ベル、5周年ワンマンツアーファイナル「まだやってるの?なんて誰にも言わせない」

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ベルが10月22日、東京キネマ倶楽部にて<5周年ワンマンツアー『維新開花の夜明け前』>を開催した。本公演でベルはアンコール含め全22曲を送り、ファンと共にバンドの活動5周年を祝福した。

◆ライブ写真

「まだやってるの?なんて誰にも言わせない」公演の最後で、そう言葉をこぼしたハロ(Vo)。何気なく発した言葉だったかもしれないが、その一言からは5周年を祝ったこの日の公演への達成感と、6周年、7周年、その先の活動への力強い意気込みを感じることができた。

東京キネマ倶楽部のレトロな内装は、ベルの世界観をより一層濃くする、5周年をお祝いするに1番ふさわしい会場。定刻を少し過ぎた頃、黒電話の音が開演の時を知らせ、流れるSEの中ステージ左上部にある階段より楽器隊の3名が登場。そしてハロが登場し「行けるかキネマ!」の一声で「ノンフィクション」からベルの5周年が幕を開けた。そして「午前3時の環状線」「ビードロ」と、ベルの歴史をなぞるように1st、2nd、3rdシングルの楽曲を披露。


「節目のライヴというと、身構えてしまったり色んなことを思い出しながら見るライヴになると思う」とハロ。「でも僕らは身体使って、声使って全力で楽しませに行くので」と宣言すると、「雨に唄えば」へ。後方のスクリーンに映し出された映像が、楽曲の世界観へとい
ざなう。そして「ルフラン」で疾走感溢れるメロディを響かせ、サポートギタータイゾのカッティングも心地よい「ドラマ」、そして「3丁目ブルース」では明弥(B)が哀愁たっぷりのブルースを演出。切ないメロディも相まって、ベースを撫でる仕草にグッとくる。

更に「ベルらしいライヴしようよ」とハロがオーディエンスに誘い掛け、「ジェラシー」へ。間髪入れずに披露した「アモーレ」はラテンのリズムが楽しい1曲。サビでフロアに「アモーレ」の掛け声を交わす場面も。「万華鏡」は、いつものベルとはまた一味違った和テイストのメロディ。万華鏡を覗いたような切なく鮮やかなリリックビデオが、遊女の恋心を映し出し胸をキュッと掴まれた。

この日は9月から行ってた全国8か所を回るワンマンツアーのファイナル公演でもあった。MCでは「メンバー、スタッフチーム一同フル稼働でこのキネマを目指してワンマンツアーずっと走ってきました。」とハロ。改めて会場に集まったファンへ感謝の気持ちを伝えると、5周年という節目のライヴに各々が緊張の胸の内を明かした。「1時に布団に入ったんだけど、4時まで寝れなかった。」という明弥とは裏腹に、「ぐっすりと8時間は寝たかな?」と正人(Dr)。様々な前夜を過ごしながらも、メンバー一同この日をファンと共に迎えられることを本当に楽しみしていた様子がひしひしと伝わってきた。

そして、今回の5周年ワンマンツアーのタイトル<維新開花の夜明け前>というタイトルに込められた意味について、「今日という日をきっかけに、みんなの明日が明るい、そんな未来になるようにと思いを込めてつけました。なので、このライヴが終わったらこの辺(頬)筋肉痛になるくらいたくさん笑ってたくさん楽しみましょう!」というハロの言葉で後半戦がスタート。

「四ツ辻乱舞」では今回のツアーでずっとやってきたというメンバーコールタイムもあり、会場の一体感もどんどん増していく。「久しぶりに」のタイトルコールで歓声が上がったのは「哀愁エレジー」。ここまで印象付けてきた胸染みる歌謡テイストの楽曲たちとはまた一変したこれぞヴィジュアル系バンドな激しいナンバーに、フロアも休みなく頭を振り乱す。

サビで繰り返される“真っ赤っかー”のフレーズが印象的な「RED」は、そのインパクトに負けない明弥のスラップベースが効いている。そして「全部吐き出せ!受け取ってやるよ!」とライヴ感たっぷりの「カラータイマー」、最後は「しがみついてきてください」と「自我の水槽」を披露。オーディエンスもステージの気迫に負けじと割れんばかりの声を送り、一気に本編を駆け抜けた。


ベルの5年間を存分に披露した本編が終了し、アンコールでは「まだまだ僕たちがやりたいライヴ、やりたい曲たくさんあるんでしっかりついてきてください。いいですか?」と「音見世ディスコ」へ。とあるイベントでタイムテーブルを大幅に押すため禁止令が出たこともあるというこの楽曲、しかしこの日はベルのワンマン公演。「やりたい放題やっちまおうと思います!」というハロの言葉の通り、明弥はフレディ・マーキュリーのコールアンドレスポンス調だし、正人は観客たちに「かっこいいよ!」と飽きるほど言わせてみたり、それぞれ文字通り“やりたい放題”。そんな中でタオルを振り回し楽し気なフロアを見渡し、ハロも満足そうに笑みを浮かべた。

続いた「ルイスキャロル」は怪しげな館に迷い込んだようなファンタジーな1曲だ。そして「後悔も、苛立ちも、裏切りも全部ぶつけてきてください!」とフロアを煽り立てるハロ。勢いよく「バイバイ」へと駆け出し、フロアもこの日を後悔しないようにと割れんばかりの声を上げては頭を振り乱したりと、必死に食らいついていく。

タイゾの奏でるアルペジオが会場を包み込む中、ハロがマイクを取りポツリと口を開いた。今年1年を振り返り、みんなを振り回しながらもファンのみんなをもう悲しませたくないという一心で、3人で駆け抜けてきたとハロ。「何に願えばこの願いが叶うのか、何に縋ればこの夢が続くのか。僕たちはこのツアーで見つけた答えを歌います。どうか、いつか僕たちの道が分かれても今日1日の記憶だけで生きていけるようなそんな歌を歌います。」と続けたのは「星の葬列」。

“ああ、世界が君に優しいといいな――――”優しいワルツに乗せられたそんな歌詞と相まって、3人がベルというバンド、そしてファンと共に過ごすこの時間をどれほど大切に想い守ってきたかが痛いほど感じられた。本編、アンコールと終了しメンバーがステージを去った後も、鳴りやまないアンコールの声に応え明弥、正人が登場。明弥が大事なこと言い忘れたと、来年のワンマン公演のスケジュールを発表。

そして「このキネマ倶楽部とね、ぶち上げていきたいんですよ。その為にはリズム隊セッション行こうか!」と明弥。正人の豪快なドラミングからスタートした。そのままなだれ込む「東京蜃気楼」は、都会の雑踏を掻き消すような疾走感溢れるエッジの効いたナンバー。
「この曲知らないとは言わせねえぞ!」と続いた「真夏のバラッド」は、夏の終わりの花火大会のような、楽しくもどこか儚げなメロディながら、正人の軽快なドラムのステップには、笑顔でタオルを振り回し飛び跳ねるオーディエンス。

そして、1曲どうしても去年のリベンジがしたいとこの日の最後を飾ったのは「未来予報士」。ベルの得意とする歌謡色の強い楽曲からはまた違ったさわやかな耳なじみのいいバンドサウンドと、スクリーンに映し出されたベルの5年間を振り返るオフショットやライヴ映像、ミュージックビデオの数々とが、駆け抜けた約2時間の公演の終わりを切なくも晴れやかに演出した。


演奏が終わるとともに、フロアからメンバーを呼ぶ声が上がる中、ゆっくりとステージ前方に集まる3人。ハロが「未来予報士」での映像は明弥が作ってくれたものと明かすと、明弥は「みんなと俺たちの5年間はここで終わらないし、未来に続くという意味で作らせていただきました。本当にありがとう。」と涙をこらえながらも自身の想いを語った。

「すげぇ大変だったというか、すげぇつらかったんで。多分みんなにも悲しい思いさせたし申し訳なくて。その中でも今日という日をここに集まってくれて一緒に過ごしてくれたことめちゃくちゃ感謝してるし、俺絶対今日の事忘れないから。続けていくと決めた以上、次は絶対笑顔で会いましょう。ありがとうございました。」と感極まり声を詰まらせながらも、足を運んでくれたファンへ感謝の気持ちを告げたハロ。

2人が話すのを、フロアに背を向け静かに聞いていた正人は、「俺はね、去年この『未来予報士』って曲に救われた部分もあって。去年周年でこの曲をやったからこそベルを続けようと思えたこともあって。5年間やってきて少しでもいいから僕たちに救われたってそういう部分があったらいいなと思って君たちの前にずっと立ち続けてるので。来なくなった子とか、変わらず応援してくれてる子とか、いつまでもとは言えないけどいつでもライヴハウスで僕たちは待ってます。なので、いつでも会いにきてください。6年目もよろしくお願いします。」と、優しい言葉を贈った。


「もう悔しい思いしたくないんで。間もなく夜が明けるのかな。これから6年目に入ります。“まだやってるの?”なんて誰にも言わせないし。本当にベルっていうバンドがこれから先も続いているってことをみんなが誇りに思えるようなそんなバンドになっていくから。今日は本当にありがとうございました!」と、先ほどまで涙ながらに話していたハロも、最後はしっかりと前を向き頼もしい言葉で5周年の記念公演を締め括った。

キネマ倶楽部という会場の雰囲気と、ベルが送り出す哀愁漂う歌謡テイストの楽曲たちに、なんとなくライヴというより劇を観ているような気持ちにもなりながらも、4人で奏でる生のバンドサウンドや、進行するにつれ要所要所で見られたハロの募った想いを吐き出すような場面に、ライヴ特有の心地よい粗っぽさを感じられたのが魅力的だった。

メンバーがステージを後にすると、スクリーンには再び映像が流れ始める。そして、新しいビジュアルとともに新体制となることが発表され、さらに新体制初のワンマンツアーが告知されると、フロアからは大きな歓声が上がった。


メンバーの脱退を受けながら、この先も変わらずベルを続けることを選択した3人。バンドにとってネガティブな出来事があるとどうしても節目のライヴでは構えてしまいがちになるが、3人がそんな不安を打ち消すように6年目、7年目、その先へと向かう為の前向きで力強い意思をしっかりと感じられる公演だった。

ベルは新メンバーの加入を受け4人体制となることが発表され、年明け2020年1月22日には新体制後初のミニアルバム『解体新書』の発売、3月からは初のワンマンツアーも控えている。何度も公演を重ねたこのキネマ倶楽部で新たなスタートを切ったベル。またこの場所で彼らの晴やかな姿を見れることを楽しみに、新生ベルに大いに期待したいと思う。

なお現在YouTubeオフィシャルアカウントでは、ツアーファイナルで披露された「万華鏡」のリリックビデオも公開されている。


<ベル 新体制1st ONEMAN TOUR「4カウント」>

2020年3月20日(金・祝) 名古屋ell.SIZE
2020年3月22日(日) 心斎橋VARON
2020年3月28日(土) 池袋EDGE

◆ベル オフィシャルサイト
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