【ライブレポート】ペンタトニックス、「日本のみんなも一緒に歌ってください」

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全国5カ所での公演がすべてソールドアウトとなったペンタトニックスのジャパン・ツアー、<THE WORLD TOUR : JAPAN 2020>がスタートした。

1月30日(木)の横浜公演を皮切りに、札幌、名古屋と続いた後、2月4日(火)のこの日は東京の国際フォーラム・ホールAにて開催(あとは6日(木)の大阪公演を残すのみ)。最寄りの駅から会場へと向かっていると、チケットを買いそびれたファンもチラホラ。チケット争奪戦の凄まじさが窺い知れる。というのも、昨年11月にプロモーション来日は果たしているものの、彼らが正式な来日公演を行うのは約3年ぶり。その間には、新メンバーのマット(・サリー)が加入したり、スコット(・ホーイング)とミッチ(・グラッシ)の2人によるスーパーフルーツとしての活動、紅一点カースティン(・マルドナード)によるソロ活動、ビートボクサーのケヴィン(・オルソラ)も次々と動画サイトにソロ楽曲をアップするなど、メンバー各自による課外活動も活性化。多彩なグループ外での活動を経て、ペンタトニックスとして再び日本に舞い戻ってきたときに、彼らが一体どんなステージを見せてくれるのか。と気になっていたファンも多かったに違いない。

開場時点から待ちきれない様子のオーディエンスは、彼らの出世曲「ダフト・パンク・メドレー」やオリジナル曲の「シング」や「キャント・スリープ・ラヴ」が始まると、すぐさま大きな手拍子で彼らを迎える。オーディエンス参加型のイベントといった雰囲気だ。言葉の壁はあっても、音楽でひとつに結ばれたい。そんなファンの思いがひしひしと伝わってくる。しかもペンタトニックスの応対が、これまた素晴らしい。「コンニチハ!」や「アリガトウゴザイマス」どころか、「日本のみんなも一緒に歌ってください」と日本語でしっかりMCをしてくれる。ピカチュウの帽子(?)を被っていたファンを見つけて、カースティンが思わず「メチャカワイイ!」と叫んでしまう一幕も。ケヴィンとマットの2人によるコール&レスポンスのパートも大いに盛り上がった。盛り上がりすぎて、ステージ上の2人がタジタジなんて瞬間もあったほどだ。



今回が9度目の来日となった彼ら。本国アメリカはもとより世界中に多くのファンを持っているはずだが、日本だけは特別扱い。日本愛もいっそう増しているように思われた。今回の日本ツアーのためだけに準備して初披露してくれたナンバーもあれば、日本の歌を完璧な日本語で歌って驚かせてくれる。Perfumeの「ポリリズム」などの代表曲がマッシュアップされた「Perfumeメドレー」は、今やすっかりお馴染みだが、昨年末に新たに挑戦してみせたOfficial髭男dismの「Pretender」も、流暢すぎるほどの日本語で歌ってくれた。ついつい英語が彼らの母国語だったというのを忘れてしまうほど。彼らが人並み外れた音感や、素晴らしい耳の持ち主だからこそ為せる技と言えるかもしれない。



アカペラとヒューマン・ビートボックスによるヴォイス・マジック。その美しさや驚きは、聴けば聴くほど肉声のみで構成されているとは信じがたいのだけれど、実際に生で聴いていると、鍛え上げられた喉によるアクロバティックな肉体表現であるのがよく分かる。ミッチがここぞというパートで超ハイトーン・ヴォイスを伸ばし続けたり、ケヴィンがビートボックスとチェロ演奏を同時にやってのけたり、5人のハーモニーの美しさの極みともいえる「イマジン」(ジョン・レノンのカヴァー)や、たっぷり最新曲も盛り込まれた「アリアナ・グランデ・メドレー」などなど、次から次へとハイライトの連続だ。オリジナルに忠実なアレンジで聴かせる「ボヘミアン・ラプソディ」(クイーンのカヴァー)や「ラザー・ビー」(クリーン・バンディットのカヴァー)、もはや彼らのオリジナル曲のように思える「アハ!」(イモージェン・ヒープのカヴァー)が、ひときわ熱狂的に迎えられていた。勿論、彼ら自身の成長や進化も明白だ。ペンタトニックスの9年間のキャリアをサウンドで振り返った“PTXスローバック・メドレー”を聴いていると、彼らの歴史をずっしりと感じさせられる。と同時に彼らがTVオーディション番組『ザ・シング・オフ』で優勝した学生時代から、グラミー賞で3年連続受賞を果たし、世界中にファンを持つようになった今でもまったく変わらぬ音楽への情熱を燃やし続けているのがよく分かる。決して玄人ズレしたり、大上段に構えることなく、未だにハイスクールの仲間同士が、あれやこれやとワイワイ楽しみながら一緒に歌っているかのよう。そんな素朴な姿勢が随所から伝わってくるのも何とも微笑ましかった。

一方、プロフェッショナリズムを痛感させられたのは、ステージングに関してだ。カラフルなステージ・セットやバックのモニターに映し出されるヴィジュアルは、どれもとびきり楽しいものばかり。牧歌的だったり、宇宙的だったり、寓話的だったり、アットホームだったり、アレっと思わせるユニークなアイデアが次々と盛り込まれ、視覚的にも常に高揚感を与えてくれる。スムーズな進行やMCも加わって、まるで遊園地やテーマパークにいるかのようだ。老若男女の誰もが楽しめる別世界へと誘ってくれる。オーディエンスの中には熱狂的な洋楽ポップス・ファンと思しき人も多かったようだが、あまり洋楽には詳しくないが、彼らのアカペラ+ヒューマン・ビートボックスを聴きたくて足を運んだという人も多かったはずだ。そういった全ての人々を巻き込み楽しませるエンターテインメント性が際立っていた。彼らのライヴの醍醐味と言えるだろうか。



新メンバーのマットと他のメンバーとの相性も抜群だった。歌声のみならず、穏やかそうな人柄もマッチングしているのだろう。違和感なく溶け込めているようだった。この日はメンバーがフロアに降りてきてくれたり、サーヴィス精神も盛りだくさん。個人的には特に興味深かったのが、イントロから大歓声が沸き上がった「シャロウ〜『アリー/スター誕生』愛のうた」(レディー・ガガ&ブラッドリー・クーパーのカヴァー)のとき。終盤に近づくほど、メンバー全員がレディー・ガガを思わせるディーヴァになりきっていて思わず苦笑。彼ららしさを堪能させてくれる瞬間だった。

アンコールの最後を締めくくったのは、お馴染みの「ハレルヤ」(レナード・コーエンのカヴァー)。歌い始める前にスコットが「僕たちが最も気に入ってる曲なんだ」と紹介してからスタート。この曲ではメンバー全員が主役となり、それぞれが思い存分に個性を発揮することができる。服装やパソナリティ、肌の色や声質も違う彼らだが、ひとつになったときに最高のハーモニーが生み出される。7色の虹ならぬ、5色のペンタトニックス・カラーで染め上げてくれた。

文:村上ひさし
撮影:MASANORI DOI/土居政則

■<THE WORLD TOUR:JAPAN 2020>

【横浜】2020年1月30日(木)パシフィコ横浜 国立大ホール
【札幌】2020年2月1日(土)札幌文化芸術劇場 hitaru
【名古屋】2020年2月3日(月)名古屋国際会議場 センチュリーホール
【東京】2020年2月4日(火)東京国際フォーラム ホールA
【大阪】2020年2月6日(木)フェスティバルホール

クリエイティブマン オフィシャルHP
https://www.creativeman.co.jp/artist/2020/02pentatonix/

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