【連載+ライヴレポ】櫻澤の本気 II 第4回『暗黒秋櫻』

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厄年ってあるよね? 一般的に厄年を迎える年齢は、男女によって異なるようだし、各土地によっても厳密には異なるようだよね。厄年も、前厄、本厄、後厄が3年に渡ってあるようだしね。

◆櫻澤泰徳 画像

<暗黒秋櫻>というイベントは、櫻澤自身が前厄とされる40歳を迎える日に始めたイベントで、先日の2019年11月20日の<暗黒秋櫻>で丁度10年目だったんだ。基本的には毎年一回の開催なんだけど、2012年5月25日と、2013年および2014年の11月20日(深夜公演だったので厳密には11月21日)に番外編というのを開催しているので、開催数は13回。アーカイブ的なものを以下に。

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▼2009.11.20 渋谷Egg Man
cast:Lion Heads / kaoru / test-No. / the SPACE FILTERS
▼2010.11.20 高円寺Show Boat
cast:BY-SEX / CIRCUIT9 / kaoru / IKUO, YUKI, 吉田トオル
▼2011.11.20 渋谷O-WEST
cast:村上“PONTA”秀一, 仙波清彦, 鶴谷智生 / aie, 清, YOW-ROW / aki, HIRO, Shinobu, 人時, 都啓一 / ZIGZO
▼2012.05.25 高田馬場CLUB PHAZE <番外編>
cast:BY-SEX / CIRCUIT9 / THE MADCAP LAUGHS / 桐嶋直志, あらケン, TAKASHI, 都啓一
▼2012.11.20 渋谷O-WEST
cast:test-No. / THE JUNEJULYAUGUST / THE MADCAP LAUGHS / 暗闇でサングラスズ
▼2013.11.20 渋谷BURROW
cast:INSIDE ME / the god and death stars / THE MADCAP LAUGHS
▼2013.11.21 新宿Loft <番外編>
cast:ズーリオカ/ THE MADCAP LAUGHS / タダセンパイ / あらケン / 満園庄太郎 / アンジェラ・キヨシ / 佐藤賢治 / ルナティック荻窪
▼2014.11.20 下北沢GARDEN
cast:Rayflower Acoustic / THE MADCAP LAUGHS + ミヤ / ジン / ザ・マスミサイル / eStrial
▼2014.11.21 新宿Loft <番外編>
cast:Rayflower Acoustic / TOSHI(所沢) / 藤田幸也 / 中村泰造 / 吉岡寿之 / LUNATIC荻窪-REBOOT-/ MIYA / YOUSUKE / high fashion paralyze
▼2015.11.20 高円寺HIGH <“Busker Noir”in 暗黒秋櫻>
cast:五十嵐公太 / Toshi Nagai / 力武誠 / 篤人 / 夢時 / 田浪真悟 / 荒井司海 / 吉田トオル
▼2016.11.20 下北沢GARDEN <“Busker Noir”in 暗黒秋櫻>
cast:村上“PONTA”秀一 / 仙波清彦 / 五十嵐公太 / Toshi Nagai / 風間弘行 / KAZI / 楓 / 篤人 / 夢時 / 田浪真悟 / 荒井司海 / THE MADCAP LAUGHS
▼2017.11.20 下北沢GARDEN
cast:kazuma / Közi / kazu / aie / Aki / 圭 / THE MADCAP LAUGHS
▼2018.11.20 吉祥寺SEATA <“Busker Noir”in 暗黒秋櫻>
cast:LEVIN / shuji / 直人 / Natsu / SORA(vo) / 夢時 / YOSHIHIRO / 田浪真悟 / 荒井司海 / 都啓一
▼2019.11.20 新宿ReNY
cast:gibkiy gibkiy gibkiy / THE MADCAP LAUGHS / Rayflower / ZIGZO

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となっている。<暗黒秋櫻>を開催する迄の櫻澤は、自分の誕生日を大々的にアピールしたくはなかったんだよ。おこがましいし、誕生日から性格とかを判断されるのもイヤだったし、なんだか生々しい感じがしていたんだ。でも、自分が40歳を迎えるにあたって、人生の折り返し地点的なものを感じて、自分が賄える範囲でやりたい事が出来るイベントをやろうと思ったんだ。

そもそもは、前厄、本厄、後厄の厄払いを兼ねたような三部作にしようとしていたんだ。それが、2012年5月25日の“番外編”を催す運びになってからは、やれる迄はやってみようとしたら、10年になっていた。ここ迄続いた<暗黒秋櫻>も、先日の新宿で集大成なものが出来たんじゃないかなぁっと思っているのだけれども、流石に4つのバンドの掛け持ちライヴは疲れたよ(笑)。実は、一区切り付けようかと思っていたんだけど、ZIGZOの高野哲に「10年後は赤いちゃんちゃんこを着てやりなよ」と言われて……どうしよう。

以下は、<Sakura 50th Birthday Anniversary “暗黒秋櫻”~全櫻澤公演 2019~>2019年11月20日(水)@新宿ReNYのライヴレポート(文◎村上孝之)です。

   ◆   ◆   ◆


10年前から毎年誕生日の11月20日にバースデーライヴを行っている、Sakuraこと櫻澤泰徳。50歳の節目を迎える2019年は<“暗黒秋櫻”~全櫻澤公演 2019~>と銘打ち、彼が現在参加しているZIGZOとRayflower、THE MADCAP LAUGHS、gibkiy gibkiy gibkiyが集結して開催されることになった。

“ドラマーがSakura”ということが共通しているとはいえ、キャラクターが大きく異なる4バンドの競演で、さらにSakuraは出ずっぱりということで、どんなライヴになるのか想像がつかないと同時に、“観たい”と強く思った。同じ思いに駆られたリスナーが多かったことを証明する形で、ライヴ当日はSakuraの誕生日を祝うべく、新宿ReNYに多数のリスナーが集結。平日公演ながら開場時から場内はオーディエンスで埋まり、華やかな空気に包まれた中でのライヴとなった。


▲gibkiy gibkiy gibkiy

先陣を切ってステージに立ったgibkiy gibkiy gibkiyは、「さぁ、そのまま、帰ろう。」や「愛という、変態」「強いられた無から孔から穴へ、マッチポンプ の兎は屍」などを相次いでプレイ。ミステリアスなオーラを放ちながら感情を露わにして歌うkazumaの存在感は圧倒的だし、sakuraの緻密なドラムとkazuの力強いベースが生み出すファットなグルーヴやaieのアグレッシヴでエモーショナルなギターも実にいい。4人が描き出すgibkiy gibkiy gibkiyならではの暗さと激しさを湛えた世界観は魅力に富んでいて、オーディエンスも強く惹き込まれていた。と同時に、アッパーなライヴで場内のテンションを上げるバンドではなく、ダークな世界観を見せつけて魅了するgibkiy gibkiy gibkiyをイベントのオープニングに持ってくる辺りはsakuraらしいなと思わずにいられなかった。

ライヴ後半では「箍を外す場合、穴に群れる具合」と「脳内に」が演奏された。静と動の対比を活かした楽曲構成、バックのリフとシンクロしない独創的なヴォーカル、ディレイの発振ノイズを活かしたギター、ステージに横たわって歌うkazumaの姿などが一体になって生まれるカオスな味わいは、gibkiy gibkiy gibkiyの真骨頂といえる。特にsakuraの激しい乱れ打ちとkazumaのリーディングをフィーチュアした「脳内に」のエンディングは圧巻で、オーディエンスに強烈なインパクトを与えてライヴは終わった。ライヴ中に一言も発しなかったkazumaが、最後に「sakura、誕生おめでとう」という言葉を残してステージから去っていったことも心に残った。

▲THE MADCAP LAUGHS

THE MADCAP LAUGHSはaie (Vo&G ※gibkiy gibkiy gibkiyのGでもある)と女性ベース&ヴォーカルの清、ドラムのsakuraからなる3ピースバンドだ。力強く疾走する「I’m hope」やメロディアスなサビを配したミディアムチューンの「poker face」、プログレッシヴロックに通じる知的かつスリリングな味わいの「ラブイズボーダー」などで楽しませてくれた。

sakuraはgibkiy gibkiy gibkiyから引き続き、緻密なリズムパターンや流麗なフィルワーク、スクエアな2バスなどを駆使したドラムプレイを展開。楽曲のダイナミクスを司る抑揚を効かせたアプローチが光っていたし、引き締まった表情で饒舌なプレイを行う姿もカッコよかった。そんなsakuraに負けず劣らず、幅広い声域や表現力が光るヴォーカルとコードセンスの鋭いギターが特徴的なaie、スラップを多用する独創的なアプローチを軸にしつつ、凝ったリフを弾きながらエモーショナルに歌う清も魅力的。秀でた演奏力を発揮して、キーボードやシーケンスを使わない3ピースのシンプルなサウンドで、深みのある世界を構築したのはさすがといえる。

THE MADCAP LAUGHSのステージはgibkiy gibkiy gibkiyと同じく、MCを一切入れずに翳りを帯びた世界観を紡いでいくという、ある意味ぶっきらぼうなステージだったが、それが彼らに似合っている。“パワフルなのにハジけない”という彼らの個性は素晴らしく、客席に煽りを入れたりしないのにオーディエンスが熱いリアクションを見せていることも印象的だった。


▲Rayflower

Rayflowerのステージは、やや陰りがありながらも雄大かつパワフルな「悲劇のメシュード」で幕を開け、雄大さにスピード感が加わった「哀しみのリフレイン」で一気に炸裂する流れから始まった。激しいステージングを展開しながらプレイするメンバー達の姿と爽快感に溢れたサウンドにオーディエンスのヴォルテージはさらに高まり、場内は華々しい空気に包まれる。

前向きなオーラを発して情熱的に歌う田澤(Vo)、ホットなステージングとシュアなプレイの取り合わせが光るYUKI(G)とIKUO(B)、多彩な音色とアプローチで楽曲のエモーションを深める都(Key)、そして、ダークなgibkiy gibkiy gibkiyやTHE MADCAP LAUGHSとは大きく異なるアッパーなバンドなのに、ドラマーが同じくSakuraというのは不思議な感じだ。しかし、ライヴが始まると同時に場内がバンドのカラーに染まるところは、すべてに共通している。

その後はSakuraのバースデーライヴということで、彼が書いた楽曲「S.O.S~沈黙のスカーレット~」を披露。田澤のMCによると、今回のライヴを「悲劇のメシュード」から始めたのもSakuraの意向だったそうだ。異国情緒を感じさせる「S.O.S~沈黙のスカーレット~」や愁いを湛えたライヴの幕開けなどからもSakuraの指向性を読み取ることができた。

ウォームかつ煌びやかな「Words Of The Wise Man~時の贈り物」なども織り交ぜつつ、ライヴ後半では「Make A Judgement」や「Soul survivor」といったパワフルでアッパーなナンバーを畳みかけかけるようにプレイ。Sakuraも笑顔を浮かべて、楽しそうにドラムを叩いている。爽快感に溢れたステージに応えてオーディエンスは一体感に溢れたリアクションを見せ、場内は多いに盛り上がった。


▲ZIGZO

トリを務めたZIGZOは、キャッチーなシャッフルチューンの「Zippy Gappy Zombies」からスタート。ホットなTETSU(Vo&G)とRYÖ(G)、クールなDEN(B)とSAKURAが生み出す強靭なケミストリーがステージから客席へと溢れ出す。他のバンドと同じく、ライヴが始まると同時に場内はZIGZOワールドと化し、オーディエンスは1曲目から熱いリアクションを見せていた。SAKURAはここまでの3バンドで使用した7タム仕様のドラムセットから“26インチのバスドラ+2タム+2フロア”のセットにチェンジ。ブラックシャツにシルバーのタイというスタイリッシュな衣装で肉感的なドラミングを行う姿が最高にカッコいい。

その後も勢いを保ったまま「バタフライ」や「ひまわり」「everlast」などをプレイ。メンバー全員が熱くパフォーマンスしながら常にサウンドがタイトなのは実に見事で、ZIGZOはベテラン感と悪ガキっぽさを併せ持ったいいバンドだと思わずにいられなかった。そして、もうひとつ気づいたことだが、今回出演した4バンドは強い個性と魅力を備えたメンバーが揃っているところも共通項といえる。この辺りからはSAKURAが理想とするバンド像を改めて感じることができた。

「SAKURAさん、一言お願いします」とライヴ中のMCでTETSUに振られたSAKURAは、「えっ? ノープランなんだけど……」と一瞬とまどった後、「生きていると、いろいろあるな。でも、思い返すといいことばかり。思い返すと笑えることばかり。そんな、いい人生を送れているなと実感していますわ。みんな、どうもありがとう」とコメント。客席からは温かに溢れた拍手と歓声が湧き起こった。

終盤では「血と涙の裏側のハッピー」や「I’m in Love」、TETSUが「この曲もSAKURAがやりたいと言った曲です」という言葉を添えた「FOREVER YOUNG」などが続けざまに演奏された。力強さとエモさを併せ持った楽曲とメンバーが織りなすフィジカルなステージングにオーディエンスのヴォルテージはどんどん高まっていき、場内はイベントの締め括りにふさわしい熱狂的な盛り上がりとなった。


ZIGZOのライヴが終わった後、出演者全員がステージに姿を現して“1本締め”、そして客席をバックにした写真撮影が行われた。メンバー達がステージから去ったあとも1人ステージに残り、客席に向けて丁寧なお辞儀を繰り返すSakura。多くを語ることなく、振る舞いで深い感謝の意を表す辺りもSakuraらしい。

<Sakura 50th Birthday Anniversary “暗黒秋櫻”~全櫻澤公演 2019~>はSakuraの50歳を祝したイベントに見合った観応えのあるライヴで楽しめた。キャラクターの異なる4バンドの顔合わせだったが、どこか同じ匂いを持ったバンドが揃っていたため散漫な印象になることはなく、全体を通してストーリー性を感じさせるライヴになっていることが印象的だった。そんな良質なイベントになったのはSakuraの美学が反映されたからなのは言うまでもない。他ではなかなか観ることができないイベントだっただけに、機会があればぜひまた同じ顔触れでライヴをしてほしいと思う。


それにしても、全くパワーダウンすることなく4時間弱に亘ってパワフルなドラムを叩き続けたSakuraは“凄い”の一言に尽きる。ドラマーとして常に上を目指し、日々鍛錬し、進化し続けする彼ならではの化け物ぶりに圧倒された。50歳という年齢はSakuraにとって単なる通過点でしかなく、今後の彼はさらなる高見に到達するに違いない。それを確信させられる一夜だった。

   ◆   ◆   ◆

■<ZIGZO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2019>Tour final

▼2020年
01月19日(日) 東京・マイナビBLITZ赤坂
open16:30 / start17:30
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888
▼チケット
1Fスタンディング:前売¥5,500(税込)/当日¥6,500(税込) ※ドリンク代別
VIP席¥20,000(税込) ※ドリンク代別・2F指定席(先行販売のみ)
※VIP限定オリジナルプレゼント付&アフターショーパーティー有り

■Rayflower 2010-2020 10th Anniversary Best Album『~One Side & One Side~』

・結成10周年を迎えたRayflowerがファンとの強い”絆”を結ぶ10th Anniversary Best Albumを2020年リリース
・ベストアルバム制作に伴いOfficial Fan Club「Shining GARDEN」会員から収録曲のリクエストを募集
・リクエストの多かった楽曲を収録曲として再レコーディングし、現在のRayflowerだから鳴らせる楽曲として収録予定
▼リクエスト
受付期間:2019年12月24日(火)21:00 ~2020年1月31日(金)23:59
FC「Shining GARDEN」サイト https://shining-garden.jp


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