【ライブレポート】T-BOLAN、全国ツアー＜繋＞開幕「僕たちは未来を守る知恵と決心を持っている」

T-BOLANが2月8日、埼玉・羽生市産業文化ホール公演を皮切りに23公演の全国ツアー＜T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020 「the Best」～繋～＞をスタートさせた。繋がる心、繋がる力、繋がる未来に満たされた同ツアー初日公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆T-BOLAN 画像

森友嵐士(Vo)はツアー前に、「前回の＜励＞ツアーで、メンバー全員が一緒に旅したことによってバンドの音もメンバー間の感覚も熟し、“T-BOLANがT-BOLANになった”という感じがしています。今回の＜繋＞ツアーでは、みんなの期待に沿えるような一夜一夜を作っていけるんじゃないかな？」と語っていた。メンバー間の絆を確認し、次のステージへ進む彼らだが、ファンとの距離を大切にする彼らがつけた今回のツアータイトルは＜繋＞だ。

各会場限定で流れるオリジナル番組『T-BOLAN Be With You』はライブ開演前から＜繋＞を実感できる試みでもある。同番組は1990年代に東海ラジオで放送された森友のラジオプログラム。ライブ会場限定復活した番組へ、T-BOLANのオフィシャルサイトを通してファンが直接メンバーにメッセージを送ることもできる。土地土地に対する思いを丁寧に話す森友の声に耳を傾け、一喜一憂する羽生のオーディエンス。ライブ会場に入った瞬間から＜繋＞の幕が開いているといってもいいだろう。


ステージ上のスクリーンに『T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020 the Best TSUNAGU』の文字が青バックに白く浮かび上がる。そして定刻から10分ほど時間が過ぎた頃、スクリーンにカラフルなコラージュ画像が流れると、激しいドラムの音とともにステージの幕が下りた。森友嵐士、五味孝士(G)、青木和義(Dr)の3人に加え、サポートメンバーのNATCHIN(B)と坪倉唯子(Cho)が黒を基調とした衣装で登場だ。1曲目は前回のツアーのタイトルでもある「Re:I」。前回ツアーから今回ツアーが繋がっていることを予感させるオープニングであり、テンションの高いナンバーに客席のボルテージも一気に上がる。続いて、自身初オリコンチャートTOP10入りを果たした「じれったい愛」へ。森友の声に坪倉のコーラスが気持ち良く絡み、会場には大きな声援が飛び交った。

「＜T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020 「the Best」～繋～＞へ、ようこそ！ みんな良い顔してる」──森友嵐士(Vo)

この挨拶に続いて、ツアータイトルである「繋」について話し始めると、久しぶり会えたファンのみならずT-BOLANのライブに初めて来たファンも、その年月に関係なく再会を喜び、早くも全体が一体感に包まれた。

ブルージーなギターソロで始まったのは3rdシングル「JUST ILLUSION」だ。ミクスチャー調のアレンジが施された原曲だが、今ツアーでは重厚なハードロックをベースとした新アレンジが現在進行形のT-BOLANを感じさせる。SNSで森友が「久しぶりに歌う曲に、新鮮な気持ちにさせられちゃってるよ。あの曲のあのバージョン、かなり、いい感じ 笑」と投稿していたように、20年以上ライブで演奏されていない同曲だけでもライブを訪れた価値があるというものだ。

演奏される曲やMCのテーマに併せて様々な映像がステージ上に流される演出も見どころのひとつ。貴重なオフショット、“繋”のメッセージに併せて作成されたムービー、それらは「繋がる心、繋がる力、繋がる未来。僕たちは未来を守る知恵と決心を持っている」という森友の言葉に繋がっている。森友はとても言葉を大切にしているアーティストだ。MCで話す言葉一つ一つが聴く側に曲の新たな解釈を教えてくれるのだ。


「ここで奇跡の男の登場です。T-BOLAN on BASS、上野博文！」と森友が呼び込み、上野が登場した。2015年にくも膜下出血で生死を彷徨った上野だが、献身的な介護の末に意識が回復、その後のリハビリと“ステージに立つ”という目標に支えられて復活を遂げている。「上野さん、笑って！」という客席の声に、手を上げて大きな声で「ハイ！」と返した上野。足元を確かめながらベースを持って歩く上野の姿にメンバー、ファンだけでなく、多くの人々が勇気を与えられるはず。笑顔で「大丈夫大丈夫」と答えながら、上野は力強く右手を上げた。

上野が加わった後半戦は、曲のサビ部分で観客にマイクを向ける森友が、恥ずかしそうな観客に対して優しく歌詞をレクチャーする光景も。その姿を後ろから上野が笑顔で見つめる。観客に手拍子を促してリズムを作った森友に合わせて青木も手拍子でリズムを作り始まったのは「刹那さを消せやしない」だ。そして「SHAKE IT 」「傷だらけを抱きしめて」…、T-BOLANライブ後半のアップテンポのナンバーを怒涛のように畳み掛けた。「ラスト！」という掛け声で始まったのはライブの定番曲「My life is My way」だった。2月28日より配信されるAmazon Prime Video オリジナルドラマ『湘南純愛組！』の主題歌として、バラードバージョンで新たに生まれ変わった同曲でステージの幕を閉じた。

時を超え、当時と変わらぬ想いを円熟した音で聴かせてくれた最新型T-BOLANは、オブジェ、映像、音、照明など様々な新しい試みが一体となって観客の心を繋いだ。「また会おうぜ！」というこの夜の森友の最後の声は、以前と同じ場所で心を繋いでくれている。

「砂浜のような受ける波によって、いつも変化し続けるバンドでありたい」──森友嵐士(Vo)

その言葉通り、T-BOLANは形を変えながら、さらに進化していく。止まることより、進化することを選んだバンドが初夏を迎える頃にはどのように変化するのだろうか。ツアーファイナルとなる7月5日の鳥取・米子コンベンションセンターまで全国ツアー＜T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020『the Best』～繋～＞は続く。