【コラム】『エール』の古関裕而ってスゴイ~BARKS編集部の「おうち時間」Vol.012

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新型コロナウイルス感染症の緊急事態措置によって、自宅でテレビを見る時間が増えた。基本的には自宅で仕事をしているわけだが、それでもテレビを見る時間は確実に増えた。それも朝からだ。「今日こそ感染者が増えませんように」と思いながらNHK朝のニュースをチェックして憂鬱な気分になるも、これに続いて放送されるNHK連続テレビ小説『エール』で、一気に気分が晴れる。そんな毎日が続いている。

この『エール』、大作曲家である古関裕而氏をモデルにしていることは誰でもが知っていることだが、これを機にいろいろと調べてみると、人生の中でどれほど古関裕而氏の作品に触れていたか、また現在進行形で触れているかを知って愕然とする。それほど身近に氏の作品が溢れているのだ。その作品数たるや、なんと5,000曲! 「え、この曲も? あれもそうだったんだ」と気付くこと多数。意外な曲が出てきたりして、改めてその豊潤な才能の豊かさに感心する。『エール』をきっかけに再発見する古関裕而氏の楽曲の数々。自宅での時間をちょっとでも豊かにするよう振り返ってみる。

まずは『エール』つながりでオリンピック関連でいうと、「オリンピック・マーチ」が古関裕而氏の作曲であるということは説明の余地がないだろう。『エール』によって知った人も多いかもしれないし、東京オリンピックの開会式で演奏されたことは知らなくても、小中学校の頃の運動会では必ず流れる曲。いや、それは昭和の頃だけ? 平成や令和の運動会では流れていないのかも……。


▲『連続テレビ小説「エール」オリジナル・サウンドトラック』

次にプロ野球ファンとして挙げたいのが、我が阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」。その勇ましいメロディと肉体が高揚するリズム、そして古めかしくも崇高な歌詞。タイガース・ファンはこの曲のことを“国歌”と称することは有名な話。ファンでなくても「オウ オウ オウオウ 阪神タイガース フレ フレフレフレ」というサビのメロディと歌詞はご存じだろう。そして皆が驚くのが、阪神タイガースの永遠のライバル球団である読売ジャイアンツの応援歌「闘魂こめて」も、同じく古関裕而氏の作曲であるということ。東京ドームのライトスタンドに広がる巨大なチーム旗、七回の攻防の前に流れる「闘魂こめて」。血沸き肉躍る瞬間である。両曲が氏の作曲であることはプロ野球ファンなら既知のことであると思われるが、案外この事実を知らない人も多いのではないかな。ちなみに、中日ドラゴンズ「ドラゴンズの歌」も氏の作曲である。

ライバルというところでは、「紺碧の空 ~早稲田大学応援歌」と「我ぞ覇者 ~慶應義塾応援歌」も氏の作品。ライバルチームは同じ作曲者の曲で熱き血潮を感じているのである。ちなみに「ワセダ ワセダ ワセダ~」で有名な早稲田大学の「早稲田大学校歌」は相馬御風作曲、そして「陸の王者慶應」の慶應義塾大学の「若き血」は堀内敬三作曲である。

野球の話が続くが、白球に青春をかける高校球児の最大の祭典「全国高等学校野球選手権大会」で流れる「栄冠は君に輝く ~全国高等学校野球大会の歌」も古関裕而氏の作曲。甲子園の上に広がる青空に浮かぶ白い雲と汗まみれの球児たち。この曲を聴かないと夏が来たことを実感できないというファンも多かろう。

プロ野球、大学野球、高校野球とも、開催の見通しが立たない今の状況である。その日を楽しみに、せめて氏の作品を聴いて待ちたいものだ。

さて話は野球から離れて、ちょっと意外な方向へ。映画『モスラ』の劇中歌「モスラの歌」も氏の作曲。映画は1961年に公開され、双子の姉妹歌手ザ・ピーナッツが歌ったこの曲は、その印象的なメロディと摩訶不思議な歌詞が相まって大人気となった。南太平洋の孤島が舞台の一つになっていて、そのエキゾチックで且つセンチメンタルなメロディは古関氏の人間や自然に対する愛情が溢れ出しており、何年たっても耳から離れない名曲になっている。

「君の名は」の音楽も古関氏が担当している。といっても、新海誠監督のアニメ「君の名は。」ではない。1952年~1954年に放送されたラジオドラマである。当時は放送時間に女湯に人がいなくなるといわれたほどの人気ドラマであったらしい。

ほかにも「“ひるのいこい”テーマ音楽」などのラジオのテーマ曲や「とんがり帽子」、そして藤山一郎氏が歌った「長崎の鐘」などの歌謡曲、そして「暁に祈る」「ラバウル海軍航空隊」「若鷲の歌」などの軍歌も多数作曲をしている。これらはタイトルを言われてどんな曲かわからなくても、一聴すれば「ああ、この曲か!」と気付くことが多いかもしれない。

氏は、これらポピュラーな曲のほかにも交響曲の作曲もこなし、そのあまりにも多ジャンル、そして圧倒的な曲数、そして多彩さで、日本人の連綿と続く音楽の心に灯をともし続けたことは言うまでもないだろう。

ここまで、昭和生まれの人にしかわからないかもしれないなぁ、と思いつつ筆を進めてみた次第であります。

ちなみに、上記の楽曲はCDで聞くことができる。『あなたが選んだ古関メロディーベスト30』、『連続テレビ小説「エール」オリジナル・サウンドトラック』が発売になるので、NHK連続テレビ小説『エール』で気になった人は、ぜひ一聴をお勧めする。

文◎森本智(BARKS)


▲『連続テレビ小説「エール」オリジナル・サウンドトラック』

リリース情報

『あなたが選んだ古関メロディーベスト30』
2020/04/29発売
CD2枚組 COCP-41121-2 ¥3,000+税

『連続テレビ小説「エール」オリジナル・サウンドトラック』
2020/05/27発売
CD COCP-41137 ¥3,000+税


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