【ライブレポート】R指定、凍結「青春を1度お返しします」

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ちょこちょこ挟んでくる小ネタから、意外とマモはお笑い好きなのか?と思ったところで、ライブは卒業式を連想させる流れへと。それはまるで、卒業生と在校生の呼び掛けを見ているかのようだった。まずはマモから、「楽しかった47ツアー!(メンバー:47ツアー!)」こんな調子で、47都道府県の思い出が綴られていく中、ツアー中にメンバーが泥酔して失敗した思い出も暴露される。まぁ、本人の名誉を守って誰が何をしたかはここでは書かないとしよう。とりあえず、このツアーは全部ひっくるめて、「さいくう!」ということでいいのではないだろうか。絶え間なく笑いが続いた後、メンバーはとうとう大事な核心に触れていったのだった。

「本日を持ちましてR指定は凍結させていただくんですけど、凍結の理由とかすごく気になっていると思うんですよね。ぶっちゃけ言うと、特に無いっすよ、深い意味は。深い意味は無いといいますか、ありきたりなことは言いたくないし、方向性の違いとか、メンバーの仲とかクソくらえじゃないですか。そんなんで解散するんだったら最初からバンドやるなっていう感じだし。最近ですね、R指定の今後の方向性をどうしていこうかなって考えたときに、10年間ずっと休まずに走ってきましたが、今、R指定ができることはやり尽くしたかなと。今がすごく最高潮な状態で、これ以上どうやってR指定を表現していこうかって考えたときに、やっぱりそれが思い付かなかったというか。そんな気持ちでR指定を続けても、結局みんなに失礼になるし、自分自身、自分たちもバンドをやりたくないというか。だから、ちょっと時間がほしいというか。今まで考える時間がなかったんで、10年間ずっと走り続けてきて休みもなかったし。だから、ちょっと止まって考える時間がほしい。簡単に言えば、ちょっと疲れっちゃったというか。少し休みたいなというか。すごくワガママなことは分かってるんですけど、それを俺からメンバーに持ちかけました。始めは色んな意見がありましたけど、5人で何度も話し合って理解してもらえて、今回こういう凍結という形を取らせていただきました。メンバーも色んな思いがあるのでちょっと聞いていきたいと思うんですけど(マモ)」


「始めてマモから言われたときに一瞬迷ったんだけど、正直、俺はいいんじゃないって。バンド始めるときもそうだったんだけど、大体「いいよ、はい」っていう感じで。何か、押さえ付けられてやることが嫌いで。何か、会社辞めたときも「すいません、辞めます」っていうぐらいで辞めたし、バンド始めるときも“はい、始めます”ぐらいでやってきたんで、そこに後悔はないから、今回も押さえ付けたら俺は後悔するなって。だから、“いいよ”って言いました。こんな形にはなったけど、今すぐここで俺が死ぬわけではないし、受け止めて下さい。お願いします(Z)」

「俺も、別に何とも思ってないというか。まぁ、メッセージとかたくさん来ますけど、俺が今日で死ぬみたいなメッセージたくさん来ましたけど(笑)(宏崇)」

「俺も、『恐怖新聞』みたいなDMめっちゃ来た(マモ)」

「僕は、今日死なないですから。別にR指定も死んだわけじゃないですから。凍結、活動停止という形にはなりますけど、ぬるぬるとやっていくよりかは、1度活動を止めて、そこで何か見えてくるものはあると思うので、その先に何があるか分からないけど、そこに期間が必要っていうのはマモも言ってたんで、それはダメやろって言って無理矢理にやらせるのも何か違うかなって思いまして、こういう形になりましたけど、僕は死なないんで。皆さん、元気を出していきましょう。暗~いメッセージばっかり来る、この1週間。人生は希望に満ちているよ、多分。ラブ&ピース(笑)。以上です(宏崇)」

「暗くなるのは分かりますけどね。R指定のことを俺ら以上に思ってくれている人たちがたくさんいますから、そこは受け止めてあげてよ(マモ)」

「うん(宏崇)」


「そうだね、ハッピーにいこう。なんだっけな、うーん。さっき宏崇も言っていたけど死ぬわけじゃないし。もしかしたら、帰りにデスドライブしちゃうかもしれないけど(笑)。でも、会えなくなると言っても、同じ地球にいる限りは、同じ空気を吸ってるわけだし、同じ月だって見れるし。ねぇ、昼は空を見ればいいと思うし、夜も空を見ればいい。まぁね、最初のMCでも言ったとおり、今日は本当に最高のライヴにしたいと思って臨みました。で、親愛なる君たちと、優秀なスタッフの皆さん、最高のメンバーたちとでR指定10年間最高のライヴが作り上げれました、ありがとうございます。今日という日を心に刻み付けて帰っていってほしいです。よろしくお願いします(七星)」

「えっとね、マモに最初に(活動を)止めるかどうかって話をされたときに、俺はそれは活動しながら考えることは無理なのかって話をして。で、まぁ、俺とマモは付き合いも長いから、そういう話をしたときにここまで迷っているマモを見るのが初めてやなと思って。みんなも言っているけど、じゃあやろうよって言うのも違うなって思ったし、逆に、マモが止めるからじゃなくて、どうこう言うこと自体がヤベェと俺はちょっと思ったぐらい。いつもイケイケなマモが不安そうなところを見せてきたときに、やっぱり時間いるなってなって。色々と急な発表になったりもしたけど、まず俺らがちゃんと飲み込んで、今日という1日を“とりあえず、楽しかったね”“良いライヴで今年が終われたね”っていう日にできたらいいなって。みんなも辛いかもしれないけど、とりあえず残り楽しんで帰って下さい、ありがとう(楓)」


「すごく、変わらないことというか、変えられないことに自分はモヤモヤすることが多くて。シーンのせいにするつもりもないけど、ずっと何か、なぁなぁでズルズルと今のヴィジュアル系シーンの時代が続いていくことにモヤモヤを感じていて。このままやっていても意味あんのかって正直思うときもあったし。だったら、そんなシーン自分で変えちゃえよっていう意見もあると思いますが、変えたいからこそ俺は今この道を選んだし、もしかしたらまた革命を起こすかもしれないし。すっげぇ革命起こすかもしれない、俺は。でも、期待させるようなことも言えないし、「絶対に会おう」とか。「また復活するから」とか。そういう約束はハッキリ言って、できない。でも、この10年間はすごく輝かしい10年間だったと思うので、皆さんには感謝しております。ありがとうございます。本当は、ツアーファイナルだからこんな辛気くさい話はしたくないですけど、話変えよっか。高崎のライヴハウス覚えてる? 片目だけ塗っただるまをもらったんですけど、そこで約束したんです。完走して両国に持っていって片目書くからって。持ってきたんで筆を入れたいと思うので、かえぴょん、ファイナルソングですよ(楓の即興ソングに合わせてZがだるまに目を入れる)。イエーイ。まぁ、何か辛気くさい話をしてしまったけど、まだこのツアーは終わってないし、両国国技館がツアーファイナルなので、最後の最後までぶち込んでこい! いいか! いけるかー!最高の景色見せてくれよ!(マモ)」

MC後に演奏された「規制虫」は、“解散したら誰も彼も 数年後には覚えちゃいねえ それなら言いたい事くらい 今言っといた方がいいやん?”と歌詞に出てくるのだが、マモがこの部分を特に語気を強めて歌っていたように見えた。そこだけに特化した曲でないのは分かっているが、もしR指定が凍結した後、俺たちのこと誰も覚えていないと思うなら、それは絶対に違う。ましてや、さっきのMCを聴いてしまったら、そんなことはあるはずがない。きっと、今ここにいる大多数が思っている。じっくりと考える時間を作ってほしいと。

だから、この曲の歌詞の一部を抜粋して投げ返したいと思う。メンバーよ、“一生一度きりの人生 やりたい様にやればいいさ”と。「お前ら、最高やなぁ」と満足そうなマモ。アンコール後半だというのに、体力的に全く衰えていない。それどころか、メンバー全員、演奏すればするほど、まだまだいけるというぐらいスタミナ充分な様子。「殺したいくらい愛してる」「魅惑のサマーキラーズ」でアゲな空間を作ると、「NEVADA」「VISUAL IS DEAD」で場内をカオスへと引きずり込む。


「VISUAL IS DEAD」をこの位置に持ってきたのも良かった。マモはまだ腐っちゃいない。それどころか、背筋を伸ばして“歌う意味のない歌は歌えやしない 誰もやらないなら誰がやる?誰がやる?誰がやる?誰がやる?”と歌ったときに、今は凍結という道を選んだけれど、未来はあると感じた。なぜかって? こんなにも場内が盛り上がっている様子を見たら、メンバー自身、終わらせたくないと思うだろう。もちろん、確実に今がR指定にとって最高潮(CLIMAX)なのだが、それ以上を作れるのは、他ならぬ、R指定でしかないからだ。

「楽しかったか、東京ー! 楽しかったかー! ほんとに、今日は集まってくれてありがとうございました。心から感謝しております。12月29日。本日、東京・両国国技館をもちまして、R指定は凍結します。えっと、みんなの青春を俺たちに預けてくれたからこその俺らの青春でした。その青春を1度お返しします。なので、大事に取っておいて下さい。素敵な思い出としてそれは取っておいて下さい。さっきも言ったように、「また会える」とか、「また復活します」とか、今はまだ言えませんが、もしかしたらその奇跡もあるかもしれないし、生きていればね、また必ずどこかで会えるかもしれません。綺麗事かもしれませんが、僕はそう思います。なので、R指定が凍結した後もそう悲観的にならず、このね、培った青春をお返ししますが、ずっと大事に取っておいていただけたら嬉しいなと思っております。ありがとうございました。次の曲で最後になります。大事に心を込めて歌います、聴いて下さい「-透明-」(マモ)」

ツアー初日から演奏していた新曲、「-透明-」がラストを締めくくる。最後、マモが「愛してるぞー!」と言うまで、観客は涙を我慢していた。「今日は最高でした。全国から集まってくれてありがとうございました、R指定でしたー! 10年間、ありがとうな! えっと、俺たちは終演後に集合写真を撮るようなクソバンドではなかったけど、今日だけは特別に撮りたいと思います。今日だけクソバンドになりまーす! いいじゃん、泣き顔もいいじゃん。ありのままの姿を見せてくれなんて、それもいいじゃん。撮るでー。本当に、今日は最高でした、ありがとう。君たちの青春はもらいましたが、さっきも言ったように、1度お返しします。でも、俺らの中ではずっと君たちは宝物なんで、忘れません。ありがとう! 最後に大きい声ちょうだーい!じゃあな!(マモ)」


この後、マモはたくさんの歓声にも振り返ることなくステージを去っていった。少しは後ろ髪をひかれたかもしれない。だが、今ここで振り返ってしまったら、指定女子と指定男子の顔がずっと脳裏に焼き付いてしまって活動を止めたことを後悔してしまう。あくまで憶測だが、そんなこともあって彼は振り返らなかったのではないか。一歩踏み出す為に、彼は前に進んでいった。対照的に、楽器陣は長い間ステージに居続けた。楓に至っては、ほぼ泣きそうな感じにも見えた。正統派ギタリストでありながらメンバー唯一のいじられキャラとして活躍してきた彼は、活動する上で悲しいという気持ちをあまり出して来なかったように思う。でも、今この瞬間だけはとても悲しそうな顔をしている。R指定の音楽を愛しているからこそ、今回の選択は苦渋の決断だったはずだ。それでも長い付き合いのマモの意見を優先した。そうした優しいところがギターの音色にも出ているし、このバンドにはなくてはならない存在だと実感させられた。

同じく、ギターのZはバンドの中で最年長というだけでなく、本当に心から大人の面を持っている。この日、メンバーがステージから去ってスクリーンに5人の直筆メッセージが映し出されたのだが、Zは「生きているだけで苦しい時代にR指定の音楽を通してみんなと出会えて幸せでした」と残した。丁寧な筆跡から、彼の人となりが伺えた。ステージで繰り出すアグレッシブなギターアクトとは別に、他人のことを気遣える姿勢が人気の秘訣だったのだろう。そして最後に、マモは「おやすみ。」とメッセージをしたためた。他のメンバーが長文だったので5文字だけというのも驚いたが、彼らしいとも言える。ライブ中、復活は約束できないと言っていたが、「おやすみ。」ということは、「おはよう。」と言える日が来ると思っていたい。これまで、多くのファンがR指定に楽曲を通じて生き方を教わった。「生きろ、お前らの居場所は俺たちが守る」と言われてきたから、どんなに辛くても生きてこられたのだ。ならば、今後、その居場所を守るのは、メンバーからバトンを渡された指定女子と指定男子だ。居場所があれば、人は必ず帰ってくる。だから、その日まで、みんなでR指定を大事に守っていこう。そして、いつか「おはよう。」と目覚めるときがきたら、また一緒に、青春の続きを始めよう。

文◎水谷 エリ
写真◎ゆうと。


◆R指定 オフィシャルサイト
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