【インタビュー】宇宙大使、「<朝霧JAM>には、お金じゃ作れない熟成された価値がある」

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<FUJI ROCK FESTIVAL>や<朝霧JAM>をはじめ、<RISING SUN ROCK FESTIVAL><ROCK IN JAPAN FESTIVAL><Japan Jam><阿蘇ロック・フェスティバル>などの名だたる音楽フェスのオフィシャル・カメラマンである宇宙大使☆スター氏の名や作品を知る人は多いと思うが、実のところ“宇宙大使”は3人存在する。

筆者が初めて彼らと出逢ったのは<朝霧JAM>にある丘の上の「宇宙大使マザーシップ『PhotoSpot』」だった。その名の通り、彼らとその仲間たちによって創られた空間では富士山の美しい全景を収める写真撮影を無料で代行してもらえる他、髪をフェス仕様に仕立ててくれる青空美容室があり、フェスをより楽しみたい来場者とその手伝いを買って出るオシャレな前掛けをした人たちとが、和やかに、そしてゆったりと交流していた。音楽フェスにかかわらず、昨今あまり触れる機会がなくなってしまった人と人とが交わるそうした情景はとても素敵だったのだが、後に彼らがそれを仕事でやっていたわけではないと知って彼らにますます興味を持ったし、謎が深まった。

音楽とキャンプを楽しむフェス<朝霧JAM>に自分たちの遊びを加えてとことん楽しむ遊びの達人“宇宙大使”とは何者で、どんな経緯で現在の参加スタイルへと辿り着いたのかを解き明かすため、指定された多摩川河川敷へと向かった。夕暮れ迫るそこには明らかに人目を引く三角形の木のフレームで創られた謎の空間があり、その中に彼らはいた。

  ◆  ◆  ◆

【宇宙大使プロフィール】



<宇宙大使☆スター>
フォトグラファー。
普段は、音楽聴きながら焚き火して、獲れた食材を焼いて食し、温泉へ行って、地球のパワーを感じてます。そんな中、素敵なシーンで常に写真を撮り続けているフォトグラファー。生活にもっと写真を、をモットーに。

<宇宙大使◯ムーン>
椅子職人。
最近の好きなことは、笹塚にある玉川上水の水位を観て楽しんでます。チョロチョロと流れるとこを観ると「がんばれーっ」てなります。

<宇宙大使◎ソーラー>
デザイナー。
ウェブを中心にデザインをしています。普段は、身の丈にちょうど良いイベントを主催して家族や友だちと愉快な時間を重ねています。他には身近にいる魚や虫、草木を観察して新たな発見をすること、父と共作した木板(仮称:PARTY BOARD)に料理をレイアウトして食事を楽しんでいます。

  ◆  ◆  ◆

■ 宇宙から様子を見に来て楽しくてまだいます



── この建物は?

◎ソーラー:これは僕が創ったものです。どうぞ、中へ。さっき子どもが入ろうとして入れなかったんですよ。宇宙のパワーが強すぎて。

── えっと、さっそくですが、いつから宇宙大使に?

☆スター:朝霧へ行く前だから2002年じゃない?

◎ソーラー:<Electraglide>あたりだよね。イベントを盛り上げるのにちょっと工夫したくて、地球人ではなく宇宙の人たちという設定で。

☆スター:いつも3人でイベントとか行ってたからチーム名っていうか、なんかやろうってことでアンバサダーに。宇宙から様子を見に来て楽しくてまだいます、みたいな。



── 楽しく17年が経過した、と。もともとの関係性は?

○ムーン:近所の呑み仲間(笑)。

◎ソーラー:仕事も何も関係なく、すぐそこにあるバーで毎晩8時くらいから夜中の3時頃まで呑みまくっていて仲良くなったんです。

☆スター:だから多摩川は宇宙大使の聖地。ここで出会って発展し、育っていった(笑)。初めて<朝霧JAM>に行ったのもこの3人でしたね。

◎ソーラー:第一印象がめちゃくちゃ良かったんだよね、朝霧は。

☆スター:行く車からウキウキだったもんね。

○ムーン:すごい良かったねえ。

── それはいつですか?

◎ソーラー:2003年かな。僕らを引き合わせてくれた友達の仲間とも一緒に食べたり呑んだりして仲良くなったんです。人との出逢い方が良かったという印象もあるな。

▲右から宇宙大使☆スター、宇宙大使◎ソーラー、宇宙大使○ムーン


── 最初は客として参加した<朝霧JAM>。しかし現在、スターさんはオフィシャル・カメラマンであり、場内には皆さんの名が付いた『宇宙大使マザーシップ』が設けられるなど、フェスとの関係性が大きく変化されていますよね。今回、主催者であるSMASHに宇宙大使との関わりについて取材したところ、「どうやらこいつらは遊びの達人らしい、オモロいやつらだ、ステキなクリエイターだ!」と発見当時の様子を聞きました。どんな経緯で現在に至ったのでしょうか?

☆スター:きっかけになったのは、2人(ソーラーとスター)で勝手に<朝霧JAM>の写真サイトを作ったこと。それもただ写真を並べるんじゃなくて、写真をしっかり見せようってことで本格的に。クオリティのすっごい高いものをただのお客さんが作るっていうのが面白いじゃないですか。

◎ソーラー:朝霧は24時間楽しいから、アクセスした人にそれを感じてもらえるようにサイト上の空の色を24時間変えるようにしたりね。その自分たちが作った写真サイトのURLを「良かったら見てくださいね」という程度の気持ちで<朝霧JAM>のネット掲示板に貼り付けたんですよ。それをSMASHが見つけてくれて、公式サイトからリンクさせてほしいというお話でした。

── どう思いました?

◎ソーラー:嬉しかったですよ。「面白いじゃん!」って盛り上がって。

☆スター:呑みまくったもんね。「この形を主催が認めたってことは。SMASHわかってんじゃん」って(笑)。

── それはいつ頃ですか?

☆スター:2003年の本番から3ヶ月後くらい。それで「呑みに行きましょう」って言われて僕らが毎日呑んでいたバーで会って呑んで。翌年は仕事としてオファーをいただきました。

── スターさんはもともとカメラマンだったんですか? 

☆スター:そうです。でもその頃のフェスの写真はライブステージの写真ばっかりで、どんなところでフェスが行われているのかが分からないものばかりだったんですよ。<朝霧JAM>へ行ったら想像と全然違う素晴らしい空間だったから、「これはみんなに知らせなきゃ」と思って写真を撮って。フィルムで撮ってたのでそのベタがあがってからの一ヶ月くらいは、毎日印画紙を見ながら「朝霧、ほんといいよね!」って呑んでました(笑)。その中で「じゃあ写真サイト作っちゃおうぜ」ってことになり、ソーラーがウェブのデザイナーだから…。

◎ソーラー:「やります」と勝手に作って。それから<朝霧JAM>の会場の雰囲気作りとして、僕のイベント<OHAYO CAFÉ>で使っている、これ(三角形の木のフレーム)を組んで作る球体のドームを出してほしいと言われて、CARNIVAL STARが奥にあった頃に出していました。その中で僕らは過ごしていたんですけど、あの場がなくなるからドームは出せなくなったと言われたので違うことを考えた。それが「宇宙大使マザーシップ『PhotoSpot』」です。

○ムーン:あれはいいタイミングだったよね。偶然だけど。

☆スター:写真つながりっていうのもあったよね。

◎ソーラー:スターはカメラマンとして参加していたけれど僕らも何か続けたかったし、<朝霧JAM>を知らない人にも写真を撮ることを通して<朝霧JAM>を認知してもらうことにつながる何かを現場でできないかなと考えて提案して。ロゴパネルを持って撮影するのはどこでもあるけど、「こっちで撮ってあげます」みたいなのは朝霧には合わないから、僕のカメラでも私のスマホでもという風にお客さんの写真を代行して撮ってあげますよっていうアイディアにしました。

── 代行というアイディアは面白いですね。

◎ソーラー:本来ならお客さん同士で会話して成立する話なんだけど、やったら喜んでくれたんだよね。皆さんの思い出になればいいし、次に来る理由になればいい。もちろん世の中にも<朝霧JAM>を知ってもらいたいので写真を撮ってシェアしてもらうっていうのもあるんですけど、そのやりとりが楽しいかどうかが大事なところじゃないかな。フジロックでも感じたんですけど、しゃべりたい人がめちゃくちゃいっぱいいるんですよ。僕らはフワ〜っとやってるんで忙しい感じのスタッフではないから、ちょっと質問しに来たついでに何か話されると僕も返すから盛り上がる。本当は会話することもお客さん同士でできたらいいけど、そういう要求にも応えていきたいなって。

── 昨年、そこで順番を待つ長蛇の列に並んだ人たちが笑顔でゆったりと待っているのを見て衝撃を受けました。日本に列は多々あれど、誰も怒らずにニコニコ待っていられる列がどれだけあるのかと考えたら「これはすごいことだぞ」と。

○ムーン:余裕があるんでしょうね。待ってもいいし、風景もいろんな動きがあるから。

☆スター:業務じゃなくて、みんなでやってるからね。フォトスポットがあってもフェスによってはテープとかで「ここに並んで」っていうのもある中で、勝手に自治ができているというか、お客さん同士でいろいろ創り上げていくみたいなのは<朝霧JAM>ならでは。

◎ソーラー:あとは富士山バックなんで、家族連れの人は「今年も来ました」みたいな感じで翌年の年賀状にしてくれているようです。こちらで用意した“元旦”や“賀正”などのパネルを選んで持って撮る。そういうのがお客さん同士の口コミやInstagramで広まっていって、「違う仲間連れてきました!」と、1日に何回も来る人もいて。そういう人に「ちょっと整列をお願いしても?」って言うと「いいよ」とやってくれたりする。そういう感じがいいなと思うし、好きですね。

── スターさんの撮影による来場者集合写真。あれは口コミですか?

☆スター:口コミかその場に居る人だけですね。それがいいなあと思って。土曜にするかも日曜にするかも天気次第。昔は、フェスでプログラムにないことがあったんですよね。<RISING>もマップにも載ってないステージがあって誰が出るかもわかんないとかあったけど、今は全部プログラムになっちゃってる。


◎ソーラー:全部プログラムにあるのは面白くないと思うんですよ。たまたまそこにいてラッキーなのがいい。予定調和じゃないことが全体の中の何パーセントかあってもいいし、隣りにテントを立てた人との出逢いも楽しみましょうって思う。めんどくさいダメな人が隣りに来てもそれを楽しんだ方がいい。子どもを連れて来る人、おじいさん一人で来てる人、若者だけで来ている人もいる。いろんな世代の人が偶発的に集まったんだから、その人たちでどう楽しむかを作るほうが奇跡的でいいから。

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