【インタビュー】柴崎浩、WANDSギターサウンドを語る「1990年代とかけ離れた感覚はない」
■“WANDSらしさ”と“過去にはなかった部分”を
■どういう風にミックスしていくのか
──ジャジーなフレーズやクリーン〜クランチトーンも絶品ですが、その辺のセンスは、スタジオワークで身につけたものですか?
柴崎:セッションですかね。2002〜2003年くらいから六本木ピットインとかでセッションのライブをやっていたんです。わりと固定のメンバーで、曲も大幅には変わらないようなバンドに近いものでしたけど、今までやったことのないようなコード進行だったり、ジャズのノリだったりとか、そういうことをやっていました。
──それは遊びで? それとも仕事?
柴崎:単純に興味…かな。それをできるようになりたいという欲求というか。初めて一緒に仕事をするアーティストとか、T.M.Revolutionをはじめとするライブサポートとかでも学ぶことはありましたし。
──そこで学んだことは、WANDS作品にも影響を与えているのでしょうね。
柴崎:自覚はないですけど、客観的に見ればあるんだと思います。経験したことは何かしらで無意識のうちに出るんじゃないかな。
▲Ernie Ball Music Man John Petrucci JP6 ドリーム・シアターのジョン・ペトルーシのシグネチュアモデル。大胆にえぐられたスクープエルボーカットや光の当たる角度で表情を豊かに変化させるミスティックドリームと呼ばれるボディーカラーが特徴的。ピエゾピックアップを搭載している。 |
柴崎:上原が歌う新曲をたくさん作りたいんです。その中で、“WANDSらしさ”と“過去のWANDSにはなかった部分”をどういう風にミックスしていくのかという曲作りにも興味があります。リアルタイムじゃないけどWANDSの曲は好きっていう若い世代の人も、ライブ会場で一緒に楽しめたらなと思って。
──1990年代にメガヒットを重ねてしまった“重さ”を感じることはありますか?
柴崎:何十年も経っているのに、まだ心にとどめている人たちが少なからずいるというのはありがたい状況だと思います。
──洋楽のレジェンドアーティストも、同様の思いを抱えていますよね。
柴崎:TOTOのライブでも、決まって「ロザーナ」や「アフリカ」とかでお客さんが凄く熱狂する。本人たちは飽き飽きしているんでしょうけど、長く続けているバンドならではで、“うらやましいなあ”と思ったりもしました。
──うらやましがる必要はないと思いますが(笑)。
柴崎:その時は、WANDSはもう活動していないときだったので。何っていうかな…自分が飽きてても楽しんでくれる人がいるのを分かってやっているプロの集団…みたいな、ミュージシャンだから“常に、やったことないこととか新しいことをやってみたい”っていう部分もありながら、オーディエンスのために演るという在り方も素敵だなと思ったりしましたね。
──まさしく、これから体現していく世界ですね。
柴崎:過去の楽曲をもう一回背負ってパフォーマンスする部分と、自分たちでWANDSっぽいところも残しながらどんな楽曲が作れるかっていうのに興味がすごくあります。“WANDSっぽい”って何なんだろってところもありますけど。
──“WANDSっぽい”とは何なのか…その答えは見つかりましたか?
柴崎:見つからないですね(笑)。ちょっとした音楽の一部のシーンだったりするのかなとは思いますけど。歌が伸ばしてる隙間からギターが聴こえたとか、ちょっとしたそういうことなのかな…と。
▲Ernie Ball Music Man LIII HSS [Boudi Blue] TOTOのスティーヴ・ルカサー・モデル“LIII”。特殊工法により含水率を下げたローステッドメイプルネック仕様。ピックアップのレイアウトはHSSで、現在EMGピックアップを搭載している。 |
柴崎:ギターのサウンドがWANDSっぽさの一要因ではあったのかなとも思っています。そこにはお手本としての海外アーティストの存在がすごく大きかったと思うんです。でも1990年代中頃から、その流れというか価値観がすごく変わっていったと思うんですよ。例えば、ギターソロがあるのはカッコよくないとか。
──ええ。
柴崎:綺麗なギターサウンドはあんまりイケてない、みたいなのとか。価値観がちょうど入れ替わるようなこともあるのかなと思います。
──まさしくグランジが与えた新たな価値観ですね。
柴崎:自分自身も、ある時期はそういう音を出そうとしたりもしましたし。だから、あの音は今では出せる自信がないですよ。
──時代性もありますか?
柴崎:その時の気持ち…というか、年齢と共に。
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