【インタビュー】RED ORCAの「始まり」

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■この2人を売りたいな、と思った

──なるほど。その後、曲も増えていき、ライヴもやり、ついにアルバムを発表という流れになっているわけですけど、アルバムを1枚作ったことで改めて気付けたこと、RED ORCAの特性として認識できたことというのもあったはずだと思うんです。

金子ノブアキ:やっぱり作っていくなか、改めて自分と向き合う部分というのもあったし、そこでみんなのことがより見えるようになった、というのはありますね。たとえば来門については、最初はすげえフリースタイルでガンガン行くタイプの人だと思ってたんですけど、実は真反対で。ホントに作り込んでからスタジオにやって来る。事前に本気で向き合ったうえで、研ぎ澄ませた状態で出せるものがないと行く資格がない、という考え方をするタイプで。そこは個人差があるというか千差万別、十人十色だし、逆にJESSEみたいに人に見られてないと出てこないタイプもいるわけですけどね(笑)。あと、やっぱり特にこの2人(=来門、葛城)、点取り屋2人の存在によるところがデカいんですよね。やっぱりスポーツみたいなもんで、他の3人は元々やってきたというのもあるし、僕がドラマーだからキーパーってことになるのかな。いや、それはむしろ草間さんかもしれない。僕はロベルト・カルロスみたいな感じかも。すげえ走ってくる、みたいな(笑)。点取り屋2枚という体制は、RIZEでの経験も踏まえて言いますけど、絶対的な爆発を生むんですよね。そこがピタッと来れば。だからこの2人がすごく柱になってるし、もっとざっくり言うと、この2人を売りたいな、と思ったわけです。RED ORCAが、この2人のキャリアを決定付ける何かになって欲しくて。僕が言い出しっぺで、僕の名前で始まったことではあるんだけど、1枚作ってみて強く感じるのはそこですね。

PABLO:同感ですね。そこは僕もまったく同じ感覚で。

金子ノブアキ:どうやってそこに持って行けるかってことを、曲作りの時もミックスの時も考えてましたね。まあこのメンツが揃ってれば、どこにパス出したって途中に一個パス挟んだってスぺース空いたら絶対走っていくよ、みたいな。そういう楽しみ、ドラマーとして前線にパスを送り込む、血を供給する快感とでもいうか。僕の性質上、そういうのは得意なんです。バンドマンとしてのあり方みたいなところで。がんがんドラムソロやりますよっていうタイプでもないし。やっぱ大きな流れを作っていくっていうことを重視したいし、実際ラッパーとずっと一緒にやってきた経験もあるわけだし。自分が今までいろいろやってきたなかでも、ある種の総決算みたいなところもある。今この場があるっていうこと自体、自分はすごいラッキーだとしか言えないですね。


──バンドの図式を考えてみると、まず金子さんと草間さんが基地になっていて、爆発物がふたつ設置されているような感じ。

金子ノブアキ:うん。で、PABLOがその中間に立ってて、どっちにも行けるというか。そういう自由さがあるなかで、今までのキャリアを総括しつつちゃんと現代解釈も入れて、その爆発がどうやったら起きるかっていうことを楽しんで作れてる。それ自体がすごくラッキーなことだと思うんですよね。そこにはまず人がいないと駄目だし、その人物がいたってこと自体が。人の縁みたいなものって、ホントに自分だけじゃどうにもなんないものだから。

──やっぱりこのバンドの成り立ちを考えると、どうしても金子さんのソロプロジェクトからの発展形、という見え方になると思うんですよ。でも実際にはバンドですね、完全に。

金子ノブアキ:重ねていけば、続けていけば、やっぱりそうなりますよね。

PABLO:まずあっくんのソロがあって、最初は1人で作って音源だけ発表するというところから始まって、その延長線上にライヴがあって、僕と草間さんが招集されて、ライヴ活動の延長線上に次の制作があって……。で、その3人で何か一緒に作りましょうというのがあって、それがどんどん膨らんでいった時に、金子ノブアキという名前からは溢れ出ちゃったという感覚ではあるんです。だから延長線上にあるものではあっても、もはやソロという名目でできることではないよね、というものにどんどんなってきてるというか。もちろんスタート地点はあっくんなんだけど、それがどんどん増殖していった結果、名前がRED ORCAになったというところがあって。俺はそういう感覚かな。金子ノブアキのソロという概念ではもう捉えきれないところまできてるというか。

──ソロはむしろ単なるその流れに向かう起点だった、と?

PABLO:そうそう。それに近いですね。もちろん見え方としてその延長線上にあるものというところはあると思うんですけど、それよりもちょっと違う形には確実になってきてると思う。

──しかも、顔合わせの新しさによって偶発するものの面白さだけを求めているわけでもない。

金子ノブアキ:うん。京ちゃんがいなかったら全然違ってただろうということの要因のひとつには、僕らがもうオッサンだというのもあるんです(笑)。来門もそう。彼のリリックひとつをとっても感じさせられるのは、やっぱブルースだなってことなんです。すごくブルースを感じさせられる。

PABLO:わかるわかる。

金子ノブアキ:現代のブルースマンだと思う、来門は。でもそこに京ちゃんみたいなぶわーっと来てるやつが入ることによる反応というのがある。そういう彼らの背中が見えてるわけです、僕には。そこから滲み出てるものとか、みんなの背中から伝わってくるものがある。それもまた尊いですよね。だからもう、ツイてるな自分は、と思う。ホントにそれを噛み締めてますね。

──いかがですか、ブルースマンご自身としては。

来門:ありがたいですね。やっぱり年齢も年齢なんでね、昔からそうですけど、ステージで死ねたら本望みたいなところがあるし、そういう想いが年々強くなってきてて。この12年ぐらいの間で自分が培ってきたものをこのメンツと一緒に出せるというのはすごく嬉しいし、もちろん激しさもすごく持ってる音楽だけど、俺は同時に、あっくんのソロプロジェクトの音とかを聴きながら、その尊さみたいなものを感じてるから、そういう気持ちとかも一緒に言葉にしたいなと思って。だからRED ORCAは激しさや攻撃性ばかりじゃなく、物語性とかせつなさみたいなものもすごく持ってる。そういうのも同時に書いていけたらいいな、と思ってて。

──この場だからこそ書けることを書けている、ということでもあるわけですね?

来門:まあそうですね。ずっとやってきたこと、あとは自分が生きてきて見てきたものに対して、彼が作った音楽が上手く当て嵌まるっていうか。それをステージで爆発させて、死ねたらいいかなって。


──若い時分というのは“吐き出すためのラップ”という部分が大きかったはずだと思うんですよ、反逆精神ありきのものというか。それがどんどん人生を綴るブルースのようになってきているという自覚はありますか?

来門:うん。ただ、その反骨精神みたいなのは忘れてない。俺もまだ全然理想には届いてないし、手が届くまで絶対にやめたくないし。この人たちと一緒だったら、そういった高い熱量を絶対に出せると思うし。ただ、ブルースというか、ある意味のロック魂みたいなものはずっと出し続けていきたいなと思ってて。

──ブルース=レイド・バック、ということではないわけですしね。

金子ノブアキ:うん。人と共鳴する要因になり得る部分だと思うんです。どんな音楽でもそうですよね。そこで共鳴できるかどうか。やっぱりみんな、なんでライヴに来て「よっしゃー!」という気持ちになるかといえば、魂というか精神のレベルで共鳴してるからだろうし。ジャンル感とかではなくてね。反骨精神とか攻撃性とかを持ち合わせた音楽やってきてるなかで、僕が思ってることを言ってくれてる、僕がそういうスタンスで音を飛ばしてえなと思ってるものを出してくれてる、というのが見えたというか。そこで“これだ!”という確信があったし。

──みんなが自分に合わせてくれるんではなく、おのずと重なる部分が最初からあった、ということでもあるわけですね?

金子ノブアキ:うん。そうじゃないとやっぱり……まあ乱暴な言い方すると時間の無駄というか、勿体ないんで。それがあると思えない人とは、一緒にやりたいと思わないですよね。シンプルに“ああ、今一緒にやったらすっげえんだろうなあ”という気持ちに呼ばれるというか。

──お互いのスタンスを言葉で説明し合うようなところから始めたくない、というか。

金子ノブアキ:うん。だからすごく本能的にやってきたところが大きいけど、経験してきたことによる教訓を踏まえながら、さらなる前進を……。やっぱり前に進んでいきたいし、そうしていかないと。ホントに僕は、救われてますよ。ある種の自浄作用があるというか。それがみんなにもあることを僕も願ってますね。

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