【連載】Vol.085「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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来日直前インタビュー ブッカー・T.ジョーンズ「日本のファンの皆さんが長きに亘り忠実に支えてくださっていることへ深く感謝します!」


▲Pic. by Piper Ferguson

ソウル・ミュージックの歴史を築き上げたブッカー・T&ザ・MG‘s創始者ブッカー・T.ジョーンズ。御大の3年ぶりの来日公演がもうすぐ行われる。昨年秋に新作『NOTE BY NOTE』を発表。同時に自叙伝『TIME IS TIGHT  MY LIFE, NOTE BY NOTE』も上梓した。ソウル・スタンダード「Green Onions」からニュー・レコーディング・ナンバーまで多くの作品が披露されることになるだろう素晴らしきキーボーディスト、ブッカー・T.のLIVE IN JAPAN、Blue Note TOKYO公演に僕達ファンは大きく期待したい。

そこでミスター・ブッカー・T.ジョーンズに来日直前インタビューを敢行した、ライヴ観戦の前にじっくりとお読みあれ!!



Mike:3年ぶりのBlue Note TOKYOでのライヴ、ファンは公演に大きな期待をしています。そういえば前回お会いした時、ニュー・アルバムと自叙伝を楽しみにしていて欲しいと語っていらっしゃいました。それらが昨年遂に完成しました!アルバム『NOTE BY NOTE』、書籍『TIME IS TIGHT  MY LIFE, NOTE BY NOTE』。
Booker T.:『NOTE BY NOTE』と『TIME IS TIGH  MY LIFE, NOTE BY NOTE T』を完成するにあたって、目指していたことのひとつは、若い、これからのミュージシャンや、キャリアを積んだ現役ミュージシャンに対して、養うべき家族や耐え忍ぶことや障害はあるかもしれないけど、音楽を研究し続け自ら学ぶのを決してやめないようにと訴え実行することを奨励しています。


▲『TIME IS TIGHT  MY LIFE, NOTE BY NOTE』フロント・カバー from Mike’s Library

『TIME IS TIGHT  MY LIFE, NOTE BY NOTE』、自分の人生について、本を書くこと自体、全く想像していませんでした。そもそも私的な時間に思いがけず私は深い海に飛び込み、勢いで泳ぎを覚えざるを得なくなった訳なんです。実は何年も前にシカゴのサウスサイドにあるホテルで自分の人生についてちょっとした物語をいくつか書いてみたことがあったんです。その物語が意図したところは、何はともあれ書き始めることで、いわば曲作りのきっかけを探してスケールの練習をするようなものでした。その原稿を妻のナンに見せたところ「本を書くべきよ!」と言われ、そんな大仕事に取り組むのであれば、と、本の書き方の手引きになる作家たちを研究し始めたんです。テネシー州マーチンに住むアン・ラモントが「Bird by Bird」という魅力的な本を書いていて、私はこれをはじめとする書籍をいくつか熟読。J.R.メーリンガーの「Tender Bar」、メアリー・カーの「Liar’s Club」、バラク・オバマの「Dreams From My Father」、ブッカー・T.ワシントンの「Up From Slavery」など、回顧録も数多く読みました。そんな内外との綱引き状態から、私の回顧録は形成されていったのです。自分の人生を改めて語るにあたり、私は主に二つの目的を果たしたかったのです。まずは読者に、私の肩先にちょこんととまって一緒に楽しみ、時には「いや、ダメだ、それはやめておけ、ブッカー!」と忠告したくなるような感覚を提供すること。そしてもう一つは様々な道のりをひと通り私と共に辿ってもらうことでした。


▲『TIME IS TIGHT  MY LIFE, NOTE BY NOTE』バック・カバー ボブ・ディランらが称賛コメントを寄稿 from Mike’s Library

M:特に音楽ファンにはどういったことを伝えたかったのですか?

B:ミュージシャンとしての私の仕事は同胞愛にあり、それがより多くの皆さんの役に立てたが故に私のヴィジョンは広まっていったということをこの本で伝えたいと思っています。人生の実に様々な瞬間に、音楽は味わいと意味合いを添えるのです。十代の頃の自分、恋すること、失恋すること、自由、愛する人を失うこと、そして、それが癒されること。月並みなものから壮大なものまで、物語の深みが音楽によって増します。私は同胞愛を、そして、仲間のミュージシャンたちが自在にそれを広めてきた様を明らかにしたかったのです。ある意味、この回顧録は音楽とミュージシャン仲間に向けた恋文なのです。
また、家族にも伝えたい言葉がいくつかありました。スタックス・レコードにおける人種を巡る環境にアフリカ系アメリカ人の視点を提供したいというのもあります。

M:執筆にはどのくらいの年月がかかりましたか。
B:長い期間に亘って書いた一冊です。飛行機内のナプキンや、息子が出場しているサッカーの試合のプログラムに、自宅の書斎やあちこちのホテルで書きつけてきたんです。ツアー先でも時間を見つけては書き、ようやく初稿が上がり、そこから書き直しを重ねて、ありがたくも最終稿にたどり着きました。と思ったんですが、そこから掘り下げ、更に削除し解説を加えることになりました。「リヴァース・エンジニア (逆行分析)だな」と、担当編集者はレコーディング・セッションに例えて励ましてくれた。

M:完成してご自分での率直なご感想を聞かせてください。
B:今の自分に至るまでの興味深い話、欠かせない話を、人生を振り返りながら語る術を時間をかけて学びました。人はそれぞれの現実を生きているのに懸命で、その時々のテーマや変遷をじっくり考えることは必ずしもないものです。客観的な自分像が紙上に現れるということは、なかなか驚くべきことであり、動揺もしますが、何よりもおおきな喜びなのです。



M:アルバム『NOTE BY NOTE』発表意図をお聞かせ下さい。
B:まず書籍担当編集者のひとりが、過去のスタジオ録音から再度取り上げた楽曲で作った付随するアルバムがあったらいいのでは、と提案してきました。そのタイトルは本の方の各章の表題になったのです。アルバムと自叙伝とは密接につながっています。


▲CD『NOTE BY NOTE』フロント・カバー from Mike’s Collection

M:『NOTE BY NOTE』ではスタックス・アカデミー出身者やアメリカン・アイドル・チャンピオンら若手アーティストとコラボレーション。音楽の歴史、伝統を未来へと伝承する展開となっているように感じます。貴方も出演なさった映画「約束の地、メンフィス~テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー」を想い出しました…。
B:その通り。正に、スタックス・レコードが確立した素晴らしい伝統が若い世代によって生かされ続けられているということをこのニュー・アルバムでは表現出来たと思います。


▲映画「約束の地、メンフィス~テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー」から 提供:CURIOUSCOPE

M:『NOTE BY NOTE』収録の一曲一曲についての質問です。「Cause I Love You」。カーラ&ルーファス・トーマス1960年シングル「Deep Down Inside」B面楽曲。貴方の初レコーディング体験、貴方は確かバリトン・サックスを演奏!
B:夢の実現だった!あのスタックス・スタジオに入ってみたいとず~っと思っていたんです!とうとうそれが実現したなんて、信じられなかった。
M:エヴィエ・マッキーニー (ザ・フォー:バトル・フォー・スターダム スタックス・アカデミー卒業生) 、ジョシュア・レデット、二人の魅力はいかがですか。
B:エヴィエはホテルで落ち合ってスタジオの向かったその瞬間から新鮮で前向きなエネルギーに満ち溢れていました。その情緒とエネルギーがスタジオでジョシュアと出会って融合され、ふたりは難無く溶け合って音楽性豊かなデュオに!その様子がこの曲から聴いて取れます。


▲CD『NOTE BY NOTE』バック・カバー from Mike’s Collection

M:「Born Under A Bad Sigh」はアルバート・キング代表作。1967年にヒット。作曲は貴方です!作詞はウィリアム・ベル。前回のインタビューで貴方は僕に彼についてこう語ってくれました。「アルバートは純粋で、とっても優しい人だった。でも彼のプレイは痺れるね!」。ブッカー・T.&ザ・MG’s68年のアルバム『Soul Limbo』でも楽しめますネ。
B:アルバート・キングはブルースが知り得た最も優しい男の一人で、彼が「Bad Sign」の頭の音をいくつか鳴らしただけで、その場がパッと明るくなったものです。


▲Pic. by Yukie Koga

M:カーラ・トーマス1966年のヒット「B-A-B-Y」に参加しているアヤナ・アイリッシュはパティ・ラベルやカニエ・ウエストと共演したこともあるブロンクス出身のカリブ系シンガー、彼女とはどこで出会ったんですか?
B:アヤナはニューヨークのシティ・ワイナリーで行った私のバンドのオーディションに参加してきました。それが最初の出会い。そのオーディションでは、曲の歌い出しのわずか数音で私は「その先は歌わなくていい」とストップをかけたのです。その才能がすぐ分かったからです。でも居合わせたウェイターやウェイトレスは彼女に引き続き歌って貰いたがりました、多くの人が彼女を絶賛しています。

M:「I Want You」は貴方の1981年のソロ・アルバムのタイトル・チューン。参加したデアンドレ・バルケンシックはアメリカン・アイドル出身、彼の将来性はいかがでしょう。
B:デアンドレの持って生まれた見事な歌力があるので成功以外はあり得ないでしょう!

M:「Precious Road」はゴスペル・スタンダード。1956年、貴方が12歳の時にマヘリア・ジャクソンの伴奏を務めた想い出の曲ですね。どういった経緯で貴方はマヘリアの伴奏をすることになったんですか。どこの何という教会でしたか。彼女は亡くなる9カ月間に日本でコンサートを行いました。その素晴らしいステージは僕の大切な思い出の一つです。
B:メンフィスのパークウェイにある個人宅で日曜の午後のお茶会があり、Ms.ジャクソンはそこで歌うことになっていました。彼女の伴奏者が体調を崩したので、私はその穴埋めを頼まれて彼女のためにピアノを弾いたのです。
M:今回この曲のレコーディングに参加しているシャーロット・ギブソンは多くのR&B、カントリーのアーティストのセッションで活躍している実力派ですね。
B:今回のレコーディング・セッションでシャーロットは心温まる歌声を次から次へと繰り出したのです。彼女がマイクの前に歩み出る前から、我々は彼女の歌に胸を打たれていました。最大の難関は、その中からどのテイクを使うかの選出でした(笑)。


▲御大と筆者 2017年 Pic, by Yukie Koga

M:「These Arms Of Mine」はオーティス・レディングのデビュー曲。貴方は前回のインタビューでオーティスについて僕にこう語ってくれました。「オーティスは“音のエナジー”定義そのものだった。僕らはみんな彼のビブラートの効いた歌に夢中だった。オーティスは我々にベストを尽くす事を教えてくれた」。『NOTE BY NOTE』からの今回のヴァージョンでは先日日本でも素晴らしいパフォーマンスを飾ったタイ・テイラー(ヴィンテージ・トラブル)が参加しています。
B:タイは曲やその瞬間が湛える感情に入り込む能力に長けています。それは彼の声を聴くだけで分かるんです。

M:「Havana Moon」はカルロス・サンタナのソロ・アルバム・タイトル・チューン。これは貴方のプロデュース、チャック・ベリーの名作です。
B:この構成で最も興味深いのはリズム隊。電子ピアノのバリー・バケットとドラムのフラン・クリスティーナ、そしてパーカッションのアルモンド・ぺラザ、チピート・エリアス、ロオたちです。そして彼らが整えた足場からカルロスのギターが飛翔するのです。



M:「Stardust」ホーギー・カーマイケルが1927年に発表したスタンダード。ビング・クロスビー他多くのアーティストがレコーディング。貴方がプロデュースしたウィリー・ネルソン1978年のアルバム・タイトル・チューン。マット・バーニンガーとの出会いの経緯を語ってください。本アルバムで彼は実にいい味を出しています。作品全体も素晴らしい出来栄えです。
B:ありがとう。このヴァージョンを評価してもらって本当に嬉しいです。マットは私のアルバム『Representin’ Memphis』のNYレコーディングでシャロン・ジョーンズと組んで頑張ってくれたんです。10年くらい前かな、以来ずっと友達です。

M:「Time Is Tight」自叙伝のタイトルであります。69年の大ヒット、映画「Uptight」挿入曲。前回のステージでも演奏していましたね。
B:私にとって「Time Is Tight」は、ここまでのキャリアにおいて決定的な楽曲。私の内外の葛藤を綴る年代記であり、メロディで様々な勝利を象徴しているのです。



M:「Maybe I Need Saving」は息子さんのテディをフィーチャーしてのニュー・ソング。聴き応えあるバラードですネ!
B:言葉と感情を踏まえて奏でる我が息子の実力の、これはほんの一端。完全に彼の創作楽曲、インストゥルメンタルのブリッジのみを私が書いています。

M:「Paralyzed」もニュー・ソング。音楽の先輩として、また父親としてミュージシャン、テディ・ジョーンズの魅力を語ってください。
B:ミュージシャンとしてのテディの特徴はというと、その気になればフレーズを中からも外からも色付けできる力があること。しかし、バンドメイトであり父でもある私としては、そのどちらをやろうとしているのかを探らねばならず、関係性の直感的な側面に委ねることをどんどん学んでいるんです。そうすれば、良いものが本当に溢れ出てくるのです。



M:では改めてファンへのメッセージをお願いします。
B:日本のファンの皆さんが長きに渡り誰よりも忠実に支えてくださっていること、そして私が皆さんの国に滞在している時の比類無きもてなしを、心からありがたく思っています。そのことへの感謝はこれからも変わりません。ありがとう!!!



☆☆☆

そして御大インタビューにも登場した息子のテディ・ジョーンズ。前回に続きもちろん今回もステージに登場する。テディにもちょっぴりインタビューさせていただいた。



M:先輩ミュージシャンとして、父親としてのブッカー・T.ジョーンズの偉大なところ、魅了をお聞かせ下さい。
Teddy:父は申し分のない威厳と道徳心と優しさを持ち合わせた男。ひとりの男としてどうあるべきか、彼を手本とできたことは幸いです。音楽面では、仕事に対する美意識や厳しさでは譲らない一方、嗅覚に優れています。どんなジャンルの音楽においても、素晴らしい見識と芸術性を提供できる上に、自分が出す音に大きな目的と意味をもたせることが出来るのです。彼は思考せずに演奏するミュージシャンではありません。音のひとつひとつに理由があることで生まれる大いなる深みがあることや、シンプルさに宿る美しさを僕に教えてくれました。



M:新作『NOTE BY NOTE』レコーディングに参加してみていかがでしたか。アルバムの聴きどころなどを語ってください。またレコーディング時のエピソードなどもお願いします。
T:『NOTE BY NOTE』全曲で僕はギターを弾きました。その全ての貢献出来たことを誇りに思います。情熱と長い時間を費やしたプロジェクト!僕が住んでいるカリフォルニア州ヴェニスでのレコーディングだったのもありがたかったなぁ。才能あるミュージシャンと音楽スタイルが種々様々に多数集ったアルバム!ファミリー・アルバムという感覚もあります、本質的にはその通りだと思います。出来るだけ原典に忠実に、同様の面白さを音楽に持たせつつ、聴き手のために新たな芸術性や工夫を幾らか加えたいと思って制作に臨みました。

M:この3月のステージで日本は何度目になるのかな。日本のファンの皆さんへメッセージをお願いいます!
T:今度が僕にとって4度目の日本だと思う。実は演奏のみならず、フィアンセと共に日本全国を巡る長い休暇を過ごしたこともあるんです。前々から日本文化はもとより、敬意、勤勉、芸術への熱意、家族の重要性、といった社会に通底するテーマにも不思議な共感を覚えます。日本は実に美しい場所です。またお会いしましょう!


▲テディと筆者 2017年 Pic. by Yukie Koga

◆公演スケジュール
*2020年3月17日 18日 19日 Blue Note TOKYO
ファースト・ステージ 開場17:30 開演18:30
セカンド・ステージ  開場20:15 開演21:00
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/booker-t/



*ライヴ・ショット 2017年Blue Note TOKYO公演
Pic. by Great The Kabukicho

☆☆☆☆☆

【イベントinfo】
MBSプレゼンツ“MIKE’S GARAGE VOL.14”
I love Julie!
沢田研二の凄さ&魅力を元ジュリー付き人・現タンゴ歌手 西澤守が愛をこめて語る!!!



1970年代ジュリーの付き人を務めた西澤守。80年代からは歌手・俳優として活動。同年代中期からはタンゴ歌手として頭角を現す。90年にアルゼンチンに渡り、テアトロ・サンマルティンにて中川美亜とともにコンサートを行い好評を博す。その後、国内外の多くのタンゴミュージシャンと共演。その甘く語りかけるような歌声は、ワルテル・リオスやホルヘ・ドラゴーネからも「ハートを伝えられる数少ない歌手」と絶賛される。35周年を迎え男性タンゴ歌手として精力的に活動している。そんな西澤守はジュリーの大ファンだ。愛をこめて沢田研二の“凄さ&&魅力”を多くのエピソードを交えながら語りつくす。乞御期待!!!
ゲスト:西澤 守
http://giraldillo.org/concierto20200426.html
ナビゲーター:Mike Koshitani
https://www.barks.jp/keywords/mikes_boogie_station.html
ナビゲーター:國府田 公子 『沢田研二 大研究』著者
http://julies.world.coocan.jp/
☆日時:2020年3月14日(土曜)  
Open  13:30 
Start 14:00
☆テーブルチャージ¥1500(+要ワンオーダー)
 お食事もございます
☆会場:ROCK CAFE LOFT
新宿区歌舞伎町1-28-5 
TEL:03-6233-9606
(西武新宿駅から徒歩1~2分)
☆予約 https://www.loft-prj.co.jp/schedule/rockcafe/140659

◆「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」まとめページ
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