【ライブレポート】NUL.、“素材の良さ”を感じる実験的ライブ

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そして2日目は、ベースにYUCHI(sukekiyo)、ドラムに石井悠也を迎えてのバンドスタイルで。サブ・タイトルの謎かけの答えは容易に見つけられていたものの、実際どうなるのか?はまったく想像がつかぬまま会場へ足を踏み入れたファンも多かったことだろう。昨日とは違った緊張感と期待で高まっているのを肌で感じつつステージを見守っていると、昨夜と同じく新曲「Cube」でHIZUMIが姿を見せ、唄い、そして岸のシンセが加わり、MASATOのギターが重なり……とオープニングは大方同じなのだが、明らかにサウンドが違う。

◆ライブ画像(10枚)
そう、暗がりの中でいつのまにかYUCHIと石井悠也がスタンバイし2人の音が加わっていたのだ。前日と同じ曲、同じ演出でありながら、下腹部に響く石井のドラムと、YUCHIのベース、人間でしか出せない微妙な揺れが大きなうねりとなって押し寄せてくる、そんな感覚に見舞われる。3人だけで構築されたNUL.の音にベースとドラムが入り込む余地はあるのか?と思っていたものの、そこは心配無用。2曲目「Black Swan」もドラムのカウント、鳴り響くシンバルの音、ベースの轟音……どこをとってみても、バンド演奏を前提に作られたのかと思うほど、いい意味で変貌を遂げている。


また、2人が加わってのライヴはHIZUMIや岸、MASATOのメンタル面にも大きく作用してるのか、HIZUMIの唄声の熱量も高くなり、岸のステージアクションがより激しさを増し、MASATOのギターもよりクレイジーに感じられるのは気のせいではないはず。つまり、初っ端のたった2曲を聴いただけで早くも気づかされる、NUL.の音楽に生のベース、ドラムが加わると、さらに熱を帯びるってことを。そして、早くも“NUL.+1+1”は全然ありだってことを我々は確信し、他の曲はどんな演奏になるのか、と先にあった不安がワクワク感へと変わっていく。

曲順こそ変われど演奏曲は昨夜と同じ。だが、YUCHIと石井悠也がサポートすることで楽曲にみずみずしさとエネルギーが加わり、これまでのそれとは違う形相をみせた楽曲、そして昨夜とは異なる表情をみせたNUL.の3人。HIZUMIが前日のMCで「僕はそっち(バンド)の人だから、明日が楽しみで仕方ない」と言っていたようにバンドスタイルはNUL.にとってイレギュラーであっても、当の本人たちにとっては、ごくごく自然な表現方法なのかもしれない。もちろん、バンド形態で演奏するための音のバランス、アレンジの微調整があってのことだとは思うが。いつもに増してテンション高め、フロアの温度も高めだった。


この2日間のライヴを通していえるのは、NUL.の音楽は映像ともバンドサウンドとも相性がいいということ。結局、素材(=楽曲、メンバー)がよければ、いかように料理しても美味いのだ。今回のVJ、バンドスタイルという初の試みに関しても、思惑どおりの結果かがえられたと、HIZUMI、岸利至、MASATOはにんまりしていることだろう。

ライヴ後、今回のバンドスタイルに関してはファンからの要望がTwitter上で上がっているのを多く目にした。とはいえ、これはあくまでNUL.の1つの実験としてとらえるほうが正しいのかも。なぜなら3人だけで完結させることも、バンドスタイルで表現できるのも、NUL.が求める、自由度の高いバンドだからできることなのだから。


これに飽き足らず、今後も大胆不敵に実験を繰り返しながらNUL.は進んでいくのだろう。もちろん、それができるのも、しっかとした楽曲とHIZUMI、岸、MASATOの3人の存在があってこそ。進んでいくその先の未来で、どんなステージを魅せてくれるのか。NUL.の進化形、まずは1月26日、初上陸の地、大阪十三GABU、3月27日、渋谷VUENOSのステージで我々は目撃することとなる。

文◎増渕公子
写真◎Wanda Proft、永井美紀

ライブスケジュール

<stage:2[ANOTHER FACE]>
2020年1月26日(日)大阪・十三246 LIVEHOUSE GABU

2020年3月27日(金)渋谷VUENOS ※詳細後日発表

◆NUL. オフィシャルサイト
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