【レビュー】秦 基博、『コペルニクス』に“いい歌とは何か?”という問いへの新たな回答

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秦 基博の約4年ぶりとなるアルバム『コペルニクス』は、挑戦の一枚だ。

◆秦 基博 画像

それは、いわば“いい歌とは何か?”という問いへの、彼なりの新たな回答のようなアルバムだ。これまでシンガーソングライターとして着実にキャリアを積み重ね、心に染み渡る沢山の歌を届けてきた彼。新作は、単なるその“延長線上”の作品ではない。変化の意志に満ちた、新機軸の一枚だ。

一聴してまず感じるのは、サウンドの“深さ”。

アルバムは浮遊感あるシンセを配したインスト曲「天動説」で幕を開ける。8曲目には同じモチーフを用いたリプライズ的な「地動説」も収録している。どちらも短い曲だが、そこにあるサウンドの奥行きはアルバム全体のムードの象徴になっている。

その空気感は、たとえば2曲目に収録されたバラード「LOVE LETTER」にも共通するものだ。アコギと歌のシンプルな手触りから始まる曲調が、徐々に加わるシンセやリズムやヴォイスサンプルによって彩られる。「Lost」や「9inch Space Ship」といったミドルテンポの楽曲でも、広がりのある風景をイメージさせるシンセが大きな役割を果たしている。このあたりは共同サウンドプロデュースをつとめたトオミ ヨウとの化学反応によるところも大きいだろう。

先行シングルとしてリリースされた「Raspberry Lover」も挑戦的な一曲だ。ループ・ミュージックをベースにしたこの曲は、繰り返すアコギのフレーズと心拍のような四つ打ちのビートから始まる。独白のような歌声が叶わぬ恋を前にした嫉妬や苦悩の狂おしい心情を綴っていく。メロディに対するアプローチもとても印象的だ。ギターのフレーズとビート、それぞれと絡み合うようなリズミカルな旋律を歌うことで躍動感を生み出していく。筆者が担当したインタビューでも、彼はこんな風に語っていた。どうやら、今の時代の世界的な音楽シーンの潮流を踏まえて、自分なりにメロディの“革新”をどう生み出していくかという発想があったようだ。

「この楽曲は、もともとギターのリフから書いた曲で。イントロのリフが浮かんだ時に、それに対してどうメロディをぶつけていくかを考えました。あとは、この曲に限らず、メロディをどう書くかっていうことが大きくあったんです。今の時代は音楽のジャンルによって、メロディの捉え方も違うし、それこそダンスミュージックにおいてはメロディの有り無しがわからないような曲もあったりする。自分もそれが格好いいと思う感覚ももちろんあるし、でもずっと聴いてきたメロディアスな音楽も好きだったりする。そんな中で、自分はどういうメロディを書きたいか。そういうことを思ってました」

ダンスミュージックを意識した楽曲ということで言えば、アルバムの中では「アース・コレクション」が最も異彩を放つ一曲と言えるだろう。打ち込みのビートとベースラインが主張するデジタル・ファンクのこの曲。「トレンドカラーって いつ誰が決めんだ」「脱ぎ捨てたい もっと単純でいいんじゃない」と、ついつい翻弄されがちな流行との距離感を歌った歌詞も印象に残る。

その一方で、弾き語りをベースに生楽器のアレンジで作られた「Joan」もアルバムの中で大事な位置を占める一曲となっている。「悲しみも愛おしいと 思える日がくるからね」と語りかける言葉を歌う彼の歌声には、聴いていると少しずつ癒やされていくような、とても親密な響きが宿っている。

アルバムは「Rainsongs」で幕を閉じる。“60% 水で作られてる カラダのはずなのに 心は いつでも どこか乾いてる”という歌い出しで始まるこの曲は、メロディも、今の社会状況を踏まえて子供たちの未来に願いを込めた歌詞の内容も、とてもスケールの大きなものだ。

「『Rainsongs』は、アルバムを通していろんな世界を切り取ってきた最後に、今の自分に一番近しいところから曲を書きたいと思ったんですよね。今の社会の中で生きている自分、どういうムードが社会にあって、その中で自分が何を思っているのかというところから始まりたいなという」

こうしたメッセージ性の“深さ”も、アルバムの大きなポイントになっている。

「自分の音楽の転換点になるアルバム、ここから何かが変わっていくような作品になるといいなと思っていた」

秦 基博はこんな風に語っていた。サウンドにも、メロディにも、言葉にも、彼独自の探求精神が息づいている。それがアルバムの“深さ”をもたらしているのだろう。

文◎柴 那典



■6thアルバム『コペルニクス』

2019年12月11日(水)発売

▲初回限定盤

▲通常盤

【通常盤 (CD)】UMCA-10072 ¥3,000 (税別)
【初回限定盤 (CD+DVD)】UMCA-19061 ¥4,500 (税別) ※スリーブケース仕様
▼CD収録曲 ※全形態共通
01. 天動説 (instrumental)
02. LOVE LETTER
03. Raspberry Lover
04. Lost
05. アース・コレクション
06. Joan
07. 在る
08. 地動説 (instrumental)
09. 9inch Space Ship
10. 仰げば青空
11. 漂流
12. 花
13. Rainsongs

▼DVD ※初回限定盤
<日南市合併10周年記念 “HATA EXPO” in 飫肥城下町> (2019.10.20)
・グッバイ・アイザック
・フォーエバーソング
・花咲きポプラ
・仰げば青空
・Raspberry Lover
・シンクロ
・スミレ
・鱗(うろこ)
・ひまわりの約束
-Music Video-
・Raspberry Lover (Music Video)
・仰げば青空 (Music Video)
・花 (Music Video)

▼封入特典 ※全形態共通
・HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2020 ―コペルニクス― CD購入者限定 チケット抽選応募受付案内
・HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2020 ―コペルニクス― CD購入者限定 ミート & グリート抽選応募受付案内
・「コペルニクス」CD購入者限定 スペシャルイベント参加抽選応募受付案内(東京、大阪の二箇所を予定)
※封入特典の詳細はオフィシャルサイトにて

▼Newアルバム CDショップ予約・購入特典
全国のCDショップ及びWEBで12月11日発売NEWアルバム(初回限定盤 UMCA-19061 / 通常盤 UMCA-10072)をご予約・お買い上げの方に先着で「アナザージャケット」をプレゼント。
※一部店舗では特典のお取り扱いがない場合もございます。あらかじめご希望の店舗で特典の有無をご確認の上、ご予約・お買い上げください。
※特典は先着です。数に限りがございます。
※アナザージャケットは、共通絵柄となります。

【「在る」デジタル先行配信】
2019年12月4日(水)配信開始
https://MotohiroHata.lnk.to/Aru

■<HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2020 -コペルニクス->

3月04日(水) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
3月08日(日) 香川・レグザムホール (香川県県民ホール)
3月13日(金) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
3月18日(水) 大阪・フェスティバルホール
3月29日(日) 石川・金沢歌劇座
3月31日(火) 愛知・名古屋センチュリーホール
4月03日(金) 福岡・福岡サンパレス
4月07日(火) 大阪・オリックス劇場
4月11日(土) 広島・広島文化学園HBGホール
4月15日(水) 京都・ロームシアター京都
4月19日(日) 北海道・札幌市文化芸術劇場hitaru
4月24日(金) 宮城・仙台サンプラザ
4月29日(水・祝) 岩手・岩手県民会館
5月02日(土) 滋賀・びわ湖ホール
5月10日(日) 群馬・高崎芸術劇場
5月15日(金) 静岡・静岡市文化会館
5月21日(木) 神奈川・横浜アリーナ
▼チケット
全席指定¥7,150(税込)
※5月21日(木)横浜アリーナのみ¥7,700(税込)

映画『ステップ』

2020年4月3日(金)より 全国ロードショー
原作:重松清「ステップ」(中公文庫)
監督・脚本・編集:飯塚健(『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』『笑う招き猫』『虹色デイズ』)
出演:山田孝之、田中里念、白鳥玉季、中野翠咲、伊藤沙莉、川栄李奈、広末涼子、余貴美子、國村隼 ほか
主題歌:秦 基博「在る」(UNIVERSAL MUSIC JAPAN)
製作プロダクション:ダブ 配給:エイベックス・ピクチャーズ
(C)2020映画『ステップ』製作委員会


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