【ライブレポート】GLAY、「目指せ50周年。音楽と真面目に向き合って頑張っていきます」

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写真◎田辺佳子

およそ3か月にわたって“営業”してきた「HOTEL GLAY」に、店じまいの時がやってきた。1月25、26日の横浜アリーナ2DAYSは、<GLAY ARENA TOUR 2019-2020 DEMOCRACY 25TH HOTEL GLAY THE SUITE ROOM>ツアーファイナルであり、昨年から始まったデビュー25周年プロジェクト「GLAY DEMOCRACY 25th」の大きな節目でもある、重要なライブだ。スクリーンの中に建てられた巨大ホテルを舞台に繰り広げられた、壮大なエンタテインメント・ロックショーの全貌とは? 25日のライブの模様をレポートしよう。

◆ライブ画像(14枚)

ライブはいきなり予想外の展開で幕を開ける。スクリーンに映る、4人が主役のサスペンス・ドラマ、その名も「HOTEL GLAY殺人事件」。容疑者のTERU、TAKURO、HISASHIを刑事のJIROが追い詰める、というストーリーだが、伏線が多くて先が読めない。どうするどうなるGLAY? そこへ「My name is DATURA」というHISASHIのセリフと共にライブの幕が開く、なんとも劇的なオープニング。

写真◎岡田裕介

「My name is DATURA」「黒く塗れ!」「Flowers Gone」と、深い闇のイメージに包まれた激しいスピード・チューン三連発。攻めることしか考えない怒涛のスタートダッシュだ。スモークが湧き、炎が上がり、レーザービームが飛び交う。代わる代わる左右のウィングへ走って観客を煽る、4人の気合の入り方も半端ない。いい夜になりそうだ。

「3か月間のこのツアー、今日、明日でホテルが破壊されます(笑)。13000人プラスGLAYファミリーで楽しい1日にしましょう」

写真◎田辺佳子

TERUの景気のいい呼びかけに続き、ぐっと明るく広がりを増した「愁いのPrisoner」「everKrack」へ。荒涼とした砂漠からかわいいファミコン・ゲームのキャラへ、スクリーンの映像は見ているだけで楽しい。再びTERUがMCで、言葉を伝えたいからスクリーンに歌詞を出していることを説明してくれたが、この演出は大正解。そう、GLAYは歌詞がいいんだよと、続く「あゝ、無常」のユーモアとペーソスと愛と悲しみが入り混じる歌詞を読みながら、自分のことに置き換えてみる。究極のラブソング「あなたといきてゆく」を聴きながら、世界中の恋人たちの幸せを願う。極めつけは「元号」だ。平成の“平”と令和の“和”を繋ぐと“平和”になることの意味を、これほど強く実感させてくれる曲はほかにない。現代日本のロック/ポップスが生んだ最高のメッセージソングの一つと断言しよう。

写真◎田辺佳子

「今回のツアーで久々に歌ってます。一緒に歌ってください」。曲は「笑顔の多い日ばかりじゃない」。13000人の合唱と、揃った手振りが壮観だ。スクリーンいっぱいに広がる雪と氷のアニメーションが壮観な「氷の翼」も、歌詞が聴きどころ。なんて深遠なラブソングだろう。JIROの力強いリフから始まるにぎやかなタオル回しソング「AMERICAN INNOVATION」では、4人の巨大なバルーン人形が現れて大盛り上がり。TERU人形はちゃんとタオルを持ってる。TAKURO人形はひときわでかくて、天井に頭が届きそうだ。

写真◎岡田裕介

開演から90分が経過したところで、スクリーンでは「HOTEL GLAY殺人事件」第二章が始まった。謎が謎呼ぶ殺人事件、だましだまされ心理ゲーム。ワインに仕込まれていたのは毒薬か? 「BLACK MONEY」!再びHISASHIのセリフで攻撃再開、ライブは佳境へと突き進む。

写真◎田辺佳子

「BLACK MONEY」の主役はHISASHI&JIRO、まがまがしいロックンロールをワイルドなツインボーカルで会場を沸かす。ドラムのToshi Nagaiとのスリーピースは迫力満点だ。変わって「LET ME BE」の主役はTERU&TAKUROで、キーボードのハジメタルと共に奏でるアコースティックバラード。夢にしか生きられない男のロマンと悲哀を描く素晴らしい歌詞に、これ以上ないエモーショナルな絶唱で答えるTERU。個人的にこの日のエモ度No.1ソング、これが聴けて本当に良かった。

写真◎田辺佳子

再び4人+サポート2人に戻り、優しく激しいロックバラード「逢いたい気持ち」から、待ってましたの大ヒット曲「誘惑」で一気にスパーク。ド派手なライトとレーザーがぐるぐる回る中、ステージの最右翼にまで駆けだして客席のすぐ近くでパフォーマンスするTERU&TAKURO。「Runaway Runaway」ではセンター席に投げ込まれたいくつもの大玉風船で、誰もが運動会のように盛り上がっている。笑顔のTERUも風船をつかんで客席に投げ込む。みんな楽しそうだが、誰よりもメンバーが一番楽しそうだ。

「バンドを代表して、この素晴らしい空間に感謝します。25周年、みんなのおかげで素晴らしいものになってます」

TAKUROが真面目なMCを始めた、と思いきや、「センキューみんな!」と、突然のハイテンションでしゃべりまくる。「なんで俺がここでしゃべってるかというと、Toshiのドラムが壊れたから」と、予期せぬ嬉しい(?)ハプニングを13000人が拍手と歓声で大プッシュ。「直った? 『VIRGIN BEAT』のイントロをくれ!」という無茶ぶりに、思わず叩いてしまうトシと、ついていこうとするHISASHI&JIRO。事情を知る人には、大笑いしながらもけっこうじーんと来るシーン。「小学校6年生からの付き合いですが、こんなにテンション高いTAKUROを見たのは初めて(笑)」とTERUも太鼓判を押すTAKUROのレアな名場面、この日会場にいた人はラッキーです。

写真◎田辺佳子

「Bible」は、疾走するツービートのサビが印象的なビートロックながら、歌詞には深い熱い思いを込めたメッセージソングだ。「人が一生で出会う人の数」「鼓動の数」など、いくつものデータが画面に現れては消える。そして「みんなと見る夢の数→一兆個」の文字。「これからもGLAYは一人一人に愛を届けに行くぞ!」とTERUが叫ぶ。4人が本名で書いた、平成元年当時の未来へのメッセージがスクリーンに一瞬映る。ラストチューンは「反省ノ色ナシ」だ。“人として生きてゆくなら、真実を今語んだよ”。──その歌詞が僕たちに、そして令和2年のテレビに映る、偉いとされる人々の心に届くなら世界は変わるだろう。ひとこと、名曲だ。

 アンコールで「HOTEL GLAY殺人事件」は第三章へ。誰が犯人? え、4人ともグルだった? となったところで、「歌でも歌いますか。アンコール!」 というHISASHIの陽気な声を合図に4人が登場する、こんなにゆるいGLAYのアンコールは初めてかも。そして撮影の舞台裏を語るトークの面白いのなんの。HISASHIが「君らの演技を過信してた(笑)」と言えば、JIROが「突然演技しろと言われても。おまえだよ!」と笑って突っ込む。今回のツアーの総合演出を担当したHISASHIの、独特すぎるセンスが生み出した絶妙なスリルとユーモア。大成功、と言わせてもらいたい。

写真◎岡田裕介

アンコール1曲目は、誰もが聴きたい大ヒット曲「生きてく強さ」。……なのだが、TERUはマイクを客席に向けっぱなし。異様に盛り上がるオーディエンスを前に、「25年やってきて、初めて1曲丸々歌わせた!」と、なぜか嬉しそうなTERU。「うちの小橋が大変失礼しました」と、さらに笑いを取るHISASHI。そして「だいたいオマエ気に入らねー!」と、決めセリフの大合唱がさらなる盛り上がりを呼んだ「FATSOUNDS」へ。もはやライブは無礼講で、「彼女の“Modern…”」から「VERB」へと一気になだれ込む。スクリーンの中では巨大なホテルが炎上して崩れ落ちる。楽しさも激しさも、ユーモアも真実も、全てのみ込んだ壮大なカタストロフ。

「目指せ50周年。音楽と真面目に向き合って頑張っていきます。令和2年もGLAYをよろしく!」

写真◎岡田裕介

全24曲で3時間近く。これにて「HOTEL GLAY」のストーリーは全て完結……してはいなかった。メンバーがステージを去ったあとに登場した「HOTEL GLAY殺人事件」最終章。4人ともグルで、ハッピーエンド。というドどんでん返しをさらにひっくり返す、殺された4人の逆襲の銃弾。息詰まるシーンのラストに、ニヤリを笑ったJIROがひとこと。「好きな曲は聴けたかい?」

セトリも演出も通常のツアーとは異なる、コンセプチュアルな楽しみを存分に見せてくれた「HOTEL GLAY THE SUITE ROOM」。だが物語にはまだ続きがある。<GLAY DOME TOUR 2020 DEMOCRACY 25TH “HOTEL GLAY GRAND FINALE”>と題したドームツアーは、5月16日にナゴヤドーム、5月30、31日に東京ドーム、12月19日に札幌ドーム。3月11日にはベストアルバム『REVIEWⅡ-BEST OF GLAY-』のリリースも決まった。GLAYの25周年を祝う旅はまだまだ続く。GLAYと共に歩む令和2年が、あなたにとって幸せな1年でありますように。

文◎宮本英夫

写真◎岡田裕介

セットリスト

01.My name is DATURA
02.黒く塗れ!
03.Flowers Gone
04.愁いのPrisoner
05.everKrack
06.あゝ、無常
07.あなたといきてゆく
08.COLORS
09.元号
10.笑顔の多い日ばかりじゃない
11.はじまりのうた
12.氷の翼
13.Into The Wild
14.AMERICAN INNOVATION
15.BLACK MONEY
16.LET ME BE
17.逢いたい気持ち
18.誘惑
19.Runaway Runaway
20.Bible
21.反省ノ色ナシ

en.
01.生きてく強さ
02.FATSOUNDS
03.彼女の“Modern…"
04.VERB

<GLAY DOME TOUR 2020 DEMOCRACY 25TH “HOTEL GLAY GRAND FINALE”>

2020年5月16日(土)愛知・ナゴヤドーム
2020年5月30日(土)東京ドーム
2020年5月31日(日)東京ドーム
2020年12月19日(土)北海道・札幌ドーム

『REVIEW II -BEST OF GLAY -』

発売日:2020年3月11日
【CD Only(4枚組)】
品番:PCCN-00042 / 価格:¥3,550+税
【4CD+2DVD】
品番:PCCN-00041 / 価格:¥5,550+税
【4CD+Blu-ray】
品番:PCCN-00040 / 価格:¥6,150+税

CD収録曲:
DISC1【-TERU SELECT-】
1. COLORS
2. ホワイトロード
3. グロリアス
4. Life〜遠い空の下で〜
5. 時計
6. ずっと2人で…
7. あの夏から一番遠い場所
8. HELLO MY LIFE
9. はじまりのうた
10. 生きがい
11. Eternally
12. Winter,again
13. カナリヤ
14. すべて、愛だった-La vie d'une petite fille- (Acoustic Version)

DISC2 【-TAKURO SELECT-】
1. Into the Wild(新曲)
2. I'm loving you(新曲)
3. 氷の翼 feat. AZUMI (Wyolica)
4. HOWEVER
5. BELOVED
6. 誘惑
7. SOUL LOVE
8. 春を愛する人
9. 口唇
10. BE WITH YOU
11. a Boy~ずっと忘れない~
12. カーテンコール
13. サバイバル
14. 彼女の"Modern…"

DISC3【-HISASHI SELECT-】
1. gestalt
2. ALL STANDARD IS YOU
3. My name is DATURA
4. 黒く塗れ!
5. Flowers Gone
6. VERB
7. everKrack
8. 逢いたい気持ち
9. LET ME BE
10. THINK ABOUT MY DAUGHTER
11. 笑顔の多い日ばかりじゃない
12. FATSOUNDS
13. Runaway Runaway
14. Bible
15. BLACK MONEY

DISC4【-JIRO SELECT-】
1. Scoop
2. SAY YOUR DREAM
3. 夢遊病
4. YOU
5. Apologize
6. ゆるぎない者達
7. 時の雫
8. Friend of Mine
9. 卒業まで、あと少し
10. TIME
11. REIWADEMOCRACY
12. 反省ノ色ナシ
13. 君にあえたら
14. lifetime

【DVD&Blu-ray収録内容】※DVD&Blu-ray共通
GLAY 25th Anniversary Special Live in Seoul

◆GLAY オフィシャルサイト
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