【ライブレポート】平川美香、美声と笑顔に包まれるハッピーな一夜

ツイート

おじさんメイクと歌声のギャップがバラエティ番組などでも話題の平川美香。2019年5月には2ndミニアルバムをリリースし、初の全国ツアーを回った彼女が、2019年11月に東京と故郷・沖縄にてワンマンライブ<平川美香LIVE 燦燦!!>を開催した。

年代性別問わず愛されるキャラクターや音楽も相まって、東京公演の代官山LOOPは老若男女様々な観客で大いに賑わう。開演前の会場は終始海の波の音や鳥の声が流れており、沖縄の海を想像させた。

夕暮れのように少しずつ場内が暗転すると、それと同時に波の音が大きくなっていく。奥田健介(G)、江口信夫(Dr)、酒井太(B)、K-Muto(Key)によるバックバンド・シーサーズがステージに登場し、ゆったりと繊細に音を奏で出すと、平川がステージに現れ、この日の1曲目「泣いて笑って」を届ける。メッセージ性の強い歌詞を語り掛けるような歌声は、肩を優しくそっと抱いて励ますようだ。しっとりと歌い上げたあとは“みなさん今日は来てくれてありがとう~!”と一気に明るいムードに。満面の笑みで手を振って呼びかけたり、最前列の観客と次々と握手したりなどして、明朗なミディアムナンバー「雨上がりの下で」でソウルフルな歌声を響かせた。

MCでは観客と意思疎通を交わしながらコメディアン並の小気味よいトークを聞かせ、水の飲み方ひとつでも笑わせる。「今日のライブは平川のおじさん、レディブブといったキャラクターが参加しないんです。寂しいけど、こんなに素敵なメンバーがいたら100人力です!」と丁寧に音楽を届けることを約束した。

“ふくよかである不運もあるあるとはいえ、それもひっくるめてすごく幸せだ”という想いを込めた「天使にデブソングを」ではフロアに乱入したり、歌唱中に笑いを盛り込んだり機敏な動きで魅了したりと、観客を楽しませようとするサービス精神はかなり旺盛。その後もレゲエナンバー「Meがみーかー」やサンバ曲「平川のおじサンバ」など、つらいことも悲しいことを抱えつつも、それを前向きに受け止めるポジティブな楽曲が、無理なく心地よい空間を作っていく。


MCでは “最近綺麗になったね”と言ってもらう機会が増えたことに触れ、「“恋人ができたの?と言われるけれど、わたしは自分で生きるだけで精一杯。だけどわたしも乙女! そろそろ恋愛したいな、なんて思うんだよね」というくだりから、シーサーズへムーディーな演奏を要請し、それをBGMに寸劇をスタート。観客から男性をひとりをステージに呼び出して、アドリブで“一目惚れで愛の告白をする”というドラマを展開していく。一度は告白に失敗するという状況に陥った平川は、男性に「成功パターンもやってみていいですか?」と交渉。テイク2では見事成功を果たし、ダンスのように自身を抱き寄せさせたり、タイタニックのように後ろから抱きしめられた状態で美声で喜びを歌にしたりなどし、最後は男性の頬にキスをしてドラマは終了。「こんな感じで各会場で下は8歳から上は70代まで幅広く彼氏ができてます」と笑わせ、この日舞台に上がった男性にも「彼に大きな拍手を!」と敬意を払った。

暗中模索の時期がありながらも“自分だからこそ歌える歌があると信じてここまでやってきた”という想いが込められたブルージーなワルツ曲「口笛」は、彼女のひたむきな人柄が出た強く優しい歌声が胸を打つ。歌詞の一つひとつが生々しく響き、観客もその想いに応えるように拍手と熱視線を向けた。ダンサブルな「Real Love」ではクールでセクシーな面を見せ、Cheryl Lynnのカヴァー曲「Got To Be Real」ではボーカリストとしての実力を存分に発揮。音楽性も幅広いところに、アーティスト・平川美香の許容力が光る。

2020年1月29日に1stフルアルバム『燦燦~SUN SAM~』をリリースすることを発表すると、フロアからは歓声と拍手が沸く。“新曲やCD化していない曲もふんだんに含まれた作品”と語り、観客の期待を高めた。そしてさっそく同アルバムに収録予定の「夢で逢いましょう」を笑いを織り交ぜながら披露。バンドメンバーの演奏に心地よさそうに体を揺らしながら歌う声も鮮やかだった。

ポップナンバー「乾杯」では袖からビールが登場。前列の観客とグラスを合わせ、会場全員で“乾杯!”と高らかに歌唱したり平川がビールを嗜んだりと多幸感溢れる空間へと彩られた。スカやラテンのテイストを盛り込んだ「Minori」では一転、ステージもフロアも一気にダンスホールのような雰囲気に。音に身を任せる彼女の姿は、全身で音楽愛を語っているようだった。ラストは1stフルアルバムに収録予定の新曲「ココロオドル」を初披露。観客とコール&レスポンスをしたり、バンドのメンバー紹介&ソロ回しなど、まさにハッピーエンドな空気感で本編を締めくくった。


アンコール1曲目は「ダイナミック琉球」。まずアカペラで雄大に歌い上げると、その歌に景色をつけるようにバンドメンバーが演奏を重ねる。沖縄に行ったことがない人間でも島の青い海や壮大な自然、漆黒の夜空などの様々な風景や、人々の表情が目に浮かぶようで、島一帯を鳥になって飛び回るような心持ちになった。

歌い終えた平川は、「想い歌」のショートムービーを作るために開催しているクラウドファンディングについて話し始める。同曲は平川が沖縄で応援している父母と仲間、ファンへの想いを込めた楽曲。資金的な問題でムービーの制作を諦めざるを得ず、悔しさで落ち込んでいるところ、「たくさんのあたたかい言葉をもらったことが大きな励みになった」と声を震わせながら語る。そんななか出会ったのがクラウドファンディングという方法。「絶対成功させたい。一緒に夢を歩みましょう」と力強く呼びかけた。

「まだまだすごいもの見せたいからさ。まだまだ諦めずにがんばります。応援よろしくお願いします!」と今後の意気込みを見せると、同曲のニューアレンジバージョン「想い歌~風に乗せて~」を初披露。ストリングスとバンドの音色のなか歌う彼女は、いろんな想いや出来事を噛みしめているよう。最後おもむろに天へと上げた右手を握り、心臓を叩いてじっくりと胸を押さえるシーンは、様々な人からのあたたかい想いを受け取ることで歩いてこれた彼女の人生の象徴にも見えた。

終演後のMCと集合写真の撮影のあと、平川は「乾杯」時のビールを全部飲み干し、晴れやかな表情でステージを去る。なかなかトークが止まらないところも彼女の愛嬌が良く出ていた。最後まで彼女のあたたかい想いに触れられる、幸せに包まれたライブだった。

取材・文◎沖さやこ

セットリスト

M1. 泣いて笑って
M2. 雨上がりの下で
M3. 天使にデブソングを
M4. Meがみーかー
M5. 平川のおじサンバ
M6. 口笛
M7. Real Love
M8. Got To Be Real (Cover Song)
M9. 夢で逢いましょう
M10. 乾杯
M11. Minori
M12. ココロオドル
En1. ダイナミック琉球
En2. 想い唄~風に乗せて~

<平川美香ワンマンライブ 燦燦!!>

■11月23日(土)
OPEN 17:00 / START 17:30
桜坂セントラル(沖縄)
オールスタンディング:¥4,500(+1d ¥500)
イープラス https://eplus.jp/sf/detail/3043760001-P0030001P021001?P1=1221
ローチケ https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=419171

◆平川美香 オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報