【インタビュー】なきごと「寄り添う曲を作っていきたい」、[NOiD]発 2人組ロックバンドの胸の内

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■当たり前じゃない

──各曲のエピソードも教えていただきたいんですが、「セラミックナイト」は軽快なテンポでメロディもキャッチーですね。歌詞はユニークですが。

水上:去年の夏に抜歯したんですが、そのときの体験にインスパイアされて書いた歌詞です。未熟な自分を乳歯に、大人になったつもりの自分を永久歯にたとえて書いているんです。いつまでも大人になれないけれど、かといって大人になることが全部正しいのか? って葛藤して「もうダメだ〜〜」って疲れちゃっている曲ですね。

──失った恋を抜けた歯にたとえている失恋ソングかと思いました。

水上:自分以外に実はもう1人、登場人物がいるんですよ。“この餅のことだって君は 知ったこっちゃないから”っていうのは、その人に対して投げかけている言葉なんです。

──そう、そう。なんで餅が急に出てくるんだろうと思いました。

水上:(笑)。歯を抜くと血餅っていうのができるんですよ。かさぶたみたいな。気になるから舌でつついちゃうんですけど、とれたらまた血餅ができるんです。「自分がもどかしい気持ちでウズウズしていること、君は知らないでしょ?」っていうニュアンスで書きました。



──そういう話も2人でするんですか?

岡田:そこまで深くは聞かないですね。ただスタジオで弾き語りをしてもらうときには、だいたいのストーリーを教えてもらいます。

──岡田さんはギターアレンジをするときは曲調にインスパイアされるんですか? それとも歌詞ですか?

岡田:私は曲調ですね。音のテンション感だったり、曲の明暗で判断して弾くことが多いです。

──プレイスタイルも多彩だし、ギターで曲を彩るのが上手いですよね。

水上:そうですね。レコーディングのときにいきなりフレーズを変えてきたりするんですよ。

──(笑)それはビックリしますね。

水上:ビックリです。「いままでそんなフレーズ、弾いてなかったじゃん? どうした? どうした?」みたいな(笑)。なのに最終的にはカッコよくまとまるからずるいなって。

岡田:えみりの歌詞は面白いなと思いますね。“マジカルバナナ”にたとえたら変換方法がすごい。普通、“バナナっていったら黄色”って言ったりすると思うんですけど“バナナっていったらチンパンジー”みたいな。

水上:(笑)ゴリラからの発想?

岡田:そう。確かにバナナ食べるよねって。

──ははは。ボーカルから始まる「アノデーズ」はふわりとした感触のナンバーだけど、やっぱり歌詞が意外性がある。

水上:自分的にださいかなと思いつつ、タイトルは“マヨネーズ”と“あの日々”をかけてつけたんです。私はマヨネーズが苦手でお皿の横についてても残しちゃったりするんですが、それってのけものみたいだなって。比喩として思いついたんですけど、恋愛して好きな人によけられるというか、「いらないわ」って言われたらみじめだね、みたいな曲です(笑)。

──その発想自体が面白いです。

水上:ちょうど気分が落ちているときに書いたんですよ。“最後は笑顔で終わらせてよ”っていうフレーズが自分の中でしっくりきたので、それこそ“マジカルバナナ”みたいに発想を広げていって、コードに合わせて曲と歌詞を一緒に作っていったんです。言葉もメロディも素直に出てきて。

岡田:なきごとの曲のコード進行って簡単なものが多いんですけど、この曲は初めて持ってきたコードパターンだったので驚きました。「このコード展開にえみりがメロを乗せるとこういう感じになるのか」って。

──“カロリー高めの2人のランデブー”とかなかなか出てこない歌詞だし。

水上:キーが高い曲なので、レコーディングで仮歌を録ったときに「キーを下げてみようか」って案が出て、ムリやり下げたヴァージョンがあったんですよ。そしたら“カロリー高めの2人のランデブー”とか“やる前から焦ってリバウンド”っていう歌詞が太った声に聴こえて、“もうお腹いっぱい…ごちそうさまでした”っていう箇所もホントに満腹な感じで(笑)。

岡田:“ごちそうさまでした”って言ってるわりには、ほっぺにいっぱい詰まってますけど、みたいなイメージになっちゃってね(笑)。

水上:マジで面白かった。そのテイク残しておけばよかった。

岡田:ギターソロは弾き倒しましたね。面白いコードを使っているので、珍しくコードのトーンに合わせて考えて弾きましたけど。いつもギターソロは鼻歌で“ふんふんふん♪”って歌ってみてつけるんですよ。

▲岡田安未(G&Cho)

──歌メロみたいな感じでギターソロを考えるんですね。弾き語りの話もそうですけど、なきごとはアナログなアプローチで曲を作るんですね。

水上:デジタルでデータのやりとりをしたほうが効率がいいんですけど、私が壊滅的に機械音痴なので、みんなに付き合ってもらっている感じなんです(笑)。

──だからこそ、2人の息のあったアンサンブルが生まれたのかもしれないですよ。冒頭で話に出た「癖」はイントロからギターが全面に出ていてシューゲイザー的なアプローチ。そして歌詞は超切ないです。

水上:歌詞は最初の2曲と違って、抽象的ではなく具体的。まっすぐに書いてますね。失恋としか捉えようのない内容だと思うんですけど、こういうストレートな歌詞は少ないですね。自分たちの良さでもある岡田の空間系のギターが頭から轟音で鳴り響いているのが、言葉にならない叫びのようで曲にピッタリだと思っています。

──“ほんとにあなたでよかったな”って歌うAメロではついに幸せなラブソングがきたと思ったんですけどね。

2人:ははははは。

──そしたら帰らないあなたを洗濯して片付けて待ってる歌で。

岡田:急に悲しくなりますもんね。Bメロの換気扇が出てくるあたりで「おや、おや、おや?」って(笑)。

──部屋の中の日常の風景が描かれていますね。

水上:はい。情景がいちばん浮かびやすかったですね。実体験をもとにした曲でもあります。「癖」はいちばん演奏した回数が多い曲でもあり、大切な曲でもあり、なきごとっぽい曲なんじゃないかと思います。

▲なきごと/「 sasayaki 」

──なきごとはテレビ番組『バズリズム02』で「2020年これがバズるぞ!BEST10」ランキングの12位にランクインしましたが、これからの夢というのは?

水上:着実に一歩、一歩、やっていきたいですね。例えば4月からのツアーを成功させるとか、次のCDのために頑張るだったりとか。

岡田:真面目ちゃんみたい(笑)。

水上:ひとまず、いまはなきごとの中で最大規模となるツアーを成功させるっていうのがいちばん近い目標です。

──地道に進んでいくスタイルですね。

水上:はい。でも、1年4ヶ月前(※取材時)に初めてライブをしたときには自分たちがメインで企画するなんて思ってもいなかったので、いまやらせてもらっていることって当たり前じゃないし、お客さんが見に来てくれることも、今日、こうやって取材を受けていることも当たり前じゃないので、その1つ1つを着実にやっていきたいなと思ってます。

──なきごとというバンド名にも関連するのかもしれないですが、切ない曲が多いですよね。どんなふうに聴く人に刺さったら嬉しいですか?

水上:「がんばろう!」とか「前に進もう!」って歌うのは自分自身、そういうタイプではないから、おこがましいと思っちゃうんですよね。たとえると友達とゴハンを食べに行ったときに辛い話を打ち明けるわけではなく、たわいもない話をしているだけなのに気持ちが楽になる、みたいな曲を生み出していきたいですね。自分が思っていることやこうやって生きてるっていうのを曲にこめて、直接的な言葉を使わなくても活力になったり、がんばれそうだなって思えたり。寄り添う曲を作っていきたいです。

岡田:私はどんな形であれ、なきごとを聴いてくれるだけで嬉しいです。どんな刺さり方でもいいし、十人十色でいいなって。悲しいときには寄り添えたり、ハッピーなときにはテンションが上がって、カッコいい曲を聴きたいときにはガツーンとくる。なきごとを必要としてくれる人にとって形を変えるバンドでありたいと思ってます。

取材・文◎山本弘子

  ◆  ◆  ◆

なきごとは、カラオケの第一興商が強力プッシュする4月度D-PUSH!アーティストに決定している。カラオケトーク満載のインタビュー記事は、DAM CHANNELでチェックしよう。

2nd Single「 sasayaki 」

2020年3月25日(水)発売
NOID-0034
¥1,000(+tax)
発売元:[NOiD] / murffin discs
販売元:Japan Music System

1. セラミックナイト
2. アノデーズ
3. 癖

<なきごと「 sasayaki 」Release Tour 2020>

2020年
4月10日(金)北海道・SPiCE
4月17日(金)新潟・GOLDEN PIGS BLACK STAGE
4月18日(土)宮城・LIVE HOUSE enn 3rd
4月25日(土)福岡・Queblick
4月26日(日)広島・BACKBEAT
4月28日(火)香川・TOONICE
5月23日(土)大阪・ROCKTOWN
5月24日(日)愛知・HeartLand
5月29日(金)東京・TSUTAYA O-WEST

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