【インタビュー】朝倉さや、国を超えるスケール感で響かせるメジャーデビューAL『古今唄集~Future Trax BEST~』完成

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朝倉さやが4月1日にこれまでの活動の集大成でもあり、書き下ろしのオリジナル曲も収録したメジャーデビューアルバム『古今唄集~Future Trax BEST~』をリリースする。昔から日本人に親しまれてきた民謡を新たに解釈し、国を超えるスケール感で響かせる“フューチャー・トラックス”は2015年に日本レコード大賞企画賞を受賞。類まれなボーカル力が支持され、自由な感性で山形弁でアニソンを歌ったり、ジブリの名曲をカバーしたアルバムをリリースするなど、常識にとらわれない活動も注目を集めている。

小学校2年性から本格的に民謡を習い、「歌手になりたい」という志だけ持って18歳のときに山形から上京した朝倉のルーツと才能、素朴な人柄を引き出したプロデューサー、solaya氏との出会いがあり、いまがある。メジャーデビューは「新しい旅の始まり」と定義づける朝倉が、これまでのヒストリーをふくめてアルバムに込めた想いを熱く語った。

◆朝倉さや 写真


▲アルバム『古今唄集~Future Trax BEST~』

■新しい旅の始まり。
■いろんな概念を壊しながら、レベルアップしながら作りたかった


——アルバム『古今唄集~Future Trax BEST~』のボーカルのスケールの大きさ、民謡を新たなアプローチで響かせるサウンドに癒されました。メジャーデビュー目前の心境は?

朝倉さや(以下朝倉):メジャーデビューすることは去年のツアーファイナル(2019年12月 東京公演)で発表したんです。アンコールでバンドのメンバーがステージからはけた後に私ひとりで歌うことになっていたんですが、そのときにベースとギターを弾いてくださったプロデューサーのsolayaさんから急に「これを読んでくれ」って1枚の白い紙を渡されたんですね。予想外のことだったので私自身にとってもサプライズで、紙に書いてあることを読みながらメジャーデビューの詳細をお客さんと一緒に知っていったんです。そのときは驚いたし、嬉しかったし、いろいろな気持ちになりましたけど、アルバムを制作したり、さまざまな動きがある中、いまは全てが楽しみな気持ちです。

——目標が叶ったという気持ちでもありますか?

朝倉:2013年にデビューしてからも「やりたいことを全力でできるのってホントに幸せだな」と思いながら歌い続けてきたんですけど、メジャーデビューはまた新しい旅の始まりだなと思っていて、さらに可能性を追求して、みんながワクワクするようなことをお届けしたいと思っているんです。そんな想いをしっかりのっけられたのが『古今唄集~Future Trax BEST~』です。

——新しい旅の始まりということですが、アルバムには朝倉さんの代表曲も書き下ろしのオリジナル曲も収録されていますよね。どんなイメージを持って取り組んだんでしょう?

朝倉:いろんな概念を壊しながら、レベルアップしながら作りたいと思っていました。ジャケットでも変身したかったから、髪の色を変えたんです。これまで応援してくださった方にも意気込みが伝わるように。

——節目だから変身したかったんですか?

朝倉:大切に歌ってきた曲もふくめて“旅さあべ”(山形弁で旅に行こうという意味)という想いをのせた集大成のアルバムでもあり、旅の始まりの曲たちでもあるので見た目でも表現できたらなと思ったんです。これまで赤い髪とか栗毛色にしたことはあったんですけど、いままでやったことがない色にしたかったので「青だな」って(笑)。


——挑戦したかったんですね。ちなみに“概念を壊す”というのは民謡のことを指しているんですか?

朝倉:民謡に限らずですね。大人になっていくにつれて「ああしなきゃいけない」とか無意識に勝手に決めつけることが増えていくけど、そういうことに囚われていたらもったいない気がするんです。これまでホールやライブハウスやいろんなところで歌わせていただいてきたんですが、「やったことがない場所で歌ってみたい。田んぼとかどうかな?」って去年、提案したのも概念を壊すことのひとつだったと思います。

——国宝 女神の郷 田んぼで開催された山形県舟形町豪雨災害 / 東日本大震災復興支援チャリティコンサート(2019年7月)ですね。どんな気分でした?

朝倉:めちゃくちゃ楽しかったです。当日はかなり暑くて途中で雨が降ったりしたから自然の大変さも実感しましたけど、風を感じながら「こんな経験、田んぼじゃなきゃできなかったな」って。ボランティア団体の方や地元の街の方も協力してくださって、まるでお祭りみたいでした。これからも自由に面白いことをやっていきたいなって思いました。

——なるほど。素朴な疑問で恐縮ですが、アルバムには「Mr.Mamurogawa(真室川音頭Future Trax)」や「新庄節 Future Trax 2020」など朝倉さんが歌ってきた民謡が数多く収録されていますよね。“Future Trax”ってどういうふうに捉えたらいいんでしょうか?


朝倉:Future Traxは民謡と新しい音楽の融合のことなんです。2015年に発表したアルバム『River Boat Song -Future Trax-』から始まっている試みで。

——日本レコード大賞企画賞を受賞したんですよね。

朝倉:そうなんです。私はもともと自分で曲を作りたいという想いがあったのでオリジナル曲も作るし、山形弁で曲をカバーしたり、アニメソングを民謡調で歌わせていただいたりもしていて。民謡は子供の頃から歌っていたので三味線を弾きながら歌うこともあるし、いろーんなことをライブでやりたいタイプなんですよ。“Future Trax”の始まりは私の地元の民謡「最上川舟唄」をプロデューサーのsolayaさんがめちゃくちゃカッコよくアレンジしてくれたことです。小さい頃から何度も聴いて歌っている「最上川舟唄」にこんな可能性があったんだ? と衝撃を受けて「歌いたい!」と思ったんです。

——小学生の頃から歌っていた民謡がこんなグルーヴ感のある壮大なアプローチになるのか?って。

朝倉:はい。たぶん幼稚園の頃から歌っていたと思います。

——きっと朝倉さんの中ではアニソンも民謡もポップスも特に分けてはいないし、囚われていないんでしょうね。

朝倉:そうかもしれないですね。小さい頃はジャンルとかわからないし、童謡も民謡も流行っている曲も同じ歌として歌っていたんですけど、そのまま大人になっているのかもしれないですね(笑)。


——歌に出会って人生観は変わりました?

朝倉:大きな出会いだったのはsolayaさんですね。18歳で東京に出てきたときはなんのツテもなく志だけで「歌手になりたい!」と思っていたんです。「どうしたらなれるんだろう?」と思ってオーディションを受けたり、音楽教室やギター教室にも通っていたんですけど、民謡独特の歌い方とか癖を消すようにアドバイスされることが多くて……。それでも探し続けていたら、solayaさん主宰のSolaya Music Schoolに出会ったんです。 solayaさんは歌い方の癖を初めて否定しなかった方で、標準語で「タッチ」を歌ったら「いま、あなたが喋っている山形の言葉で歌ったらどうなる?」って言われて「やったことないけど、やってみっかぁ」って挑戦したのが、のちの「タッチ」山形弁バージョンにつながっていったんです。自分も気づいていない個性を否定せずに活かしてくれる方に出会えたから「自由に楽しくできてるんだべな」とずっと思っています。

——歌手人生を変えた出会いですね。古典的で有機的なものとデジタルの無機質な音が混ざりあった民謡を朝倉さんが伸び伸び歌っているのを聴いていると自然の息吹とか宇宙を感じるんですよね。

朝倉:ありがとうございます。ホントに宇宙ですよね。solayaさんの作る音楽が大好きで毎回、嬉しさと感動でいっぱいになるんです。サウンドを聴いているだけで歌詞をのせたいっていう気持ちになります。オリジナル曲に関しては「こういう歌ができたんですけど、聴いてください」って大声で歌うときもありますね。今回のアルバムに入っているオリジナル曲は先にサウンドの基盤を作っていただいて、導かれるように自分の想いをのせていきました。民謡のFuture Traxに関してはまず私がクリック音も聞かずにアカペラで民謡を唄うところから始まってsolayaさんがアレンジしてくださって、そこから民謡を軸にしてオリジナルの歌詞をのせて完成させていくんです。

——そういう過程を経て出来上がっていくんですね。

◆(2)もちろん出会いによって刺激は受けまくっています
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