【インタビュー】稀代の才能ジョーイ・アレキサンダー「ジャズこそが、僕がベストでいられる唯一のこと」

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ここ数年、ジャズ界で注目を集め続けているひとりのピアニストがいる。バリ島出身のジョーイ・アレキサンダー、16歳である。

6歳から独学でピアノを弾き始め、2年後に本格的なレッスンを受けるためにジャカルタに移り住むと、ユネスコ大使としてインドネシアを訪れていたハービー・ハンコックに絶賛されるというシンデレラストーリーを歩みだしたジョーイは、ジャズを極めることを決意し、ニューヨークに移り住んだのが11歳のときだ。翌2015年にはリリースされた1stアルバム『My Favorite Things』が12歳というジャズ部門最年少でグラミー賞にノミネートされ、ジャズ界のみならず音楽シーンに大きな衝撃をもたらした。16歳になった現在では計3つものグラミー・ノミネーションを経験し、2019年にはカーネギーホールでの公演も成功させるジャズ・ピアニストに成長を遂げている。

名実ともにジャズ・ピアノ界の新スターとして圧倒的な存在感を放つ彼は、2020年に名門レーベル:ヴァーヴからメジャー・デビューすることとなった。メジャー1作目となるアルバム『ワルナ』は、現在のジャズ・シーンをけん引するラリー・グレナディア(B)とケンドリック・スコット(Dr)という豪華な2人が脇を固めるピアノ・トリオ作品となっている。そこには、もはや「神童」という幼き天才少年ではなく、ひとりの作曲家/バンドリーダーとして成長した姿が映し出されている。

ハービー・ハンコックに見初められ、ウィントン・マルサリスに「彼は言葉で説明できるような人じゃない」と言わしめ、クインシー・ジョーンズに「僕が夢として抱いていた理想を具現化した人だ」と絶賛される彼のアーティストとしての魅力を解き明かすべく、インタビューを行った。


──ついにメジャー・デビューとなりましたね。

ジョーイ:前作『Eclipse』をヴァーヴのスタッフが聴いてくれたんだ。2018年に会って話しあった末に、僕をアーティストとして迎えたいと言ってくれた。自分の新しい音楽、新しい曲をこのアルバムで届けられること、それをヴァーヴにバックアップしてもらえることをとても嬉しく思っているけど、責任も重大だ。より良い音楽を作っていかねばならないからね。素晴らしいミュージシャンを迎えることができてとてもハッピーだよ。

──ニュー・アルバム『ワルナ』に込めたものはどんなものですか?

ジョーイ:『ワルナ』はインドネシア語で「色」という意味なんだ。テーマがあるとしたら「空気」と「火」かな。フルートは空気のような「穏やかさ」を表しているし、パーカッションは火のような「リズム」だ。希望や喜びや勇気をもたらす音楽、それがこのアルバムに込められているんだ。素晴らしいミュージシャンたちとのツアーで僕が経験したこと、それぞれのサウンドやスタイルが、いかに音楽に「色」をもたらしてくれたか…。忙しいツアーの合間に家族や友人たちと過ごせる特別な時間に感謝したいというのもあった。例えば「ダウンタイム」という曲には、ステージを降りたオフの時間、家族や友人と過ごす特別な時間を楽しみ大切にする、という思いがある。そして「ロンリー・ストリート」はNYのアップステートにある家から離れ、ツアー先で訪れた小さな町がインスピレーションになった曲なんだ。僕は常に曲を書いているタイプじゃなくて、オフの時にインスピレーションが突然やってくるんだよ。

──アルバムの参加メンバーを紹介してもらえますか?

ジョーイ:ベースはラリー・グレナディア。彼とはファースト・アルバムでも共演したね。ちょっと久しぶりだったけど、相変わらずマジカルだった。ラリーは音楽にリリシズムをもたらしてくれるんだ。彼のサウンドはまさに僕が必要としているものなんだよ。ケンドリック・スコットは、恐らく最もダイナミックなドラマーのひとりだね。そしてタイムキープがすごい。繊細さとパワフルさを両方持ち合わせているんだ。さらに、新しい要素としてルイシート・キンテーロのパーカッションやアン・ドラモンドのフルートも加わっている。かなりクールなバンドだよ。

──アルバムでは、スティング「フラジャイル」をカバーしていますね。

ジョーイ:クロスジャンルなことがしたかったんだ。ちょっと昔の曲で誰が聴いても楽しめる曲はないかなと思った時、スティングが最適だと思った。彼の書く曲/音楽が大好きだからね。少しだけ僕なりの解釈でアレンジしただけで、原曲に忠実に取り組んだよ。そのままで十分に名曲だからね。

──これまでにジョーイが影響を受けてきたミュージシャンというのは?

ジョーイ:むしろピアニストより他の楽器のプレイヤーかもしれないね。アレサ・フランクリンの歌うゴスペルだったり、賛美歌とかを聞くのも大好きなんだ。マイケル・ジャクソンみたいなポップスもクラシックもロックも…。そういったいろいろな音楽が僕に今、こういうことをさせてくれているんだと思う。

──ハービー・ハンコックやウィントン・マルサリスから賞賛を受けていることをどう思いますか?

ジョーイ:嬉しいなんてもんじゃないよ。言葉にならないくらいの衝撃だった。ウィントンとのピアニストのプロジェクト(Handful of Keys)に参加させてもらえたのも嬉しかった。「どんな時も自分らしく前に進め」と、いつも彼らは僕の背中を押してくれる。僕をいっぱい勇気づけてくれた。「君はこうしなきゃならない」とか言われたことは一切ない。それよりは自分でどう考えてやっていくかが大切なんだ。ふたりからはミュージシャンシップを学んだよ。

──故郷のインドネシア(バリ)からニューヨークに移住していかがですか?

ジョーイ:バリは遠いけどいつも帰りたい場所だね。人も大好きだし。僕が育ったのは都市から離れたところで水田もあった。それはニューヨークにはないよね(笑)。でもニューヨークに住んでいることでいろんなミュージシャンと出会える。それはとてもありがたい。ニューヨークっていう街自体が刺激なんだ。「ミュージシャンとしてもっとうまくなりたい」って背中を押されるような気分になる。

──これからも活躍を期待しています。

ジョーイ:僕が言いたいのはひとつ。「ジャズがなかったら、僕は何をしていいかわからない」。ジャズこそが、僕がベストでいられる唯一のことなんだ。2月に出るアルバム『ワルナ』の音楽をぜひみんなとシェアしたい。また日本に戻って演奏したいよ。

『ワルナ』の日本盤は2月5日(水)にリリースとなるが、ボーナス・トラックとして「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」が収録されている。すでに、先行トラックとして公開されている「ダウンタイム」とタイトル曲「ワルナ」から、アルバム発売より一足早くジョーイの最新楽曲を聴くことができる。


インタビュー:原田和典
編集:BARKS編集部

ジョーイ・アレキサンダー『ワルナ』


2020年2月5日発売
UCCV-1179 2860円(税込)
1.ワルナ / Warna
2.モザイク・オブ・ビューティー / Mosaic(of Beauty)
3.ロンリー・ストリート / Lonely Streets
4.ダウンタイム / Downtime
5.アファメーションI / Affirmation I
6.インナー・アージ / Inner Urge(Written by ジョー・ヘンダーソン)
7.ウィー・ヒア / We Here
8.ティズ・アワー・プレイヤー / Tis Our Prayer
9.フラジャイル / Fragile(Written by ゴードン・サムナー)
10.アワー・ストーリー / Our Story
11.アファメーションIII / Affirmation III
12.ザ・ライト / The Light
13.マイ・ファニー・ヴァレンタイン / My Funny Valentine *国内盤ボーナス・トラック(Written by ロレンツ・ハート、リチャード・ロジャース)

◆ジョーイ・アレキサンダー・オフィシャルサイト
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