ヤマハ、ナイロンストリングスギター「NXシリーズ」、Line 6「POD Go」などギター関連製品を発表

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ヤマハが新製品発表会を開催。ナイロンストリングスギターの新製品「NXシリーズ」、サイレントギター「SLG200」の新色クリムゾンレッドバーストカラー、エレキギター「PACIFICA112シリーズ」とエレキベースの「TRBX300シリーズ」のカラーバリエーションモデル、Line 6のギター・プロセッサー「POD Go」、アースクエイカーデバイセスの新モデルをお披露目した。

■Line 6「POD Go」

1998年の初代「POD」の発売以来アンプモデラーの代名詞的存在として累計100万台以上を販売したPODシリーズ。現在はブランドのフラッグシップモデルとして「Helix」が君臨しているが、そこに新たに加わったのが、PODシリーズ久々の新製品「POD Go」(2020年春発売予定、オープンプライス)だ。

昨今市場を賑わせているギタープロセッサーはハイエンドのモデルが中心、多機能で高額なプロ仕様のモデルが数多くシリースされているが、「POD Go」はPODのそもそものコンセプトに立ち返って開発された。その特徴は大きく分けて3つ。

・クラス最高レベルのサウンド - HXファミリーから厳選されたモデルを搭載
・プラグアンドプレイ・インターフェイス - わかりやすい音作りができるシンプルなシグナルパス
・ポータブル - 可搬性に優れた軽量&コンパクトなメタル+プラスチック製筐体


こうした特徴を備えたオールインワンのサウンドソリューションをユーザーに購入しやすい価格で提供する製品となっている。さらに細かく見ていくと、Helix HXファミリーのモデリングおよびレガシーモデリングを270種以上搭載、視認性に優れた4.3インチのLCD画面、視認性重視のカラーLEDリングを搭載したフットスイッチ、1つのプリセットの中でアンプやエフェクトのオン・オフ、パラメータを瞬時に音切れなく切り替えることができるHelix HXファミリーで好評のスナップショット機能、ステレオエフェクトループの搭載、USBでパソコンと接続できレコーディングやリアンプが容易にできることなど。また、無償のPOD Go Editソフトウェアを使ってさらにカンタンにエディットが可能。サードパーティ製インパルスレスポンス(IR)を追加できるのも見逃せない。


▲HelixシリーズとPOD Goのサイズを比較した図も紹介。GOD Go(下)は、Helix Floor(上)の2/3の大きさ(中央はPOD HD500X)。価格はHelix LTやHelix Floorが13万円超、HX Stompが8万円台なのに対して、POD Goはそれらを大きく下回る価格となるようだ。

本体はコンパクトで重さは2.2kgちょっと。軽くて片手で持ち運べ、ステージの転換が容易にできるのも大きな特徴だ。Line 6のコンパクトでリーズナブルな価格の製品としては「HX Stomp」があるが、両者の違いについても説明。「POD Go」はこれ1台で完結するオールインワンソリューションであり、一方の「HX Stomp」はペダルボードなど大規模なシステムに組み込んで使うモデルであることなど、それぞれコンセプトが異なることが示された(ちなみにエクスプレッション・ペダルがあるのはPOD Goのみ、MIDI端子があるのはHX Stompのみ)。


▲ギタリストの阿部学さんは自身のバンドNumberClub、叫人Factoryで活動するほか、2019年にはソロアルバム「Melody」をリリース。近年はLine 6のデモ演奏/セミナー、氷川きよし、岩佐美咲、渡辺美奈代など多くのアーティストのサポート、ギターレッスンにも力を入れている。

デモンストレーションに登場したのは、PODシリーズを初代からすべて使っているというギタリストの阿部学さん。まずは新モデルの印象を語った。「POD Goはコンセプトが明確。いいなと思ったのは、使いやすさはもちろんなんですけど、見やすいカラーディスプレイと軽さ。しかもサイズ感がちょうどいいですよね。小さすぎるとフットスイッチがライヴで踏み間違えとか起こしそうになるんですけど、これはちょうどいいサイズ感になっててこの辺もいい。サウンドももちろんって感じですけどね。」

どのように使うかという質問には「メインでHelixを使ってますけど、あれは確かにベストはベストなんですけども、あそこまでいらない時って正直あるんですね。やっぱり大きさとかもありますし。たまに気軽に音を出せるものを使いたいなと思ったりするんですけど、そこで音の妥協は絶対できないんですよね。仕事で使うというのもあって。でもPOD Goであれば音のクオリティはHXモデリングを使っているので、ほんともうそのままと言える。そういう意味では使い勝手、持ち運びとかそういうところで使い分けできるので。僕は気軽にライブとかで使いたい時にPOD Goを使い、もうちょっと大きな現場というか、大掛かりなところにHelixを使ってみたりとかそんな使い分けを今後はしていこうかなと思ってます。」


▲視認性の高いカラーディスプレイを搭載。音作りはシグナルの流れがわかりやすいエディットモード、ライブの際はプレイモードと切り替えて使用する。

続いて阿部さんが機能を説明。まずは視認性の高いカラーディスプレイについて。シグナルの流れにおいては、固定のものと自由に選べるものの2種類に分かれており、ボリューム、ワウペダル、アウトセクション、キャビネットセクション、それからエフェクトループ、EQが固定。その他の4つのブロックを自分の好きなエフェクトなどを割り当てることが可能。また、新たに搭載されたアンプアウトは、メイン出力のほかキャビネットの前で出力することも可能。「僕もよくやるんですけど、“出音ライン・中音アンプ”なんて言い方を最近しますけども、メインの音はラインで、ステージ上では自分のギターアンプの音が聞きたいという人はこの機能を使うといいと思います」と使い方を紹介。エクスプレッションペダルは最初はボリュームで、踏み込んでスイッチをONにするとワウペダルになるのが初期設定。ワーミーペダルほか各種エフェクトをアサインすることも可能。「即戦力になりますよね」とその便利さを強調。また、フットスイッチはエフェクトのON/OFFだけでなく、パラメーターのアサインも可能。ギター・ソロで、ボリュームを上げる、ディレイが1個追加される、リバーブのミックスが増える、といったセッティングを1つのスイッチに仕込むことができる。さらに通常のプリセット切り替えで発生する音切れなしに音色を切り替えられる、Helixゆずりの「スナップショット」機能もデモ。最後はこうしめくくった。


「このPOD Go、価格帯も抑えめということですよね。ここまでの機能を持っているんですけども、“初めてマルチエフェクターを買うよ”という方に最適な、そしてベストだと思います。それだけではなく、ここまで音のクオリティが高いのでプロフェッショナルな方まで十分使えると思います。僕も普段余り荷物を増やしたくない状況では、このPOD Goのサイズ感だったらギグバッグのポケットに入ったので、ここまでいろいろできて、ギターケースだけでライブに行ったりできるなと思って、今後かなり使っていこうかなと思っています。」

■EarthQuake Devicesのディストーション&ディレイリバーブ

▲中央がディレイリバーブAfterneath V3、右がディストーションペダルLife Pedal V2。

ヤマハが2017年11月より取り扱いを開始しているEarthQuaker Devices(アースクエイカーデバイセス:米国オハイオ州アクロン)からは3機種を紹介。まずはSUNN O)))とのコラボモデル「Life Pedal」のスペックアップモデル「Life Pedal V2」が登場(発売中、オープンプライス/市場想定売価 39,000円)。オリジナルモデルはより高いアウトプット、より高いサチュレーション、爆音が出せるディストーションペダルとしての開発がスタート。アナログアッパーオクターブとブースターも搭載する。スペックアップモデルのV2は回路は同じだが、新筐体にエクスプレッションペダル端子、フレキシ・スイッチを新たに導入したモデルだ。

「爆音ももちろん得意なんですけど、オーソドックスな歪みとしても使える」「普通にいいクランチが出る。守備範囲が広いペダル」とは、デモンストレーションに登場したSPARTA LOCALSのギタリスト、伊東真一さん。オクターブのブレンドがエクスプレッションペダルを使い足元でコントロールできるのもV2の便利なところ。ギターからの信号はオクターブ、ディストーション、ブースターと流れていくが、「ブースター単体でも音がかなり持ち上がるので、ギターソロでもう一段階上に行きたい時に効果的に使える」とも。


▲デスクトップに置かれたペダルを手で操作しながらギターで実演する伊東真一さん。伊東さんは2016年に再結成したSPARTA LOCALSで活躍するほか、killing Boyやインストバンドfresh!にも参加。サポートとしてフジファブリック、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)、初恋の嵐、木下理樹(ART-SCHOOL)、沖ちづるなどのライヴやレコーディングにも参加している。

「Afterneath V3」(4月15日発売、オープンプライス/市場想定売価 27,000円)はきらびやかなサウンドが得られるシマー系リバーブ。束になったショートディレイが壁を跳ね返るようなリバーブから洞窟の中で鳴り響く深いエコーのような壮大なリバーブまで幅広い調整が可能だ。「ほんとに他で替えがきかないリバーブ」「最近はリバーブの複合機種が多く出てますが、こんな独特のリバーブは見たことがない」とは伊東さん。前モデルはDragツマミでリバーブのピッチが変化したが、V3はそのピッチの変化に音階が付くように機能アップ。音階はクロマチック、メジャー、オクターブなど9モードから選択できる。リズミックな変化もかなりユニークだ。


▲Afterneathはユーロラックモジュールもラインナップ。高品位なリバーブをアナログシンセのシステムに組み込むことができる。

Afterneathはアナログシンセに特化したユーロラックモジュールの「Afterneath Eurorack Module」もリリース。パラメーターをCVでコントロールでき、エフェクト音だけを出力するDry Killスイッチも備える。3月5日発売、オープンプライス(想定売価 34,000円)。


▲ヘヴィな歪みや幻想的なリバーブ、独特のピッチ変化を伴ったディレイなど多彩なサウンドをペダルでコントロールしながらパフォーマンス。

■エレクトリックナイロンストリングスギター「NXシリーズ」

ヤマハの新製品「NXシリーズ」は、ナイロン弦のやさしいサウンドをよりナチュラルに表現しラインアウトすることを目指して誕生したエレクトリックナイロン弦ギター。多様なプレイスタイルに応える2つのボディシェイプ、3つのグレード、豊富なカラーバリエーションを揃え、10年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。3月より順次発売される。


▲生鳴りの向上を目指し音響解析を用いた新設計のブレーシングを採用。

音響解析シミュレーションの技術を駆使してブレーシングを新たにデザイン、ギター本体の生鳴りを向上させた。また、ナイロン弦の繊細な弦振動のニュアンスと温かみのある豊かな音色をナチュラルに出力するピックアップシステムを採用。ボディシェイプはクラシックギターの胴厚と指板幅で12フレット接合の「NCX」、薄胴で指板幅の狭いネックの14フレット接合で一般的なアコースティックギターの演奏感覚の「NTX」の2種を揃える。グレードは#1、#3、#5の3種類。#1グレードの表板はシトカスプルース単板。表板が米杉単板の「NCX1C」、側裏板フレイムメイプルの「NCX1FM」もラインナップ。「NTX1」はナチュラル、ブラウンサンバースト、ブラックを揃える。#3、#5グレードはオールソリッド仕様。#3には表板が米杉単板の「NCX3C」も用意。#5グレードは日本国内で熟練した技術者の手で製作されたMADE IN JAPANモデルとなっている。


▲2ボディシェイプ、3グレードにカラーバリエーションを加え全12種をラインナップ。

また、#5グレードはメキシコ出身のアコースティック・ギターデュオ「ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ」が監修。内ラベルには2人のサインが入れられている。「NCX5」は表板エッジに面取り加工が施され、情熱的なリズムを刻むプレイスタイルでの快適な演奏感を実現。「NTX5」は独創性の豊かなリードプレイをサポートする24フレット仕様となっている。

ピックアップもグレードによって異なる。エントリーモデルの#1グレードはボディの生鳴りを損なわないアンダーサドル型のピックアップを搭載。プリアンプにはチューナーを備え、音作りの操作もシンプルだ。一方、上位モデルの#3、#5グレードはナイロン弦専用にチューンナップした新開発の3ウェイハイブリッドピックアップシステム「Atmosfeel(アトモスフィール)」を搭載する。表面のコンタクトセンサーは薄く軽く耐久性のある素材を採用することで、ピエゾピックアップでは拾いきれない倍音成分も表現。ナイロン弦のナチュラルなサウンドをライン出力でも余すところなく再現する。


▲#3、#5グレードはAtmosfeel搭載。表面のコンタクトセンサーは表板の振動から得られる高域成分を、アンダーサドルのピックアップでは弦の振動、低域を、ボディ内部に装着されたオンボードのマイクではギターの胴鳴り、低域、胴内の空気感を拾う。プリアンプはMic Blend、Treble、Master Volumeの3つのツマミで直感的な音作りが可能。

▲NCX5、NCX3、NTX3

▲NCX1FM、NCX1、NCX1C、NTX1 BL

NXシリーズの演奏を披露したのは、ボサノヴァユニットnaomi & goroの二人。まずはNTX1を尚美さん、NCX1をゴローさんが演奏。ナイロン弦のやさしい音色と透き通るようなボーカルがマッチした見事な演奏を聴かせた。


▲ボーカル・ギターの布施尚美さん、ギター・作編曲の伊藤ゴローさんによるボサノヴァユニットnaomi & goro。ギターの弾き語りというシンプルな演奏スタイルで、ボサノヴァのスタンダードナンバーやオリジナル曲を演奏。その活動は国内にとどまらず韓国、中国、台湾でも演奏を行っている。

NTX1の音色の印象を問われ、「前もこのシリーズを使っていたんですけど、生で弾いても響きが良くなっていて。弾き心地は前をあまり変わらないので、今まで使っていた方もあまり違和感なく使っていただけると思います」「声ともマッチングがよくてとても弾きやすい」と尚美さん。ゴローさんは、「鳴りが良くなって弾いてて楽しい」と笑顔で回答。どんな人に使ってほしいかという質問には、尚美さんが「ボサノヴァを歌ってみたいという女性ってけっこう世の中に多いんですけど、歌だけだとリズムの特性もあってちょっとむずかしいので。やっぱり弾きながら歌うことをすすめてるんですけど。女性は胸があるぶんギターが前に出がちなので、若干ボディが薄めでネックが細い方が日本人の女性には弾きやすいですよね」と、NTXの利点を語った。



続いてはそれぞれNCX5、NTX5に持ち替え演奏。ゴローさんが音作りについて「(ツマミが)3つしかないんですけど、ボリュームとトレブル、これがすごく効果を発揮する」と言いながらステージ上で調整。「単純にトーンが上がってシャリシャリしたいやな音というよりも、バランスよく聴こえる」と、その効果を説明。


最後は発表会前半に登場したYANCYさんがステージキーボード「YC61」で加わり、3人で「イパネマの娘」をセッション。今日初めて会ったという二組とは思えない息のあった演奏で、より豊かなナイロン弦の音色を聴かせた。


「NXシリーズ」の発売日・価格・は、#1グレードが3月7日発売で58,000円(NCX1FM NTのみ68,000円)。#3グレードは2020年秋予定で105,000円、#5グレードは2020年冬予定で180,000円(いずれも税別)。

このほか、この春登場するギター関連のカラーバリエーションモデルも紹介。サイレントギター「SLG200シリーズ」に深みと落ち着きのあるクリムゾンレッドバーストカラーが登場。ナイロン弦仕様の「SLG200N CRB」、スチール弦仕様の「SLG200S CRB」をラインナップする。3月7日発売で価格はいずれも73,000円(税別、以下同)。


▲木目の映える鏡面仕上げと相まって個性豊かな外観のサイレントギターのクリムゾンレッドバーストカラー。ナイロン弦(左)とスチール弦(右)の2モデルをラインナップ。

エレキギターPACIFICAのベーシックモデル「PACIFICA112シリーズ」には、5つのカラーバリエーションが登場。ユナイテッドブルー、ヴィンテージホワイト、グレー、アイスブルー、ソニックピンクが追加された(各36,000円)。また、エレキベース「TRBX300シリーズ」にはファクトリーブルーが追加。瞬時に音色を切り替えられるパフォーマンスEQスイッチを搭載したモデルで、4弦タイプ「TRBX304 FTB」(43,000円)、5弦タイプの「TRBX305 FTB」(49,000円)の2モデルがラインナップされる。いずれも3月下旬発売。


▲入門機種ながらアルニコVマグネットピックアップを搭載し、本格的なビンテージサウンドを出力するエレキギター「PACIFICA112シリーズ」と、奏法・シーンに合わせた音作りをカンタンにセットし切り替えられるパフォーマンスEQスイッチを搭載したエレキベース「TRBX304 FTB」。
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