【インタビュー】下北沢CLUB Que 25周年、二位徳裕氏に訊いた「下北沢が“音楽の街”と言われる由縁」

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■下北沢ライブハウスシーンを
■30年以上支え続けた二位氏が語る現在

1990年代中盤から現在まで、約25年のうちにバンドとライブハウスの関わり方にも変化が生じているという。

「サーキットイベントって昔はなかったですけど、以前、“大晦日といえば、Que、シェルター、新宿LOFT、渋谷ラママなんか5ヵ所くらいに出る”っていう都内ツアーみたいなことをするのがステイタスだったんですよ。それって、バンド側が自主発信でやることなんですね。当時はバンド側のエネルギーが強くて、ハコ側が翻弄されることも少なくなかったんです。ところが今は、バンドが主催側に乗っかる感じなので、そこは似ているようで大きく違いますね。それはバンドが“演奏するだけでいい状況”になったという環境の成熟と劣化度の話でもあるんです。
 逆にもっと若い今の20歳ぐらいのバンドマンを見ていると、さっきの翔やんじゃないですけど、気持ちが強いミュージシャンも決して少なくないんです。甘い環境で浸からずに厳しいところを目指すというか、Queをベースに最初から海外に目を向けている人もいる。そういう意味では、1990年代とか2000年代当時とは異なるパワーが若い人たちに生まれてきているんだと思います」

▲下北沢CLUB Que

ちなみに、Queに出演したいと思っているバンドマンが実際にどうすればいいのかについても聞いてみた。

「普通に言ってくれればいくらでも(笑)。だけど、これは僕の場合なので、特殊でもありますが(笑)。僕が上京したとき、とあるライブハウスの終演間際に行って、演奏が終わっても帰らず、自主的にフロアの掃除をしたんです。“店員になんて言われるか?”を待ってたんですよ。当然「おまえ誰!? 何してんの?」って言われますよね(笑)。で、「実はこのライブハウスに出演したくて、デモテープを持ってきたんです」と。そうしたら、その場でデモテープを聴いてくれて、すぐにブッキングが決まったんです。そこまでしたほうがいいとは言わないですけど、自分たちがアピールできるものを揃えて、できれば直接会って喋って。熱意とか人間性とかをお互いに知りながらイベントやシーンを作っていけたらいいですね。だからうちの若いブッキングスタッフにも、“とにかく喋って自分自身がエンターテイメントであれ”と言っております。

   ◆   ◆   ◆

■下北沢という街の変遷と
■町内ぐるみの“面白い”活動

ここでは視点を変えて、下北沢という街にスポットを当てて聞いてみた。駅前開発によって下北沢も大きく変容している。“音楽の街・下北沢”は、今後どのように変わっていくのか。

▲下北沢駅前

「僕が上京した当時は、個人商店が多かったんですよ。小さなお店のへんてこりんな店主が、へんてこりんな感性でへんてこりんなことを威張って言うみたいな(笑)。今はだいぶ、企業ナイズされてきたというか、企業が大きい枠組みを決めていく中で、若者や中年がどう生きて行くかを考えていく時代に変わってきたと思います。そこで上手く共存していける人もいれば、そういうことを跳ねのけて、へんてこりんな文化を作り続けて行く人たちもいるんだろうな……いてほしいなって思うんです。
 個性を大切にする街でもあると思うんです、下北沢は。町内会も味方になってくれるというか。たとえば、バンドマンはみんな目立ちたいから、電信柱とか店のシャッターとか壁にチラシを貼っていた時代があって。そうすると。僕らが町内会に怒られて、バンドの代わりにチラシを剥がしに行かないといけなかったという(笑)。でも、そうこうするうちに町内会とも仲良くなったりしたんです。
 最近はバンドのフラッグが街頭にぶら下げられたりしていて、“ああ~、良い時代になったなあ”って感じます。街の人も一緒に歳を取っていくから、逆に仲間感が出てくるんですよね。それは下北沢ならではのエリアが狭くて顔が知れて人柄がわかる人間関係、感覚。面白いですね。歳の差や経験の差が広いことも面白いし、そういう人たちが音楽を通して街中で知り合う感じも、この街の面白さだと思います」

また、下北沢では元ライブハウスの店員やミュージシャンが飲食店やレコード店を出店するなど、新たなカルチャーを起こそうとするケースも増え続けているという。音楽好きが行って楽しむことのできる下北沢ならではのショップについても教えてくれた。

「Queやシェルターでは、終演後の打ち上げを朝までフロアでやってるんです。だから、僕らは他のお店に行く機会がなくなってきたんですけど(笑)。KOGA RECORDSがプロデュースしてるKOGA MILK BARは若い人がこぞって行ってますし、曽我部恵一君のCITY COUNTRY CITYも頑張ってますね。このほか、CLUB 251やBAR? CCOから枝分かれしたスタッフがCafé de Sept 7を出店していたり。 あとは、甲本ヒロトさんがバイトしていた「珉亭 (みんてい)」は有名ですよね。余談ですけど、僕の上京当時“はちや”っていう、500円でかつ丼とラーメンと餃子が食べられる店があったんですけど、さすがにそこまで激安な店はもうないですね。最近は富士そばが復活したり、チェーン店も多くなったので、そういう店も気軽に入りやすいですよね」

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■二位氏から若いバンドマンにメッセージ
■「人生のライブドラマを」

「ここ何年か、the pillowsから始まり怒髪天やThe ピーズ、フラワーカンパニーズ、The Collectorsが武道館ライブを実現させて、“これは見なきゃ!”みたいな一連のシリーズになりましたよね。そういう現象って、お客さんにも“今なにに熱があって、なにに期待すべきか”っていう流れがわかりやすいと思うんです。
 今度、the pillowsが横浜アリーナでライブをやりますけど、またそういう文化が生まれて行くと思う。ライブハウスもやりながら、大会場でもやるカッコよさがありますよね。エレカシが武道館の前にQueでやったみたいな。今、ライブハウスを軸に活動している少し若い世代のバンドマンにも、そういう新たなる連鎖するカルチャーを作ってほしいと思っています。ロックは音楽だけではないですからね、バンドマンの人生のライブドラマを見たいですね」


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近年、駅周辺の再開発が進み、下北沢の街は大きく変化している。9月24日には、小田急小田原線の代々木上原駅から世田谷代田駅の鉄道跡地における開発計画が発表され、新たに“下北線路街”と名付けられたエリアに、2020年度までに商業施設や宿泊施設、イベントスペースなど、同エリアならではの魅力を生かした13の施設がオープンする予定が発表された。

また、その一部として、約1年半の期間限定で開設される“みんなでつくる自由なあそび場”をコンセプトとした野外スペース“下北線路街 空き地”がオープン。ライブ演奏などのイベントも行われている。“下北線路街”のコンセプトは“BE YOU. シモキタらしく。ジブンらしく。”ということで、2020年を契機に、下北沢はさらに個性的でユニークな街へと進化して行きそうだ。

取材・文◎岡本貴之


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