【インタビュー】加藤和樹、爽やかさとストレートで前向きな歌詞にも注目の「Hello」

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今年9月にリリースされた「Tell Me Why」に続く、加藤和樹の配信シングル「Hello」。爽やかな風を感じるイントロのギターが印象的なこの曲は、加藤自身が手がけたストレートで前向きな歌詞にも注目したい1曲だ。リスナーの背中を押してくれるこの曲についてはもちろん、充実した2019年の音楽活動、そしてミュージカルや舞台での経験があったからこそ見えてきた<音楽>の在り方など、今回も興味深い話をじっくりと語ってくれた。

■きれいな言葉を使うに越したことはないけど
■そこにある思いを伝えることのほうが大事


――新曲「Hello」のジャケットを拝見しましたが、超が付くほど爽やかな仕上がりになっていますね。

加藤和樹:そうですね、久々にちょっと爽やかです(笑)。今回は僕が歌詞を書いているんですが、とても前向きな曲なので、そういうムードがジャケットから伝わるといいなと思ってこういう明るい感じにしました。前作「Tell Me Why」は手錠をはめていましたし、ちょっと夜の匂いがするような楽曲だったので、そういう意味でもガラリと変わりましたね(笑)。

――かなり両極端な表現かと(笑)。

加藤和樹:ジャケ写もそうですが、昔はやはりクールなキメっていうのが多かったんです。でもここまでいろんなタイプの楽曲を歌ってきましたし、芝居のほうでもいろんな役を演じていろんな表情を見せてきましたから、そういう部分が自然と生かされているのかなと思います。それに僕は今年35歳になったんですが、年齢を重ねることで、昔に比べるとずいぶん柔らかくなったなって自分自身思うところもあるんですよ。だってジャケ写でこんなに笑うって、たぶんこれまでなかったですから(笑)。今回、歯を見せて笑っていますからね。

――たぶんご覧になったファンの方は驚かれたでしょうね。

加藤和樹:びっくりするんじゃないですか。「どうした、どうした!?」って(笑)。でも20歳代の後半ぐらいから、自分のテーマというか、ファンの皆さんと一緒に歩んでいきたいという思いが強くあるからこそ、誰かの背中を押してあげられるような曲を歌っていきたいと思うようになったんです。自分自身が経験したことを元に、悩みなんかも曝け出しながら共有する方向で歌詞を書くことが多くなった。今回の「Hello」に関してもそうです。日々生活をしているこの日常っていうところにスポットを当てながら、足踏みすることがあるかもしれないけど、夢が叶うように、この声が誰かに届くようにって、前向きな思いを込めて書きました。

――真っ直ぐな言葉が胸に響きます。

加藤和樹:言葉を声に出して言うって、すごく大事なことだと思っているんです。でも、自分は将来こうなりたいんだとか、こういう夢を持っているんだって、恥ずかしくてなかなか他の人に言えない人が増えている。僕、言霊ってあると信じているんですよ。口に出したものは絶対に叶うと思っているし、逆に悪口なんかも力を持ってしまうから、なるべくネガティブな言葉は口にしないようにしようって思っているんです。

――歌詞の中でも繰り返されますが、「Hello」という言葉はまさにポジティブなエネルギーを発していますよね。

加藤和樹:挨拶って、絶対に口に出すじゃないですか。子供の頃から「挨拶はちゃんとしなさい」って、どの家庭でも学校でも教えられていると思うし。そういうひと言ひと言って、すごく大事だと思うんですよね。

――加藤家でもやはりそこは厳しかったですか。

加藤和樹:普通に「行ってきます」や「ただいま」、親が仕事から帰ってきたら「おかえり」は必ず言っていましたね。厳しくというか、もうそれが当たり前でしたから。でもみんなそうじゃないですか。誰かに会えば、挨拶から始まる。仕事柄番組のロケなどで地方に行くことも多いんですが、地方に住んでいらっしゃる方達ほど人に対してすごく優しかったりするし、挨拶もそうだけど、よく声をかけてくれたりするんですよね。

――わかります。人との距離が近いですよね。

加藤和樹:だけど都内に住んでいると、例えば回覧板みたいな風習もなかなかないから、同じマンションに住んでいる人とコミュニケーションを取るなんてこともあまりなくて。だから僕はなるべく、「こんにちは」「こんばんは」って声をかけるようにしているんです。若い時はできなかったけど、そういうのはやっぱり大事だなって思うから。

――コミュニケーションの基本ですよね。

加藤和樹:初めの一歩って、そういうものだと思うんですよね。この「Hello」という曲もそうだけど、あまり重く受け止めず、何かのきっかけになればっていう軽い感じで考えてくれればと思うんです。重く考えちゃうから、生き辛くなったりする部分もあるじゃないですか。僕も30歳を超えたあたりから、何事も楽しむことが大事だなと思うようになったんですよ。だから今は、緊張よりも楽しさの方が勝っています。ライブの本番前以外は、ですけど(笑)。

――そうなんですね(笑)。

加藤和樹:ライブは楽しいんですよ?楽しいんですけど、やっぱりね(笑)。人間ですから。

――時間をかけて変わってきた部分も、変わらない部分もあるんですね。

加藤和樹:昔はなかなか踏み出せなかったり、緊張してばかりだった気がします。人見知りだし、こういうインタビューも全然喋れなかった。思いはあるんだけど、どう言葉にしたらいいのかわからなかったんです。今でこそ、支離滅裂でもなんでもいいから、(自分の胸を指して)ここにある思いを言えば伝わるんだって思いますけどね。

――間違って伝わってしまうことの怖さなんかもあったんでしょうね。

加藤和樹:それもありました。それこそ言葉って難しいものですから、相手によっては「そんな風に捉えちゃうんだ」って思う時もあったりしましたからね。こうやって発信をする人間だからこそ、自分の言葉には気をつけなきゃなっていうのは今もあります。でも、きれいな言葉を使うに越したことはないんでしょうけど、気持ち的にはそこにある思いを伝えることのほうが大事だったりもしますよね。

――言葉にも温度がありますしね。

加藤和樹:はい。僕は歌詞を書く時もなるべく難しい言葉は使わないで、日常の会話の中でみんなが口にしているような言葉を使うようにしているんです。だって、堅苦しく言われたって伝わらないじゃないですか(笑)。そういう作風を求められるような楽曲の場合は別ですけど、こういう明るくポップな曲で、日常からかけ離れたような言葉はあまり使いたくないですからね。

――<返事(こたえ)はない それでもいいさ ひたすらに叫べ つまらない意地かもしれない 今ここにいる意味を探し求めてんだ>というフレーズからは、がむしゃらな本音のようなものも伝わってきました。

加藤和樹:僕、昔から子供みたいに負けず嫌いなところがあるんです(笑)。あまり言葉にはしませんが、基本的には負けず嫌いな性格なんです。


▲配信シングル「Hello」通常版


▲配信シングル「Hello」AWA版


▲配信シングル「Hello」Mora版

――でも負けず嫌いって、すごくポジティブなエネルギーですよね。

加藤和樹:そう思います。というか、この仕事をやっている人はみんな負けず嫌いですよね(笑)。「俺が、俺が」の人もいれば、俺みたいに一歩引いて、沸沸とわいてくる闘志みたいなものをエネルギーにする人もいるけど。

――なるほど、加藤さんはそういうタイプで。

加藤和樹:自分にできないことを他の人がやっていると、すごく悔しい。「すごいなぁ」「羨ましいなぁ」と思うけど、その一方では「くそーっ!」って思っているんですよ。

――その気持ちが自分を高めるんですよね。

加藤和樹:そう。だから負けず嫌いはすごくいいことだと僕も思います。

――そんな加藤さんにも、乗り越えられなかったり、挫折感を味わうようなことがあったりしましたか?

加藤和樹:もちろんですよ。音楽の面で、自分は向いてないんじゃないかって思ったこともありましたし。でもきっと、これからも挫折を繰り返すんだと思います。圧倒的な才能を目の当たりにして打ちのめされることもあるでしょうし、このままの自分じゃダメだって思うこともあるでしょうからね。

――「そういう時こそ、自分を信じることが大切なんだ」と、以前のインタビューでもおっしゃっていましたね。

加藤和樹:はい。良くも悪くも、(自分と他の)人とは違いますからね。僕、自分には自分にしかできないことがあると信じているんです。例えば今こうして歌の仕事をやっていますが、上手いとか下手じゃなく、僕は自分が持っている声を信じてやっているんです。自分の声でしか伝えられないものが絶対にあると信じている。それはいろんな人から言われたことによって持つことができた、僕の自信なんです。昔から自分で声がいいなんて思ったことはなかったし、レコーダーで録音した自分の声を聴いた時なんて「気持ち悪っ!」て思っていたけど(笑)。

――それは、10人いたら10人が思うことだと思います(笑)。

加藤和樹:確かに(笑)。何をもっていい声とするかは人それぞれで感じ方の違いもあると思うけど、周りの人達が僕の声を「いいね」って言ってくださったり、ありがたいことに声のお仕事をいただけるようになったりする中で、自分にとっては声がひとつ武器になっているんだなって思えるようになったんです。歌うということに対してはいつまで経っても自信が持てないけど、それでもどれだけ感情を届けられるか、そこが一番重要だと思ってやっています。とは言え、上手く歌えなかったりするとつい「歌、上手くなりたい!」って思っちゃうんですけどね(笑)。矛盾しているんだけど、そういうところで感じる悔しさも前に進むエネルギーになっているんだろうなって思います。

――なるほど。

加藤和樹:自分の思い通りに歌えないと、正直、歌うことすら嫌になってくるんです。向いてないのかなって思うこともあるけど、自分は音楽に影響を受けて歌をやりたいと思ったわけだからそこで諦めちゃいかんなと思うし、少なからず自分の歌を聴いてくれている人がいて、「受験勉強、頑張ることができました」なんて声を頂いたりすると、自分も誰かの役に立っているんだなって思うことができたんです。それが自分の生きがいというか、応援してくれている皆さんが存在価値を与えてくれているんだなって、そんな風に思うんですよね。

――そうやってみんなの声が加藤さんの自信に繋がり、曲になって、またみんなの元にエネルギーやパワーを届ける。素敵な循環です。

加藤和樹:届けるものが返ってくる、それをダイレクトに感じられるのがライブなんですよね。だからライブはやめられない。ライブは、エネルギーの渡し合いなんです。

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