【インタビュー】MOSHIMO、新体制初アルバム『噛む』で新たなステージへ

ツイート

「止まるということが無理でした」と、ポチこと岩淵紗貴は噛みしめるように言った。11月のメンバー脱退発表、1月のツアーファイナル、2月にはサポートを加えての新体制ライブ、そして3月のニューアルバム『噛む』。バンドを取り巻く環境は劇的に変わったが、久々に会う岩淵と一瀬貴之は変わらずに元気だった。新しいレーベル、新しいメンバー、新しい曲、新しい未来。よりハードによりシンプルにより感情に忠実に、走り続けることを選択した二人の胸の内に迫ってみる。

  ◆  ◆  ◆

■新しいステージに行くための第一歩

──前体制の最後のライブから、1か月半でもう新体制のライブやったでしょう。「速っ!」と思った。

岩淵紗貴(Vo&G/以下、岩淵):「MOSHIMOが好き」と言ってくれる人の立場になったら、止まってるより動いてるほうが絶対うれしいと思うし、単純に止まりたくなかったから。休むと不安にもなるし、止まるということが無理でした。

──サポートメンバーの二人、紹介してもらっていいですか。昔からの知り合い?

一瀬貴之(G/以下、一瀬):そうです。(高島)一航(Dr)とは高校生の時から友達で、(汐碇)真也(B)くんはBAND AやKidori Kidoriのメンバーで、今はYap!!!というバンドをやっていて、その繋がりで声をかけさせてもらいました。正式メンバーではないですけど、レギュラーメンバーという形でやっていこうと思ってます。今回のアルバムも4人で録っていて、楽しかったですね。人が変わるとクセも変わるから、今までなかったアイディアも出て来るし、すごく刺激になってます。真也くんはロックバンドをやってたんですけど、一航は音大に行って、ロックバンドはほぼやったことがなくて。演奏に強弱があって面白いんですよ。

岩淵:歌は、もっと好き勝手歌えるようになりました。ベースのフレーズがめちゃくちゃ動くから、音の分離が良くなって、歌詞とメロディが抜けて聴こえる。コードに合わせて歌が乗ってるだけじゃなくて、ベースが遊ぶからこそメロディが生きてくるのをすごく実感しました。

一瀬:ドラムはタトゥーばりばりで、見た目はロックなんですけど、めちゃくちゃ真面目なんです。よく気が付くし、細かい。

岩淵:過去を否定するわけじゃないけど、サポートだけど、今までバンド活動してきて一番メンバーだなと思う瞬間がすごくたくさんあって。ちっちゃなことですけど、一緒に配信した時に、「みんなライブに来てね」「俺も楽しみ」とか言ってくれるんですよ。今までは、この二人(岩淵と一瀬)でがつがつ進めてきた感じがあったので、自分以外の人が自分事としてバンドのことを考えてくれてるのがすごくうれしかった。「私、ライブ中に好き勝手やるけどごめんね」って言ったら、「そうやって引っ張るのがボーカルだから。俺も一緒にやれるのが楽しい」とか。「ポチがやりたいことを好き勝手やることで、俺たちを連れて行って、夢を見させてくれるのがうれしい」とか。一言一言に救われたりするんですよ。

──熱いね。

岩淵:それが演奏からも伝わってくるし、レコーディングにも出てる。バンドとしてはピンチでもあるんだけど、すごく楽しいです。

▲岩淵紗貴(Vo&G)

──そして新譜『噛む』の曲はいつから?

一瀬:3月に出すことは決まっていたので、曲は10月から書き始めました。

──それは新体制を見越して?

一瀬:いや、全然見越してなくて、二人で途中まで作ってて、そろそろバンドで合わせようかという時に脱退の話が出たから。そこから新しい人を探して、曲作りを続けた感じです。

岩淵:2019年は自分の中で、めちゃくちゃ突っ走ってたんですよ。その中で「次はZepp DiverCityでやろう!」という話が出て、そのためにもっと上がっていく曲って何だろう?と考えた時に、曲もできないし、歌詞も全然浮かばなかったんですよ。というのも、ずっと沸点が高い状態で全力疾走してたから、ギアをもう一個上げるための刺激がなくて。夏フェスが終わった9月ぐらいは、正直退屈だったんです。そしたらいろんなことが急に変わり始めて、今度はどん底に落ちるぐらい、体力的にもメンタル的にもしんどくなって。その浮き沈みがあったからこそ、書けた曲や歌詞が今回はたくさんありますね。

──うん。なるほど。

岩淵:今後長くライブバンドとしてやっていくために、MOSHIMOというオリジナリティって何だろう?というものを模索して、ただライブで叫んで楽しいだけじゃないよというところを見せたアルバムだと思います。新しいステージに行くための第一歩を踏み出した感じなので、これが完成とは思ってなくて、次に繋がるための、自分に向けた1枚でもあると思いますね。過去を振り返ることと、将来こうなりたいという夢に対して進むことと、ちょうど間にあるアルバムかなと思います。

一瀬:最近ライブで岩淵が、自分のことをどんどん話すようになってきて、お客さんも若い人たちがたくさん来てくれるようになって。その人たちが「最近こういうことがあった」「フラれちゃった」「彼氏とうまくいかない」「入試があります」とか、そういうことをライブのMCでもコミュニケーションを取っていて。MOSHIMOは恋の歌が多かったんですけど、アルバムの1曲目「もっと」みたいに、「これからいろんなことがあると思うけど、なりたい自分になろう!」みたいな、ライブ全体の「MOSHIMO感」が伝わる曲が今までなかったので、「もっと」を作りました。MOSHIMOのライブがそのまま歌詞になってる曲ですね。そこを軸にほかの曲を作っていって、CDの流れの通り、1,2,3曲目は順番通りに作っていきました。



岩淵:私の声って、いい意味でも悪い意味でもすごいポップで、可愛らしく聴こえちゃってるみたいで。お客さんによく言われてたのが、「音源とライブが違う」ということで、前作『TODOME』でさえ「ライブのほうが全然ロックでかっこいい」と言われたんですよ。それはうれしい言葉なんですけど、ということは、私の人物として、音源とライブがイコールになってない。自分の声に対してもコンプレックスを感じる瞬間があって、でもそれを言っちゃうと、好きと言ってくれる人に対してすごく失礼だと思うから、言わなかったんですけど。

──うんうん。

岩淵:もともと私は口が悪いし、歌い方もきれいじゃないし、そこがライブと音源では違ったんですよ。レコーディングでは綺麗に歌おうとして、ピッチやリズムを気にして何回もテイクを重ねて、でもライブの時はそんなこと考えてなくて、今この瞬間の衝動で歌ってるんで。今回の『噛む』は、綺麗な言葉も使わないで、歌い方もライブを意識して、そうやって作ったアルバムなので、部分録りもほとんどしてないし、何なら暖房でがんがんに暑くして、タンクトップで歌うみたいな感じ。テイクも5テイクぐらいしか重ねてないし。そしたらエンジニアさんに、「びっくりするぐらい声量が上がってる」って言われました。

──おおー。

岩淵:機材のことはよくわからないけど、普通のボーカリストはツマミを2個ぐらい上げなきゃいけないのが、私の場合「アメリカのデフォルトと同じ設定に戻せたよ」みたいな。声量が上がったのは、去年あれだけ爆音でギター歪ませまくって、その中で歌ってたから、1年間でだいぶ鍛えられたっぽくて、「60年代、70年代のロックバンドと同じぐらいの声量設定だよ」って言われて、それはうれしかったですね。だからこそ歌詞も、変に可愛さが抜けたし、逆に可愛く歌いたいワードはぶりっこで歌えるし。人として表情豊かなアルバムができたかな?と思います。

◆インタビュー(2)へ
この記事をツイート

この記事の関連情報