【インタビュー】DIAURA、2ヶ月連続リリースの意図

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DIAURAが4月1日、2ヶ月連続リリース第2弾作品となるニューシングル「Hydra」をリリースした。3月に発表した第1弾シングル「ENVY」はアッパーチューン、それに対して「Hydra」はダークさを惜しげなく出した楽曲で、異なる表情を持つこの2作により一つの世界観を表現しているという。今回のインタビューでは「Hydra」の収録曲を中心にメンバー全員に話を聞き、2枚のシングルの関係性、約9年活動してきた彼らが改めて見つめ直したバンドとしてのカタチに迫った。

  ◆  ◆  ◆

■ワクワクしたい、ときめきたい

──結成9年になるDIAURAですが、昨年2019年はバンドにとって、大きなターニングポイントの年だったようですね。

yo-ka(Vo):はい。DIAURAというものをもう一度4人で見直して、作っていかなければいけないと考えた結果、活動を始めてからずっと所属していた事務所を離れました。そこから「FINALE -Last Rebellion-」(2019年10月発売)というシングルを出し、今後に対するDIAURAの意志を示してツアーを回る中で、近年披露する機会のなかった曲たちにも光を当ててみたら、当時は出し切れなかった良さだったり強さというものが見えたんですね。結局、自分たちの可能性を広げるのも狭めるのも自分たちなんだということを改めて感じて、ここからもっとDIAURAというものに自分たちもワクワクしたい、ときめきたいなと強く感じたんです。

──それが今回3月の「ENVY」に4月の「Hydra」と、2ヶ月連続シングルリリースを行うことにした理由なんでしょうか?

yo-ka:そうですね。我々を知っている人たちが持つDIAURAに対するイメージを、もう一回塗り替えられるようなリリースにしたい。そこからのツアーでも何でもアリな姿勢で挑んで、もっと幅を広げたいと思ったので、楽曲もヴィジュアルも全く違う作品を続けて出すことにしたんです。「ENVY」はわかりやすいアッパーチューンで見た目は赤、「Hydra」はDIAURAが持ってるダークさを惜しげなく出して、ヴィジュアルも漆黒と。

▲yo-ka(Vo)

──なるほど。先ほど“DIAURAに対するイメージを塗り替えたい”という発言がありましたが、DIAURAというバンドに染みついたパブリックイメージについて、疑問やもどかしさを持つこともあります?

yo-ka:いや、そのイメージも結局は自分たちが望んで作ってきたものなんで、そこまでは思わないですね。ただ“これだけでいいのか?” “俺たちもっとできるよな?”っていうのを感じるようになったのが、今なんだろうなっていう。

佳衣(G):確かに「DIAURAってNGが多い」とか「こういうことやらないよね」って言われることは多いんですよ。やっぱり“正統派”で、本当に“黒い存在”というイメージは強いみたいで。

──面白いことはやってくれない的な?

佳衣:極端な話、そういうことなんですけど(笑)。でも、決してソレが嫌なわけじゃなく、今まで約9年やってきたことの結果だから、貫くところは貫いていきたいんですよね。

達也(Dr):「王道だよね」と言われることもすごく多くて、別に自分たちで“王道なんだから”ということを意識して活動しているわけでもないけれど、自分たちが“カッコいい”と信じて提示したものに対して、そう評価されるのであれば別にいいかな。

翔也(B):個人的にも「すごく真面目」と言われることが多くて、昔はそれに反発してあえて突拍子もないことをやろうと考えてた時期もあったんですけど、今は“真面目で何が悪いんだよ!”って思ってるくらい(笑)。しっかり一本筋が通っていれば、それを強みにした上で肉付けしていけるんだろうし、そこはポジティヴに考えてますね。

──別にイメージを一変させたいわけではなく、これまで培ってきたものを軸にして、もっと肉付けしていきたいだけだと。そう聞くと「ENVY」も「Hydra」も、非常にDIAURAらしい楽曲であるのが納得できます。「ENVY」なんて荒々しくもメロディックという、まさしくヴィジュアル系の“王道”ですし。

yo-ka:“らしさ”にもいろいろありますけど、どう転んでもDIAURAってメロディックなんですよ。そこは何よりも大事なことで、ハードロックだろうがヴィジュアル系だろうが、俺個人としては“歌”が軸であるべきだと思ってるんです。メインコンポーザーである佳衣の曲であろうが、俺が作る曲であろうが、そこだけ絶対忘れないようにやってるんで。

佳衣:で、「ENVY」を出して「Hydra」を制作するとなったとき、ただ単に対照的な曲を作ろうとは考えなかったんですね。むしろ「ENVY」の“先”を描きたくて、だから「ENVY」と「Hydra」で一つの世界観というイメージなんですよ。

yo-ka:「ENVY」の先に「Hydra」があって、さらにリピートされていくという、いわば“無間地獄”みたいなものを作りたかったんですよね。なので、MVもそれを感じさせるように作りました。





──「ENVY」に登場する女性が「Hydra」でも回想の中に現れたりしてますもんね。“滴る赤でその目を潰しましょう”という「Hydra」の歌詞も、「ENVY」の“赤”で潰した先の“闇”という捉え方もできますが、この一連の物語は一つのラブストーリーでもある?

yo-ka:そうですね。人間って、やっぱり恋愛する動物じゃないですか。そこにはある種の依存があったり、さまざまな形がある。その中でも今回のモチーフは、すごく歪んだものではあるんですよ。人の感情は変化していくもので、愛情だって反転すれば憎しみに変わる。そんな感情の機微というか、歪んだ情熱みたいなものを表したのが「ENVY」で、それが変貌した成れの果てが「Hydra」というのをワンセットで創りたかったんですね。そうやって人間は学びながらも、また同じことを繰り返してゆく……っていう、人間が持つ性や愚かさみたいなものを表現できればいいなと。

──繰り返してゆく無間地獄──そこから蜷局を巻く“蛇=Hydra”をモチーフに取ったんでしょうか?

yo-ka:そう。Hydraってギリシャ神話に出てくる怪物なんで。

佳衣:自分としては“蛇”っていうと、あまり好ましいものではないというか(笑)。やっぱり毒々しかったり、不気味なイメージがあったので、それは曲にも反映させていくようにしましたね。

達也:曲が上がってきた段階で、すごくメロディラインが絡み合ってるな!っていうのは感じたんですよ。なので、自分の音でも力強さだったり毒々しさを表現したいなぁと思いつつ、出来上がって歌詞を見たときに、“あ、ちゃんとリンクしてたんだな”と気づきました。

翔也:レコーディングの段階でテーマやモチーフを知らなくても、DIAURAって曲自体が強いので、ガッツリ世界に入り込めるんですよ。“これはこういうテーマだから”とか意識したり演じたりしなくても、ありのままで表現できる。それが今、自信に繋がってはいるんですけど。

──それは楽曲で世界観をキッチリ構築できるDIAURAだからこその自信でしょうね。個人的にはサビでテンポダウンするあたりに、“ああ、DIAURAだな!”と感じました。普通はテンポアップするところ、セオリー通りにいかないのがDIAURAらしい。

yo-ka:ああ、なるほど。確かに佳衣ちゃん、そういうところあるかもしれない。

佳衣:サビでバーン!と開けるのもいいんですけど、サビで急に切なくなるのが自分的にはすごく好きで。今回ライブのことは全く考えずに曲とか作ったので、ライブになったらどうなるのかな?っていうのは楽しみにしててほしいです。逆に(笑)。

▲佳衣(G)

達也:俺はイントロに入る瞬間が、聴いていても演奏していても、すごく突き刺さるというか。急に来た!みたいな感じでハッとするので、演者からしてもワクワクしますね。

──天から降る声のようなyo-kaさんの歌声に続いて、ギターが一発入ってバンドインしますからね。その始まり方はカップリングの「ポワゾ」にも通じるところがありますが。

yo-ka:そこは偶然ですね(笑)。ただ、今回の2枚はカップリングも表題の「ENVY」と「Hydra」で描きたかったことへの肉付けになっていて、6曲通して膨らませたところが大きいんですよ。それこそ「ポワゾ」とか、言ってることは完全に「Hydra」と同じ。というのも「ENVY」からの連続性を出したいと、最初から佳衣と話して決めていたので、じゃあ、自分が「ENVY」の先を描くとしたら何だろう?と考えて作ったものが「ポワゾ」なんです。結局は佳衣の作った「Hydra」の原曲を聴いて“これだな”と表題に選んだんで、普通だったら「ポワゾ」は外すんでしょうけど、作曲者が違って曲のタイプも全然違う、でも、同じ軸で歌ってる2曲を揃えたら、逆に面白いなと思ったんですね。同じ顔をしてる2曲なのに流れる血の温度が違っていて、そうなるとテンションも変わってくる……っていうところが、自分の中では大きな試みだったんです。

──“猛毒”というワードがあったり、「ポワゾ」の方がよりダイレクトに“蛇”感がある気がしますが、その温度の違いを具体的に言うと?

yo-ka:「ポワゾ」のレコーディングのとき、達也に「Aメロではジワジワと這うようなドラムを叩いてほしい」って言ったんですよ。覚えてる?

達也:うん。

yo-ka:でも「Hydra」は、同じ蛇でもすごくすばしっこい感じがするんですよね。逆に「ポワゾ」の蛇はねちねちしてるんですよ。じっとりねっとりというか、湿度が高い。その湿度の差は、歌っていても意識したところです。

達也:だから「ポワゾ」のほうが、イメージしやすかったですね。蛇が獲物を狙ってるかのような雰囲気がAメロとかにも感じられて、逆に、獲物に絡みついてるのが「Hydra」って感じです。僕の中では。

▲達也(Dr)

佳衣:同じ蛇でも地を這うのか? 何かに食らいついていくのか?っていうところで分かれると思うんですけど、自分の中では「Hydra」って結構攻撃的なイメージがあって、それが自ずとフレーズにも表れてるんですね。逆に「ポワゾ」の方は、音色一つとっても物悲しいというか。アコースティックギターの音を入れてみたりして、原曲を聴いたときに感じた哀愁感を活かしていきました。退廃的なイメージも受けたので、それはサビやイントロのアルペジオで表していきましたね。

──ベースでも、そういった違いって何かあります?

翔也:なんか頭ではわかってるんですけど……言葉にするのはすごく難しいです。それは本当に演奏でしかないというか。結局どうしてもライブが頭に出てきちゃうんで、やっぱりツアーの過程を見てほしいなっていうのが一番ですね。で、最後に完成されて、より強い世界観が出てきたりするから、そこは見てほしい。

▲翔也(B)

yo-ka:今の自分を表すなら、これまでにないほどバイオレンスな気分なんですよ。このモードでツアーをするんで、これまでのDIAURAをもブッ壊すくらいの気持ちで挑めそうですね。それは曲がそうさせたのか、作品全てを通してなのかわからないですけど、たぶんね、自信の表れなんですよ。だから「ポワゾ」とか切ない曲だし、もう1曲の「Promised Land」もすごく優しさを感じさせますけど、俺に流れてる血は今、すごくバイオレンスなんだ!って言えるので、そういった曲たちの表情も見ててもらいたいですね。

──ただ、そのバイオレンスって重いとか激しいとかっていう、表面上の話じゃないですよね? だって「Promised Land」のサビなんて、“いま二人を乗せて 廻り出したメリーゴーラウンド”ですよ!?

yo-ka:逆に、チューニング下げて、なんならツインギターにして、メチャクチャ重くて激しい音楽をやったら、それが本当にバイオレンスなのか?って、俺は疑問なんですよね。そうやって安易に決めつけられることも嫌なんですよ。だからこそ、我々はこういう音楽をしてるんです。

佳衣:結局は“衝動”だと思うんですよ。もう、瞬間的に自分で自分が制御できなくなった結果がバイオレンス。そういう衝動的なものって、自分たちの中にも絶対あるんです。例えばライブだったり、制作の過程だったり。

──そのDIAURAのバイオレンス、即ち、瞬間を確かめるために、ライブに来てほしいと。

yo-ka:うん、そうです。自分たちも、それを感じたいんですよ! ライブはそれを楽しむものなんだって、いろんなことを経て今、改めて実感できてるんですね。瞬間の話だから、もちろん2ヶ月後はどうなってるのかわかんないですよ。「今の俺の気持ちはセンチメンタルだ」って言ってるかもしれない。でも、それがバンドなんだなって思うようになりました。

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