【インタビュー】Q.A.S.B.「ダンスミュージックであること/ブラックミュージックであること。その両方もしくはどちらかであること」

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Q.A.S.B.は、1970年代を中心としたソウル/ファンク、レアグルーヴを、その後のダンスミュージックシーンを通過したメンバーによる解釈のもと現代に蘇らせ、後世に伝えることを目指した“現行”のレアグルーヴバンドだ。一昨年、フルアルバム『Thinking Of You』をリリース、その後もピチカート・ファイヴ「サンキュー/ウィークエンド」、ロイ・エアーズ「Can't You See Me」といった名曲カバー7インチを立て続けにリリースし、渋谷を中心に、ファンク/ソウルファンはもちろん、いわゆる生音系クラブミュージック好きの心を掴んでいる。そんなQ.A.S.B.について、Soul Garden Records主宰、リーダーでありキーボード奏者のMasamichi Ishikawaに話を聞いた。

◆Q.A.S.B.画像

■バックグラウンドとしては
■ 1970年代のソウル/ファンクがある

──Q.A.S.B.が結成された経緯は?

Masamichi Ishikawa(以下、Ishikawa)実はこのバンドが結成されたときのことを知りません(笑)。というのも僕がオリジナルメンバーではないからなのですが、バンドのアーカイブ(Q.A.S.B. Blog:http://qasbblog.blogspot.com)によると、「mixiの“フリーソウルセッションクラブ”というコミュニティにて知り合った者たちにより結成された」となっています。それによると2005年10月に目黒食堂で初ライブがあったそうで、そのときは現在より1名少ない8人編成でした。

自分自身の記憶が定かでないのですが、僕は2007年頃に当時サックスを担当していた方に誘われてライブでサポートするようになり、その年の終わりまでには正式メンバーになってました。でも、本格的に力を入れ始めたのは、アナログテープでアルバムを録音するというプロジェクトをスタートさせた2008年からです。

──Q.A.S.B.のコンセプトは?

Ishikawa 「ダンスミュージック(クラブミュージック)であること」「ブラックミュージックであること」。その両方もしくはどちらかであることです。バックグラウンドとしては1970年代のソウル/ファンクがあります。

撮影:@secret_citywalk

──“レアグルーヴバンド”という触れ込みですが、今のスタイルになったのはいつで、何か原因がありますか?

Ishikawa レアグルーヴというのは定義が曖昧なところも含めて魅力的なキーワードなのですが、僕自身の考えとしては、「ファンクでもソウルでもジャズでもない/ソウルでもありR&BでもありJポップのようでもある/ラテンジャズと言われればそうだがちょっと“和”の要素もある(※ジャンルの言葉は入れ替わっても同じ)」とレアグルーヴを解釈しています。

DJがクラブでプレイしていて2〜3曲すると気づかないうちに違うジャンルになっていたということはよくありますよね。さっきまでファンクだったのにいつの間にかサルサになっていたとか。いろんな場所に案内してくれるわけです。世界中、旅することもできます。ジャンルだけでなく時代をクロスオーバーすることもできて、重力(サウンド)で空間(音場)がねじ曲がるような錯覚を起こすこともあります。

一方、同じ曲でも「どの曲からつながるか」、「どの曲につながるか」によって全く違う印象になることもあって、それはその楽曲を構成する要素を洗い出し、分析した DJがどういった角度ででその楽曲をプレイするかにかかってきます。さらに言うと、つないでいる曲は同じなのにもかかわらず、それを回しているDJによって全く違って聞こえてくるから面白い……そういったクラブでの体験から自然と影響を受けたのでしょう。

レアグルーヴを強く意識するようになったのは3枚目のアルバム『Q.A.S.B. III』(2015)を作るときでした。このアルバムでは個別の楽曲でのレアグルーヴ性は薄いですが、昭和的な“和”を思い起こすインストジャズファンク、ロックっぽい灼熱ファンク、クールな6拍子の踊れるソウルや9拍子のスウィートソウル、Jポップのようにも聞こえるソウルナンバー、ファンキーソウルディスコ、ディープファンクなどなどブラックミュージックがデパート化してきました。その頃から“レアグルーヴバンド”と自分から言い始めたのですが、分かりにくさもあってプロフィールとかには“ファンクバンド”を使い続けてました。

光栄にも“日本を代表するファンクバンド”とレコード屋さんのオンラインショップの紹介に書かれたりするのですが、オーサカ=モノレール、在日ファンク、モミーファンク、Mountain Mocha Kilimanjaro などなどたくさんのファンク・バンドの足元にも及ばないと思っていて申し訳ないといつも思ってます。

一曲の中に詰め込める要素(モティーフ)を多様化しようという趣向は、その後の4枚目のアルバムの楽曲以降に徐々に現れるようになってきているかもしれません。もちろん、全曲そうしようと思っているわけではないですが。

──メンバーについてそれぞれ教えてください。

Ishikawa 結成当時のメンバーは実はひとりも残っておりません(笑)。僕自身が最古参になります。何しろメンバー総勢9名なので詳しく書けません。僕以外のメンバーを加入順に簡単に紹介させていただきます。

Yuzo Kitano(テナーサックス)2008年〜
最初はサポートでの参加でしたが、ファーストアルバム録音のときには正式メンバーでした。根っからのフュージョン好きですが、この3〜4年は都内のバーやクラブに通いつめていて、おかげで彼と同世代のDJさんたちと強力なコネクションができました。最近はDJとしてイベントにも呼ばれています。

Sachi Nakasaki(ドラム)2011年〜
初録音は「The Mexican」。都内の数々のセッションホストを務めてます。ブルース、ソウル、ファンクのセッションが多いみたいですが、かつてはメタル系のバンドをやっていたこともあるそうです。

Makiko Sugiyama(トロンボーン)2012年〜
僕がQ.A.S.B.に入る前、大型ファンクバンドが乱立していた2000年代初期に対バンしたことがありました。録音はセカンドアルバムから。サルサなどラテン系の音楽やダンスにも詳しいです。

Ryo Yamaguchi(ギター)2013年〜
初録音は「Never Did I Stop Loving You」。僕がQ.A.S.B.に入る前からの知り合いで、日本屈指のアフロビートバンド、JariBu Afrobeat Arkestraの初代ギタリストでもあります。

撮影:@secret_citywalk

a.yu.mi.(ボーカル)2016年〜
初代ボーカリストのAmy Aに変わり加入。いつも僕の変な曲に歌詞をつけてもらって感謝です。実は加入前の2012年4月のライブではコーラスで参加してもらっています。

Akito Suto(パーカッション)2018年〜
しばらくパーカッション不在時期がありましたが、快く引き受けてくれました。セッションやレコーディングに全国あちこち引っ張りだこです。

Shiori Shelly Tabata(ベース)2019年〜
2018年末のオーディションに応募していただきました。最年少ですが今ではしっかりとグルーヴを引っ張ってます。

Masayuki Echigobayashi(トランペット)2019年〜 トロンボーンのMakikoさん伝手に紹介いただきました。音楽教室で先生もやっています。


■アナログにこだわる理由は生音系のクラブイベントと
■かつバンドのコンセプトとの親和性も高いこと

──現在はどんな活動が主でしょうか?

Ishikawa アナログレコードを中心に作品を作ることをメインに活動しています。もちろんライブも行いますが、なかなか渋谷を抜け出せません(笑)。

──Q.A.S.B.が影響されたバンドはありますか?

Ishikawa この質問はなかなか難しいのですが、バンドとして影響を受けているといえば、やはりジェームス・ブラウン、そしてスティーヴィー・ワンダー。

──7インチのカバーシリーズをリリース中ですが、選曲の基準は?

Ishikawa ある楽曲のカバーをする場合、よくある発想としてジャンルの変更があります。例えば、スタンダードなジャズをレゲエにする、ファンクをアフロビートにするとか。僕の知る限り、レゲエもしくはラバーズロックは最もいろんな音楽を受け入れて吸収するジャンルじゃないかと思います。ファンク/ソウルを主体に演奏をしているバンドにとって難しいのが、原曲を他のジャンルから見つけてくるのが大変、かといって、すでにあるソウル/ファンクの名曲をカバーするのはもっと大変(笑)。オリジナルには勝てないので。

ということで、カバー曲は結成初期のライブではまずまず演奏していたものの、録音に関して言うとカバー曲は避けていたところもありました。唯一の例外が、2012年3月にリリースした「Q.A.S.B. + RYUHEI THE MAN - The Mexican Part 1&2」。それに今年の2月にTHE MAN 2020 RE-EDIT版が出て復刻した、同じくRYUHEI THE MANさんプロデュースで 2014年5月の「Never Did I Stop Loving You / Never Did I Stop Dubbing You」。言ってみれば“カバーレコーディング恐怖症”(笑)みたいなところがあったんですが、2018年にあるプロジェクトでソウル/ファンクのカバー曲をアレンジして録音したことをきっかけに、あまり難しく考えることないなと開き直りました。

そんな中、渋谷宇田川町のオルガンバーでのイベント<“A”エース>中、小西康陽さんとの雑談の中で企画が生まれたのが、昨年2019年12月にリリースしたピチカート・ファイヴの「サンキュー」と「ウィークエンド」のカバーでした。小西さんとの雑談の詳細については長くなるので秘密にしておきますが(笑)、お話するようになったのは4枚目のアルバム 『Thinking Of You』の中にも収録されている「You Make Me Feel」という曲を非常に気に入って7インチを日本で最もプレイしてくださってるといのを知ってご挨拶にいったことがきっかけでした。数あるピチカート・ファイヴの楽曲の中でQ.A.S.B.に合うんじゃないかと思われる曲をたくさんピックアップしていただきました。7〜8曲くらいあったと思います。「サンキュー」はリアルタイムでよく聴いていた曲ですぐに頭の中で音像が浮かんだのですが、7インチでリリースするのだからもう一曲ということで選んだのが「ウィークエンド」。

その「ウィークエンド」のアレンジの参考にしたのが、3月28日にリリースする7インチの楽曲ロイ・エアーズの「Can't You See Me" (feat. Hiro-a-key) 」。わかってもらえたら幸いです(笑)。そしてもう一曲の方が、ナンシー・ウィルソン「I'm In Love」。 MUROさんのミックスCD『SOUL STATION 11154』に収録されているのを聴いてこの曲を知ったのですが、オリジナルのレコードのピッチ(速度)よりも速い(ということは音程も少し高い)ということに気づきました。結果、聴いた印象がよりタイトによりダンサブルになっているところがポイントになっていて、これをいつか生演奏で再現できたらというのが選曲の理由です。

ということで、カバー曲の選曲の基準と呼べるものは特別なく、冒頭にもありましたQ.A.S.B.のコンセプトに合っていることが前提としてあることくらいでしょうか。過去に7インチというフォーマットでリリースがあるかどうか? というのも重要な要素だと思います。

撮影:@secret_citywalk
──アナログレコードにこだわる理由はありますか?

Ishikawa 個人的な話になってしまうのですが、2008年の4月にSoul Garden Recordsというレーベルを立ち上げて、あるアーティストの録音を探しているときにある人づてに紹介されたスタジオが上池袋にある Studio Dedé でした。今となってはジャズ系の音楽を中心に広く知られて、ニューヨークにマスタリングスタジオも作ってしまうくらいのスタジオですが、その当時はオープンしたてでデジタル録音のみだったかと思います。何度か利用させていただいているときにスタジオオーナーの吉川さんから、「実はアナログテープレコーダーを所有していて、もう少しするとアナログテープのレコーディングエンジニアさんが関西から上京してくるのでアナログレコーディングを始めようと思っている」ということを聞いて、また、吉川さんご自身も70年代のファンク音楽の音質を好んでいるということもあって、Q.A.S.B.の録音をアナログテープでやってみようということになりました。これがファーストアルバムになるのですが、そのあたりからアナログ音質の良さを意識するようになりました。ドラムやベースのタイトな音はもちろんですが、ボーカルやホーン楽器、そしてオルガンの伸びる音は時間とともに倍音が増幅されて本当に豊かに響きます。それ以来、Studio Dedéでのアナログテープでの録音は今日現在まで続いています。

以上はアナログレコーディングの話なのですが、おかげさまで実際にQ.A.S.B.はアナログレコードをたくさんリリースさせていただきました。現時点でQ.A.S.B.のアナログは(3月28日のリリースも含めて)7インチが18タイトル、アルバムLPが3タイトルがリリースされてます(ファーストアルバムだけはCDのみ)。ソウル/ファンクのいわゆる生音系のクラブイベントでは圧倒的にアナログレコードでプレイされることが多いこと、(最初の方の質問にもあった)バンドのコンセプト(ダンスミュージック&ブラックミュージック)との親和性も高いというのがこだわりの理由です。ちなみにCDやデジタルの音がダメということは全くなく、異質のものとして捉えるべきなのかなというのが私見です。

撮影:@secret_citywalk
──クラブ系の人たちと交流が深いようですが、なぜでしょうか?

Ishikawa 元々僕が個人的に90年初頭からクラブミュージックが好きだったというのもあるのですが(今でもライブイベントよりもDJイベントの方がよく行きます)、バンド結成初期はちょうど“ディープファンク”ムーブメントがあって、<Searchin’>(黒田大介さん、尾川雄介さん、リンカーンさん主催)などクラブイベントも多かった時期でした。クラブジャズムーブメントも当時が一番盛り上がっていたころだったと思います。

古い付き合いのDJでエックス君という人がいて、彼がQ.A.S.B.をたまたま見つけて実は僕が参加していたことを知って、彼が主宰しているイベント <BOTTLE>にQ.A.S.B.を招いてくれるようになりました。さっきの「The Mexican」の7インチをRYUHEI THE MANさんがプロデュースするきっかけも、<BOTTLE>のお互いゲストDJ・バンドとして招待されて共演したことです。<BOTTLE>クルーの皆さんが大変応援してくれて、ファーストアルバム『Q.A.S.B.』(2009)をリリースしたときは、メンバーみんなで手分けしてタワーレコードとかHMVの店舗に予約入れてまとめ買いしてくれたりとか(笑)、めちゃめちゃありがたかったです。

サックスの北野君も最近毎日のようにDJイベントに顔出していて、いつしか僕よりもDJの知り合いが多くなっています(笑)。トップDJさんもラジオでプレイしてくれたり嬉しい限りなのですが、一回りくらい若いDJさんは実際にレコードを買って現場で使ってくれるので本当にありがたいです。この場をお借りしてお礼をお伝えできたらと。

──Q.A.S.B.の最終形態は、どんなバンドになりますか?

Ishikawa 今とあまり変わらないんじゃないかと思います。アンダーグラウンドシーンだけでなく、より幅広い層のリスナーに届けられればと思っています。

──最後に今後の予定を教えてください。

Ishikawa オリジナル、カバーに限らず7インチでリリースするというのは引き続きやっていきます。次のアルバム(通算5枚目)の製作を目指しているところです。


「 Can't You See Me feat. Hiro-a-key / I'm In Love 」

2020年3月28日(土)発売予定
Soul Garden Records SG-069 1,500円+税

◆ Q.A.S.B. オフィシャルサイト
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