【インタビュー】COMEBACK MY DAUGHTERS、EP『WORN PATH』にサブスクの影響とバンドの変化「僕らが腑に落ちるリリースの仕方」

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長いトンネルを抜け、目の前の視界が一気に開けた。COMEBACK MY DAUGHTERS (以下カムバック)が新代田FEVERで2019年11月17日、6年ぶりに開催したワンマンライヴは、そんな印象があった。その日、彼らはEP『WORN PATH』もリリースした。全6曲というまとまった曲数を収録した音源としては、5thアルバム『Mira』以来6年ぶり。エモをバックボーンに持ちながらルーツミュージックの要素も取り入れるカムバックサウンドの最新モードを物語る『WORN PATH』を聴けば、この数年、ライヴ活動を続けながらバンドが足踏みしているように感じていたファンも、ようやく彼らが新たな一歩を踏み出してくれたと思うに違いない。11月17日のワンマンでもバンドの気持ちが前向きに変化したことを思わせる言葉が、フロアを埋めた観客を歓ばせた。

◆COMEBACK MY DAUGHTERS 画像

この数年間、もやもやしながら思っていたことを訊くには絶好の機会と思い、インタビューをオファーしたところ、5日間におよぶタイ遠征から帰ってきたばかりのバンドを代表して、高本和英 (Vo / G)とCHUN2 (G)が快く応じてくれた。2人の言葉から窺えるカムバックの“今”は、さらにファンを歓ばせることだろう。彼らは『WORN PATH』のアナログ盤のリリースとリリースツアーも予定しているという。結成から21年。カムバックは、なかなかしぶとい。因みに『WORN PATH』はバンドのウェブサイトとライヴ、一部店舗で入手可能。また、各サブスクリプションサービスでも配信されている。

   ◆   ◆   ◆

■僕らがすごくいいと思っていた頃の
■日本のシーンみたいな感じがタイにあった

──タイのラジオ局主催の音楽フェス<CAT EXPO>に出演した11月のタイ遠征は、どんなきっかけから実現したんですか?

高本:新代田のライヴハウス“FEVER”がタイのラジオ局とか、タイで日本のバンドをケアしてくれている日本の方たちとか、現地のバンドとかと交流を積み重ねてきて、毎年、日本のバンドを1組ぐらい<CAT EXPO>にブッキングしているんです。最初、カムバックはスケジュール的にちょっと厳しいだろうと思ってたみたいなんですけど、「いや、行きますよ」ってぽろって言ったら、行くことになりました(笑)。

──日本のバンドって、他にはどんな人たちが?

CHUN2:the band apart、ATATA、LOSTAGE。

高本:cinema staffも行ってましたね。

▲<CAT EXPO>@タイ

──タイはいかがでしたか?

高本:最高ですよ(笑)。タイという国が最高でした。負のオーラがないと言うか、元気いっぱいなんですよ。暑いし、元気だしみたいな(笑)。行ってから帰るまでとても楽しかったですね。

CHUN2:やっぱ微笑みの国って言うぐらいだから、ほんとにみんなやさしいし、音楽に対しても、熱量と言うか、ピュアな気持ちがあるように感じたし。ライヴもすごく楽しかったです。

──<CAT EXPO>は3万人ぐらい集まる、けっこう大きなフェスだそうですね。

高本:営業している遊園地の中でやっているんですよ。だから、アトラクションに乗る人たちもいる。日本で言う音楽フェスとはちょっと違う感じで、ライヴを見に来た人が多いのか、遊園地に遊びに来ている人が多いのかわからなかったですけど(笑)、とりあえず人は多かったですね。ライヴ中、後ろでジェットコースターがガーガー走っていてうるさいんですけど、その景色が最高なんですよ。

CHUN2:まだ、そんなにルールが出来上がっていないのか、国民性なのか、ざっくりしていて。2日前にリハーサルやったんですけど、本番になったら、リハで使ったアンプが変わっていて、PAも違う人がやっているんですよ。「これ、リハやった意味あるのかな?」って(笑)。 

高本:僕のヴォーカルもものすごいリヴァーブを掛けられましたね。でも、それも良いのかなって言うか、僕たちにとっての今回のタイは、それで良かったと思いますね。おもしろかった。

──じゃあ、お客さんの反応も良かったわけですね?

高本:奇を衒ったセットリストで行ったんですよ。全然盛り上げる気がないみたいな。

CHUN2:ハハハハ。

高本:ぐっと聴かせてみようって思ったんですけど、実際、そうなりました。タイの人たちはライヴ中、すごく真剣に見ているという印象があって。わーわー盛り上がって楽しむと言うよりは、純粋に音楽を楽しんでいる気がしたんですよ。僕らの出演はフェスの2日目だったんですけど、ケアしてくれてる人のバンドが初日に出ていて、そのライヴを見たとき、それを感じたので、それに合わせてみようって。それで、日本ではあまりやらない感じのセットリストで。

▲<CAT EXPO>@タイ

──<CAT EXPO>以外でもライヴってやったんでしたっけ?

高本:やりました。タイに着いた日に。

CHUN2:ローカルのパンクロックのシーンがあって、そこでやっているライヴに入れてもらって。50人ぐらいしか入らない小さなところだったんですけど、そこでやらせてもらいました。

高本:めちゃくちゃ良かったですよ。出てるバンドもカッコよくて、そこではいつも通りの感じでやりましたけど。

CHUN2:電圧を確かめながら(笑)。いいバンドいたよね。まだ、そんなに人気はないのかもしれないですけど、DEATH OF HEATHERっていう。

高本:なんか、アメリカのDIIVみたいな(笑)。タイのバンドがみんなそうなのかわからないですけど、僕らが一緒にやったバンドは、日本で最近薄れてきている感じの超洋楽志向でしたね。サウンドもUSインディっぽくて、普段、日本で対バンしているバンドよりも音的なシンパシーは感じたかもしれないです。着てるTシャツとか、スタイルとかも。タイ人なのにMCの最後、必ず「Obrigado!」って言ってましたからね。えっ、そういうスタイルなんだって(笑)。

──着ているTシャツっていうのは?

高本:USインディのバンドの。

CHUN2:さっき言ったDEATH OF HEATHERのヴォーカルの子がDIIVのキャップを被ってたんですけど、ライヴを見てみたら、まんまDIIVで(笑)。ライヴハウスの外でスケボーをやってるみたいなライフスタイルもいい感じで、そういうバンドもいるんだって。

高本:僕らが持って行った音源を買ってくれた人たちもいたんですけど、外でスケボーやってた子たちが「君らの音楽、スケボーに合いそうだから買うよ」って言ってくれて。そういうの最近あんまり日本ではないけど、僕らが若い頃、よくあったようなこともすごくあって。言い方は悪いですけど、僕らがすごくいいと思っていた頃の日本のシーンみたいな感じがして、すごくいいなと思いました。

──ということは、最近の日本のシーンは、バンド活動しながら、“ちょっとやりづらい” “昔のほうが良かった”みたいなところもあるんですか?

高本:やりづらいってことはないんですけど、まぁ、何ですかね。僕ら、長くやってますけど、前回とは同じことをしたくないタイプなので、そういうことはやりづらくなっているかもしれないですね。地に足を着けて一歩一歩みたいなことは、すごくわかるんですけど、同じことをやっていると、やっぱ飽きちゃうんです。もっといろいろ敏感に動きたいんですけど、何か、そういうことは求められていないような気はちょっとしてましたね。

──そうなんですか?

高本:もう僕らには。たぶん若い世代には若い世代で、そういうのがあると思うんですけど、もう僕らには、そういうのは要らないというのはちょっと感じてましたね。

──カムバックには昔ながらのカムバックらしいものをやってほしい、と?

高本:そうですね。

CHUN2:でも、新しいことをやった気でいても、最終的にはカムバックの音になるとは思うんです。

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