【ライブレポート】みの率いるミノタウロス1stアルバム記念ワンマン「僕たちのとりあえずの集大成です」

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音楽をはじめ、ファッションや漫画などさまざまなカルチャーを好み、独自の活動を展開している“みの”を中心とするバンド、ミノタウロスが2月2日(日)に東京・渋谷LUSHで初のワンマンライブを実施した。

今回のワンマンは2月5日(水)にリリースされる、全20曲を収めたボリューム満点の1stアルバム『肖像』の発売を記念したもの(物販ではアルバムを特別に先行販売!)で、新作からのナンバーをいち早く体感しようと、渋谷LUSHにはたくさんの音楽好きたちが足を運んだ。ホワイト・ストライプス、ブラー、エアロスミス、エリック・クラプトン……色とりどりの洋楽BGMが流れる開演前のフロアはいい塩梅で賑わっている。


定刻を少し過ぎた頃、いよいよメンバーがステージに登場。みの(Vo&Gt)の背後には先日ミノタウロスに正式加入したばかりの田中伶(Dr)、そして竹之内一彌(Gt)、もんちゃん(Ba)、栗田祐輔(Key)の3人が脇をがっちり固める中、ライブは「ひいふうみいよ」からどっしりと落ち着いたスタートを切った。「欲しいものは欲しい時に手に入らない」では緩急の効いたバンドグルーヴ、飢えと渇きを感じさせるボーカルで魅了。ギターソロもみのが華麗に弾き、まずはこれまでMVにもなってきたノリのいい代表曲でロックミュージック、生の音楽の楽しさを颯爽と伝えると、早くも「最高ー!」というオーディエンスの声が飛んだ。



「今日は初のワンマン、こんなに集まってくれて嬉しいです。ついにこの日を迎えることができました。ワンマンはいっぱいしゃべっていいと聞いてるんで、メンバー紹介しましょうか」「伶くんとはもう7年くらいの付き合いかな。いっしょにバンドを組むのも3回目です」と、みのは自身がプロデュースする『ミノロック』とはまた違った空気感を楽しんでいる様子。屈強なビートとともに「風見鶏」を届けるパフォーマンスを観ながら、その熟練したサウンドメイクゆえか、ミノタウロスにはLUSHのような味のあるライブハウスがよく似合うなと思う。



みのと田中が所属するThe CONTESTANTS(現在は活動休止中)が2016年に発表したアルバム『No Contest』からも2曲を披露。みのによるボトルネック奏法が鮮やかなギターを起点に展開していくインスト「Dancer」、レッド・ツェッペリンのハードさにドアーズのサイケデリアを掛け合わせたような「Lady Loveless」の日本語バージョン「灯りを消して」で、会場のボルテージは一段と上がる。曲の合間にはフロアから「伶、なんかしゃべれ!」と温かいヤジも。さらに、2、3年前はライブのレパートリーに入れていたというゆらゆら帝国のカバー「ラメのパンタロン」を投下。これがまたミノタウロスにめちゃくちゃハマっていて、ダイナミズムあふれる演奏にひたすら痺れてしまう。



拍手と歓声がどんどん大きくなる会場の熱量に、「暑い!」とジャケットを脱いだみの。ブリティッシュロック色が際立つ「路傍の石」を聴かせたあとは、「アーシーでブルージーな路線もやりたい」と竹之内がアコギに持ち替え、陽気なロカビリー/パブロック調の「路地裏の宇宙人」、ミステリアスなコーラスと口笛を添えて妖しく彩った「東尋坊」と、1stアルバム『肖像』のバリエーション豊かな新曲が次々に届けられ、ワンマンならではの濃密さに酔いしれる。メンバー全員が本当に楽しそうにパフォーマンスしていて、ロックが心底好きなのが伝わってくるのもいい。


続くMCでは「ようやくリリースできました。ずっとタイミングを逃し続けてて、曲ばかりが溜まっていく感じだったんで、1回空っぽになりたかったんですよ。曲のストックをなくして、リアルタイムの自分を表現したくてね。だから気が早いんだけど、もう新しい曲を作ってます」と、アルバム『肖像』と今の心境についてみのが語る。また、自身のルーツをますます色濃く打ち出し始め、「ボブ・ディランやレッド・ツェッペリンもカバーしててすごく好き」だという戦前のブルース「イン・マイ・タイム・オブ・ダイイング」のカバー「今際の際で」をドロップ。みの曰く「ラヴィン・スプーンフルに在籍してたジョン・セバスチャンのバージョンを下敷きに日本語詞を施した」そうで、竹之内→栗田→みのと繋ぐアウトロのソロ回しを含め、聴きごたえ十分の見事なリメイクだった。



みのが「そろそろ話してよ」と背中を押し、ここでようやく田中が「楽しんでますか?」とポツリ。「60歳くらいのフォークシンガーが言う感じじゃん、それ」とみのにツッコまれつつも、会場はいい雰囲気で満ちている。みのと竹之内はフロア後方のバーカウンターにビールを追加オーダーし、田中が口を開くよう、こだわりのドラムセットについて「音がものすごくデカい」「いわゆる胴鳴りでルーミーなキックになってて、大砲みたいなフロアタムが2つ置いてあるんですよ」などと話を広げると、田中も「嫌われ者なんです(笑)」と皮肉を込めて返していた。


その後は、田中のドラムプレイも歯切れよく響いたザ・ダイナマイツ「トンネル天国」、みのがエネルギッシュに咆哮したT.レックス「20th Century Boy」と、痛快すぎるカバーを繰り出し、再びトップギアへ。そして、田中以外のメンバー4人がステージからいったん捌け、サプライズ的に始まったのはドラムソロのコーナー! 時に地鳴りのように唸るクールかつエキサイティングなソロを約5分にわたって叩き続け、田中は只ならぬ存在感を見せつけてくれた。


結果、会場はなんとこの日いちばんと言っていいほどの盛り上がりを迎え、ステージに戻ってきたみのも「田中伶! 田中伶! 田中伶!」と頼もしい相棒の名前を嬉しそうに何度も連呼した。最高の流れのまま、本編ラストは再び5人で「妖怪エンジン」。赤と緑の照明がドープに煌めく中、パワフルな音像を轟かせ、バンドの強靭ぶりが重ねて伝わるエンディングとなった。


アンコールでは「いやー、無事にここまで来られたからよかった〜!」とホッとした表情も浮かべ、「ミノタウロスは2年半くらいやってるのかな? ようやくこういうライブができて、本当にみなさんのおかげです。ありがとうございます! シアトルに住んでたときはブルースバーで3時間ダラダラ演奏してたし、それ以外は30分とかの持ち時間ってことが多くて、両極端だったんですよね」と、自分の世界観をしっかり見せられるワンマンの開催をあらためて喜んだみの。田中も「来てくれてどうもありがとうございました。今回のアルバムは僕たちのとりあえずの集大成です」とファンに感謝を告げ、充実のライブは「もうちょっとチンチンが聞きたい!!」とおねだりして熱く濃いコール&レスポンスを巻き起こした「恋のチンチン電車」でおひらきとなった。



取材・文:田山雄士
撮影:木村泰之

<ミノタウロス 1st ALBUM「肖像」先行リリースワンマンライブ>セットリスト

2020年2月2日(日)@渋谷LUSH
01.ひいふうみいよ
02.欲しいものは欲しい時に手に入らない
03.風見鶏
04.Dancer
05.灯りを消して
06.ラメのパンタロン
07.路傍の石
08.路地裏の宇宙人
09.東尋坊
10.今際の際で
11.トンネル天国
12.20th Century Boy
13.ドラムソロ
14.妖怪エンジン
En.恋のチンチン電車

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