ヤマハ、新開発オルガン音源と鍵盤を搭載、気軽に持ち運べるステージキーボード「YC61」

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ヤマハから、CPシリーズで好評のピアノ系音色や新開発のオルガン音源と鍵盤を搭載したステージキーボード「YC61」が登場、5月に発売される。2月25日に行われた製品発表会にはシンガーソングライターのYANCYが登場、演奏を披露するとともにその魅力を語った。


▲9本の物理ドローバーが目を引くYC61。サイズは896×309×108mm。接続端子はラインアウト、ヘッドホン、フットコントローラー、MIDI、USB、AUX INPUTを用意。


小編成のバンドスタイル、いわゆるコンボ形態での使用を想定した、「ヤマハ・コンボ」=「YC」の名を冠した初代「YC-10」は、ビートルズなどのバンドブームで可搬性の高いオルガンへの関心が高まった1969年に発売。その優れた可搬性と、のちのシンセサイザーにもつながる豊かな音色表現で多くのアーティストのステージで使われ、その後のYC-20、YC-30と続くシリーズモデルやコンボ・ピアノ「CPシリーズ」、コンボ・シンセサイザー「CSシリーズ」といったステージで活躍するヤマハ・キーボードの先駆けとなった。今回登場の「YC61」はYCシリーズのアイデンティティを受け継ぐステージキーボード。必要とする基本音色が限りなくリアルであること、演奏に集中できるシンプルで機能的な操作性を備えていること、どんな現場にでも自ら持ち運べる高い可搬性があることなど、現代のキーボーディストのニーズに応えるモデルとして、「ステージキーボードの再発明」というキャッチフレーズが付けられている。


トーンホイールオルガンを追求した新開発の「VCMオルガン音源」、アコースティックピアノやエレクトリックピアノからサンプリングしたサウンドを再現する「AWM2音源」、多彩なサウンドを持ちダイナミックな演奏表現を実現する「FM音源」を搭載。中でも注目は実際の楽器などの回路を素子レベルまでバーチャル回路上に再現するVCM(Virtual Circuitry Modeling)テクノロジーをもとに開発された「VCMオルガン音源」と「VCMロータリースピーカー」の搭載。アナログ回路を精巧にモデリングすることで、トーンホイールオルガンやロータリースピーカー特有の音の飽和感や温かみを再現している。また、トランジスターオルガンのサウンドはFM音源で再現。ヤマハCFXをはじめとしたアコースティックピアノからCP80やヴィンテージエレクトリックピアノまで厳選のピアノサウンドも収録、そのサウンドクオリティは昨年発売の「CP88」「CP73」を継承したものだ。さらにシンセ、ストリングス、ブラスなどステージキーボードに必須の音色も用意。FMエレピやFM音源シンセのサウンドはFM音源チップによりリアルタイムに合成される本物のFMサウンドだ。


▲オルガン、キーボード、エレクト/スピーカー/アンプ、マスター/EQなどのセクションから操作したいパラメーターにダイレクトにアクセス。

ユーザーインターフェイスは、コントロールしたいパラメーターに素早くダイレクトにアクセスできる「One-to-Oneインターフェイス」が最大の特徴。パネルはオルガンやエフェクト/スピーカー/アンプといったセクションに分けられそれぞれ独立したON/OFFスイッチを用意。エディットしたサウンドを最大160種まで保存し瞬時に呼び出せるLIVE SET機能も備える。

鍵盤には新開発のセミウェイテッドウォーターフォール鍵盤を搭載。表面のわずかなRとひっかかりのないなめらかなエッジ処理がグリッサンドなどオルガン特有の奏法にも最適なものとなっている。シースルータイプのドローバーも大きな特徴。ドローバーの位置と異なるセッティングを呼び出した際にも、値を示すLEDの光がドローバーに遮られずに透過するので瞬時に設定を確認できる。ドローバーの色は7色から選べるので、音色によって色を変えておけば、今どの音色を選んでいるのかがひと目でわかるのも便利だ。


▲ドローバーのLEDは7色から選択可能。

本体は7.1kgとキーボーディストが自ら持ち運べる重さ。専用のソフトケース「SC-YC61」(25,000円)と組み合わせることで、ライブハウスやスタジオへ気軽に持っていくことが可能だ。

ミュージシャンの目線で「YC61」のインプレッションとサウンドを紹介してくれたのは、ゲストのYANCYさん。まずは「オルガンとしてすごく優れている」「特に外付けのロータリースピーカーとかエフェクターなしでもけっこうオルガンのニュアンスが出せる。それだけにとどまらずいろんな音がCP88と同じクオリティで入ってるのでびっくり」とマルチに使えるキーボードとしての印象を語った。


▲演奏を披露したのは音楽プロデューサー、作・編曲家、ピアニスト、鍵盤奏者のYANCYさん。シンガーソングライターとしての活動と並行して数々のアーティストのレコーディングやライブに参加。アレンジャーやサウンドプロデューサーとしても活躍している。

続いてはドローバーやロータリースピーカーのセッティングを変えスウィートなサウンドやクラシックなジャズ風など多彩なオルガンサウンドを演奏。「オルガンを模してる製品はいっぱい出てますけど、どれもやっぱり違うなと思ってて。何が違うのかなと思ったんですが、本物のB-3とかは電気回路とか真空管の回路とかいろいろ複雑なところを信号が通って出てくるので、非常にある意味あいまいなんですよね。ドローバーのセッティングとかボリュームペダルの位置とかいろんなことでいちいち音が変わるんですよ。すごい変化に富んでてニュアンスが出るんですよね。だから同じ演奏にならないんです。それが今までデジタルで再現されたオルガンを弾いてるとどうしてもそういう感じがしないんですよね。毎回同じ音が出るなあ、と思ってて。で、初めてこれに触ったら『あっ、これはちょっと違うぞ』と思って。オルガンらしいニュアンス……、たぶんそれってオルガン本物を弾いたことがある人みんなわかると思うんですけど、一番そこがオルガンプレイヤーが好きなとこなんですよね。ニュアンス、ノイズとか漏れてくる音も刻々と変化しますし、その感じがソウルフルな楽器だってみんな思ってるとこだと思うんですけど。それって言いかえると一番シミュレーションしにくい音だと思うんですけど。そこをすごい時間をかけてやってるんじゃないかなと思います。」


大好きだというトランジスター系のFMオルガンについては「コンボオルガンをギターアンプに突っ込んで鳴らす人が多いんですけど、これもアンプはいらないんじゃないかな」とYC61ならセッティングをよりシンプルにできることを紹介。さらに「この鍵盤で? と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、アコピの音もすごくいいです。」とアコースティックピアノ音色に言及。「タッチは軽いんです。ウォーターフォール鍵盤なんでピアノ音色は弾きやすいか弾きにくいかって言ったらそんなに弾きやすくはないですね。重い方がやっぱり弾きやすいと思うんです。ただ、ローズとかウーリッツァー、クラッビネットのフレーズはすごく弾きやすいんですよ(と言いながらクラビネットでフレーズを演奏)。CP88にもこういう音が入ってますけど、CP88だと逆に弾きにづらくて。こういう音とかエレピの音とか、まあピアノもそうなんですけど、本物の楽器ではできないフレーズが弾けるんじゃないかな。しかもグリスがしやすいですから、ウーリッツァーのサウンドを弾いててもついついグリスをしてしまう(笑)」。さらにFM音源については「PCMで作ったFMの音とはぜんぜん違う、クリアな音」、シンセベースは「クリアでエッジがあって、非常にヌケがよくてすぐに使えそう」と高評価。キーボードセクションのA、Bに2つの音色を選び、さらにオルガンの音も立ち上げられるレイヤー、スプリットの柔軟性も紹介。「現場で用意するのが一番めんどくさい」という左手がオルガン、右手がクラビというセッティングでのファンキーなプレイを披露し、「これを普通にやろうと思うとものすごいお金と労力がかかるんですけど、個人的にやりたかった」と笑顔。


最後は今後ステージでどのように使いたいかという質問。「とにかく7.1kgってすごい軽いので。こんなに軽くていいのかな? みたいな。オルガンですからね。オルガンって重いものだと思ってたんですけど、それがこんなに軽くなって、しかもシンセとかピアノとかエレピ、すべてのサウンドがCP88と同じクオリティかそれ以上で鳴らせるっていうことで、これ1台でライヴに行ってもいいと思います。女性でも電車で持っていけます。僕らなんかはステージピアノの上に置いて。曲によって『オルガン入れてくれ』とかいろいろ言われますからね。ブラス弾いたりストリングス弾いたり、すべてに対応ができるということで、僕は“リトル・ジャイアント”と呼んでいるんですけど。早く使いたいですね。」


製品情報

◆YC61
価格:オープン(市場想定売価 20~21万円前後 税別)
発売日:2020年5月

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