日発売

▲初回生産限定盤A

▲初回生産限定盤B

▲通常盤

【初回生産限定盤A (CD+DVD)】KSCL-3180/1 ¥3,611+税
▼DVD収録内容
・承認欲求 -Music Video-
・承認欲求 -Photo Session-
【初回生産限定盤B (CD+写真集)】KSCL-3182/3 ¥3,611+税
▼写真集
・32P撮り下ろしフォトブック付
【通常盤 (CD)】KSCL-3184 ¥2,870+税
▼封入特典:初回生産限定盤A・B、通常盤(初回仕様分)
・「承認欲求」購入者対象握手会参加券
<収録曲>※初回生産限定盤/通常盤とも同様
01. 承認欲求
02. Blood Vessel
03. 手
04. デアイ=キセキ
05. see through
06. ポジティブの魔法
07. 淡い足跡
08. Trick
09. 涙雨
10. 君色の朝

■マオ from SID 恒例クリスマスライブ情報

■<X'mas Acoustic Live 2019>
12月11日(水) 日本橋三井ホール
・1st SHOW:箸休め Silent Night
 open16:00 / start16:30
・2nd SHOW:箸休め Holy Night
 open19:00 / start19:30
※国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン
https://worldvision.jp/about/celebrity_supporter.html#12

■<X'mas Premium Live 2019>
12月12日(木) 日本橋三井ホール
・1st SHOW:Premium Silent Night
 open16:00 / start16:30
・2nd SHOW:Premium Holy Night
 open19:00 / start19:30

▼チケット
一般発売:9月1日(日)
(問)キョードー東京 0570-550-799

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