【インタビュー】sleepyhead「得意なこと、カッコいいことを突き詰めようって心が晴れた」

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■映画の最後に流れるエンドロールって内容を反芻する時間で
■そこからまた新しい自分になるという感覚があった


──「endroll feat. 山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)」は武瑠さんから声をかけて「一緒に作ろうよ」と?

武瑠:そうですね。成長過程の意味あいと音楽的にもっとレベルを上げたいと思っていたこともあって、実験的な場が欲しかったんです。「endroll」はタイトルと公開されているMVのイメージがあった上でやまたくとittiというトラックメーカーと3人で「どういう感じにする?」って話して作った曲。ittiがまずリズムトラックを作って、やまたくがそれにコードとメロディをつけて最後に俺が歌詞を書くっていう。

──3人で共有したイメージは?

武瑠:“陽はまた昇り繰り返す”みたいな。映画の最後に流れるエンドロールって自分にとっては内容を反芻する時間で、そこからまた新しい自分になるという感覚があったのでスタート的な意味あいで作っていますね。

──エンドロールなのに始まりの曲とも受け取れるのはそういうことだったんですね。ギターのアルペジオから始まって想像がつかない展開をする曲で、音の広がりと武瑠さんと山中さんのボーカルのコラボが美しい。

武瑠:やまたくの声が太くてローとミドルが特徴的なのに対して、自分は息の成分とかハイの部分が強い声なので重なったときに、お互い邪魔しないというか心地いいんですよね。やまたくがアレンジもしている曲なんですけど、自分だったらここまでギターを入れないっていうアプローチをしてくれて、ittiのトラックとめちゃくちゃ相性がいいなと思いました。テクノで無機質なサウンドに多くの人が心を掴まれるやまたくのキャッチーなメロディがカチッとハマって、作る過程も楽しかったです。誘う以上はいままでやまたくがやったことがない空気の曲にしたかったので。

──ittiさんはドラムンベースのDJなんですよね。

武瑠:そう。クロアチアのフェスとかに出てる謎の日本人なんですけど7~8年来の友達で今回、がっつりオファーさせてもらって。

──歌詞の“憧憬は今も明日への道標”はつねに思っていることなんですか?

武瑠:いつも忘れちゃうことなんだけど、結局、原動力になっているのは自分がカッコいいって憧れる世界観だなって。さっき話したように「こうしたほうがいろんな人たちに届く」とか「話題になったほうが勝ち」みたいな邪念に惑わされたりするけど、自分の中の純粋な声に耳を傾けたら「カッコいいことをやってカッコいいって思われないと結局、楽しくないんだよな」って。


──立ち戻る想いなんですね。今作はittiさんがトラックを手がけたインスト「doors」で始まりますが、映画のオープニング曲みたいな立体感と迫力がありますね。

武瑠:ittiはホントに面白くて音楽をまったく知らないのにDJをやってたヤツなんですよ。メジャーデビューした頃、俺、毎週ファッション系のパーティやっているようなクラブに行ってたんですけど、当時そこに出入りしてた人がいまはみんなブランドやってたり、VJになったりしてるんです。プロディジーのメンバーやBIG BANGも来てたりとか。そこでittiがDJをやっていて当時からカッコいいなと思っていたんですけど、しばらく連絡とらないうちにプロになっていて、イギリスのレーベルから出ている音源を聴いたら「こんなに進化してるんだ?」って。で、連絡して「ちょっとやってよ」っていう流れで前作に収録されている「heartbreaker」に参加してもらったら、メガトンパンチなサウンドでギターがなくてもここまで盛り上がれるんだって思ったんですよね。

──ドラムンベースでもかなりダークな世界観ですよね?

武瑠:めっちゃダークですね。それこそ日本じゃ絶対売れないでしょっていう(笑)。音色選びがとてつもなく上手いんですよね。

──そんなiitiさんと武瑠さんの化学反応が刺激的な3曲目の「dark side beach」はキテるというか、とがってるなと思いましたよ。

武瑠:ははは。この曲はittiのリズムトラックありきで俺がコードとメロディをつけたんですけど、マジで挑戦ですね。これからの自分の指針に繋がる曲で、自分の中ではめちゃくちゃカッコいい曲。

──カッコいいです。日本のポップシーンでは間違いなく異色だけど。

武瑠:でもsleepyheadならイケそうな感じはするんですよ。音楽が主役というよりレーザーとかの照明や映像と合わせたらさらにカッコよくなるだろうなって。ツアーファイナルのBLITZに向けて絶対に必要な曲ですね。

──タイトルに“beach”ってついてるけど密室感ハンパないです(笑)。

武瑠:前回のツアーが終わったあとハワイに行ってみたんですよ。子供の頃に一度行ったことあるんだけどつまらなかった印象があって、今回行ってみたらやっぱりそんなに面白くなかった。自分に合ってないんですよね。


──ハワイのどこがピンと来ないんでしょう?

武瑠:うーん。日本人ばっかりだし、タイのビーチのほうが面白いなって。しかも向こうで救急車呼ぼうかと思ったほど体調が悪くなって急性腸炎で入院したんですよ。せっかくハワイに来たのに毎日点滴打って、夜の暗い海を「自然って怖いな」って違うベクトルで見てて(笑)。

──だからこんな暗黒ビートの曲が生まれたわけですね。

武瑠:そう。せっかくならこの経験を無駄にしないようにしようってハワイでベースのリフを考えてボイスメモに録音して日本に帰ってittiに投げて。

──南国で災難に見舞われてもただでは転ばなかった。

武瑠:それからいろんな体験しようと思って毎月、どこかに旅行しようかなってモードになっています。この前も香川県の直島に行ってきたんですけど、島自体がアートですごく良かった。そこで知り合った人に無人島に連れていってもらって映像もいっぱい撮ってきたんですけど、スマホばっかり見ていたらホントに世界が小さくなってきちゃうなって。画面の地図だけで完結しちゃうのは危ない。いまは情報勝負の時代って叫ばれてるけど、自分は情報と感性の掛け算だなと思っているので、感性を狭めたくないなと思いました。

──確かにその通りですよね。そして4曲目「bedside」はR&Bテイストで武瑠さんらしい切なくメロディアスなラブソングです。

武瑠:自分がいちばん得意とするタイプの曲ですね。こういうテイストの曲はストックにたくさんあるんですけど、『endroll』というタイトルに決まった時点でキャッチーな曲を入れたいなって。

──歌詞にも“流れない今日もエンドロール”って出てくるので繋げた部分もあるのかなって。

武瑠:そうですね。歌詞は出だしの“ベッドサイドに忘れてきたのは 伝えようとしたハズの「さよなら」”っていうところから書いたんです。前作に入っていた曲「akubi_girl」はいちばん再生数が多くて、関係者からも「こっちをタイトル曲にしたほうが良かったんじゃない?」って言われたんですけど、自分の声や感性に合っているのかなって。それで試しに「akubi_girl」のコード進行をそのまま使ってみようと思って作ったのが「bedside」です。

──コード進行が同じなんですか?

武瑠:全く一緒です。イントロもサビもAメロもBメロも。構成もあえて似せています。いわゆるR&Bの王道のコード進行なんですけど、メロディとアレンジとテンポ感でこんなに変わるんだと思った曲です。

──今作がさっき話してくれたアルバムに繋がっていくイメージですか?

武瑠:そう。ただ現状、EPに入れた曲はアルバムには入れない方向で考えてます。いちばん得意な音楽を詰め込もうと思っているんですけど、踊れる曲とダークな曲のバランスをどうしようかなって考えているところです。リリースは1年ぐらい先になる予定なんですけどね。

──10月からスタートするツアーのファイナルはsleepyhead史上、最も大きな会場となるマイナビBLITZ赤坂ですね。

武瑠:そうなんですよ。最初はノンジャンルでソロでBLITZでしかも平日ってムリじゃない?って思ってたんですけど、決め手はBLITZがライブ営業を終了することを知ったからですね。「じゃあ、やっとくか」って。SuGのメジャーデビュー後、初のツアーのファイナルもBLITZだったし、THE ORAL CIGARETTESのライブを初めて見たのも、昔MIYAVIさんのライブを見て悔しくて泣いたのもBLITZ。思い入れが強くて音もいい会場なのでこれは「挑戦しろ」っていうタイミングなのかなと。大きな会場でぶっとんだことやろうと思っています。

──3D音楽のクリエイター、武瑠さんの全てを注ぎ込むような。

武瑠:ツアーで曲を育てて臨みたいですね。いま考えているのはダンサー50人ぐらい呼ぼうかなって。セットも映像も照明もこだわって、ひとりの強みを活かしてツアーの収益金をすべて使うような見せ方をしたいと思っています。

取材・文●山本弘子


リリース情報

3rd EP『endroll』
2019.9.25 Release
SACT-0008 ¥1,800 (税抜価格)+税
1.doors
2.endroll
3.dark side beach
4.bedside

ライブ・イベント情報

<sleepyhead LIVE TOUR 2019>
2019/10/14[月/祝] 横浜Baysis
2019/10/19[土] DOMe柏
2019/10/22[火/祝] 下北沢 BasementBar
2019/10/26[土] 前橋ダイバー
2019/11/2[土] 名古屋 ライブホール M.I.D
2019/11/3[日] 梅田 Zeela

<sleepyhead LIVE TOUR 2019 FINAL>
2019/11/21[木] マイナビBLITZ赤坂

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