【インタビュー】MAREAM「ジャパニーズテクノの未来は自分たちで変えられると信じて」

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2015年の19歳からテクノDJとして活動を開始したフィメールDJのMAREAM。東京を活動拠点に、数多くのパーティでDJとして出演する傍ら、作曲活動もしており、2018年にはタイ発の水かけフェスティバル<S20 JAPAN>にてプロデューサー部門最優秀賞を受賞し一躍シーンの話題に。その後は和製テクノレーベル“SPECTRA”に加入し、先ごろ初のアルバムをリリース、アーティストとしての幅をさらに広げている。今回はレーベルを主宰するHiroyuki Arakawaとともに話を聴いた。

■テクノはひとりの世界で
■シャットアウトして聴ける(MAREAM)

──MAREAMさんは、なぜ若くしてテクノの世界へ飛び込んだのでしょうか?

MAREAM(以下、M)まだジャンルがよく分からないままDJをしていたころ、周りから“いいミニマルテクノだね”と言われて、テクノDJだと自覚しました。なので特別なきっかけがあったわけではなく、このアーティストを聴いて影響を受けたとかもなくて、電子音楽全般が好き……小学生のときにはユーロービートものや、perfumeのアルバム『GAME』を買ったりはしましたけど。最近ではSoundCloudでいろいろとダンスミュージック巡りをしていたら、自然とテクノばっかり聴くようになっていました。

Hiroyuki Arakawa(以下、A)テクノミュージックの何がいいの?

M ハッピー感のある音楽があまり得意でないんです。ハウスはみんなで聴いて盛り上がる、多幸感を楽しむイメージがあるけど、テクノはひとりの世界でシャットアウトして聴けるのが好きなところ。そういう発見をしたテクノを没入して聴き込んでました。

A 人付き合いが苦手な人が聴くようなジャンルだよね(笑)。マイナーな音楽にハマる瞬間って、だいたいこういうケースが多いんだ。俺も友達がいないときにクラブミュージックにハマったから(笑)。

M 大学に入学したときに髪色を緑にしていて友達ができなくて、そのときは音楽しかなかった(笑)。そのころにテクノを聴いていたから、それは一理ありますね。

──DJを始める人はたくさんいますが、作曲のきっかけは?

M 単純な興味もありますが、それよりも自分の好きなアーティストは当然のように曲を作っているし、海外のアーティストは曲を作ることが必須だから、必要に迫られてArakawaさんに相談したんです。

A 入り口はみんなそういうものだと思う。入り口は広くあったほうがいいと思うし、その中で突き詰めていく瞬間がある。これならちょっとハマれるなって。ところで何が作曲に本腰を入れるきっかけになったの?

M 曲を作っていくうちに自分の好きな音がより分かるようになってきて、じゃあ自分が好きな音オンリーでアルバムをリリースしてみたいと。DJをやっていく中で“この曲はもう少しこうだったらいいのにな”とか、“この曲とこの曲の良さを合わせたらこうなるんじゃないか?”とか自分の中で想像力が掻き立てられていくんです。それが抑えきれなくなって、自分で作ってお客さんの前で流してみようと。

A それがもっと表現を突き詰めていった結果、オリジナル曲として形になる。もちろんDJ一本で素晴らしい表現ができる人もいるけど。大体みんなDJしてワイワイする感じで終わってしまうけど、社会不適合者で社会に馴染めない人が自分のアーティストとしての道を突き進み始める……僕が思うにそういう人たちがすごい曲を生み出していて、それこそ本質的なものだと思ってる。昔髪色を緑色にして友達いなかったのも、社会に馴染めないんだなってことになるね(笑)。


■SPECTRAでアルバムを出すことが
■レーベルにとっても彼女にとってもキレイな流れ(Arakawa)

A MAREAMのめちゃくちゃ熱意ある「作曲を一から学びたい」っていう推しに負けて(笑)、楽曲制作中にSPECTRAに入る?と声をかけたよね。でも、すぐにQ'HEYさんの番組『Radio Reboot』で、着手してもいないアルバムのリリース日を思い付きで勝手に言ってしまった(笑)。

M かなり先走ってました(笑)。

A 実はSPECTRAからリリースしたいという話はたくさんもらうけど、頑なに断ってたんだ。でもレーベルメンバーの脱退が相次いで、ちょうど新規メンバーを探している転換期だった。MAREAMは<S2O>でチャンスも掴んでいるし、周りからも期待の目から見られているんだけども、俺はうまく生かしきれていないなと思うこともあって……SPECTRAでアルバムを出すことが、レーベルにとってもMAREAMにとってもキレイな流れかなと思って。でもいざ作曲に関して、例えば何分何秒に〇〇入れたほうがいいとか、ここはヤメた方がいいとか戻すんだけど、全然違うものになって返ってくる。

M 申し訳ない(笑)。アルバムは2019年5月に出したいと言ったけどクオリティが至らず……しかも8月に出すともありましたがいろいろと甘くズレにズレて……自分の曲を世に出すというときに、やっぱりやっつけの状態ではダメだろうし、曲についてのやりとりの他にも、人間的な成長にもなりました。

──今の日本のテクノシーンに感じることはどんなことでしょうか?

M オランダに留学した経験もあってヨーロッパシーンを見て……まず日本人はメロディックな音楽が好きだけど、海外ではキックとリズムがあれば踊れる感じでしたね。

A 日本がメロディックと思われるのは俺も大好きなんだけども、坂本龍一さんとか久石譲さんとか世界的に有名な音楽家の影響な気がする。だから今この時代に、日本のテクノが一般認知されないのは、日本にジェフ・ミルズみたいな感じの人がいないからなのではないか。

M 90年代を経験してないから分からないけれど、当時はYMOや電気グルーブが第一線にいて、テクノのフェスティバル<WIRE>が開催されていて……そういうアイコン/スターみたいな人がいれば成立するのでしょうね。

A 日本のカルチャーにうまく食い込んでいった先輩たちだよね。テレビからテクノが流れたら認知されるのは自然なことだと思う。

M でも日本のテクノってポップですよね!

A 中田ヤスタカさんは、テクノの新世代的な感じでポップの領域に入っていった。そういう入り方もありだけど、“本質的なテクノ”とは意味とは違う。日常において映画やCM、ゲームなど音楽が使われるシーンはたくさんあると思うけど、そこに挿入する音楽としてテクノが入らないから身近にならないんだと思うんだ。例えばレースゲームをやっているシーンとマッチしていたらテクノってこういう楽しみ方があるんだって気付くよね。日常での身近な体感が少ないと思う。

M 日本は“ショー”が少ない。私はテクノはアート鑑賞だと思っていて、海外はファッションショーで使用される音楽は、ほぼテクノかディープハウス。一方で日本は芸術鑑賞に疎くて、カルチャー同士の繋がりもないような気がします。

A それぞれリンクしてない気がするね。さまざまなカルチャーが集まると思われているフェスをやっても、いわゆるパリピが集まるだけで、今までの時代の繰り返しだと思う。昔と今は求めるものが違し、何を提供すべきなのかを考えていて……。

M マスじゃないところにかっこよさがある、そういう感性を身につけてほしいですね。

A マスじゃないものがいいと思う瞬間を増やす、その動線がいかに作れるかじゃない? 例えば日本でテクノをやるとお金を稼げる、そういう職業の選択肢として出てくれば、みんなもっとテクノやるよね。今はテクノで稼げるビジョンがないし、それだけ夢のない仕事にもなってしまうし、みんなの興味もなくなってくる。もっとテクノを聴けるものが身近にあればいいんだよ。お風呂が沸いた音や、目覚まし時計や小学生のラジオ体操にテクノを使ってもいい(笑)。


M 例えばベルリンはクラブで遊んでいた人が行政の役員になっているからナイトクラブ“Berghein”も市から守られているし、経験した人が街を変えられる権力を持っていたら強い。私もひとりのアーティストとして小さな変化かもしれないですが、もっと若い人や新しいアーティストがテクノで何かが起こしてくれれば今よりは何か変わるんじゃないかなと思ってるんです。

A どうやったら若い人がテクノ好きになると思う?

M プレイヤー側でテクノをやる人がもっと増えて、コミュニティができて、それこそSPECTRAのような集団/グループができれば……単純に母数の問題でもあると思うし。

A それもある。例えば今なりたい職業はYouTuberと言われてる。それがテクノDJになったらいい。YouTuberってすごく身近な存在で、かつ職業として成立してる。しかも好きなことしている感じがあって、お金にも余裕があるように見えて……サッカー選手みたいなもんなのかな。

M 何も知らない人や未成年から見ると、DJってあいかわらずドラッグのイメージ……そうなるとなりたい職業ではなくなってしまうし、社会に溶け込めない人が夢中になる音楽という位置付けになったり(笑)。でもホントは違うしよさもたくさんあるんです。


──今後の活動について教えてください。

M 世界を目標にして、まずは日本のテクノシーンに影響を与えたい。作曲を教わりたいという人がいればもちろん教えるし、日本の次世代にも途切れないで続いていくよう動きたいと思ってます。

A 先輩がちゃんとバトンを受け渡すこと、それは本当に大事だよね。それをうまくやれてこなかったのが俺らの世代なんだ。先輩からのバトンを受け取ってない。理想は先輩は次の舞台を作る側で、後輩にキチンとチャレンジできる場所も提供するべき。

M 世代ごとにエグジット先がない感じもしますね。長く日本でキャリアを積んで海外に行った先人たちがいて、その先輩のコネクションの恩恵を受けて、若い人はまたそこにチャレンジできる。そういう循環する流れがほしい。

A 今は下の世代が独自で道を開いてる感じがあるし、そういうふうに動かないとやっていけないよね。

M 今、DJがやっていけるかどうかは、曲のクオリティじゃなくて、オーガナイザーへのコミュ力合戦みたいなところがあります。日本のクラブ業界はそういうふうに成り立ってるから、すごく不安。理想を言えば、曲を作っている人やその人のスキルで正当な評価を受けた出演者が集まって、そういう人たちがイベントやることで音楽好きの鋭い人が集まるだろうなと思う。

A パーティにファンがついてる、ハコにお客さんがついてる、それが理想。でも、そのお客さんたちが何を求めてるかというとかっこいいことを発信してくれる人/イベントだと思う。ハコ側に対してオーディエンスがそんな認知をしていたらここに来れば絶対間違いないんだってなるよね。

M そうですね。そういうシーンになっていけるように、何か変革を起こすきっかけとなるアルバムとなることを祈りつつ、今後もテクノにチャレンジしていきたいです。日本のテクノの未来は自分たちで変えられると信じて。


『0 to X』

2020年2月5日(水)
SPECTRA SPTR007 2200円(税込)
■トラックリスト
01.Rising
02.Set
03.Somewhere
04.Bells
05.Rave 142
06.Micro Dome
07.Through
08.Nothing Anymore
09.Nothing Anymore (HIROYUKI ARAKAWA REMIX)
10.To...

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