【インタビュー】saji、短編小説を読むように明るくせつなく出会いと別れが交錯する『ハロー、エイプリル』

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■やれることが増えるとベタを恥ずかしがるじゃないですか
■でもお決まりのことをお決まりのタイミングでやると気持ちいい


──「ミラーリンク」もそうですけど。今回、ピアノや弦が入ってる曲がめっちゃ多いですね。

ヨシダ:ピアノは多いです。去年の12月のライブで、ピアノと僕の歌でバラードをやった時に、すごく手ごたえを感じたんです。phatmans時代だと、ピアノがメインの曲はバラードかミディアムが多かったんですけど、ピアノは「ミラーリンク」みたいな速い曲にも入れられるから。今回は、どのテンポにもまんべんなく散りばめました。sajiとphatmansの違いはそこでしょうね。

──ところで、「ミラーリンク」の主人公って、なんでウサギなんでしょう。気になります。

ヨシダ:なんでウサギが出て来るかというと──ミラーという言葉を入れた曲を作りたいと思った時に、鏡写し、鏡合わせとか、童話っぽいイメージが浮かんで、「鏡の国のアリス」っぽいな、じゃあウサギにしようと思ったんです。それで、物語の主人公としてウサギという言葉を使ってみました。でも、可愛い曲ではないんですよ。これは僕の中ではおとぎ話の一つです。

──これってラブソングなのかな。もっと深い愛の歌のような気もする。

ヨシダ:これはね、たぶん死んでます、相手が。永遠のさよならって何か?というと、死に別れることだと思うので。バラードの曲でよくあるような、フラれたとか別れを告げられたとか、僕はそういう歌があんまりしっくりこなくて、「その気になればもう一回会えるじゃん」って思う。でも「会いたいけど絶対に会えない」というのが、僕の中で一番ドラマチックだと思っていて、死という言葉を使ってはいないですけど、鏡写しというイメージはそういうこと。ちなみに「ウサギは寂しいと死ぬ」って言うじゃないですか。あれってウソなんですけど。

ユタニ:ウソなんだ。

ヨシダ:そう。むしろウサギは単独行動を好むから、同じゲージに入れておくとストレスで死んじゃう。それはさておき、この物語に「ミラー」という言葉を使ったのも、自分の姿を鏡で見た時に、「この人に会いたい」と思う、それって寂しいじゃないですか。自分と同じような仲間がほしい、恋人がほしい、でも鏡の向こう側には行けない。だから鏡写し、鏡合わせで「ミラーリンク」。あっちの世界の人、ということです。


▲『ハロー、エイプリル』<初回限定盤>


▲『ハロー、エイプリル』<通常盤>

──納得。「何度でも僕らは生まれ変わって」というワードの意味がわかりました。

ヨシダ:それは死の比喩表現ですね。もしもう一度僕らが会えることがあれば、その時は二人でいられる世界に行きたいねということで、最後に「約束な」と言っています。

──むっちゃエモいじゃないですか。

ヨシダ:僕、意外と歌詞は真面目に書くんです(笑)。

──それってメンバーには教えるんですか。

ヨシダ:教えないです。逆に、そんなボーカルいますか(笑)。「この曲はね…」って、求められてもいないのに。

ユタニ:この「鏡」って何だと思う?って(笑)。

ヨシダ:うざいなー(笑)。自分でいろいろ思いながら書くんですけど、持論としては、曲の歌詞なんて聴き手の判断じゃないですか。「この曲は別れの歌ですよね」とか、君がそう思うならいいよって僕は思う。彼らが思ったように聴くのが正解なんですよ。

──ためになりますね。何か意味を聞いてみたい曲はないですか。ヤマザキさん。今なら答えてくれると思う。

ヤマザキ:じゃあ「ユートピア」。今言ったみたいな、裏テーマがあるのかどうか。

ヨシダ:なんでインタビュアーになってるの(笑)。でもね、「ユートピア」に関しては、このアルバムで唯一駆け引きなしというか、10代の青春群像劇みたいな曲。今の僕らのような、大人にハマらないワードは最近避けてたんですけど、あえて意識して入れたんです。「白いシャツをなびかせて」とか。僕も高校生だった時代はあったし、僕の体験してきた青春群像劇ですけど、たぶん10代の子たちって、何十年経とうが同じような心境だと思うんですよ。くだらないことで感動できたり、クラスのレクリエーション大会を一丸となってやって、「俺たち最高だよな」と言えちゃう時期。大人になると、言えないじゃないですか。

ヤマザキ:これね(→指で星のマークを作る)。

ヨシダ:そうそう(笑)。それで写真撮るんですよ。僕もやりましたけど、空に向けて、みんなで。そういうことが全力でできて、感動できるんですよ。今やったら、照れるじゃないですか。当時は照れてなかったでしょ?

ユタニ:全然。球技大会とか、「行こうぜ!やろうぜ!」って。

ヨシダ:そういうことで感動できる時期はその時しかない。君らはそれでいいんだぜ、という歌です。ユートピア=理想郷というと重くなりすぎるけど、君が望めば何でも正解だし、君がこうだと思うことはそのままやっていいぜということなんです。僕はちょっと斜に構えた高校生だったけど、そんな僕でもやっていましたからね。指で星のマークを。10年後に恥ずかしかったなと思うことが、もうすでに財産だから。あの時にクラスの隅っこで「俺はあいつらとは違う」とか思っていたら後悔しますよ。本当はやりたかったのに。星のマークと、あとは彼女と作るハートマーク(笑)。


──いいなあ。それ、あとで写真撮ろう(笑)。

ヨシダ:大人が見るとダサいと思うけど、高校生が見ると意外と感動するんですよ。僕らで言うと、FUNKY MONKEY BABYSやGReeeeNとかが、めっちゃ流行ったんですよ。あの時は等身大の僕らとして感動してたけど、大人になって考えると、大人がああいう歌を歌っていたことがすごいと思う。あんな歌、大人が歌えないですよ。今聴いても感動するし。だから「ユートピア」は10代のそういう曲です。

ヤマザキ:満足しました。

ヨシダ:大人でそれができたら素晴らしいですよ。みんな、大人ぶるからね。それが全力でできたら若者の心をつかめると思う。

ユタニ:まあ、僕はまだ青春終わってないですから。

ヨシダ:青春は、終わったと自分で言わなければ続きますから。まだまだ青春。

ユタニ:まだまだユートピア。

──納得。そしてアルバムの最後は「YELL MY STORY」で明るい希望を残して終わります。

ヨシダ:これは最後の曲にしようと思っていました。4月1日というリリース日が決まっていたんで、卒業や進学の時期だし、これはそういう曲なので。肩でリズムを刻んで聴ける曲だと思います。このリズム、久しぶりにギターで弾きましたよ。それこそ、大人になってからは、こういうベタなリズムはやらなくなってたから。でもベタって気持ちいいから。やれることが増えると、ベタを恥ずかしがるじゃないですか。でもね、お決まりのことをお決まりのタイミングでやってくれると気持ちいいんですよ。

──そう思って聴き直すと、ほとんどすべての曲に「夢」「未来」が出て来ていますね。ある意味ベタで、ある意味最強です。

ヨシダ:わざとですね。アルバムの裏テーマが「明日」なので、それも意識的に入れています。どんなストーリーに出会ったとしても、暗い曲でも明るい曲でも、明日を目指してる。明日のいいところは、僕らが何してるかわからないことで、今日と代わり映えしないかもしれない。あるいは、人生を変える出来事が起こるかもしれない。「明日にちょっとだけ期待してみよう」と思って生きれるのって、素敵じゃないですか。明日が見えてたら、みんなやめちゃうと思うんですよ。

──明日は平等ですからね。

ヨシダ:いいこと言いますね。使わせてください。

──どうぞ(笑)。という、6曲の短編小説のようなミニアルバム。題して『ハロー、エイプリル』。

ヨシダ:読み手(聴き手)によって、その時の気持ちで、刺さる曲が変わると思うので。どの曲が良かったかは、おのおのに任せます。楽しんでもらえたらと思います。

取材・文●宮本英夫


リリース情報

New Mini Album『ハロー、エイプリル』
2020年4月1日(水) ON SALE
<初回限定盤>
品番:KICS-93914
価格:\2,300+税
形態:CD+DVD
<通常盤>
品番:KICS-3914
価格:\1,800+税
形態:CD ONLY
【CD収録内容】
M1:ミラーリンク
M2:シュガーオレンジ
M3:孤独の歌
M4:コトバトビト
M5:ユートピア
M6:YELL MY STORY
【DVD収録内容(初回限定盤)】
◆「シュガーオレンジ」MUSIC VIDEO
◆「シュガーオレンジ」MUSIC VIDEO MAKING
◆「saji 1st Live 2019 ~尾羽打チ枯レズ飛翔ケリ~」Live Document
※通常盤にはDVDは同梱されません。
【初回限定盤/通常盤(初回プレスのみ)共通特典】
☆「saji 1st Tour 2020」最速チケット先行抽選予約申込シリアルナンバー封入[応募期間:2020年4月1日(水)12:00~4月15日(水)23:59迄]

ライブ・イベント情報

<saji 1st Tour 2020>

7月18日(土) 【愛知】JAMMIN'
[OPEN]17:30 [START]18:00
お問い合わせ先 サンデーフォークプロモーション052-320-9100 (10:00-18:00)

7月19日(日) 【大阪】ROCKTOWN
[OPEN]17:30 [START]18:00
お問合せ先 サウンドクリエーター06-6357-4400 (平日12:00-17:00)

7月26日(日) 【東京】Shibuya WWWX
[OPEN]17:00 [START]18:00
お問合せ先 HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 (平日12:00-18:00)
□チケット: \4,300円(税込)/ オールスタンディング
※整理番号付き
※入場時ドリンク代\600 別途必要
※6歳以上チケット必要、6歳未満入場不可
【最速チケット先行】
4/1(水)発売のsaji New Mini Album 『ハロー、エイプリル』(初回限定盤及び通常盤[初回プレス分])に抽選予約申込シリアルナンバー封入。
□受付期間 2020年4月1日(水)12:00~4月15日(水)23:59まで

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