【インタビュー】柴崎浩、WANDSギターサウンドを語る「1990年代とかけ離れた感覚はない」

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“幅広く奥深い音楽知識”を有し、“スタジオでの豊富な経験”を礎に、“類まれなる演奏能力で細かなフィーリングとダイナミズムあふれるエモーションを実像化する”というそのギタースタイルは、今の時代では稀有なものとなってしまった。わかりやすく言えば、“柴崎浩のようなプレイを聴かせてくれるギタリストは、今、周りを見渡してもほとんどいない”とも言える。

◆柴崎浩 [WANDS] 画像

キャリアに裏打ちされたトーンやプレイのニュアンスは、その人のプレイヤー人生が映し出されたものだ。柴崎浩のギターサウンドは、第1期、第2期そして今回の新生WANDSサウンドそのものを形成し、時代を彩ったボーカリストの歌を前面にクローズアップさせてきた。同時に、ハイセンスながらエッジの効いたアンサンブルを通して、なめらかな極上ポップスとざらついたロックの両軸を行き来する振れ幅の大きさは、柴崎浩というギタリストの非凡さをそのまま伝えるものでもあった。

柴崎浩は、自らのギタープレイがWANDSにもたらしたものとして「何かを意識することもなく“自分がカッコいい”と思ったことをやってきただけなので、僕の演奏も要素を形成する一部ではあるよねって思ったり」と、彼らのプレイ/サウンドそのものが当時のWANDSのコアを担ってきた事実に触れる発言をもしている (【インタビュー】WANDS、復活第一弾シングルに黄金期の風格「新曲が聴ける感動を共有したい」)。

「真っ赤なLip」で華麗な再登場を果たした2020年のWANDSは、最も注目すべき最先鋭クリエイティビティをどのようなサウンドで描き出すのか。第5期WANDSサウンドの要を担う柴崎浩の発言に耳を傾けてみよう。

   ◆   ◆   ◆

■好きな音はヴァン・ヘイレンが元になった
■ロサンゼルスのサウンドなのかな

──これまでミュージックマンのギターをメインに使っていましたが、今は…。

柴崎:メインはnishgaki guitars (ニシガキ・ギターズ)ですね。今はほぼnishgakiを弾くことが多いです。カップリングの「もっと強く抱きしめたなら 〜WANDS 第5期 ver.〜」ではジョン・ペトルーシ・モデル (ミュージックマン)も使いましたけど、それはピエゾの音が欲しかったからで。

──アコギの音ではなくピエゾの音が欲しかったんですか?

柴崎:生の本物のアコースティックギターをマイクで録った音じゃなくて、エレキのピエゾピックアップで出した音です。上下にデチューンしたエフェクトは付けてますけど。最初のイントロで、ギターのハーモニクスの後にコードストローク的なジャカジャンっていう、あの音です。

▲nishgaki guitars Amnis Novus (Hiroshi Shibasaki Specs)
柴崎本人の意見を採り入れて製作されたモデル。フレイムメイプルトップとバックの間にアルダーを挟み込んだラミネート構造を持つソリッドボディ。ピックアップにはSuhrのThornbuckerを搭載。


──他のエレキの部分は?

柴崎:nishgaki guitarsですね。

──nishgaki guitarsのAmnis Novus/アムニス・ノバス (Hiroshi Shibasaki Specs)が、すっかりメインギターになりましたね。

柴崎:そうですね。ビルダーの西垣君が僕のギターを「ぜひ作ってみたい」と言ってくれて、いろいろディスカッションしながら、彼が材の選定とか形状とか考えて作ってくれました。僕が細かく指定したのはネックシェイプ、ピックアップとブリッジの指定、ノブやスイッチの場所くらい…ですかね。

──シンプルながらも個性的なギターですね。

柴崎:アームを使ったときにチューニングが狂うのがイヤなので、なるべくペグに対して弦が真っ直ぐ通るようにしてほしくて、例として「ミュージックマンの“4対2”ヘッドは、そういう意味で考えられているよね」みたいな話をしたことで、4対2になったんですよ。

──どんな音を求めたんですか?

柴崎:「ミュージックマンのルークモデル(スティーブ・ルカサー・シグネイチャー)よりも、アタックの周りについたバウンド感とかエアー感みたいなのがちょっとあるといいな」って。「ただ、ディストーションサウンドのときに芯がなくなるほどフワッとはして欲しくないんだけど、ルークよりはもう少し味付けが欲しい」と伝えました。

──なんと難しい注文を。で、「わかりました」って返事が?

柴崎:彼はそうでしたね。「こうしたらいい」っていうアイディアが湧き出たみたいで。ブリッジのブロックも「鉄の方が好きだと思う」と言って変えたりしました。「最初に無塗装の状態で一回弾いてくれ」っていわれて、それがすごくいい音だったので、そこからなるべく音を変えないように塗装を薄くしたりとか。

▲James Tyler Classic
1990年代中盤から使用しているストラトタイプ。2トーンサンバースト、アッシュボディ、メイプル指板を採用。リアピックアップがシングルコイルからハムバッキングに交換されたほか、ブリッジやコントロールにも改造点がみられる。


──素晴らしいギターが完成したようですね。

柴崎:このギターはいい出会いでした。自分の中ですごく大きな変革だったというか……何といえばいいのか、タッチに対する反応とかがそれまでに経験したことがないような感じで、弾く面白さ…これまでとはまた別の次元の面白さがありました。

──いわゆる「反応が速い」?

柴崎:なんだろ…自分が弦に対して行なったことが、より多く音として返ってくる…みたいな。

──それはすごい。

柴崎:気持ちいいし楽しいし、指定したSuhrのThornbuckerピックアップとのマッチングも良かったみたいで、クリーンサウンドもクランチもいろんな音が作れたんですよ。

──WANDS再始動のタイミングで出会ったnishgakiですが、基本的な柴崎トーンは昔から変わりませんか?

柴崎:基本的にはそんなに変わらない気がするんですけど、al.ni.coのときは敢えてすごく荒々しいサウンドにしたり、そういう音楽に興味がありましたけど、今はわりと奇をてらうこともなく、好きなサウンドを出すと1990年代のWANDSとかけ離れた感覚はないですね。

──柴崎さんの好きなギターサウンドは、言葉にするとどういうものですか?

柴崎:なんだろ…やっぱりヴァン・ヘイレンが元になったロサンゼルスのサウンドなのかな。

──マイケル・ランドウとかではなくてヴァン・ヘイレン?

柴崎:マイケル・ランドウとかスティーヴ・ルカサーも、基本的にはヴァン・ヘイレンだと思うんですよね。

──ほー。柴崎さんの口からヴァン・ヘイレンの単語が出るとなんか萌える(笑)。

柴崎:みんながヴァン・ヘイレンを真似していた頃がベースにある気がします。毛嫌いする人もいるからあんまり言わない方がいいのかなと思ったりもするんですけど(笑)、正直なところそう思います。

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