【インタビュー】岸田教団&THE明星ロケッツ、パワーアップし円熟味を堪能できる充実の新作

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■心配するのは岸田の仕事で
■私の仕事は自分らしさを出すこと


――もう1曲のタイアップ曲「暁のカレイドブラッド」について話しましょう。こちらは、アニメ『ストライク・ザ・ブラッドIV』のオープニングテーマです。

岸田:『ストライク・ザ・ブラッド』の主題歌を手がけるのは、今回で4回目なんですよ。1回目は思いきり自分達らしくハードロックに仕上げて、2回目はそれをより押し進めてメタルな方向に進んだ。3回目は方向性を変えてシンセを大々的にフィーチュアした結果、4度目の今回は「最初に戻りましょう」と言われたんです。実は、俺はそう言われるだろうなと思っていたんですよ。お互いの思いが一致して、今回は最初に戻りました。思いきりギターを派手に出すという。「暁のカレイドブラッド」はギターオリエンテッドな曲の作り方を第一に考えて、もうギター以外はどうでもいいくらいの気持ちで作りました(笑)。この曲のギターは、攻めて攻めてという感じになっています。

――「nameless story」と「暁のカレイドブラッド」のhayapiさんのギターはアグレッシブさに、さらなる磨きがかかっています。それに、「暁のカレイドブラッド」はいわゆる原点回帰をされたわけですが、この曲の圧倒的なスピード感は2020年の音楽ならではだと思います。

岸田:そう、この曲はスピーディーに聴こえるということを意識しました。そういうことは、ローの速さで決まってくるんですよ。スリリングになるように、ドラムのみっちゃんにキックを前ノリで踏んでもらって、ローの立ち上がり方もメチャメチャ早くしているから、実際のBPM(テンポ)よりも速く感じると思います。

――「暁のカレイドブラッド」の歌詞は、“誰かを泣かせる正義に従う気はない 運命が呼ぶほうへ進むのさ”と歌っていますね。

岸田:これも原作を受けての歌詞です。原作を読んだことのない人は、これで原作どおりと言われると“えっ?”という感じかもしれないけど(笑)。でも、『ストライク・ザ・ブラッド』は、本当にこうなんですよ(笑)。“学園異能バトル”を歌詞にすると、こうなるよなという。hayapiさんにも、今までで一番『ストライク・ザ・ブラッド』らしい歌詞が書けていると絶賛されました。

ichigo:「暁のカレイドブラッド」はこの歌詞を本気で歌って、本気に聴こえないと困るというのがあって、歌はそこを意識しました。勢いを出して、叫ぶ言葉をカッコよくという。“ここから先はもうただの戦争(喧嘩)なんだぜ”というところは、すごく気持ちよく歌えましたね。“私、カッコいい!”みたいな(笑)。そこでカッコ良いと思えるので、いい感じで歌えたかなと思います。


▲「nameless story」<アーティスト盤>


▲「nameless story」<通常盤>


▲「nameless story」<通常盤>

――勢いと華やかさを併せ持った歌になっています。

ichigo:今回は3曲ともそうですけど、歌う時に子音が“パンッ!”と鳴って、その後の母音が伸びるように意識して歌っているんです。今までは、どちらかしかできなかったんですよ(笑)。時々偶然できて、そこが歌のカッコ良い部分になっていたという(笑)。ここに来て、子音と母音の関係性をようやく自分でコントロールできるようになってきたんです。子音はよく聴こえてしまうし、特に“き”とか“し”の高い音は自分でも聴いていてキツいから、どうしても引いてしまっていたんですね。今回はそこを我慢して、思いきり出すようにしました。

岸田:そういうのは、コンプレッサーをあてれば消えるからね。

ichigo:そう。あと、「暁のカレイドブラッド」は“タン・タン・タン・ターン”という符割のところに“シルバーバレット”という言葉を乗せないといけない場所があるんです。ふざけんなよと思いました(笑)。すごく歌いづらいんだけど、歌いづらそうに聴こえないようにするという。もうね、“シババレ”と言うつもりでいきました(笑)。私は、本来はそういうのは嫌なんですよ。ちゃんと歌詞を歌いたいタイプの人だけど、後がないピンチな感じを表現するには、もう“シババレ”と言うしかないなと思って、そのまま歌った(笑)。つまり、“シババレ”を、お客さんが“シルバーバレット”と聞き間違えている状態なんです(笑)。

岸田:ハハハッ! 普通は“シルバーバレット”と歌っているのを、お客さんが“シババレ”って聴こえるといって笑うところなのに……。

ichigo:逆転現象が起きている(笑)。どれだけカッコ良く“シババレ”と言って、“シルバーバレット”と聴かせられるかというのを、本気でやりました(笑)。

――そんなichigoさんは最高です(笑)。最後に、カップリングの「anesthesia」にいきましょう。

岸田:これは、俺が映画の『ジョーカー』を観てから書いた曲です。

ichigo:私が岸田に暗い歌詞がいいと言ったら、こういう歌詞を書いてくれました。

岸田:楽曲的には、いつもの岸田教団&THE明星ロケッツとはまた違うテイストであり、いつも通りでもある表のタイアップ2曲に対して、カップリングは全く違うものを入れたほうがお得だなと思って。hayapiさんが、それが“お得パック”だろうと言っていたんです(笑)。お得パックにするために全然違う曲を入れようということになって、それを踏まえた書いたのが「anesthesia」です。

――この曲はドラムだけがスピーディーで上物はゆったりしているというアレンジが奏功して、独自のテイストを生んでいますね。

岸田:ドラムだけが16ビートで細かいことをしていて、乗っかりものはゆったりしているという。このリズムパターンは、みっちゃんがズルいとメチャメチャ文句を言っていました(笑)。僕だけメッチャ難しいと(笑)。“人力ブレークビート”みたいになっていますからね。みっちゃんは、すごくがんばっていました。

ichigo:他人事?(笑)

岸田:うん、それがみっちゃんの仕事だから(笑)。いや、文句を言ったのは、これをレコーディング当日に渡されたからだよ。前もって言われていて、練習していれば訳ないと言っていました。

――みっちゃんさんは、やはり凄いですね。歌詞は“勝手に期待されても困る”という心情を描いています。

岸田:これは『ジョーカー』を観てから書いたから、ロクでもないヤツの歌詞なんですよ。俺は、この曲の主人公を肯定しているわけじゃない。ただ、現代の一部の男性の中に、こういう思考は厳然とあるんです。この15~16年くらいで出てきた思想性の潮流で、要は“透明の地下”という実際にある言葉なんです。

ichigo:そうなの? どういう意味?

岸田:女性が出世しようとすると、ある一点から偉くなれないことを“ガラスの天井”といって、フェミニズムの人達がすごく文句を言っているんだよね。それに反論する形で、男性差別に対して戦っている人達が「女性が天井にぶつかるなら、男性は地下室にいる」と言っているんだ。透明の地下室にいると。透明の地下室というのは、軍人だったり、命の危険がある仕事には基本的に女性は就かない、そういう仕事は男性がするしかないというところで押し込められていると。そういう意味では男性も女性も、どっちもどっちなんだよという思考があるんだ。

ichigo:そうなんだ。っていうかさ、そういうことは歌う前に言ってよ。“透明の地下”というのは、ただ単にカッコつけているのかと思った。

岸田:ちゃんと言葉として、あるんだよ。それで、男性差別論者の人が使うんだけど、男性差別を意識し過ぎて、特に差別されていないのに自分は差別されていると思い込んでいるヤツらも同じ言葉を使うんだよね。だから、本当に差別されている男性もいるけど、透明の地下室という言葉を発する全ての人が差別されているかどうかはわからない。自分は男性として生まれて、男性として期待されるのはもう無理だけど、そこから降りることができないと文句を言っているヤツがいても、果たしてその主張が正しいかどうかは、まだ俺の中で答えが出ていないんだ。

ichigo:私はチェスターになった気持ちで歌ったから、正しかったと思う。私は大好きで、尊敬しているチェスターをイメージした後に、自分なりに歌ったんです。歌詞の本当の意味はわからなかったけど、絶望感とか、哀しい気持ちを出していかないといけないなと思ったから。

岸田:その解釈で間違っていないし、ichigoさんはすごく良い歌を歌ってくれた。でも、この歌詞で言っていることは最低なんですよ。アメリカのロックバンドが必ず1回はやることで、ママ・ソング”というのがあって、自分の母親に対して歌う曲なんですけど、否定的な意味で歌うことが多いんですよね。要は、アメリカの伝統的な人生を歩んでほしいと願う親に対して、“俺はそんな人生を望んでいない。あなたの期待には応えられない”ということを彼らなりに歌うという。その曲がファンから一番共感されていたり、本人達にとっても大事な曲だったりするんですよ。「anesthesia」は、それを軽い気持ちでやってみた(笑)。

ichigo:アハハッ! それは言うなよ!(笑)

岸田:いや、だって僕はそうじゃないから(笑)。

ichigo:やってみたかったんだね。

岸田:そう(笑)。

――すごく説得力のある歌になっています。さて、「nameless story」は非常に密度の濃いシングルで、2020年の岸田教団&THE明星ロケッツが一層楽しみになりました。また、シングルのリリースに加えて、2月8日に幕張メッセイベントホールで開催される<リスアニ!LIVE 2020>に出演されることも見逃せません。

ichigo:このイベントは、おいしいタイミングだよね(笑)。

岸田:うん。“電磁砲”のエンディング・テーマを出した直後の大きなイベントだから。<リスアニ!LIVE 2020>にいく人は岸田教団&THE明星ロケッツを知らなくても、興味を持ってくれていると思うんですよ。つまり、俺らの名前なり、存在を意識したお客さんが、その場にかなりの人数いる可能性が高い。つまり、ここで滑ったら死ぬぞというライブですよね(笑)。

ichigo:そうだね(笑)。でも、そこが岸田と私の違うところで、岸田は滑ったら死ぬと思っているけど、私はうまくいけばおいしいと思っています(笑)。それが、うまい具合に混ざるといいなと思いますね。

岸田:まぁ、結局目指すところは同じなんだけど。そういう舞台なので、とにかく滑らないことが全てですよね。やらかしたらダメなライブですよ、これは。平常心で、神妙な気持ちで臨みたい。ここで一発なにか凄いことをやってやろうというようなタイミングは、もう過ぎているから。つまり、やるべきことは、もう決まっているんですよ。今の自分達を、そのまま見せればいい。ただ、それで結果を出せるかどうかは、もう俺があずかり知らない天命だから。ここで滑るようだったら、自分達には天命がないということで諦めます(笑)。だって、自信作を作ることができた、やるべきことは決まっている、然るべきタイミングが整った、そこで滑って転ぶヤツは多分なにをやっても一生ダメですよ。だから、もし滑ったら、そういう場面で滑るヤツがかわいいと思ってくれる人達に期待して生きていこうと思います(笑)。

ichigo:ichigoはもう“やってやる!”と思っています。心配するのは岸田の仕事で、私の仕事は自分らしさを出すことだから。心配したり、整えたりするのは岸田に任せて、私は楽しみたいですね。もう鼻水出す(笑)。鼻水出してやりますよ、10,000人の前で!(笑)

取材・文●村上孝之



リリース情報

ニューシングル「nameless story」
2020年1月29日(水)発売
<アーティスト盤> CD+特典DVD (Music Video収録)
品番:1000757475 \1,800 (税抜)
<通常盤> CD
品番: 1000757476 ¥1,200(税抜)
<CD収録内容>
01 nameless story
~TVアニメ 「とある科学の超電磁砲T」エンディングテーマ
02 暁のカレイドブラッド
~アニメ 「ストライク・ザ・ブラッドIV」オープニングテーマ
03 anesthesia
<アーティスト盤 特典DVD収録内容>
nameless story
~TVアニメ 「とある科学の超電磁砲T」エンディングテーマ Music Video
<通常盤 デカ帯仕様>
表面:TVアニメ 「とある科学の超電磁砲T」 描き下ろし イラスト
裏面:アニメ 「ストライク・ザ・ブラッドIV」キービジュアル
<アーティスト盤 ジャケット仕様>
イラストレーター、TAQRO による描きおろしジャケット

<音楽配信スケジュール>
01 nameless story
DL: 2020/1/18
ストリーミング: 2020/1/29
02 暁のカレイドブラッド
DL&ストリーミング: 2020/1/29 
03 anesthesia
DL&ストリーミング: 2020/1/29

ライブ・イベント情報

<岸田教団&THE明星ロケッツ  LIVE TOUR 2020 ”厳かに祭典”>
東京
日程:2020/5/3(日)
会場:Zepp DiverCity(TOKYO)

大阪
日程:2020/6/5(金)
会場:バナナホール

愛知
日程;2020/6/7(日)
会場:Electric Lady Land

福岡
日程:2020/6/26(金)
会場:DRUM Be-1

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