【インタビュー】VALSHE、シングル「紅蓮」に描いた「絶望と希望の狭間」

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活動10年目を迎えたVALSHEが11月20日、13枚目のシングル「紅蓮」をリリースした。テレビ東京系『たけしのニッポンのミカタ!』のエンディングテーマとしてオンエア中のタイトル曲「紅蓮」は、VALSHE王道のデジタルサウンドとドラマティックに展開する曲構成、そして鬼気迫る迫力のボーカリゼーションが、SF冒険ファンタジー映画のヒロインのようなアートワークと見事にシンクロした仕上がりだ。これがVALSHEの10年目の“初撃”。

◆VALSHE 画像

作曲を手掛けたのはTVドラマ『ドラゴン桜』の主題歌をはじめ、J-POPシーンやアニメシーンでも活躍する小高光太郎と、『マクロスΔ』などに楽曲を提供しているUiNAだ。“絶望と希望”をキーワードにVALSHEならではのメッセージもこめられた今作について、声優、俳優と表現の幅を広げている現在のスタンスについて、そして10周年のVALSHEについても話を聞いた。

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■一瞬たりとも気が抜けない歌が
■今回の曲のテーマ的にも合っている

──シングル「紅蓮」はVALSHEさんの王道ともいえるナンバーになりましたが、どういう経緯があって完成した曲ですか?

VALSHE:いつも制作に入る前は“曲を自分で作るのか”、“他の方に書いてもらうのか”っていうところに立ち戻るんですが、今回はコンセプトを考えるところから始めるという作り方ではなく、気持ち先行でしたね。今の自分の心境に当てはまるサウンドを探していったんです。そこから曲が決まって作詞をするという流れでした。

──そのときはどういう心境だったんでしょうか?

VALSHE:前作「「SYM-BOLIC XXX」」が世に出る前後のタイミングだったんですけど、一難去ったらまた一難、みたいな出来事が起こった中で、普段だったら見落としてしまいそうな誰かの行動だったり、誰かの言葉だったりにすごく救われることがあって、“こういう状態だから気づけたんだろうな”って。“窮地に追い込まれていないと気づけなかったな、その優しさ”って思ったことが「紅蓮」を作ったいちばんの動機です。

▲「紅蓮」初回限定盤

──ご自身の経験によって燃え立たせられたものがあったんでしょうか?

VALSHE:“折れられないな”と思いました。おっしゃっているニュアンスにすごく近いと思うんですけど、“頑張らないとな”っていう気にさせられたというか、“負けてられないな”って。

──そういう気持ちになったのは10周年という節目の年と関係していますか?

VALSHE:「「SYM-BOLIC XXX」」は100曲目という節目だったので、それにふさわしい曲やテーマを熟考した上で作品としてリリースしたんですが、「紅蓮」は“これがVALSHEの10年目の1作目”というふうに客観的に見ている面がありました。ただテーマも含めて前作と親和性が高い作品になっていますね。

──「紅蓮」は作曲をアニメ『ドラゴン桜』の主題歌などを手掛ける小高光太郎さん、『マクロスΔ』の挿入歌等で活躍しているUiNA(ウイナ)さんが手がけていますね。

VALSHE:はい。実は、この曲はリクエストをして募った楽曲の中の1曲だったんです。紐解いたら小高さんとUiNAさんの曲で、当時から“絶対いいから、どこか然るべきタイミングで歌詞を入れ込んで完成させたいね”って思っていて。まさにこのタイミングで「この気持ちをあの曲にハメたい!」って。VALSHEのド真ん中であるデジタルサウンドをしっかり見据えた上で持ってきてくださった曲ですね。

──楽曲とVALSHEさんの心境がリンクしたんですね。タイトル「紅蓮」は仏教用語でもありますが、ゲームやアニメーションが好きな人には親近感のある言葉だと思うんです。どういう想いがあってつけたんですか?

VALSHE:そのときの気持ちを“色”で表すなら紅蓮がいいっていうシンプルなものでしたね。紅蓮って赤より紅いというイメージがあって。仏教に関連させたわけではないんですが、本来の紅蓮の在り方も含めてつけました。

──燃え盛る炎のような色ですか?

VALSHE:そうですね。タイトルはサビの頭の“紅蓮よ開け”という歌詞と同時に浮かびました。


──非常にドラマティックな展開をする曲で、後半には激しいギターソロも盛り込まれていますが、VALSHEさんがこだわったところというと?

VALSHE:特にこだわっていたのはサビ頭の入り方です。アレンジャーの齋藤真也さんとシンセの音について試行錯誤したんですけど、疾走感が強い曲なので、加速していく流れを途切らせることなく、どうしたらもっとサビで爆発させられるんだろうって。自分自身、勉強になりましたね。

──VALSHEさんのたたみかけるようなパワフルなボーカルと表現力がさすがです。ブレスする箇所があまりなさそうな。

VALSHE:ははは。そうですね。

──疾走感がありつつ、テンポが落ちるクラシカルなセクションもあって、VALSHEさんの曲の中でもかなり難易度が高いのではないかと思いました。

VALSHE:高いですね。いま、おっしゃったDメロのキーも高い。ただ、プリプロを重ねる中、一瞬たりとも気が抜けない歌っていうのが今回の曲のテーマ的にも合っているなと思ったんです。ボーカロイドのように華麗に歌いこなしているというよりは、必死に歌っている感じが伝わったほうがいいと判断しました。本番のレコーディングではいつもCDとライブの違いを大なり小なり意識してマイクの前に立っているんですけど、今回はがむしゃらというか、その場の温度感をそのまま乗っけているような気持ちが強かったんです。それがこの作品にはベストだと思ったので。

──先ほど、前作との繋がりの話をしてくれましたが「「SYM-BOLIC XXX」」のインタビューのときに、「VALSHEの根本に立ち戻る」とおっしゃっていましたよね。

VALSHE:そうですね。前作があった上でフィクションの中にノンフィクションを投影していくという自分自身の作品の作り方の本質的な部分を表現したいと思ったんです。客観的に見たとき、VALSHEのド真ん中は生々しくなりすぎないでいてほしいんですよね。「紅蓮」という曲は手法を変えれば、渋谷のスクランブル交差点に自分が立っているようなジャケットでも成立する内容なんですが、10年目の1作目のVALSHEはそういう方向ではないっていう自分の感覚に従って作っていきましたね。

──ファンタジーとリアルをどう混ぜ合わせるか。

VALSHE:その割合ですね。ファンタジーが7割でリアリティが3割というときもあれば、逆のときもありますが、「紅蓮」は自分の中の正攻法です。

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