【インタビュー】キャンディス・スプリングス、ジャズの未来へ愛を込めた贈り物『私をつくる歌 ~ザ・ウィメン・フー・レイズド・ミー』

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■第二部 キャディス・スプリングス
■ソロ・インタビュー


──ここからは、キャンディスさんのソロ・インタビューです。改めて、素晴らしいアルバムだと思います。

キャンディス:ありがとう。一所懸命取り組みました。

──「影響を受けた女性ボーカリストの曲を集めたアルバム」というプランは、いつ頃から考えていたんですか。

キャンディス:数年前から温めていました。今回のアルバムの曲は12歳くらいから好きだった曲で、私にとって大事な曲ばかりです。ずっと歌ってきたけれど、こうやってレコーディングをすることで世の中のみなさんにシェアできることが嬉しいです。エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、ロバータ・フラック、ダイアナ・クラール…みなさんがレジェンドとして突出した存在ばかりで、しかもノラ・ジョーンズも一緒にやると言ってくれて…私にとってはとても嬉しいことでした。ただし、私は女性アーティストだけでなく、男性アーティストにも影響を受けてきました。デューク・エリントン、ルーサー・ヴァンドロス、そのほかたくさん…それは、父の影響が大きいですね。次は、そういう人たちへのトリビュートを作るのもありかな?と思っています。でも今回の『私をつくる歌 ~ザ・ウィメン・フー・レイズド・ミー』は、私を育ててくれた女性たちへのトリビュート・アルバムなんです。

──選曲はどんなふうに? ジャズだけじゃなく、R&BやHIP HOPも入っていますが。

キャンディス:私の好きな曲を選びました。ジャズも好きだし、ゴスペルやR&B、ソウルやクラシカルなものも好きだし、いろんなものをごちゃまぜに聴いてきたので。私にとって音楽は、まるで絵のようなもの。色で見えるんです。パレットにいろんな色があって、いろんな濃淡があって、それぞれのアーティストが私にとっては絵みたいなもの。そういうふうに音楽をとらえています。

──共演者のエピソードをいくつか聞きますね。ノラ・ジョーンズはあなたにとって特別な存在だと聞いてます。彼女との共演はどんな経験でしたか?

キャンディス:初めてのギグで歌ったのが、ノラ・ジョーンズの曲でした。12歳の時に初めて聴いて、とても影響を受けたんです。ラジオから「ドント・ノウ・ホワイ」が流れてきて、これ誰!って。それで『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』というアルバムを聴いてすごく憧れました。「こんなふうになりたい」って。そしたら父が「なれるよ」って言ってくれたんです。その頃私は歌っていなかったんですけど、父はずっと私に歌わせたかったみたい。そのアルバムは、父が私にくれたんです。若い女性がピアノの弾き語りで歌うのがすごく新鮮で、特に「ニアネス・オヴ・ユー」が大好き。私にとっては本当に大事なアルバムです。今回こういう形でアルバムを作ることになり、ノラ・ジョーンズに参加してもらえることになったのはとても光栄で、スタジオの中で一緒にレコーディングできて嬉しかったです。


──デヴィッド・サンボーン(Sax)は、本物のジャズのレジェンドですね。

キャンディス:とても素敵でした。ブルーノートの「ジャズ・クルーズ」で2017年にお会いしました。それから彼に声をかけてもらって、オールスターが集まるライブがあったんですが、そのショウに呼んでもらって、そこから仲良くしています。すごく良い人で、今まで会った中でも最高の人です。

──クリス・ポッター(Sax)やクリスチャン・マクブライド(B)といった、スーパーなミュージシャンの参加も目を引きます。

キャンディス:クリス・ポッターはラリー・クライン(プロデューサー)との繋がりで。クリスチャン・マクブライドは、ダイアナ・クラールが好きだったので、ずっと一緒にやりたいと思っていました。ノラ・ジョーンズやデヴィッド・サンボーンに声をかけてやってくれるなら、きっとクリスチャン・マクブライドも訊いてみたらやってくれるんじゃないかな?って。そう思ってメールしてみたらすぐに返信が来て、やってもらえることになったんです。ダイアナ・クラールがすごく好きなので「デヴィル・メイ・ケア」を取り上げたのですが、イントロの部分はクリスチャン・マクブライドのアイディアでした。

──私的な話ですけど、僕、アヴィシャイ・コーエン(B)が好きなんです。彼はどんな人でした?

キャンディス:すごく良かった。ソウルフルであたたかい人で、カラフルな演奏をしてくれました。気さくだし。ブルックリンでレコーディングセッションをしたのですが、クリスチャン・マクブライドもニューヨークにいたので、ラリー・クラインが電話してみたら来てくれたんです。だから本当に、来て、さっと録って帰っていった感じですね。素晴らしいアーティストです。


──では、もう一人。フルートのエレーナ・ピンダーヒューズは、とても若いですね。彼女はどんなプレイヤーですか?

キャンディス:若いけれど、ハービー・ハンコックとずっと演奏して回っていますよね。7年くらい前にニューヨークで私のライブのオープニングアクトで出てくれました。私も若くて新人だったけれど彼女も若くて、フルートも素晴らしいので、連絡を取り合って、いろんな現場で会ったりしていたんですが、こういう形でレコーディングできてよかったです。彼女自身がレジェンド的な存在になっていくと思っているので、ビッグになりすぎる前に一緒にできてよかった(笑)。

──若くて才能のあるミュージシャンが、あなたの周りにはたくさんいるんですね。

キャンディス:ありがとう。恵まれていますね。

──あなたが引き寄せているのでは?

キャンディス:Thank You!

──ほかに何か、レコーディングで印象に残るエピソードがあれば教えてください。

キャンディス:ブルックリンのスタジオでレコーディングしたんですが、アンディという人がオーナーで、楽器のコレクションがたくさんあるんです。ノラ・ジョーンズが使っているスタジオで、実はノラ・ジョーンズの家が近くて、家に呼んでもらって、どんな曲をやろうかという話し合いも彼女の家でやりました。すごく使いやすいスタジオでした。

──その親密な空気は、アルバムに入っていると思います。

キャンディス:本当にすごく良かった。クオリティの高い様々な楽器、スタインウェイやローズ、アンティークな楽器もあって、すべて生録りだったので、そういった点も気に入っています。

──5月の来日公演、名古屋と東京のブルーノートでは、どんなショウを見せてくれますか?

キャンディス:すごくエキサイティングなショウになると思います。自慢のバンドを連れてきます。このアルバムからの曲を演奏するので、女性トリビュートにふさわしく女性バンドなんです。彼女たちの素晴らしいのはみんな歌えることで、ハーモニーがつけられるから楽しみにしていてください。もしかしたら、マサヨシさんも参加するかも?

──それはぜひ実現してください! 最後に、このアルバムには関係ないですが、プリンスについて一つ質問いいですか? あなたとプリンスの素敵な友人関係を、みんなが知っています。彼との会話の中で、今も大切にしている言葉があれば教えてください。

キャンディス:「君の歌は、ピアノと声だけで十分に生きるから、あまりいろんな音で埋め尽くさないほうが良いんじゃないか」と言われました。今回のアルバムもそうだし、1stアルバムはもっとその言葉に影響されています。いろいろやってみたけれど、結果的に、生演奏で歌うのが私のスタイルに一番合っている、ということをよく言われました。「君は、僕らの時代のロバータ・フラックになれる」と言われたんです。つまりストレート・アヘッド(正統派)な方向性のものを追求しなさいと言ったのがプリンスなんですが、父も同じことを言っていました。私にとって大事な2人が、同じようなことを私に言ってくれたことが印象に残っています。

──ありがとうございます。5月にまた会えることを楽しみにしています。

取材・文●宮本英夫


リリース情報

『私をつくる歌 ~ザ・ウィメン・フー・レイズド・ミー』
3月27日(金)リリース
\2,860 (税込) SHM-CD UCCQ-1118 Blue Note
1.デヴィル・メイ・ケア feat.クリスチャン・マクブライド(ダイアナ・クラール)
2.エンジェル・アイズ feat.ノラ・ジョーンズ(エラ・フィッツジェラルド)
3.アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー feat.デヴィッド・サンボーン(ニーナ・シモン)
4.パールズ feat.アヴィシャイ・コーエン(シャーデー)
5.エックス‐ファクター feat.エレーナ・ピンダーヒューズ(ローリン・ヒル)
6.アイ・キャント・メイク・ユー・ラヴ・ミー feat.アヴィシャイ・コーエン(ボニー・レイット)
7.ジェントル・レイン feat.クリス・ポッター(アストラッド・ジルベルト)
8.ソリチュード feat.クリス・ポッター(カーメン・マクレエ)
9.ニアネス・オヴ・ユー(ノラ・ジョーンズ)
10.これからの人生(ダスティ・スプリングフィールド)
11.やさしく歌って feat.エレーナ・ピンダーヒューズ(ロバータ・フラック)
12.奇妙な果実(ビリー・ホリデイ)
13.ラッシュ・ライフ(サラ・ヴォーン)*日本盤ボーナストラック
14.ユーヴ・ガット・ア・フレンド feat.山崎まさよし(キャロル・キング)*日本盤ボーナストラック

ライブ・イベント情報

【来日公演】
KANDACE SPRINGS
2020年5月17 日(日) 名古屋ブルーノート
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open8:00pm Start8:45pm
https://www.nagoya-bluenote.com/schedule/202005.html#0517

2020年5月18日(月)19日(火)20日(水) ブルーノート東京
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:15pm Start9:00pm
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/kandace-springs/

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