【インタビュー】はっとり(マカロニえんぴつ)、「バンドのあり方を無意識に見つめ直した」
「レモンパイ」や「ブルーベリー・ナイツ」「ヤングアダルト」などの楽曲が次々と幅広い層に支持され、2019年を飛躍の年として駆け抜けたマカロニえんぴつ。
2年ぶりとなる待望のニューアルバム『hope』は、これらの楽曲に多彩な新曲を加え、私立恵比寿中学に提供した「愛のレンタル」のセルフカバーも含む全14曲という大ボリュームの1枚となった。タイアップ曲が9曲に及ぶことからも、いかに今彼らが求められているかがわかる。
結成8年、ネクストブレイクの筆頭として注目を集めながらも葛藤を繰り返し、オリジナルメンバーの脱退という危機を超えて辿り着いた現在。彼らは外からの刺激を受け入れてメンバー間の関係性を変え、リスナーからの反響によって自分たちの核を手探りで見つけていった。決して器用な歩みではなく、ひとつひとつの経験と失敗、絶望も希望も積み重ねてきたからこそ今がある。今いちばん「バンド」を楽しんでいるというマカロニえんぴつの軌跡と、この『hope』に結実した想いを、はっとり(Vo,G)が語ってくれた。
◆ ◆ ◆
■あんまり無理してないし、背伸びもしてない
──今のマカロニえんぴつのベスト盤と言えるくらい濃い1枚になりましたね。まず14曲入りというボリュームに驚かされたんですが、もう全部詰め込もうと?
はっとり:メンバーやスタッフと話し合う中で、入れすぎもよくないんじゃないかとか、いろいろ意見があったんですけど。でも僕は単純に、できるだけ1曲でも多く入れたいなと思って。別に16、17曲くらいでも良かったかなってくらい(笑)。曲数を削って、今回入らなかった曲を次作に繰り越すってなるとなんか違うというか……今出さないんだったら、僕の気持ちとしてちょっと冷めてしまいそうな曲が多かったんですよね。だから、どの曲も熱量が高いと思います。結果、作品としておなかいっぱいな感じになっちゃったんですけど(笑)。でも、みんな待ってくれてるみたいなので、特に今までずっと追いかけ続けてくれた人に対して新しいものをより多く提示したいっていう気持ちは、メンバー全員ありました。
──2018年末のシングル「レモンパイ」から始まって、2019年でミニアルバムを2枚出して、バンドとしても飛躍した1年が形になったなって実感もあるのでは?
はっとり:もちろんあります。まさに「レモンパイ」以降って感じですね。2019年は駆け抜けていった感覚ですけど、やっぱり「レモンパイ」から加速していったかなって印象なので。そういう意味では今回のアルバムには「レモンパイ」以降の、ちゃんとした正装に着替えて、人様に会いにいく格好をしたマカロニえんぴつのいいところしか見せてない感じです。それまでのちょっと隠したい部分だったり、自分たち的にも納得がいかなかった部分っていうのは入れていないので。
──「レモンパイ」から、「ブルーベリーナイツ」「ヤングアダルト」「青春と一瞬」などの新しい代表曲が生まれて、“マカロニえんぴつとは何か”という感覚も刷新されていきましたよね。
はっとり:まあ、マカロニえんぴつがどういうバンドなのかというのは、自分たちでもはっきり提示できないし、わかってない部分だったんですけど。今あがったような曲を受け取った側の人たちがいろいろイメージをつけてくれて、それが自分たちに返ってきたんですよね。“ああ、僕たちはこういうことを発信していくバンドなんだ”っていうのを、あとから自覚し始めるみたいな1年だった気がします。
──マカロニえんぴつはそうやって、“リスナーにどう受け止められるか”というところまで見極めて、俯瞰的な目線が常にあるバンドだという印象があります。
はっとり:うーん……あまり自分のことを歌いすぎないのが、そう感じさせている大きな理由じゃないかなと思います。僕はそこまで自分をわかってほしいって想いで書かないし、「こういう気持ちになる瞬間って誰しもあるよね、そこから目を逸らすなよ」っていうメッセージだったりするから。俯瞰で見れるバンドというか、僕自身がそうしたいって思っているのが大きいですね。シンガーソングライターじゃなくてロックバンドなので、そうしたくないんだと思います。
──なるほど。今回は周りの期待も感じていたと思いますけど、どういう気持ちでアルバムに向かいましたか?
はっとり:期待値っていうのはすごく感じてました。でも、たぶん『season』のツアーがなかったらもっと周りの期待を感じて、もっと余計なことを考えていたと思います。ツアーがあったことによって、並行して制作をすすめなくてはいけなくて。とりあえず時間がそんなにないという状況だったのが逆に良かったのかな。フルアルバム用に制作期間をボーンって与えられて、「頑張ってください!」って言われてたら、もっとよそいきの格好してたと思います(笑)。そういう意味では、あんまり無理してないし、背伸びもしてないですね。
──逆に、ライブからの影響があったり?
はっとり:楽器を持って演奏するっていうことにいちばん楽しみを覚えていたかなと思います。ツアー中なのでちょっと演奏もうまいし(笑)、ツアーでの曲以外も弾きたい気分になるしっていうので、空気的にもメンバーがいろんなことをしたがっていたのを無理に抑え込まずに。だから今回、アウトロが長い曲が多いんですけど、それは演奏がしたかったんだなって思っていただければ(笑)。メンバーが共通しておもしろいって思えるものが、おもしろいまま閉じ込められたので、今のバンドの状態としては良かったと思いますね。それをOKにできるくらい、内容に自信があったということでもあると思うし。
──メロディや歌詞を軸としつつ、バンドが演奏を楽しめる部分もちゃんと入れていこうみたいなノリがあったんですか。
はっとり:自然とありました。録っている時、バンドが楽しかったんですよね。昔バンドで合わせることがあんまり楽しくない時期があったからこその喜びというか。以前、サウンド面もかなり僕が管理してた時期が長かったんです。僕が思うバンドサウンドの理想を、僕が作ったまま弾いてもらっていて。各メンバーのルーツが伝わってくるね、なんて評価もいただいてたんですけど、そのアレンジも全部自分がやっていたから実はメンバーのルーツはどこにもなかったりして。それがすごく複雑な心境だったんですよ。メンバーも僕のアレンジに対して信頼してくれていたんですけど、本当の意味でのバンドの楽しさはなくて。そういう時代があったから、今自分がエゴを抑えてメンバーに頼るようになれた時に、「こんなものもできるんだ!」って喜びがありました。
◆インタビュー(2)へ
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