【インタビュー】INABA/SALAS、2ndアルバム誕生「チャレンジしてみることで新しい扉が開ける」

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25年もの交流の末、稲葉浩志とスティーヴィー・サラスががっちりタッグを組み、お互いのミュージシャンシップを幾重も絡み合わせて、INABA/SALASとして初のアルバム『CHUBBY GROOVE』を誕生させたのは、今から遡ること3年前の2017年1月18日のことであった。

◆INABA/SALAS 画像

滴るようなグルーヴと転がり続けるロックフィールを携えた『CHUBBY GROOVE』は、ふたりのケミストリーが眩く瑞々しい作品となった。作品が完成した後においても、スティーヴィー・サラスは「実は新曲やアイディアもあるからね」と、次なる作品への意欲を見せるほどのポジティブなエネルギーを放ち続けていた。

そして2020年4月、ついに2ndアルバム『Maximum Huavo』の誕生である。『CHUBBY GROOVE』の楽曲クレジット「All Songs Written by Stevie Salas & Koshi Inaba」から、『Maximum Huavo』では「All Songs Written by INABA/SALAS」と、クレジット表記にも変化が表れた。手探りでバンドサウンドを作り上げた前作から、今作ではふたりの魂がひとつの意思を持ったバンドとして鼓動を打ち始めたことを示唆するもの、と言えそうだ。

「ついさっき、すべてのレコーディングを終えた」という制作完了ほやほやのINABA /SALASを直撃、『Maximum Huavo』はどのような作品となったのか、ふたりから話を聞いた。

   ◆   ◆   ◆

■前作がある以上
■それは超えなきゃいけない──稲葉浩志

──3年前、スティーヴィー・サラスは「実は新曲やアイディアもある」と言っていましたが、すでにそこから『Maximum Huavo』の制作は始まっていたのでしょうか。

稲葉浩志 (以下、稲葉):『CHUBBY GROOVE』が終わった後にも、そのアイディアがどんどん僕に送られてきてね(笑)。

──まだ演るとも言ってないのに?

稲葉:演るとは言ってない(笑)。

スティーヴィー・サラス (以下、サラス):「アイディアがたくさんある」って言ったけど、あれが今作に生きているかどうかは分からない。常に運転しているような状態で、真っ直ぐ行っているつもりでも脱線したりするのが常だからね。2019年4月に曲作りを始めたけど、“よし、これはOK!”と最初にできた曲も9月に聴き返したら“最悪だ…コーラス以外は全部消してもう一度やり直し”ってことになったりしたから。ルーティーン化してくると仕事みたいになっちゃうけど、INABA/SALASは楽しいんだよ。2019年はデヴィッド・ボウイのツアー (トリビュートコンサートプロジェクト<A Bowie Celebration>)に参加していて、いつもと違う曲をやっていたことがすごく楽しかったんだけど、その楽しさもINABA/SALASと一緒でね、あとはインスピレーションが常に続くことを願うだけだよ。

▲稲葉浩志

──ライブツアー<CHUBBY GROOVE TOUR 2017>も最高に楽しかったですね。

サラス:自分たちも、想像以上によかった。

稲葉:新しいものでしたから、そもそも期待の基準もなく、みんなも期待のしようがないっていう(笑)。僕らも“何が起きるか…”って感じで始めたんですけど、自分たちがプレイしているものに対してのリアクションが想像以上に良かった。結果は非常に良かったなって感じです。

──これだけのキャリアを重ねながら、新人バンドのような気持ちになれるって貴重な経験ですね。

稲葉:そうですね。そういうモードにスッと入るのはなかなか大変ですし、失うものがないっていうわけでもないのでリスクはありますけど、“やってみた”ということと、それに対して聴いてくれた方もちゃんと応えてくれたっていうのは、やっぱりすごい喜びでしたね。

──そんなINABA/SALASが、さらなる新作を生み出したわけですが、今作はどういう作品に?

稲葉:基本的にINABA/SALASはもともと気楽というか、何の計画もなく曲の作り方もリリースの予定もないままに始めたので、気分的には放課後の作業のような感じで非常に自由だったんです。結果的には“いいじゃん、いいじゃん、面白いじゃん”ってことになって、リリースも決まったしライブもやろうってことになった。けど今回は、そこを経験してからの作業なので、前作がある以上それは超えなきゃいけないというプレッシャー…そういう思いはありましたよね。自分たちが面白い/好きと思うものを作ることには変わらないんだけれども。

サラス:前回感じたプレッシャーと今回は全然違うよ。前回は、スティーヴィー・サラスではなく稲葉浩志ともまた違う、全然違うものを作るという“これとこれを取り合わせたらどうなるだろう?”というわりとゲーム感覚で制作できたんだけど、今作は前作を超えなければならないから、自分たち自身にプレッシャーをかけていたと思う。新しいものを見つけなければいけないし、前作よりも自分たちが満足できるものを作らなくてはいけない。頭の中で考えすぎていたかもしれないけど、でき上がった作品ひとつひとつに対して“これは本当にグレイトなものができたのだろうか”と聴き直したりしてきたよね。さっき、最終的な完成作品を聴き終えたんだけど、音楽ファンとして聴くことができて“いいものができた”という確信が持てたところだよ。

▲スティーヴィー・サラス

──ひとつひとつの積み重ねが、そのまま『Maximum Huavo』になっているんですね。

サラス:今日でき上がって嬉しいよ。些細なディテールも気にするからこそこれだけの成功をつかんでいるふたりだから、INABA/SALASでもディテールをすごく細かくチェックしているんだよ。

──今作の制作クレジットが、Stevie Salas & Koshi InabaではなくINABA/SALASとなったのはどうしてですか?

サラス:前作の時は一緒にアルバムを作っただけで、バンドとしての形も見えていなかったし、もしかしたら“CHUBBY GROOVE”という名前で活動するかもしれなかったんだよ。最終的にはファンの人が僕らだということが分かるようにINABA/SALASって名前をつけたんだけど、今回はもうINABA/SALASとしてのアルバム制作だったからね。

稲葉:ああ、そういうことなのね。

サラス:ライブでもこのふたりだけを中心人物にしたくなくて、グループ全体がバンドだから、<CHUBBY GROOVE TOUR 2017>のステージに出るときにも全員で踊りながら出てきたんだ。まるでこどもの頃パーティでみんなでバンド演奏しているような気持ちでね。今回はツアーメンバーがガラッと変わっちゃったけど、やっぱりバンドとしてやりたいんだよ。カラーコードのスティーヴィー・サラスでもB'zの稲葉浩志でもなくね。

──今作もダンスアルバムに聴こえましたが、ライブで楽しみたいという思いが強いのでしょうか。

サラス:前回のツアーのときも、ファンから「とにかく毎晩踊り狂っている」って聞いていたし、「SAYONARA RIVER」に合わせて踊りまくっている映像を送ってくれたりしていたから、世界中で好まれているのはダンサブルな音楽なんだろうね。でも、今回のアルバムのほうが『CHUBBY GROOVE』より絶対ヘヴィだ。『CHUBBY GROOVE』はもうちょっと軽めで、『Maximum Huavo』のほうがヘヴィでアグレッシヴ。昔ながらのアグレッシヴさではなく、今どきのDJが持ってくるような攻撃性があると思うよ。ダンスバンドではないからね。

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