【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.117「MONOを日本から追っかける!(15)〜20周年アニバーサリー・ライブで再び凱旋〜」

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暗闇にひと筋の光が射したかと思えば
一瞬ですべてが弾け飛んで
触れられない無数のピースに砕け散って消えた


これは9月20日に恵比寿のリキッドルームで行われたMONOのライブ中に見た、筆者の脳内に描かれた光景を当日書き記したものだ。今年の春に行ったメンバーの故郷を巡る結成20周年の凱旋ツアーに続き、今年2度目の凱旋公演となったあの日の公演では、1月にリリースした10作目のアルバム『Nowhere Now Here』の取材時にメンバーが話していた「Dahmが入って自分たちが求めた形になった」というバンドの変化を前回の公演以上に色濃く明らかに感じさせる実に素晴らしいライブだった。当日の模様は過去にMONOのワールドツアーにも同行したことのあるカメラマンの岸田哲平氏による写真で見て欲しい。





元来、歌のない轟音の世界で煌めく音の粒を弾き出しながら、聴き手の持ちうる想像力と己の可能性を最大限に引き出す唯一無二のバンドであったけれど、2018年にバンド史上初のメンバーチェンジによって新ドラマーのDahmが加入し、その直後には傑作『Nowhere Now Here』を生み、それを引っ提げて世界を飛び回り、結成20年を迎えた現在もさらに進化を遂げ、客を驚かし、聴く者に刺激を与え続けている。

特に、これまでは歌なしのインストゥルメンタル・ロック・バンドであった彼らが『Nowhere Now Here』で初めて歌在りの楽曲「Breathe」を発表したこともまた大きな変化であったわけだが、先日のリキッドルーム公演で披露されたTAMAKIの歌を初めて聴いて、これまでのMONOのライブでは味わったことのない切なさを感じたのはとても新鮮で心地よかった。




初めてロンドンで見た13年前も、メンバーチェンジを経て結成20年を迎えた現在も、ある意味では変わっていないし、ある意味では大きく変化している。それがMONOだ。それにこの世にはライブをやりながら死んでいるバンドもたくさん存在するが、バンドはやはり生き物だから、しっかりと活きているバンドのことはずっと目が離せない。





そんなMONOの今年最後の日本公演は終了してしまったが、彼らのワールドツアーは今後も続き、ノースアメリカ、ヨーロッパ、そして来年3月のオセアニアでのツアーまで発表されている。中でも注目なのが、今冬にアメリカ、イギリスで開催されるオーケストラと共演するMONO 20周年記念スペシャルイベント<Beyond The Past>だ。

11月はニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスにて、10年前に共演したThe Worldess Music Orchestraや過去アルバムで共にレコーディングしたMelissa BachとJeff Yangを含むCandlelight Chamber Orchestraとの一晩限りの共演し、12月には年内最後の公演として12月13日、14日にロンドンで、Borisやenvyなど共に活動し続ける新旧の仲間たちが集結し、イベント最後にはMONOがオーケストラと共演する予定だ。日本では開催されないのがさみしい限りだが、この時期に渡米渡英を予定している人はぜひ足を運んで欲しい。


また、そのスペシャルライブに先駆けて11月8日にリリースとなるのが20周年記念ミニアルバム『Before The Past』だ。今作では長きに渡りMONOの音を録り続けてきたスティーブ・アルビニが、なんと初期の楽曲をシカゴのエレクトリカルオーディオでのスタジオ・ライブで新たにレコーディングした作品というではないか! MONOの音に魅せられている人はもちろんのこと、MONOの音にまだ触れたことがない人には最高の入門編になる今作はTemporary Residence Ltd.からCD、LP、デジタルでリリースされる。しばし楽しみに待とう!



文◎早乙女‘dorami’ゆうこ
写真◎Teppei Kishida

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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