【インタビュー】和楽器バンドが「守るべきもの」「変えていくべきこと」

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和楽器バンドが本日12月4日、ユニバーサルミュージック移籍後 第一弾EP「REACT」をリリースした。

◆撮り下ろし画像(7枚)

今年6月に、本格的な海外進出を目指しユニバーサルミュージックとのグローバル パートナーシップ契約を締結した和楽器バンド。「日本古来の和楽器と、洋楽器を融合させた新感覚のバンド」として活動を始めた彼らだが、11月にファイナルを迎えたツアー<REACT-新章->では、その説明に頼ることなく、自身の「バンド」としての魅力を存分に発揮していた。(ライブレポートはコチラ

“新章”という言葉を掲げたツアー。これを終えた彼らは、また一歩次のフェーズに進んだのだろう。まさに“和楽器バンド 新章”のスタートだ。今回BARKSでは、ツアーファイナルの4日後に鈴華ゆう子(Vo)、町屋(G)、黒流(和太鼓)にインタビューを実施。今回のツアーで得たもの、移籍を経て今感じていること、そして満を持してリリースするEP「REACT」について、生の声を聞かせてもらった。


  ◆  ◆  ◆

■最近の私たちは、しっかり“音楽”が出来始めてきている

──<REACT-新章->ツアーを見させていただいて、 “バンド”としてのパワーが強まったと思いました。ツアーファイナルを終えて、今感じていることを教えてください。

鈴華ゆう子(Vo):これまでの5年間、いろんな方に「新しいことをやっていますね」とか「和と洋の融合なんですね」という反応を頂いていました。私たち自身はそんなに特別なことをやっているつもりはなかったので、「まぁ……そっかぁ、そうかもなぁ」と思っていたりした時代もあったんですが、今は「和楽器バンドってこういうもの」というのが浸透してきたなと感じています。

黒流(和太鼓):実際にステージに立ったら、「たくさんの方々が待っていてくれたんだな」ということを肌で感じました。公演を終えてメンバー全員が共通して思っているのは、「和楽器バンドの芯ができた」ということ。無理せず等身大の僕らを表現すればいいんだな、というのが今回のツアーでした。

▲鈴華ゆう子(Vo)

──それ、すごく感じました。

鈴華ゆう子:自分たち自身のことで言えば、やっぱりレーベルを移籍したことによって環境が整い、より音楽に専念できるようになったことが大きいなと。アーティストがアーティスト業だけに専念するのって、当たり前のことのようだけどなかなかできなくって。でも最近の私たちは、しっかり“音楽”が出来始めてきているなって思います。

黒流:移籍して新しいチームになることに不安もあったんですが、スタッフの皆さんのプロの技術を目の当たりにして、ツアー前には不安はなくなっていました。気持ちや思いを含めて、皆さん前のめりになっていろんなことに取り組んでくれて、実際にお会いした時にはすべてが用意されていたという。それだけではなくて今までの課題もクリアされていて、僕らも準備やリハを通して刺激を受けてツアーに臨めました。これまでは毎回ライブのたびに反省会をしていたんですが、今回はそれがほとんど必要なかったし。

鈴華ゆう子:うん、ノンストレスでしたよね。

黒流:今までは「こう見せたいんで、こうしてください」って話し合いをしていて、もちろんそれはそれで良いことだったんですが、今回のチームは常に改善を繰り返してくれたので、僕らはライブに集中することができました。

町屋(G&Vo):そんなこんなで非常にスムーズに、ストレスフリーな環境でライブができたので、ツアーが折り返し地点に来るとだんだん自分との葛藤になってくるんですね。

──自分との葛藤?

町屋:外側の部分はもう何も問題ないわけですよ。つまり、先週よりもいいライブをするためには、自分たちが良くなるしかない。それを毎週繰り返していましたね。そこに集中することができたのも、このチームのおかげ。アーティストのあるべき姿ではあるんですけど、やっとたどり着けたって感じです。

鈴華ゆう子:そもそも今回のツアーは「今年ライブできるのかな」というところから始まっていて。そこから会場を押さえることに始まって、和楽器の調弦の仕方や楽器のしまい方まで細々とした不安がたくさんあったんですが、その道のプロフェッショナルな方々とチームを組めたことによって、結果的にノンストレスで前よりもいいものができるってすごいなと思って。本当に「和楽器バンドって愛されてるな」って思いましたし、ファンの方々も含めて「今、和楽器バンドに熱をくれる人たちがこんなにいるんだ」というのを実感したツアーでした。

──ツアーを終えて、「変えていくべきこと」「守るべきもの」もはっきり見えたのでは?

町屋:僕は坊主にしたい。

──え!? 変えていくところ、そこですか!?すでに尺八の神永大輔さんが坊主なのに。

鈴華ゆう子:ツアーのMCでも何回も言ってたんですよ(笑)。ボーカルの両サイドが坊主っていうのはやめて欲しい〜!

黒流:インパクトはあるけどね(笑)。

──坊主にしたい真意は?

町屋:見た目に囚われたくないんです。もともと長髪だったのを5thアルバム『オトノエ』の時に切ったのは、あからさまにギタリストに見られるのが嫌だったから。今、頭を丸めたいのは、“音楽に向き合う” っていう点において、それ以外の要素をすべて省きたいんですよ。ロックミュージシャンって見た目かっこよくてなんぼ、みたいなところもあるんですけど、一回そこを無しにしてゼロから音楽に向き合いたい。

鈴華ゆう子:「坊主はダメ」ってみんなに止められてますけど、言ってることはすごく分かるんですよね。町屋さん、サムライみたいなところがあって。プラスかマイナスか、みたいな感じでいつも極端なんですよ。今、「音楽だけに向き合いたい」って思っているから、余計なものを取り払うには髪の毛から!っていうタイミングなんじゃないかと。それも「今この環境になれたから」だとは思うし、すっごい分かるんだけど、全力で止めてます(笑)。

黒流:和太鼓だと感性を研ぎ澄ます為に坊主にしている人が多いので、僕はあえてこういうスタイルでいますけど、まっちー(町屋)の気持ちはわかる。そんなギタリスト、あんまいないし。でも、バリカン持ったら羽交い締めにします(笑)!

▲町屋(G&Vo)

■海外展開をより具体的に考えたい
──ゆう子さんが「変えていくべき」「守るべき」と思っていることは?

鈴華ゆう子:まず、和楽器バンドで作り上げてきたバランス感っていうのは守りたいんですよね。うちは8人のキャラクターがしっかりしてるけど、それが全面的に出るのがいいかっていったらそうじゃない。坊主は私の右横に一人いるからこそいい、とかね(笑)。言葉にするのは難しいんですが、ここまでで培ってきた各々の持つ品(ひん)や役割なんかは、うまく保ってこそいいものができる気がしています。そういう土台の部分は守りながら、その上に乗っているものはいろんなものを取り入れて、どんどん変えていきたい。

──今回でいうと、衣装とか?

鈴華ゆう子:そう。「そこを変えちゃった?」って思われるようなものを取り入れていくのは勇気がいるんですけど、やってみたら受け入れられることもあるし。勇気はいりますが、賛否両論があることは、いいことだと思っています。

町屋:坊主、坊主(小声)。

鈴華ゆう子:そのひとつが坊主らしいです(笑)。これは守るべきところな気はしてるけど、そのうち「まぁいいんじゃない?」とか言い出すかもね(笑)。

黒流:今回、ライブを作るにあたって「変えていくべきこと」「守るべきもの」については、たくさん話し合いましたね。例えば和楽器バンドのライブ定番の「和太鼓×ドラムバトル」でのコール&レスポンスをやめたほうがいいんじゃないか、とか8人のソロを披露した「鏡花水月」は何も決めずにセッションでもいいんじゃないか、とか。お互いに「それはなくてもいい」とか「エンターテインメントとして必要だ」とか意見を出し合って、ああいう公演になっていったんです。

鈴華ゆう子:コール&レスポンスのない「和太鼓×ドラムバトル」や自由なセッションも、「今は」違うっていうだけなんですけどね。

黒流:そう、どれも正解。どれがカッコいいカッコ悪いとか、どれが正義とかそういうのではなく、“今、どれを選択するのか”が大事なんだな、と思いました。そもそも8人それぞれ好きなものが違いますし、「変えていくべきこと」「守るべきもの」もそんな感じかもしれない。

鈴華ゆう子:個人的に変化したいところは、技術の向上ですね。町屋さんもさっき言ってましたけど、周りの環境が整ったのだから、あとは自分たちが良くなるしかない。私自身も、もっとできることの幅を広げなきゃと思うし、それをメンバーに求めるわけじゃないけど、影響し合えたらいいなと思います。

黒流:それはあるね。今回、毎公演終わった後に自分のプレイに対して絶望していたんです。でもそうやって自分のプレイを振り返られること自体がありがたいことで。これまでは「見せ方がどうだ」とか「あれがこうだった」とかライブ全体を振り返らなければいけなくて、純粋に自分のプレイだけを振り返っていられなかった。毎回「かーーーっ、ダメだな」と思うのはしんどかったですけど、自分の技術を高めるためにどうしたらいいのかとすごく考えることができました。

▲黒流(和太鼓)

──移籍後、アーティストとして理想の環境を手に入れることができたんですね。とはいえ、移籍は一大決心だったと思うのですが。

町屋:6月に発表させていただいた通り、ユニバーサルさんとグローバルパートナーシップ契約を締結したんですが、これが我々にとって大きな意味を持つことで。これまでも海外公演は経験させてもらっていましたが、毎回ほぼ単発の公演だったんですよ。

鈴華ゆう子:一回行って終わり、だから根付いていないんだよね。

町屋:結局、行き続けなければ意味がない。例えば台湾とかはツアーに組み込んでもいい距離だっていうことは昔から話してて。そういったところの海外展開をより具体的に考えたいなと。

鈴華ゆう子:やっぱり海外公演を組み込むと多大な経費がかかるから何か残して帰りたいと思うけど、アプローチが続いていないので根付かないということは悩みでしたね。ユニバーサルさんは全世界に80社くらい支社がある世界的なレーベルなので、そことタッグを組んで新たなチームを結成できれば、私たちがずっとフラストレーションを抱えていた部分を解消できるのではないかと考えました。

──それはいつ頃から思っていたことなんでしょうか。

町屋:この2年くらいですね。

鈴華ゆう子:今後どうしよう、とはずっと考えていました。でもメンバー内でも意見が違うこともあったし。その中で私が一番大事にしたのは、「この8人が同じ方向を見て歩いていけるかどうか」ということ。移籍するのかしないのか、結果はどうなろうとも、みんなの気持ちをひとつにまとめることだけを考えていました、この2年くらい。町屋さんは私が言いづらいような強いことをあえて言ってくれたり、黒流さんはスタッフさんとか私の目が行き届かない部分をケアしてくれたりとか。

町屋:そういうのもバンドメンバーの役割だよね。そういう意味でも、ここ2〜3年でやっとバンドとして成り立ってきたのかなと感じています。結成してライブもしないままに音源を出してデビュー、ツアーもやったことない状態から何度もツアーを重ね、ようやく普通のバンドがデビューするくらいの行程を経たのが今。

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