【インタビュー】キズ、来夢「僕が死にました」(前編)

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■僕は歌を捨てました

──今振り返ってみて、「傷痕」はどんな曲でしたか?

来夢:結局どういうシングルだったんだろう。追い込まれすぎていて、その時の記憶がないんですよ。ぱっと歌詞を読み返すと苦しんでることは分かる。今思えば、かわいそうだな。「俺以外は全員敵」みたいな状態(笑)。それが歌詞の言葉一つ一つや、インタビューにも表れていますよね。尖ってたなー。

──前回のインタビューでは、キズはいろいろな誤解を生んだから、「傷痕」でその核心に迫ったということを話していましたね。

来夢:そうだ、それだ。思い出しましたわ。それすらも忘れるくらいの時期だったんですよ。別の人格の人が曲を書いたから、覚えてないんですよ。僕より詳しいですね(笑)。

──ファンの方は読んでますよ(笑)。

来夢:そうやって覚えていて、前のインタビューでキズとファンの間の誤解を問いてくれたじゃないですか。でも、一周回って「誤解のままでもおもしろかったんじゃない?」って思った。当時の自分とは別の自分になっているから「どうでもええやん」と良い意味で思うようになったかな。

──それはどうしてでしょう。

来夢:んーーー。やっとキズに追いついたんですよ。一年前はキズに追いつけていない自分がいた。「キズが注目されているのも今だけだ」と思っていましたし。でも今は、優しくなったとは思わないけど、ファンに何も求めなくなりました。前は「同じベクトルで考えてくれ」と言ってたじゃないですか。

──「バンドと同じ立場でライブに臨んで欲しい」などと、求めていました。。

来夢:そう。でも今は「感じ取ったまま曲を楽しんでくれ」と思う。僕が「こういうことを考えて欲しい」とかフィルターをかけると、そのファンの人の本音を押し隠しちゃうじゃないですか。ライブもそう。考えている人は考えている人なりの楽しみ方があるし、考えていない人は考えていない人の楽しみ方があるんですよ。それでええやん。僕があれこれ言う必要はもうないかな(笑)。

──「自然体で感じてくれれば良い」は大きな変化ですよね。

来夢:だいぶね。細かいことがどうでもよくなって、ロックンロールに戻った。

──来夢さんのロック観がはっきりしてきたのでしょうか?

来夢:これ分かるかな。僕が求めるロックのライブは聞かせるものじゃないんですよ。感じさせるものなんです。真面目に歌い上げると、人は歌を聴いてしまう。

──ライブで歌を聴いてはいけないんですか?

来夢:聴くだけなら音源でいい。歌を丁寧に歌うことはその時の感情や感動を妨げてしまう。だから最近は、真面目と真剣の差を心がけています。

──そこも違うんですか?

来夢:まったく違いますね。例えば僕、リハーサルに入らないんです。でもメンバーは入ってるみたいですけど。でもね、僕にとってはリハーサルはその場しのぎのかっこ良さを作っちゃって、良いライブができなくなる。練習が嫌とかそういうわけじゃないけど。

──そもそも練習好きでしたっけ?

来夢:嫌いですね(笑)。練習も嫌ですけど、それ以上に「何をリハーサルすんの?」と思う。自分の人生をぶつけるのがライブなんだから、リハーサルなんていらない。「今日という一日」のリハーサルがあるわけじゃないし、誰だって毎日が本番なんですよ。だったらリハに入らなくても日頃からかっこいい自分でいることのほうが大事だと思うようになりました。他のアーティストはどう考えているか知らないですけど、僕にとってのリハは自分への甘えですね。そんな姿、誰も見たくないかも。

──ファンの方はどんな姿を見たいと考えていますか?

来夢:生き様だと思います。ファンを一つにするわけじゃないですけど、ただ綺麗な演奏、音源通りの歌声、準備されたライブを求めているなら、「他をあたってくれ」と思う。極端な例ですけど、ライブ中に煽るじゃないですか。それが用意された煽りなのか、その場で絞り出した煽りなのかでは、伝わり方が全然違う。前もって準備した煽りで伝わるわけがない。今の自分が持っているものを、心の底からひねり出したものがライブ。リハはそれと反対で、今の自分が持っていないものをかき集めて自分ではない偽物を作り上げる作業になる。だからライブ当日のリハにも入らないようにしています。

──来夢さんは歌うことそのものが好きというわけではないということですか?

来夢:そうかも。伝えることが好きなんですよ。それでしかない。歌うことが好きな人は練習して、リハをして、万全の準備をして、喉にも気を使うと思う。でも、伝えたい人間は伝わればいいから、それ以上に大切にすることがあるんですよ。それが自分の心の奥底から絞り出すということです。

──歌の上手さよりも伝えることが大切だと気づいたきっかけはあったのでしょうか?

来夢:間違っている、と思ったんですよ。今まで「リハには入らない」とか言いながら、家でボイトレとかしていました。でもある人に「歌が上手いことが、お前の最大の欠点だな」と言われたんですよ。。初めてですよ、こんなこと言われたのは(笑)。最初は理解するのに時間がかかりましたけど、でもその通りだった。耳で聴いてしまうだけの歌は心までは伝わらない。耳で聴いて得られる感動と心まで伝わって得られる感動は、違う感動なんですよね。しかも、この感動は同時に訪れません。僕もどっちの感動を与えたいのか悩んでいた時期がありました。

──結論は出ましたか?

来夢:僕は歌を捨てた。そう思えたのがつい最近です。だからといって、歌が雑になったわけじゃない。一言の重みはましたはずです。だからこれからどんどん変わっていくんじゃないですかね。最近のライブはいろいろな僕が死んじゃったお葬式みたいな日の連続でした。

──歌を上手く歌おうとする来夢さんが。

来夢:死にましたね。

──期待を背負っていた来夢さんも。

来夢:死んだな。期待を背負って苦しんでいた僕を支えていてくれた僕も死にました。今は全てがどうでも良くなっちゃったんですよ。だからもう自然のままでいけちゃうんです。

──投げやりではないですよね。普段の自分とステージ上の自分に違いがなくなったという感覚なのでしょうか?

来夢:あぁ、それだ。今まではライブの前と後の自分に違いがありました。でも、ファンの一言一言全てを受け止めすぎたり、リハーサルでしっかり練習しすぎる真面目な自分が死んじゃったので、違いがなくなったんだと思います。だから、日頃からかっこいい人間でいたいと思うようになりましたね。難しいことですけどね。そしたらライブでどんなミスしたってどんなトラブルがあったってかっこいいですよ。普段からかっこいい人間は。今はそんな自分を目指して生きてます。

▲「黒い雨」初回盤ジャケット

──いくつかの来夢さんの人格が死んだということですが、日常生活での変化は感じますか?

来夢:何かあるかなー。……あぁ、「メンバーが一番のファン」ということを改めて思いましたね。「大人になって気づいた」とかじゃなくて、「誰よりもこいつらがファンだ」という出来事があったんですよ。まぁ、reikiなんですけどね(笑)。「黒い雨」の次の新曲があるんですけど、それを聴いたreikiが泣き始めたんですよ。

──おぉ! 詳しく聞きたいです。

来夢:嫌です(笑)。で、メンバーに伝わらないことは観客に伝わらないし、メンバーが納得しないことは観客も納得しないと思ったんです。まずはメンバーのために曲を作ろうかなという気になりました。……何の話をしてるんでしたっけ?

──えっと。ちょっと感動して私も話し飛びました(笑)。日常生活での変化ですね。

来夢:あー、それだった(笑)。日常といっても、僕の日常はバンドなのでメンバーといるわけだから気は抜けないですね。弱いところを見せちゃいけない、一番のファンであるメンバーに。

──メンバーで弱さを補い合う、という形ではないんですね。

来夢:だって誰も沈みかけの船には乗りたくないですよね? 弱音を吐くということは「もう沈む」と告げている船に乗せることですから。僕はどんと構えて「進むぞ」と宣言している力強い船に乗りたい。それと一緒で、ボーカルは船なんですよ。だから僕が少しでも弱音を吐いたら、メンバーは震えながら海を渡ることになる。この考え方は変わってない点ですね。

──「ボーカルは船」という考え方は、「期待を背負っていた自分」とはまた違うんですか?

来夢:違いますね。期待というそんな軽いものではない。だってメンバーは僕に人生を賭けてくれているじゃないですか。キズが始まって今は2年半くらいですか。メンバーの人生を二年半も背負っているわけですよ。だからメンバーは、一言で言えば自分の世界の縮図なんですよ。

──来夢さんの世界は、メンバーで構成されているということですか?

来夢:ちょっと分かりにくいな(笑)。僕がどこの環境に行ったとしても、メンバーのような人間が集まるんだと思います。まぁ、単純にメンバーのことが好きなんじゃないですか? それは人として好きという意味です。メンバーとしてとかじゃない。メンバーに支えられているから僕も支えるとか、そういう浅い関係じゃないんです。家族との関係すらも超えてるんですよ、メンバーとの関係は。でもこれは言葉で言い表せないな。難しいです。

──結びつきの強さは伝わってきます。

来夢:でも、こういう「メンバーが好き」みたいなことはあんまり言いたくない(笑)。まぁ、メンバーはこのインタビューを読まないだろうから言えることですね。最初の難しい話のとこで「うわ、もう分かんない」ってきょうのすけ辺りは読むの諦めそう(笑)。

──なかなか話したことのない内容でしたね。

来夢:僕は一番身近にいるメンバーというファンに感動も刺激も与えたい。リハーサル通りのライブで彼らの心なんて動くわけもないし。そうやってメンバーを意識していると自然と会場にいる多くの人に伝わるんですよ。

──メンバーを通して、会場にいる人を見ているんですね。その考えに至るのには、何か出来事があったのでしょうか?

来夢:気付いたんですよ。新しい客を掴もうと会場の後ろばかり気にして歌っていた昔の僕と、キズを始めて僕を求める人だけに歌っていた僕がいました。今はようやく一番近くにいて気付かなかったもうひとつ大切なファンを意識して歌う僕がいます(笑)。

──「もうひとつ大切なファン」がメンバーということに気づいたんですね?

来夢:そうです。そうやって僕はメンバーの為に歌って、メンバーは僕の為に演奏してくれて、そこで4人のバンドという器に収まり切れずに溢れ出たものが、本当のライブのメッセージだと僕は思っています。

──メンバーとファンの人も、近い存在になっているように聞こえますね。

来夢:もしかしたら、メンバーと同じくらいのものをファンは賭けてくれているかもしれない。それはメンバーほどは近くにはいないから分からないけど、メンバーを僕という船に乗せていたら、ファンも自然と乗せられるんじゃないですかね。

──昔は、といっても一年前のインタビューでは「期待しないでくれ」と言ってましたね。弱い自分を守っていた人格がいたのでしょうか?

来夢:そう、それ! 良い意味でも裏切るかもしれないけど、勝手に期待してくれて構わない。ま、「好きにしてくれ」という感じです(笑)。もう期待を重いと思うこともないから、安心してください。

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