【インタビュー】ReN、EP「Fallin'」に温もりとギターとの出会い「目をつぶったら景色が見えるような音楽」

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■せっかくだからクリスマスに聴いてほしい
■そう思って日本語詞も交えたんです

──新たな旅をしながら、同時に自分のキャリアも客観的に振り返るような感じもあったんですね。

ReN:『存在証明』という1st EPは、自分が音楽をスタートする以前から、そこまでの区切りみたいな想いを込めていて。特にタイトル曲の「存在証明」は、その濃い部分を刻み込んだ曲なんです。だからこそ今回は、遊びも入れつつ、音楽の“楽”の部分をフィーチャーしたかった。だったら楽しまなきゃ楽しい音楽は生まれないから、笑いながら作った楽曲も今回は入れているんです。一方で「HURRICANE」のようなグッと力のこもった曲も必要だから、そういう意味ではすごくいいバランスで、面白いEPになったかなと思いますね。

──本当に得るものが多い、アメリカの旅をしてきましたね。

ReN:いいチャンスでしたね。まさかナッシュビルという場所へ行けるとも思っていなかったから。いろんな勉強をしつつ、ずっと心を身体を追い越していくような感じでいました。

──「Hot and Cold」は日本的なメロディだという話がありましたが、イントロのフレーズもまた、和の雰囲気ですよね。どんな楽器で出している音なんですか?

ReN:シンセなんですけど、琴のようなニュアンスですよね。プロデューサーのデイヴが楽しそうに肩を揺らしながら、いろんな音を入れたりしていて。ギターのフレーズに対して入れたものだったんですけど、あの音が入ったときに、“それいいじゃん!”ってなったんですよ。スタジオにあったセミホロウボディのセミアコの音との混ざりがいい。ふとしたときに和を感じるのは僕が日本人だからでもあるし、ロサンゼルスの長閑な牧場で作ったふわふわとした感じというか、ロケーションにもピッタリだった。「存在証明」は言葉を先に書いて、そこに景色をつけた楽曲だったんです。でも、「Hot and Cold」のような洋楽的な楽曲は、景色や音からインスピレーションを受ける。それが今回のアメリカでの2曲(「Hot and Cold」「HURRICANE」)には多いなと思います。

──「Hot and Cold」のように、いろんな音が入った楽曲もライブではひとり、ギターで多重演奏をするんですよね?

ReN:今、いろいろトライしていますね。自分の楽曲を並べたとき、「Hot and Cold」は異色ではあると思うので。それも含めて、いちばん面白く、なおかつ心地よく聴いてもらえるようなものにしたいと思ってますね。ゆっくりとライブで育てていきたいです。

──楽しみです。では、日本で作ったという今回のタイトル曲「Fallin’」。これはどんなイメージだったんでしょう?

ReN:「Fallin’」は去年原型ができ上がっていたんです。それをもう一度ブラッシュアップして、歌もギターも録り直しました。ラブソングというか、聴いたときに温かくなる曲がほしかったんですよね。それを伝えるのに重要なのが、自分は景色だと思っていて。どんな世界観にしようかなと考えたときに、あるギターとの出会いがあったんです。

──どんなギターですか?

ReN:ヴィンテージなんですけど、めちゃくちゃ安いギターで。ちょっと音程が狂いつつも、そこに愛嬌があるんです。ヴィンテージギターだから、ポロポロ弾いてみると乾いたアメリカのオールディーズサウンドが浮かんで。スタジオでリバーブをかけてカッティングしたら、その反響音がすごく気持ちよかったんですよね。

──まさしくオールディーズサウンドですね。

ReN:なんとなくリズムパターンが生まれたときに、“これは自分が好きな世界観にあるな”と思ったんですよ。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、主人公のマーティが過去に戻ってお父さんとお母さんを結びつけるためにプロム(ダンスパーティー)で弾いた曲が「アース・エンジェル」というすごく優しい曲で。1950年代の曲なんですけど、僕が手に入れたヴィンテージギターも1956年製だったんです。

──運命に引き寄せられた感じですね。

ReN:なんかいいですよね(笑)。サウンドのなかにメロディが浮かんで、最初は英詞でバーっと書いたんですけど、でも“せっかくだからクリスマスに聴いてほしいな”と思って日本語詞も交えたんです。

──ピアノの音色もどこか甘く切ない、いい音が鳴っていますよね。サウンドから立ち上った世界観ということで、細部のつくりにこだわっているのがわかります。

ReN:他の収録曲が音数が多かったので、この優しいラブソングは、あえてミニマムに。反響とリバーブをフィーチャーして、隙間を活かす曲にしましたね。ライブでもちょっと歌ったことがある曲だったので、たくさん弾き込んで、歌い込んで、自分のいちばんいい状態を録ることを意識しましたね。他人が聴いて「違いがないよ」って言われても、「いや、サビのここがちょっと違うんです」って録り直したり。ミニマムな曲だからこそ、1音にこだわってます。

──ギターソロも最高です。

ReN:ライブでもっともっと変わっていくと思うんですけどね(笑)。

──こういうオールディーズっぽい要素もReNさんの中にあったんですね。先ほど映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の話がありましたが、映画や映像から音楽に繋がっていくことは多いんですか?

ReN:特に映画のシチュエーションにハマっている音楽は、自分のなかにグッと入ってきます。映画から音楽にたどり着くことも多かったので。だから、音楽を聴いたとき、なんとかして景色を見ようとする──難しいんですけど、それは重要なことで。目をつぶったら景色が見えるような音楽。それこそ「Fallin’」だったら、冬の空にキラキラと星が見えるような。それに寄り添う音。背景として言葉や音が映像になってほしいというのがありますね。それは、自分の頭のなかで見えているものを、いかにそのまま表現できるかがテーマだと思いますし、人によって受け取り方が違っても面白いかな。

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