【インタビュー】声優・工藤晴香、ソロメジャーデビュー「生きてきた証を残したい」

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声優の工藤晴香がソロメジャーデビュー第1弾となるミニアルバム『KDHR』をリリースする。中学生のときにギターロックにハマり、洋楽も聴き始めた高校生のときにはニルヴァーナのカッコよさに衝撃を受け、カート・コバーンと同じムスタングのギターを購入したという経歴の持ち主だけあって、リード曲「MY VOICE」はイントロのギターリフからロックど真ん中。彼女のルーツを浮き彫りにしつつ、エレクトロやヒップホップなど多彩な音楽の要素を取り入れ、ラブバラードではまっすぐな歌を聴かせてくれる。

さらに特筆すべきは工藤自身がすべて手がけている歌詞のセンスだ。根っからの音楽好きだけあって、本能的にリズムをキャッチしているかのような韻を踏んだリリックが面白い。しかも、そこには彼女の哲学ともいえるメッセージがしっかり盛り込まれている。“くどはる”こと工藤晴香を知っている人も知らない人も惹きつける音楽、そんな彼女の人間力に迫ってみた。

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■生きてきた証を残したい

──初のミニアルバム『KDHR』がリリースされますが、ソロとしてメジャーデビューする、いまの気持ちを教えてください。

工藤晴香(以下、工藤):去年の6月からずっと制作をしてきたので「もうすぐ我が子が世に旅立っていくんだ」ってドキドキしてます。

──かなり時間をかけて制作したんですね。エッジがあって激しい曲が印象的だったので、工藤さんの音楽ヒストリーについて興味があります。小さい頃から音楽が好きだったんですか?

工藤:はい。小学生のときはよくテレビの歌番組を見ていました。クリスマスにサンタクロースにもらったのもラジカセだったんです。

──そうなんですね。

工藤:それまで音楽を聴けるのは車の中とテレビだけだったので「もっと自由に聴きたい」って思ってたんです。CDとMDとカセットも聴けるようになったので、毎日、聴いていました。


──小学生の頃はどんな音楽を?

工藤:モーニング娘。さんとか浜崎あゆみさんですね。中学生になるとBUMP OF CHICKENさんやASIAN KUNG-FU GENERATIONさんとかギターサウンドの音楽に惹かれるようになって、バンドを中心に聴き始めたんですよね、で、中学3年生頃になるとアヴリル・ラヴィーンさんやt.A.T.u(タトゥー)さんとか洋楽の女性アーティストがぐぐぐっと出てきたので、洋楽も聴くようになるんです。

──どんどん聴く音楽が広がっていくわけですね。

工藤:はい。高校生のときは学校の近くにレンタルCDショップがあったので毎日、通ってました。店員さんのおすすめみたいなディスプレイがあったりするじゃないですか? “1990年代のおすすめはこれ”みたいな。

──時代ごとにコーナーが作られていたりね。

工藤:そうです。1泊なら安いし、毎日借りられると思って、手にとったのが1990年代の名盤コーナーにあったニルヴァーナのアルバム『ネヴァーマインド』(1991年)だったんですよ。それですごくハマっちゃって。

──歪んだヘヴィなギターサウンドにぐっときちゃった。

工藤:「めっちゃカッコいいバンドやん。最近の新譜とかないのかな」と思ってネットで調べたらカート・コバーンさんは亡くなっていて「そうなのか。ドラムの人はいまバンドやってるんだ」って。そこからギター弾きながら歌うのってカッコいいなと思ってフェンダーのギターを買うんです。私が買ったのは安いギターですけど。

──カート・コバーンに影響されてギター買っちゃうんですね。

工藤:そうなんです。色は違うんですけど「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のPVで弾いているムスタングのギターを買いました。

──工藤さんのバンドルーツはオルタナティブロックだったんですね。

工藤:ギターリフに特徴がある曲が好きなんです。目立つフレーズだったり、口ずさみたくなるフレーズだったりとか。大学に入ってからはベースを弾ける女のコと一緒にバンドをやっていたんですけど、コードは押さえられても歌いながら弾くのが難しかったので、あきらめてしばらく弾いてなかったんです。もちろん、ずっと音楽が好きだったので洋楽のライブやフェスに行ったりはしていたんですけど。本格的にギターを弾いてステージに立つようになったのは、ここ2〜3年ですね。

──バンドリ!(BanG Dream!)としての活動が始まってから?

工藤:そうですね。

──じゃあ、ソロデビューするなら激しい音楽をやりたいって?

工藤:激しい路線で行きたいっていうのは真っ先にお伝えしました(笑)。ただ、私の声質もあるのでシンセも入っているようなテクノっぽいサウンドのほうが合うかもしれないというアドバイスもあって、いろんなジャンルの曲を歌ってみて、「こういう音なら声がハマるよね」って試行錯誤しました。サウンドの土台を作るのに時間がかかりましたね。

──歌詞はすべて工藤さんですが、前から書いていたんですか?

工藤:全然、書いてないんですよ。

──韻をちゃんと踏んでたり、言葉のリズムとかメッセージもふくめて初めて書いたとは思えないです。

工藤:いやー、初めてなので時間がかかりました。1回ダーッて書いて提出するんですけど、「全然メロに合ってない」って赤ペンがめっちゃ入って書き直したりとか(笑)。研究を重ねて形になった感じです。




──激しい路線の曲のほかにリクエストしたことは?

工藤:メジャーデビューアルバムなので「いろいろな私を見せられたらいいな」っていう気持ちもあって。しっとりしたバラードやミドルテンポの曲をかわいい声のトーンで歌ってみたり、いろいろなジャンルを詰め込みましたね。「自由にやっていいよ」って言われたら全部激しい曲になっちゃうんですけど(笑)。そこは初のソロだし、たくさんの人に私のことを知ってほしかったのでバラエティに富んだアルバムになりました。

──中でも工藤さんのロックのルーツが反映されている曲は?

工藤:うーん、「Thunder Beats」ですかね〜。

──「Thunder Beats」とリード曲の「MY VOICE」大好きです。

工藤:うれしい!「Thunder Beats」は歌詞を先に書いてメロディをつけてもらったんですよ。中学のときにDragon Ashさんも聴いていたこともあって、実はヒップホップもすごく好きでいまも聴くんですけど、言葉遊びをしている曲を1曲入れたいなと思っていたんです。

──“現実逃避しよう これがイイ ビリ ビリ ビリ ”とか、デジロックっぽいサウンドと言葉の融合がおもしろい。

工藤:サビの“意味不明だけど 答えはいらない”っていうところも好きなんですけど、書いているときも歌っているときもすごく楽しかったです。


──歌詞のヒントになったことは?

工藤:子供の頃からゲームや漫画が好きで、自分の部屋にもいっぱいあるんですけど、「好きなものに囲まれてずっと生きられたら最高にハッピーだな」っていう気持ちを込めて書きました。ただ、それでも時間は無常に過ぎていくから、どうやって生きていこうって。未来への不安もあるんですけど、生きてきた証を残したいっていう欲もあるし、すべての想いを込めましたね。

──「人生1度きり!全力で楽しむ!」っていう公式コメントのとおりの精神を詰め込んだ曲というか。

工藤:そうですね。

──それとリード曲の「MY VOICE」はイントロのギターリフからしてキャッチーですよね。複雑な展開をするハイブリッドなロックでもあります。

工藤:いちばん最初にできた曲ですね。自分がステージで弾いているっていうのもあるんですけど、いちばん好きな楽器はやっぱりギターなんです。なので「ギターがいちばん目立つ曲にしたい」って伝えた曲でもあり、お気に入りです。普通、最初のサビのあとは2Aに移行するのに、全然違うメロディが出てきたり、転調したり、びっくり箱みたいな驚きがある曲ですね。



──歌詞のテーマになったことは?

工藤:“前に進む強さ”、“あきらめない心”だったり。強く生きていくんだっていう意志を表現したかったんですけど、押し付けにならないように伝えたいことを散りばめていきました。サビはキャッチーにしたかったので韻を踏んでみたり、わかりやすい英単語を使ったり、口ずさみたくなる歌詞を意識しました。

──ロック、ヒップホップとか、いろんな音楽を聴いているから工藤さんの血になっているものがあって、それが歌詞に反映されるんでしょうね。

工藤:そうだといいですね。ありがとうございます。

──ちなみにギターリフは“こんな感じ”って提案するんですか?

工藤:バンドリ!としての活動の中で、アンサンブルの大切さもわかったのでオーダーするときはけっこう細かく伝えました。「間奏はヘドバンできるようなサウンドにしたい」とか、「この部分にはスラップを入れたい」とか。スラップが好きなんです。

──ベースの奏法にも興味があるんですね。

工藤:ベースが家にあるんです。

──部屋にほかにどんな楽器があります?

工藤:キーボードは弾けないのでギターとベースだけです。スラップは一時期、ハマって家でやってました。

──(笑)ひとりで家でスラップの練習をしているんですか?

工藤:ははは。ギターを弾いていて「ちょっと限界が見えてきたな」と思ったら、気分転換するんですけど、読書したり、スラップしてみたり。なので、曲を聴くとイメージが湧いてきちゃうんですよね。

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