【インタビュー】 マキシム(from The Prodigy) 、「昨日よりも良い明日を生きたいと思う」

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■ 今回はフレッシュな作品にしたかった

──今、コンシャスなメッセージを打ち出してゆくことに時代性を感じます。特にUKのアーティストは、社会とどうやって関わってゆくかを模索しているようにも見えます。

マキシム:ミュージシャンとして活動し始めたばかりの頃、僕は「Maxim Reality」という名義で活動していた。“Reality”の部分に社会的な意味が込められていたんだ。そこからThe Prodigyのメンバーとして活動してゆくうちに、結局社会的な問題にあまり言及していないことに気づいたんだ。それで、Maximだけが残ったのさ。いや、メンバーはそれぞれ政治的な信条は持ってたよ? でもそれをバンドで表現することはなかったんだ。そしてそれは僕らだけじゃなかった。あの時代、音楽は“ただ踊って聴くもの”だったね。実際のところ、レイヴカルチャーが政治性を帯びてきたのは結構後だったと思うよ。その頃に比べると、確かに多くのアーティストが社会との関わりしろを探しているように見えるね。もちろん、僕も含めて。


──SNSを見ていると若手ほどその傾向が強いように思います。Floating PointsやDaniel Averyなど、積極的に政治に対して発言してますよね。今作でChampazやKalisha Jら若手をフックアップしたのも、コンシャスな意図があったからですか?

マキシム:いや、そこに社会的な意図はないよ。Kalisha Jはバックシンガーをやっているんだけど、いとこの友達なんだ。今回は「RUDEBOY」や「MANTRA」に参加してもらってるね。彼女は僕の歌詞をうまく表現してくれるよ。Champazは友人の友人なんだ。基本的にこのアルバムの95%は僕が書いてるんだけど、唯一自分以外が書いたのが「ON AND ON」のChampazのバースで。実のところ、2人ともアルバムの世界観に声が合ってたからお願いしたんだ。ただ、社会性とまで言わずとも、若手のルサンチマン的な勢いを取り入れたかったのは事実だよ。同世代のアーティストを起用することもできたけど、今回はフレッシュな作品にしたかったんだ。


──最後に余談なのですが、あなたはモダンアーティストMとしても活動していますね。実は私、あなたの展示会に行ったことがあるんです。2011年にロンドンのConvent Gardenで開催された個展だったんですが、その時にあなたと少し話ができました。「アートと音楽は分けたいんだ」と仰っていたのですが、その考えは今も変わりないですか?

マキシム:僕はそんなことを言ったのかい?(笑)

──ええ(笑)。恐縮しながらThe Prodigyのレコードにサインをもらったので、よく覚えてます。

マキシム:それはすまなかったね。今は全然そんなこと思ってないよ。当時を振り返ると、同時に2つのことをすることが好まれなかったんだ。ファンに「The Prodigyで音楽やってるのに、現代アートですか?」と言われるのが嫌だったんだね。日本にそういう風潮があるかは分からないけど、その頃のイギリスではそのように考えられてた。今は変わってきていて、ミュージシャンでも色んなことが出来るようになってきたよね。その証拠に、『LOVE MORE』のボックスセットを買うと僕の特製アート作品が付いてくるよ(笑)。2011年の個展には蝶の絵が展示されてたと思うんだけど、君の感想が聞きたいな。


──その時の私はまだティーンエイジャーで、世の中に対する鬱憤がたまってました。正直家庭環境もあまり良くなかったです。そんな時に、あなたの絵を見に行きました。ダークなトーンの蝶が描かれていたのを覚えています。蝶って本来はキレイな昆虫として扱われることが多いですけど、必ずしもキレイな生き方をしなくても良いんじゃないかって考えに至りまして。それが当時の私には大きく影響して、あなたの絵を買おうかとも思いましたが……ちょっと高くて無理でしたね(笑)

マキシム:はは(笑)。君の飛行機代が無くならなくて良かったよ! もうちょっと安ければ良かったね。絵について少し語りたいんだけど、実はあの作品には“ダークな蝶を描いた”って実感はなかったんだ。あの蝶はメタファーのつもりで描いたんだよ。……まぁ、実際は君と同じようにダークな印象を持った人が多かったんだけど。嵐の中に人がいて、その中で戦う相手が蝶。でもその善悪は不明。見る人によっては人間が悪のように見えるし、蝶が悪のように見える。鑑賞する人がどちらの側に立つにしても、カタルシスを感じてほしかった。それによって、エンパワーメントされるというか。


──その煽情的なアプローチ、なんだか本作『LOVE MORE』にも通じる話じゃないですか…?

マキシム:17歳の頃から詩を書いてるんだけど、読み返すとその頃から僕のスタンスは変わってないんだよ。人々をエンパワーメントしたい欲求は当時からあった。誰もが自分の中に悪魔を飼っていて、そいつと戦わなくてはならない。でも僕は負けずに昨日よりも良い明日を生きたいと思う。そういうチャレンジは、みんなにも続けて欲しい。キースがいなくなった今、ますますそう感じるよ。

取材・文◎Yuki Kawasaki
写真◎尾藤能暢

■『LOVE MORE 』配信情報
https://avex.lnk.to/Maxim_LOVEMORE

『LOVE MORE 』

発売日 : 2019 年12月4日(水)日本先行
形態:CD、配信(サブスク、ハイレゾ)

■CD形態&配信(※CDは日本限定)
・CD通常盤:2,300円(+TAX)
・初回生産限定BOX(CD+Tシャツ):5,500円(+TAX)
(BOXはTOWER RECORDS限定)

■トラック
1. FEEL GOOD
2. CAN’T HOLD WE
3. RUDEBOY
4. MANTRA
5. ON AND ON
6. LIKE WE
7. PUSH THE CULTURE
8. PUT IT PAN WE
9. VIRUS
10. BATTLE HORNS
日本ボーナス・トラック
11. RISE
12. OUTLAW

CD通常盤
・マキシムからキースへのメッセージ記載
・マキシムによる曲目解説(翻訳)入り
・日本限定CD化
・日本盤のみボーナス・トラック2曲収録
・初回ジャケットデザインステッカー封入
・歌詞・対訳付き

▲『LOVE MORE 』ジャケット

▲TOWER RECORDS限定初回生産限定BOX付属 Tシャツ


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