【インタビュー】Mummy-D「ラッパーがジジイでもやれるってことを証明したい」桑名市PRソングという“挑戦”

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■この曲にかけた俺の気合いはヤバい。マジで出し切った(笑)。

──RHYMESTERは今47都道府県ツアーの真っ只中ですね。

Mummy-D:楽しいよ。今回のツアーはずっと出っ放しということじゃなくて、基本的に週末だけ各地に行ってるライヴしてるんだよね。だから毎回リフレッシュできる。とはいえ体力的には厳しい部分はある。俺は腰をやっちゃったし、宇多さんが倒れちゃったり。しかも、俺はまだ発表できないものも含めて、今20曲くらい並行して制作してるのよ。本来ツアーの時はツアーだけに集中したいんだけど、なかなかそうも言ってられなくてね。あと海外のアーティストはよく「ツアーバスの中で曲作りする」とかインタビューで言ってるじゃない? だから俺もやんなきゃいけないのかなって(笑)。とはいえ、それも含めて楽しいかな。

──今回は桑名市からオファーがあったわけですが、歴史&地理好きということが知れ渡ると各地から楽曲制作の依頼があるかもしれませんね。

Mummy-D:あはははは。どうだろうね。地方にライヴに行くとよく地元の人は「ここは何もないから……」って言うんだけど、俺からすると「いやいや全然違うよ。この土地にはこういう歴史があってね」と懇々と説明したくなるわけよ(笑)。いま栄えてようが、寂れてようが、どの土地にも必ず歴史はある。そしてそれは絶対に平坦じゃないんだよ。俺はどの土地にもラブとリスペクトを感じてる。今回の企画は、俺にとっても挑戦でさ。ラップを通じて歴史、町の面白さを知ってもらいたいという。

──Dさんが歴史を好きなのは、日本をレペゼン(代表)するラッパーとして自覚があるからですか?

Mummy-D:いやいやいや。ただ好きなだけ(笑)。調べたり、いろんな文献を読むのが楽しくてしょうがない。本当にどこ行っても楽しいよ。地図だけで酒飲めるレベル。

──そうだったんですね。僕はてっきりヒップホップ的アティチュードもあるのかと思ってました。

Mummy-D:そういうのだと疲れちゃうじゃん。でもね、この曲にかけた俺の気合いはヤバいよ。マジで出し切った(笑)。だから他の土地でも同じことができるかどうかはわからない。そもそも俺には手を抜くという概念がないんだよ。どの音を選べばより良くなるのか、どの音を抜くと曲がカッコ良くなるのか。それが仕事だからさ。中途半端な状態で発表して、それが通用しちゃうような天才ならいざ知らず、俺みたいなもんはいつも全力を尽くしてナンボなんですよ。


■「ラップゲーム」と「ラップミュージック」

──RHYMESTERが今年活動30周年なので、今年中にアルバムのリリースもあるんじゃないかな、と邪推しているんですが。

Mummy-D:まだ全然だね。本当にぼんやりとしたアイデアだけはあるけど。確かに次は活動30周年を記念したものになるだろうから、あまり肩肘張らずに曲作りしようとは思ってるよ。でも本格的に作り込んでいくのはこれからだね。

──日本語ラップの生き字引であるMummy-Dさんにとって現在の日本のヒップホップシーンはどのように映っていますか?

Mummy-D:俺がラップを始めた頃は、見本がいなかったから「生きてるうちに認められたら御の字」くらいに思ってた(笑)。でも今の子たちにとってラッパーはセレブでしょ。だからそういう成功体験に向けて頑張れるっていうのはちょっと羨ましくもある。でも一方で、何もないところから始めたからこそ味わえたピュアな感情というものもあってさ。だから俺らは何年経ってもパイオニアでいられる。そこに関してはラッキーだったと思うな。



──世界的に見ても、ヒップホップシーンには30年以上現役でいるラッパーはほとんどいません。そんな中でMummy-Dさんは今どんな思いで活動しているのでしょうか?

Mummy-D:最近になってようやく「俺はラッパーなんだな」って思うようになってきた。ラッパーとして生涯を全うするんだろうなって。ヒップホップって音楽の歴史の中では新しいジャンルだから、実はまだそんなにジジイがいないんだよね。ジェイ・Zは俺の一個上で、Qティップは同い年。つまり、この歳までラップを続けているやつの今後の活動いかんで、職業としてのラッパーの今後が決まるんだよね。日本に関して言えば、仮に俺が来年辞めちゃったら、「ラップは50歳までだよねって」「ラップは若い子だけがやるもんなんだね」ってことになっちゃう。でもでもジャズやロックにはジジイでもカッコいいミュージシャンがいるじゃない? 俺もそうなっていきたい。ラッパーが職業としてジジイでもやれるってことを証明したい。

──最後にMummy-Dさんにとってのラッパーとは何かを教えてください。

Mummy-D:今はラップが本当に多様化しているから、ラッパー像は人それぞれ違うとは思うけど、ラップには「ラップゲーム」と「ラップミュージック」という二つの側面がある。「ラップゲーム」は簡単に言うと勝ち上がりイズムだよね。一方の「ラップミュージック」は音楽家。いわゆるヒップホップファンは、この二つの要素をいろんなバランスで楽しんでるわけ。そこでいくと、俺は「ラップミュージック」の人。だから、たまに「RHYMESTERにはラップゲームの要素がない」と言われることがあるけど、こっちは端から違うんだよね(笑)。これは良し悪しの話じゃない。だってさ、Qティップに勝ち上がりイズムを要求しないでしょ? それと一緒よ。俺にとってのラッパーとはラップで素晴らしい音楽を作る人のことだね。

取材・文◎宮崎敬太

■関連情報:雑誌『Discover Japan』11月号

★Mummy-Dによる桑名取材の模様を掲載
2019年10月4日発売
エイ出版社

■楽曲、PV情報

『くわなにさくはな』(三重県桑名市)
Produced by Mr. Drunk
Music&Lyrics by Mummy-D
Movie Director:KODONA VISION 中井泰太郎
三重県桑名市ウェブサイト:https://www.city.kuwana.lg.jp/news/index.cfm/detail.1.65967.html
制作: PONY CANYON INC.
Mummy-D ( RHYMESTER ) by the courtesy of Victor Entertainment

【歌詞】
I wanna know I wanna know I wanna know
桑名のどこかに咲く花を 一つ 一つ ともに探そう
過去にも 今にも 明日にも (*リピート)

I wanna know I wanna know I wanna know
桑名中無数に咲く花を 一つ 一つ ともに探せば
ここにも そこにも あそこにも (★リピート)

東海道は宮から海路 太陽 煌めく海上
舟に揺られて七里と少々 白亜の櫓に高まる情緒
伊勢のお国の一の鳥居 くぐれば拡がる城下町 そこは
く、桑名 そう、すでに桑名 四十と二つ目の宿場町
本多忠勝公 の付けし町割り 全てはそこが始まり
人の交わり 西と東の交わり じわりと立ち昇る文化の香り
川の彼方のあのWonderland 眺めながらつい思い馳せる
天下泰平 やっぱそれがNumber One この街は静かに問い掛ける

*リピート
★リピート

やかましい やかましい やかましい けたたましく荒ぶる魂
石取祭は桑名の財産 誰が呼んだか天下の奇祭さ
多度の大社 駆け上がる祭馬 跨る乗り子は地区の誇りよ
さあ超えろ 超えろ そそり立つ壁を 挑む勇姿を神に捧げよう
緑の山と澄んだ湧き水 地酒の美味さはそこらが秘密
蛤 しぐれ煮 それだけじゃないんだ 
ディープなスウィーツも豊富なラインナップ
一向一揆 御一新 先の大戦 何度叩かれてもOnce Again
立ち上がる 奇跡の地で探そう 強く美しく咲く花を

★リピート

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