【インタビュー】TETORAの成長と頑張る理由

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■嘘を歌いたくない

──今作はジャケットやアーティスト写真、曲順まですごくこだわったそうですね。ティザー映像では曲ごとにカラーが変わったり。

上野:ジャケットの雰囲気は、完全に私の趣味です。今回、アー写が紫色なので、紫で合わせました。ティザーでは自分が紫、赤、オレンジ、青の衣装を着ているんですけど、アー写を赤か紫のどっちにしようかすごく悩みました。赤も何かで使いたくて、赤い衣装を2人にも着てもらって、ツアーファイナルの梅田クラブクアトロの告知に使ったんです。



──そもそも、今回紫がキービジュアルになったのはどうしてなんですか?

上野:TETORAのイメージはオレンジだったと思うんですけど、心機一転ということで変えてみました。もともと紫が好きで、他のバンドのアー写にあんまり紫ってないなと思って。この画像は、iPhoneで撮ったんです。ちゃんとしたカメラマンに撮ってもらうのではなくて、あえてそうしました。

──それはどうして?

上野:カメラマンさんに頼むと、私らまだペーペーなんで、人見知りの顔になっちゃうから(笑)。

いのり・ミユキ:あはははは(笑)。

──なるほど(笑)。アー写と同じように、素の自分たちを聴かせたいという気持ちがあるということですか。

上野:2作、作って思ったのは、あんまり嘘を歌いたくないなって。

──前回のインタビューでも、“本当のことしか歌っていない作品”って話してましたもんね。それに、「いつも“この人に書く歌”と決めて書いてます」とも言っていました。ミュージックビデオにもなっている‪「知らん顔」は、まさに歌っている相手が明確にいそうですね。‬‬‬



上野:これこそ、「あれから」っていう感じなんですけど、アルバムのときに歌ってた人と変わりました。

──本当のことしか歌わないから、そのときそばにいる人のことしか歌わない?

上野:それもあるし、今一緒にいなくても、ふと考えた人も含めて頭の中で身近な人を書いてる気がします。

──そういう曲を書くことで、自分の内面を見られるような気恥ずかしさとか照れたりすることはないんですか。

上野:それはあんまり考えたことがなかったです。曲にしてしまったら、それは手紙じゃなくて曲になるので。どの曲も、目の前にその人がいても全然歌えます。ひとつの作品として見ます。ライブのときに感情移入して泣いてしまうときもありますけど、そういうときでも目の前にその人がいても全然恥ずかしくないです。

──「知らん顔」について、ミユキさんはどう感じて、どのように演奏しましたか?

ミユキ:歌詞が印象的というか、自分的にすごく刺さる歌詞やなと思っています。演奏では自分の中にこだわったところがあって、例えば、“コップの中 タプタプ 満パン 〜”という歌詞があって、その前にシンバルで“シャー”って入る部分があるんです。そこでコップの中に水が溜まってる様子を表したりとか、イメージできるフレーズをドラムで結構入れてます。どの曲もそうなんですけど、ドラムにしか表現できない音を歌詞と結びつけて演奏しました。

──そこをいのりさんのベースとどう合わせるか、リズム隊で話したりもするんですか。

いのり:いや、話は特にしないですね。

ミユキ:話すというよりは、ベースが作るフレーズを邪魔しないようなドラムを叩いたり、逆も然りだと思います。

──いのりさんのベースは結構主張してますよね。

いのり:そうですか(笑)?歌詞を邪魔しないようにしてはいるんですけど、3ピースなので、ベースが目立っても良い時はあると思っていて、そういうタイミングでは目立たせてもらってます。

──この曲はブレイクした瞬間にギターが目立ちますけど、上野さんはギターソロを弾かないですよね。

上野:さっきいのりさんが言ってたように、3ピースは4ピースと違って、いっぱい引き算ができると思っているので、ギターをあんまり弾きたくなくて。むしろベースで面白いことをやってほしいタイプなんです。だから、私がめちゃめちゃギターが上手かったとしても、なるべくシンプルでいたい。ギターは背景で、そこにベースがあって下にドラムがあって、色が歌で、という感じが好きです。

──歌も、矢継ぎ早に歌うというよりは、間が開く感じがすごく良いなと思うのですが、そこは意識してるんですか。

上野:いや、衝動で作ってるので意識してなかったです。狙って作るわけじゃなくて、今できることを全部出したいという気持ちだけで作りました。

──今できることを全部出すと、引き出しがないと曲が出来なくなってしまうこともこの先あるのでは?

上野:曲も、前より色んなジャンルを聴くようになったのもありますし、歌詞も、頭の中で結構色々思うんですけど、全部文字じゃないんですよ。だから、その思ってることを文字化するために、喋ったり本を読んだりしてるんです。

──頭の中で思ってることが文字化する前って、どういう状態なんですか。

上野:例えば、(目の前にあるコップを見て)「あ、コップや」って絵とか色で感じるんですよ。それですべてが解決してるから、頭の中には文章が一切ないんです。だから、頭の中で色々思っていても、それを口に出せなくて。たぶん、口にしてこなかったから変換する手段を知らないんですよね。その手段を知ったら、色んな思っていることが言えると思うので、今それを探しています。

──それが言葉にできたとき、上野さんにとってどういう気持ちになるのでしょう。

上野:見たものを言いたいのに言葉にできなかったり、こういう感情って言葉にしたら何になるかわからへんとか、それをスラッと出せたらめっちゃ気持ちいいんやろうなって思います。喋るのも難しいんですけど。たぶん、間違ってました。

──間違っていたというと?

上野:22年間、背景だけを見て生きてたので、文章にしていかなあかんなって(笑)。その分、色んな色はわかるので、良かったです。

──その見えている色が、今作の色んなカラーで表現されているということでは?

上野:あ、そうかもしれないです。それこそ、「第二章」で“青春は緑色”っていう歌詞があって。「なんで緑色なん?」って聞かれることもあるんですけど、私は緑にしか見えないからそう歌ってます。

──自分たちの青春を頭に浮かべたときに、緑色のイメージということ?

上野:そうですね。一般的には青春の青って、透き通った綺麗な青色ってことになってると思うんです。でも青リンゴの青って青色じゃないですよね?私は青春にそれをイメージしていて。そういう色のこだわりがあります。

▲上野羽有音 (Vo&G)

──バンドでは、どうやってそういう感覚を共有しているんですか?
上野:たぶん「あ、こういうことね」って、めっちゃ頑張ってくれてると思います。

──いのりさんもミユキさんも、上野さんの曲が好きなんですよね。

ミユキ:はい、そうです。

いのり:好きですね。

──今話に出た「第二章」は、どんな思いで書いた曲ですか。

上野:アルバムの収録曲は、高校のときに書いた曲が多かったんです。高校生って、今思うと子供じゃないですか?そのときは、大人って退屈なんやろうなってずっと思ってたんですよ。仕事も行かなあかんし、ルールもいっぱいあるし、ぺこぺこしてるし、「しょうもな」と思ってたんです。でも、大人になってみたら、「大人って退屈じゃなかった」って気付きました。青春って別に子供だけじゃないんだなって。

──曲の最後はテンポアップしますけど、自分たちがこれからバンドをやっていく気持ちを表している?

上野:まだまだ続いていくんだ!っていう気持ちですね。

いのり:これからも続けていくし、私の人生、バンドを続けんかったら死ぬ、ぐらいの気持ちです。

ミユキ:私は、「第二章」の歌詞を最初に見せてもらったときに、「うらやましいな」って思いました。学生の頃は学校が嫌いだったし、こういう感じのことを経験してこなかったので。ライブで何度かやったときに、情景が頭の中に浮かんでくるなって思いました。

──バンドって、ある程度は団体行動をしなくちゃいけないじゃないですか?学校の共同生活と似たようなところもあると思うんですけど、それはどうなんですか?

ミユキ:好きなことが一緒やからできるというのはあるかもしれないです。好きな音楽をやってるから、というのが一番大きいと思います。

上野:私も、そもそも人とずっと一緒にいるのって好きじゃないんですよ。そんなにメンバーのプライベートも突っ込まへんし、教室の友だちぐらいの感じ。プライベートは好きにして、みたいな。好きなものがあるから3人で頑張れてると思います。むしろ、プライベートにまで突っ込んだら、バンドの関係がシャキッとしない気がします。「こういうときだけ集まるぞ」っていう関係じゃないと。

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