【ライブレポート】Hakubi、<真・粉塵爆発ツアー>ファイナルで「ひとりぼっちが集まれば、ひとりぼっちじゃない」

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京都発スリーピースロックバンド・Hakubiの<真・粉塵爆発ツアー>ファイナル公演が12月14日(日)、渋谷TSUTAYA O-Crestで開催された。

◆Hakubi 画像

2017年の結成からまもなく発表した「夢の続き」のMV視聴回数が240万回を突破するなど、早くから話題を集めていた彼女たちが、初の全国流通盤となるEP『光芒』に続いて、11月6日にリリースした今年2枚目のEP『追憶』。年間100本近いライブを重ねる中で演奏されてきた楽曲も含めた全3曲には、ヒリヒリした痛みや弱さも含めて、バンドが生きる“今”が詰まっている。そんな一枚をひっさげて回った全国6ヵ所の<真・粉塵爆発ツアー>最終地点。文字通り、進化のさなかにいる瑞々しさと危うさを爆発させながら、Hakubiがしっかりと未来へ突き進んでいることを堂々証明した一夜だった。




ソールドアウトの会場は、ゲストのMaki、神はサイコロを振らないの2バンドの熱演が終わった時点で、すでに期待の熱気が立ちこめている。しかしそれは、ロックで楽しく踊ろうと構えている熱気というより、ステージにしっかりと向き合ってじっと息を呑むような、心地いい緊張感。真剣な眼差しのオーディエンスに拍手で迎えられ、Hakubiの3人が静かに現れた。

「このバンドを始めて、最初に作った曲」という紹介から、「もう一つの世界」でライブはスタート。スリーピースから放たれる音は、ストレートで余計な飾り気がないぶん生々しく、その中を芯のある片桐の歌声が凜と響き渡る。音から、言葉から、3人に脈打つロックの衝動が抑えきれずに溢れ出てくるようだ。それはきっと、生きるために叫ばずにはいられない叫び、生きるために掻き鳴らさなければいけない音。2曲目の「辿る」では、マツイユウキ(Dr)のタイトなビート、片桐とヤスカワアル(B)がステージの際まで身を乗り出して煽る気迫に、オーディエンスもコブシを掲げて応えていた。



Hakubiの楽曲、特に『追憶』収録の「Dark.」や「午前四時、SNS」で歌われるのは、目を背けたくなるほどリアルな、でも逃れられない孤独と自意識の葛藤だ。時につぶやくように、時に泣き叫ぶように歌う片桐は、まるでひとりで暗い部屋の中にいるようにすら見える。もしかしたらそれはみんな同じで、この場所に集まっていても、その実、ひとりひとりの心は暗い部屋の中にいるのかもしれない。だからこそ、片桐が「mirror」の曲中に語った、「ひとりぼっちが集まれば、ひとりぼっちじゃない」という言葉が沁みる。誰しもが抱える闇を否定するのではなく、その痛みが共鳴して繋がっていくぬくもりがある。「絶対にあなたの味方になる。あなたのために歌います!」と、華奢な体からは想像できない力強さで叫ぶ彼女から、目が離せなかった。巻き起こるシンガロングの中で、感極まるオーディエンスもいたのだろう、片桐が「泣くなよー!」と声をかける。

ライブを締めくくったのは、同じく『追憶』からのバラード「17」。音源でもその壊れそうな繊細さが際立つ1曲だけれど、ライブでの威力はその比ではなかった。“泣いても消せない夜 どこかに誰かいませんか?”と、救いを求める悲痛な弾き語りで始まり、壮大なバンドサウンドを経て、中盤アカペラになる圧巻のライブアレンジ。研ぎ澄まされた言葉のひとつひとつが痛いほど突き刺さる。しかしそれ以上に、その歌声は、絶望の先に光を掴み取る強さと優しさで会場を包み込んでいた。




最後に、すべてを出し尽くしたような表情で「これからも走り続けます!」と宣言し、「笑顔で会えますように。アンコールはしません!」と言い切るのがなんとも潔い。満場の拍手に包まれながら、深々と礼をして3人はステージをあとにした。

約1時間の濃密なライブにあったのは、自分が生きるために鳴らす音楽が、誰かを救う音楽になっていく光景。そして今夜、その「誰か」の笑顔で、彼女たちはこの場所から一歩踏み出した。Hakubiが作り出す美しい循環は、これからもっともっと多くの人と繋がっていくに違いない。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎翼、

■Hakubi<真・粉塵爆発ツアー>12月14日(日)@渋谷TSUTAYA O-Crest セットリスト

01. もう一つの世界
02. 辿る
03. Dark.
04. サーチライト
05. 午前4時、SNS
06. Sommeil
07. 賽は投げられた
08. mirror
09. 17




■4th e.p「追憶」

11月6日 全国流通リリース
1.午前4時、SNS
2.Dark.
3.17

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