【ライヴレポート】Shinya (DIR EN GREY / SERAPH)、特別公演で「DIRとは方向性が違うのですが、どうでしょうか?」

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Shinya(DIR EN GREY)のソロプロジェクトSERAPHが自身の誕生日前日となる2月23日および当日24日の2日間、東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて<SERAPH Concert 2020 Licht of Genesis>を開催した。同特別公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆Shinya (DIR EN GREY / SERAPH) 画像

毎年恒例となっているShinyaのバースデーイベントだが、昨年2019年はショーケースという形でSERAPHのステージを初披露。そして2020年、SERAPHとして初の正式なコンサートということもあって、ファンは一層期待が高まっていたはずだ。Shinyaの誕生日当日である2月24日のSHIBUYA PLEASURE PLEASURE。開演前の会場内にはバロック音楽をBGMに落ち着いた雰囲気が漂う。期待度の高さは感じるものの、ライヴハウスのようなひりついた緊張感はなく、リラックスして開演を待つ観客の姿がそこにはあった。

開演と同時にスクリーンにゆっくりと舞い上がる羽と雪原の大地、払暁の光芒が差す幻想的な銀世界に立つ2つの人影、何処へともなく歩いているその2人の映像が映し出された。Shinyaともう1人のSERAPHメンバーであるMoa(Piano / Vocal)だ。ステージでは天使のように白いドレスを纏ったヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを演奏するストリングス4人が静かに旋律を奏で始める。静寂と冷たさを音で感じられる始まりから、力強く壮大さが増していく序曲「Destino Overture」へ。これから始まる世界への期待が深まると同時に、張りつめるような緊張感が広がっていく。


SERAPHのイメージカラーとも言える白一色のステージ、その中央に歩みを進めて登場したShinyaとMoa。背景スクリーンに映し出されたSERAPHのロゴタイトルをバックに2人が揃った瞬間、会場から割れんばかりの拍手が湧き上がった。開演を告げる鐘の音が響き、かくして荘厳で華麗な響宴の舞台の幕は開かれた。それぞれがドラムとピアノに移動し、流れを止めることなく始まった1曲目は「Destino」。生きることや“運命”について厳かに語りかけるMoaの歌声とピアノ。フレーズこそテクニカルなものの、決して激しくなりすぎない絶妙な技を魅せるShinyaのドラム。そしてそれらを昇華させるようにハーモニーを奏でるストリングスの音が一体となり、大いなる物語に引き込まれていく。

加えて、聴覚だけではなく視覚的な映像美にも圧倒された。大聖堂を背景に黄金の光の粒子が映し出されたかと思うと、曲のラストには再び雪原が。ステージ上のShinyaとMoaの背後から青白くなった光が立ち上り、まるで2人に天使の両翼が生えているかのように見えた。映像、ステージ、そして音楽全てに一寸の隙も見せないSERAPHの世界に、1曲目からやられてしまった。1曲目が終わると大きな拍手が沸き起こった。クラシックのコンサートではよく見られるが光景である。日本を代表するロックバンドのメンバーであるShinyaのソロプロジェクトコンサートで、このような光景が起こるのは、SERAPHのステージがもはや一流のクラシックスタイルである、ということの証明にもなっていた。

続く楽曲は、イントロから激しくリズムを刻むドラムが印象的な「Abyss」。“海底の深淵に忘れられた都市の記憶”というテーマ通り、ほの暗い海底に揺蕩う失われた神話世界に対する畏怖の念を表現する崇高なダークさと激しいビート、ヴァイオリンソロの後に訪れる“静寂さ”といった海の中にいるかのような緩急ある展開が、より深い世界に引き込んでいく。雰囲気が変わり、続く「Sauveur」では、煌びやかな宮殿をバックに刻まれる小気味良い三拍子が、まるで舞踏会に招待されたかのような錯覚を起こす。そして、ただ耽美なだけではないのがSERAPHの特徴だ。今回の公演ではスクリーンに歌詞が全曲投影されているため、既にリリースされている曲以外では初めてSERAPHの歌詞世界に触れることもできた。“救世主”を意味するタイトル通り、“暗闇から夜明けへと抜け出そう あなたの人生を救わせて”という愛に溢れるメッセージに、耽美さだけではなく、天使としての慈しみをも含まれた楽曲だということに気づく。その1曲1曲の深さにはただただ感嘆するばかりだ。

紅く染まった海、少し霧がかったような映像と共に「Uisce」へ。穏やかなに波打つ水面のように静かに歌い上げるMoa。その揺らぎから一転、激しく波打つ海面、そして嵐を思わせる展開に息を飲んだ。その刹那、Moaはフルートを持ち、緊張感のある激しい旋律を奏でる。作詞作曲編曲やピアノと歌唱だけでは飽き足らず、さらにはフルートも吹けてしまうマルチな才能に驚きつつ、その酔いしれるような音の波に引き込まれた。そして訪れる静寂、さっきまでの激しさが嘘のように広がる蒼天に加え、ラストの“Remember the love (愛を思い出して)”、“Beautiful world, to the blue world (美しい世界を、青い世界を)”と締めくくられた。注目すべきは歌詞通りの紅い照明、青い照明だけでなく、紫色にステージが照らされていたこと。痛みと愛、それら両方を内包する世界こそ、我らが生きるこの世界だというメッセージだったのではないだろうか。あまりにも完璧すぎる世界観に、こういった考察をしてしまうのもSERAPHの楽しみ方のひとつであると言えよう。


前半部のピークとなる「Génesi」は、唯一リリースされている楽曲とあって最も馴染み深い楽曲だ。しかし聴き馴染みがあろうが、やはり生の迫力は圧倒的。今回はストリングス4人にドラムとピアノ&ヴォーカルという編成だが、特にこの曲はそれぞれの音がクリアに聴こえ、フレーズの聴かせどころであり、いわゆる“おいしい部分”を余すことなく堪能できる。特にMoaの美しいストリングスのような伸びやかな高音が響きわたり、現在のSERAPHの代表曲としての格を見せつけられた。

ストリングスがステージを去り、2体の天使の像をバックに残ったのはShinyaとMoaだけ。一体何が始まるのかと固唾を飲む。緊張の糸を切るようにMoaのピアノソロが旋律を奏で始めた。それは徐々に激しくなり、時には凪のような静かさなど、感情的に表情を変える音色に陶酔。その刹那、Shinyaがピアノの呼びかけに呼応するかのようにドラムを差し込んできた。旋律を奏でるピアノ、ビートを刻むドラム、ふたつの打楽器が混ざり合い、楽曲として完成されたひとつの音として会場を満たしていく。元々Shinyaのドラムは単体でもメロディアスだとの定評があるが、ピアノと渾然一体となることで、より美しく昇華された旋律が圧倒的な迫力で迫ってくる。その迫力の前に思考を奪われ、呆気に取られている内に唯一無二のピアノとドラムのデュオが終わり、心地よい余韻と拍手が鳴り響いた。

MCでは、普段は話すことのないShinyaがマイクを取った。イベント二日目ということもあり、第一声は「昨日ぶりです」。この会場がSERAPHのホームグラウンドになってること、そして好きだったマウントレーニアのネーミングライツが無くなって、楽屋にもマウントレーニア飲料が置かれなくなってしまって寂しいと、ユーモアたっぷりに、そして時にシュールに語った。また、前半5曲は2019年のショーケースで披露した曲だが、残りの曲は初披露の曲であることも同時に伝えられた。

MCが終わり、ストリングスが再びステージに登場、始まった初披露曲の1曲目は「Majesté」だ、中世ヨーロッパを思わせる優雅で高貴な雰囲気。晴れ渡る庭園の映像をバックにMoaのピアノソロが響く。タイトルはフランス語で“威風”を意味するが、まさしく威光ある重厚な楽曲でもある。続く「Reisn」は、“What does it mean to be human? (人間とは何であろうか?)”という歌詞から始まり、優しく、しかし力強く、ゆったりとしたピアノフレーズを中心に展開される。Moaの包み込むような深みのある歌声で、その命の”尊厳”を問いかけてくる。

そして“雨”を意味する「Lluvias」へ。世間のイメージする雨をテーマにした楽曲は、どこか悲しげな印象を受けるものが多いかもしれない。しかし「Lluvias」はむしろ暖かく、慈愛に満ちた印象を受ける。悲しみに暮れる人に対して“When you cry, we will cry with you (あなたが泣いている時、私たちも寄り添い共に泣こう)”とMoaが歌う。語りかけるような、それでいて力強い歌声は、まさに天使の救いのようであった。雨が降った後は虹がかかる。七色の照明に照らされたステージがその答えだ。その後、ハッとさせられるキメフレーズと同時に、突如会場の空気感が一変、スクリーンも蒼い雪山の映像に差し代わる。しかし冒頭の雪原とは異なり、山中、人の立ち入ることのない領域といったような印象を受ける。ロシア語で“罪”を意味する「Lovshka」では、人の罪に対して厳しくも公正な姿勢で臨む天使目線で歌詞が展開された。緊張感のあるサウンドは、神の使いに対する畏怖の念を現しているのであろうか。背筋が自然と伸びる思いと、引き込まれるかのような神秘性に目が離せない。


拍手が鳴り止まぬ中、再びShinyaがマイクを握った。「本日最後のMCです」と始まったMCは、まず「日常で使えるものを選んだ」というグッズ紹介から。コットンケースをドラムのように叩いたり、ボールペンをスティックのようにしてドラムを叩いたりと、またもシュールなボケを炸裂させるShinya。先ほどまでの完璧な世界観とのギャップに会場全体が笑いに包まれ、和やかな空気に包まれた。そして、「DIRとは方向性が違うのですがどうでしょうか?」とSERAPHについて問いかけると会場は拍手喝采で返答。Shinyaもホッとしたような表情を浮かべたところで、Moaの合図からストリングスがお馴染みのバースデーソングを演奏しケーキが登場した。そう、あまりにも完成度の高いステージに気を取られていたが、忘れてはならない、本日はShinyaの誕生日当日なのだ。「かつてこんなに豪華なハッピーバースデーを聴いたことがありますか」と、少し恥ずかしそうな表情を浮かべステージ中央に置かれたケーキの元に寄るShinya。ケーキを食べ、ドラムに戻った第一声は「喉がカラカラになりました」とまたもや茶目っ気。そして最後の楽曲について語った。

「「Kreis」という曲はSERAPHの楽曲の中でも3番目くらいにできた曲なんですが、サビのメロディは12年前から温めていました。そのメロディにMoaさんが素晴らしい歌詞を乗せてくれました。温めた甲斐がありました。スクリーンには歌詞が表示されるので次回のライヴまでには完璧に歌えるようにしてください。本日はありがとうございました」──Shinya

そして本編ラストを飾る「Kreis」へ。印象的なピアノフレーズから始まり、鮮やかな花々の映像がステージを彩る。美しいメロディに加え、生命賛歌とも取れる歌詞に思わず息を飲んだ。「Kreis」はドイツ語で“円”を意味する言葉だ。罪を侵し、エデンの楽園を追放された人間が住む地球、生命の循環、全てを含めたこの世界に対する愛に溢れた楽曲に心が満たされていく。楽曲終盤、スクリーンにエンドロールが流れた。ステージ上のメンバーの名前が続き、最後に“and...you”の文字が。これは会場の来場者一人一人がSERAPHには不可欠だというメッセージ。惜しみない拍手が送られる中、ストリングスのメンバー、Moa、そしてShinyaがそれぞれ一礼し、ステージを去って華麗な響宴は幕を閉じた。


さて、ここまでがSERAPHのコンサートレポートとなるが、VIPチケット購入者は第二部として、“Special Talk Event”に参加することができた。SNSには一切内容を書いてはならないという箝口令が引かれた、まさにVIPなトークであるが、特別に一部内容を紹介したい。

まず、“Special Talk Event”のMCとして登場したのは、過去にもShinyaのバースデーイベントで司会を務めたこともあるお馴染みの団長(NoGoD)、そして団長の呼び込みでSERAPHの純白の衣装とは対照的な真っ黒な衣装でShinyaが登場した。団長との軽快なトークに加え、Shinyaに対する来場者からの質問にも答えていく。内容の詳細は伝えられないが、かなり攻め込んだ質問もあり、ファンにとってはたまらないトークが続いた。そして、急遽決定したというShinya持ち込み企画「自分の誕生日に謎解きがしたい」のコーナーでは前回のDIR EN GREY国内ツアーで発売されたグッズのひとつ、謎解きファイルの謎製作・監修をした“よだかのレコード”代表のへるお氏の登場だ。プライベートではドラムより謎解きをしている時間が長いというShinyaのために、へるお氏が書き下ろした謎解き問題数問を出題。Shinyaと競う形で会場全体で謎解きを行ない、大いに盛り上がった。その後もファン垂涎の内容のトークが続き、イベントが終了した。

最高級の音楽と映像を駆使したステージに加え、エンターテインメント性抜群のトークも交えた<SERAPH Concert 2020 Licht of Genesis>。来場者に心から楽しんでほしいというShinyaの想いが詰まった2日間であった。

撮影◎Lestat C&M Project

■<Shinya Birthday Event - SERAPH Concert 2020 Licht of Genesis>2月23日&24日@東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE セットリスト

Opening. Destino Overture
01. Destino
02. Abyss
03. Sauveur
04. Uisce
05. Génesi
06. Piano & Drums duo
07. Majesté
08. Reisn
09. Lluvias
10. Lovshka
11. Kreis
Ending. Génesi (Instrumental)

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