【インタビュー】DJシャドウ「優れたアートは時代の明暗を文脈化するもの」

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1990年代より最前線で活躍し、現在のトラップやアブストラクト・ヒップホップの源流を作ったとも言われるDJ SHADOWが、最新作『OUR PATHETIC AGE』を発売した。

『OUR PATHETIC AGE』は、共に時代を駆け抜けているラッパーNAS主宰レーベルMass Appeal Recordsからリリースされたダブル・アルバムだ。初のオーケストラ・サウンドに挑戦したナンバーや、デ・ラ・ソウル、インスペクター・デック(ウータン・クラン)、ゴーストフェイス・キラー、レイクウォンなど豪華ミュージシャンとの共演曲など充実の内容となっている。そのアルバムの聴きどころと共に、長いキャリアの中での苦悩、そして現在の思いを語ってくれた。


──前作に比べ、より一層オリジナル作曲に深く潜り実験的になっているように聴こえます。シンセサイザー、シーケンシングやプログラミングが増えているようですが、どんなプログラムや機材/楽器を使ったのでしょう。過去の作品と比べて、作曲やレコーディングでアプローチは変わりましたか?

DJ SHADOW:このアルバムでの目標のひとつは、メロディーでもっと冒険をすることだった。人生で後悔していることのひとつが正式な音楽の教育を受けなかったことでね。俺がまだ若い頃、ヒップホップは反体制だったから「いらない」と思っていた。ビートやリズムは得意であっても、メロディー、カウンターメロディーやコードは模索しなくてはならなかった。それが本作収録曲である「Firestorm」を誇りに思う理由のひとつだよ。初めてすべて作曲をしたオーケストラ作品なんだ。だから今回の作品は今までで一番メロディックで、オリジナル楽曲を追求した作品になっている。

──インスピレーションはどのようなところから受けているのでしょう。

DJ SHADOW:俺は、何より世間全体のムードを掴もうとしているんだ。人が互いに送り合うかすかなシグナル、人の振る舞い、感情の変動…俺が住む場所では人々は怯えている。ホームレスが広まって抜け出せない貧困に陥る恐怖がある。人々は気を散らすことに依存し、悩まされている。怒り、混乱し、政府に対しての不満を持つ。レコードにはこのエネルギーにインスピレーションを受け、利用して、それを理解しようとする曲もある。その傷を癒そうとする曲もあれば、解決はせず問題を客観的に見ている曲もある。俺はこのアルバムに、俺たちが生きている時代の象徴になってほしいんだ。このくだらない時代の象徴に、ね。

──本作『OUR PATHETIC AGE』は、これまでで一番壮大な作品になっているようですね。

DJ SHADOW:ダブル・アルバムだから、確実に今まで挑戦してきた中で野心的な作品と言えるのかもしれない。一定の時間でこんなに音楽を制作したのは初めてで、すべての場面で制作している作品に自信を持てたんだ。今まではそんなことはなかった。自信喪失は珍しくなくて、主流の音楽と合わない不安、聴いてくれる人に繋がらないことや誤解される不安があったから。でも今回は、作業習慣に没頭して最高傑作を作るために一心不乱で、外部の影響を受けるスペースを自分に与えてなかった。

──アルバムには多彩なゲストが参加していますが、コラボレーションではどんな出来事がありましたか?

DJ SHADOW:様々な体験がたくさんあったよ。簡単で単純なことから、すごく難しくて長引くものなどね。コラボレーションはダイナマイトを扱うのと似てて、常に気を付けないといけない。メールやメッセージでの間違った言葉選びによって、エゴや自信に影響を与えるから、いつも気を付けている。これは1990年代に様々なMCとの仕事やアンクルの『Psyence Fiction』(1998年リリースのアルバム)の制作で学んだことなんだ。俺はゲストをできるだけ気楽にさせると同時に、普段とは全然違うことをしてもらうようにする。ほとんどのゲストは受け入れてくれて、一番良い時はお互いにとってすごくユニークなものが出来上がるんだ。

──あなたの作品には、不安に対しての暗さのような感覚があり、それが今回はいつも以上に存在しているように感じますが、同時に明るさと希望もありますね。

DJ SHADOW:今は暗い時代だ。俺にとってアーティストの役目は、身の回りの世界を解釈して反映すること。それと同時に、自分の人生には幸せがある。俺がより良い人になるように頑張り、希望を持つように思わせてくれる可愛い子供二人に恵まれている。暗さと希望をさまようのは今までの人類のストーリーでもあり、優れたアートはその時代に存在する明暗のバランスを文脈化するものなんだよ。

──本作において、ビート制作へのアプローチを教えてください。

DJ SHADOW:インスト音楽を作る時は、色々な意味でリズムや曲の構成をより自由に挑戦できる。蛇行したり、急な変化をしたり、アレンジメントをすごくいじることができる。ボーカリストのためにビートを作る時は、そのプロセスは変わる。コラボレーションだからゲストには狭い範囲での作業を強要したくないし、それによって挫折させたくもない。結果的に、50%ぐらい完成している基盤で、ゲストも制作に加われる状態で持って行く。その後ゲストが作ったもの、ゲストの演出に合わせて音楽をプログラミングする。シンプルにミュートやドロップを付け加えて所々アクセントを入れるだけもあれば、もっと深くまで入るプロダクションもある。例えばラン・ザ・ジュエルズが基本的なビートを元に演奏した「Nobody Speak」にはホルンを付け加えた。リスナーが面白い歌詞を笑えるように音楽的な要素が欲しかったんだ。それがないとただくだらない物になってしまう可能性があったからね。「Rocket Fuel」に関しても、De La Soulにはホルンやスクラッチのないシンプルな楽曲を元に演奏してもらったけれど、完成させる前に彼らがどのように演奏するかを見たかったからだよ。もちろん場合によるけど、基本的にこれが俺の制作する方法なんだ。


DJ シャドウ『OUR PATHETIC AGE』
発売中
https://carolineinternational.jp/dj-shadow/
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