【インタビュー】仮BAND、仮のままで突っ走る唯一無二のバンドが待望の2nd AL『二枚目』

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大きなターニングポイントを乗り越えて、仮BANDが再始動した。ギタリスト・藤岡幹大の急逝からおよそ1年、BOH(B)と前田遊野(Dr)が選んだ道は、より自由な音楽性を、より共感できる仲間と共に広げていくこと。藤岡幹大のプレイを受け継ぐSAMこと岡聡志(G)、平賀優介(G)をはじめ、ISAO(G)、沙織(Vl)、西脇辰弥(Key)、桑原あい(Pf)など、凄腕ミュージシャンを迎えて完成させたセカンドアルバム、その名は『二枚目』。ジャンルを超えたセッションバンドというコンセプトのもと、仮のままで突っ走る唯一無二のバンド、その現在と未来についてBOHと前田が語ってくれる。

■J-POPの棚にあってもおかしいしロックも違うし
■セッションという棚があればそこに置いてほしい


──これを最初に言わなきゃと思ったんですよね。仮BANDが続いて嬉しいです。なくなっちゃうかな?という心配も正直あったので。

BOH:ありがとうございます。嬉しいです。

──あらためて、二人でやっていこうというのは、どのあたりで決心したんですか。

BOH:藤岡先生がなくなった時に、やめるという意識は二人とも全然なくて、「どう続けて行くか」しか考えてなかったです。ただ、すぐに何かできるかといっても難しくて、リズム隊だからといってドラムンベースがやりたいわけでもないし、やっぱりピアノやギターやホーンを入れないといけない。まずは前作に参加してくれた人たちに協力してもらおうと決めて、あとはメインのギタリストを誰にしよう?となった時に、たぶんみんな、有名な大御所を入れるとか、売れっ子の若手を引き抜いてくるとか、考えたと思うんですけど、それをやっちゃうと全然違う感じになっちゃうので。何がベストか?を考えた時に、藤岡幹大の愛弟子で、一番近くで学んでいた人間を入れようということで、SAM(岡聡志)の名前が上がって。彼はまだ20代ですけど、どんどん成長しているのはわかっていて、藤岡先生の物まねではなく、SAMという人間のオリジナリティや人間性も作品の中に閉じ込めたい思いがあったので、声をかけてOKしてもらいました。


──はい。なるほど。

BOH:そしてもう一人、「侍Groove」に参加している平賀(優介)も、藤岡先生の弟子なんです。「侍Groove」のメインテーマは、僕と前田がスタジオに入って、ベーシックだけ録ったものがあったんですよ。そこに、藤岡先生が「こんなフレーズを考えた」と言って送ってきてくれたフレーズがあった。1分ぐらいのものですけど、せっかくそういうものが残っていたんで、SAMに「ここだけは忠実に再現してくれ」と。音色やニュアンスも完璧に藤岡先生と同じように弾いてもらって、あとは自由にやってもらう。最後に3人で作った曲なんで、藤岡先生へのリスペクトを込めて1曲目にしました。

──終わりでもあり、始まりでもある曲。

BOH:二人のギターバトルが聴きどころです。何も知らない人が聴いたら、そういうことは思わないでしょうけど、「侍Groove」みたいな和風なセッションは、海外の人にはできないだろうなと。ほかの曲はできるでしょうけど、「これは僕らじゃないとやれないよね」というものを作ったつもりです。



──このアルバム、1曲ごとに全くキャラの違う曲が入ってるんですよね。ジャズありラテンありファンクあり。

BOH:その予定じゃなかったんですけどね(笑)。1作目は実験的な感じもあって、3人で作りながら録って、録りながら作っていったので、バラエティに富んだものになったんですけど、2作目はもう少し絞ろうと思っていたんですよ。でも結局、ポピュラリティを出すとか、わかりやすいテーマやメロディがあるとかは、前作よりもできてると思うんですけど、楽曲としては二人ともいろいろやりたいタイプだし、やれちゃうので。それを6曲にまとめると、結局バラエティに富んだものになっちゃう。

──フュージョンもメタルもプログレも、何でもありなのは、もともと3人集まると自然にそうなってたんですかね。

前田遊野(以下、前田):そこはもともと3人の持ち味だと思います。

──こういうスタイルをやろうと言って始めたわけではなく?

BOH:こんなスタイルでやろうとか、一回も話したことない。

前田:曲ごとにはあるんですけど、バンドとしてはないですね。仮だし(笑)。

BOH:販売の便宜上、ジャズ/フュージョンの棚に置かれるじゃないですか。セッションという棚があればそこに置いてほしいですけど、そんなジャンルはないし、これがJ-POPの棚にあってもおかしいし、ロックも違うし。

──ある意味絶妙な交差点感ですよね。個人的な好みで言うと、一番ジャズっぽい「Cloud Funding」が大好きでヘビロテしてます。

BOH:おおー。それ、前田くんの作曲です。

前田:前作にも参加してもらった(桑原)あいちゃんのピアノが素晴らしい。この曲はジャズ的な手法で、始まりと終わりだけ決めて、中間部は長いソロというイメージなんです。

BOH:あいちゃんはめちゃくちゃ忙しくて、当日も何時に入れるかわかりませんみたいな状態で、“本当に来られるのか?”とか言っている時に連絡が来て、来るなり“これを弾いてください”って紙を渡された。コードと尺(長さ)が書いてあるだけで、そこからは何も読み取れないんですよ。“好きなように弾くんで、この通りにやってくれたらかっこよくなります”とか言って。結局、一発録りで4テイクぐらい録った中から一番良いのを選びました。そのまま何もいじらず。


▲BOH

──これは素晴らしいですよ。

BOH:だから、これと同じものを弾けと言われてももう弾けない(笑)。セッションって、日によって良い悪いがあるじゃないですか。レコーディング当日に「悪い」しか出てこなかったら煮詰まっちゃうんですけど、ここで仕上げないとまずいという集中力と、あいちゃんのスキルが前作よりだいぶパワーアップしているんで、そこに乗っかった感じです。

──「Bewitching」の、ISAOさんと沙織さんのコンビもすごいですよね。シンフォニック・メタル的な。

BOH:前作でISAOさんにギター・ソロで参加してもらったんですけど、二人は最近よく一緒にやっているんで、そのままセットで参加してもらいたいなと。「Bewitching」という曲は僕が作ったんですけど、最近、スティーヴ・ヴァイがライブでバイオリンを入れたりしてるじゃないですか。あれがすごくかっこ良いなと思っていて、間奏であの感じを出そうと思ったんですね。

──BOHさんと前田さんって、主役だけど脇役になれるというか、そこがかっこ良いなあと。自分のアルバムなのに。

BOH:別に、自分たちだけが前へ前へなんて思わないよね?

前田:そうですね。リズム隊だし。


▲前田遊野

──「I See You」とか、むしろドラムは後ろに下がって聴こえる。

BOH:最初、「叩かない」ぐらいのこと言ってましたもん。

前田:最初にデモをもらった時、「BOHさん、これドラムいらないんじゃないですか?」って(笑)。それでアレンジの西脇さんと相談しつつ、やっぱり入れようということになったんで。

──俺のフレーズを聴け!というプライドは、もちろん心の底にはあるでしょうけど。

BOH:フュージョン音楽って、「技巧的な演奏や複雑な展開の曲」という印象を持つ方もいると思いますが、「普段はJ-POP聴いてるけどこういう音楽にも興味があります」という人に間口を広げるためには、メロディがきちんとしているとか、難解なコード進行を使わないとか、そういう方向にシフトしたほうが広がるんじゃないか?と。

──バカテクはあるけど、見せびらかさない。

BOH:「さあ、行きまっせ~」みたいなのは、やっていて恥ずかしくなっちゃう。ベースで言うと、スラップ奏法が出て来た頃、すごい!と言われたけど、今はノーマルな奏法で別にすごくもなんともない。それをガンガン押し出していくと、ただの我の強い作品になって、一つの楽器だけがどーんと出ちゃう作品になっちゃうけど、それはしたくないので。

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